未来が視える元海兵が麦わらの一味について行く話   作:テロン

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今回ちょっと長めです。



分からない

 

 

 

 

「役に立ったみたいだね、これ」

 

 

 即席で張り巡らせた暗幕を親指で指差して、リオは瓦礫の山を登っていった。

 日が昇った後の島。まばらに落ちた影の中、オーズ、モリア共に倒された戦場では疲労感に微笑む一味のみんなと、影を取られて隠れ住んでいた被害者たちが各々一息ついていた。

 

 

「あの影はリオさんのおかげだったのか」

「なるほど、あれを作りに行ってたのね」

「や、あれ自体は戦闘前に建ててたよ。折角勝っても時間切れで終わったら遣る瀬無いしね」

 

 

 言いながら、気絶しているルフィの横まで駆け寄った。

 チョッパーが手早く処置を開始してるし、幸い命に関わるような怪我はない。

 そもそもこの後彼の怪我や疲労は取り除かれるのだから、大丈夫だろう。ツンツンと突ついて、立ち上がる。

 

 

「ナミ」

「どうかした?」

「いや」

 

 

 首を振って視線を城壁の上に向ける。怪訝そうなナミは、すぐにハッと顔を上げた。

 

 

「そうだ、大変な事忘れてた……!」

 

 

『成程な。やはり、恐れていた通りになったか』

 

 

 ナミへの返答ではない。

 電伝虫を介した声が、頭上から降ってきた。巨体の男が一人、手の上に電伝虫を乗せて無表情で座っている。

 

 

「もう一人いたの……。七武海が!」

「な、今なんて!?」

 

 

『まだ息はあるのだな?』

「さァ……」

『生きているのなら回復を待ち、ひとまず七武海の続投を願いたいところ……』

 

 

 電伝虫越しの声は、一般人が一生聞くことがないだろうものだ。かく言うリオも肉声は聞いたことがない。

 

 

「モリアにも劣らないあの巨体……暴君と呼ばれたあの海賊。バーソロミュー・くま!」

「あいつが!? 暴君くま!?」

 

 

 下の動揺を意に介さず、くまと世界政府のやり取りは続いていく。

 

 

『ではやはり、先程伝えた通りの手筈とする。世界政府より特命! 麦わらの一味を含む、その島に残る者達全員を抹殺せよ!』

「……た易い」

 

 

「!?」

「今なんか聞こえたぞ!?」

 

 

『では報告を待っている』

 

 

 そう言って電伝虫は切れた。

 巨体がギロリと廃墟と化した広場を見下ろしている。言うまでもなく、その視線は敵意に満ちていた。

 

 

「さァて」

「成程、これに備えてか」

「打てる手は打ったけど、期待はしないでね」

 

 

 ゾロの隣に並んで、パキリと拳を鳴らす。後ろでナミが、見た限りのくまの情報を伝えていた。触れた相手が消える事、自身も瞬間移動をすること。

 ニキュニキュの実の能力者である彼は、高い戦闘力を有している。それ以上のことは、リオもあまり詳しくはない。くまが七武海となったのはリオが正義の御旗を降ろした頃で、そこから先のリオは大した活動をしていなかったからだ。

 

 

「小手調べだ、くま。八握剣(やつかのつるぎ)!」

 

 

 だとして、くまとは無関係とも言い難かった。縁とも呼べぬか細い繋がりがある。リオは空を駆け、今はまだ誰もいないそこへ向けて蹴りを放つ。

 

 

「ッ!」

「……」

 

 

 硬い。能力で出現したくまの左肩に刺さった蹴りは、覇気を防御に寄せていたとはいえあまりダメージに至らなかった。

 

 

 まァいい。そのまま左足でくまを蹴って離脱する。同時に、辺りにいたモリア被害者たちがくまに一掃された。彼らの持っていた刀を拾って再度接近する。

 

 

「大通連・突!」

 

 

 それなりの速度の突きだったとは思うが、ガキン、とくまの体に阻まれる。まじめに剣の修行はした事ないからなァと舌打ちを溢した。一応海軍に入隊する者は支給品の軍刀、マスケット銃の訓練はさせられるのだが、こういうのは継続がモノを言う。

 

 

 罅の入った刀を投げ捨てて、「ごめんヒビ入っちゃった!」「おめェもう刀持つな!」「ワンワン!(ゆるしてェ)」なんてゾロに怒られつつ、くまの掌の射線に入らないように移動する。

 

 

「海賊狩りのロロノア・ゾロ」

 

 

 無感情な声だ。この声が感情に溢れていた頃を、リオは知らない。視て、聞いていたとしても。

 

 

「お前から始めようか……」

「わあ、こんなに綺麗に無視されたの、私はじめて!」

 

 

 数歩空を蹴り、ゾロの後ろに着地する。くまがどういうつもりなのかまではリオには分からない。リオの力を知っていて、努めて心を動かさないようにしているらしいからだ。

 まァ、無視されているだけマシだろうと思っておこう。殺す気で来られた場合、遊びじゃあ済まない。

 

 

「ゾロ、ご指名だけど行けそう?」

「ケンカは買う。リオおめェ、あいつらを遠くへ逃しておけ」

「……うーん。まあいいよ。ワン!(幸運を)

 

 

 手を出すな、ってことだろう。頷いて、一味のみんなの方を振り返る。まず重症なのはルフィだけど、この後のこと考えると動かせない。

 

 

「リオ?」

「……」

 

 

 それに、一味のみんなは()()()()()()()

 

 

 逡巡に気付いたのかどうか、くまが「なかなか評判が高いぞ、お前達」と口を挟んだ。

 

 

「麦わらのルフィの船には、腕の立つできた子分が数人いるとな」

 

 

 全員照れた。リオもそっち側に行きたいなァ。

 ただ、くまが対話を求めているのではない事も皆知っている。圧倒的な実力差があるのも、知っている。

 

 

「お前達の命は……助けてやろう。そのかわり、麦わらのルフィの首一つおれに差し出せ。その首さえあれば政府も文句は言うまい」

 

 

 その提案に、「断る!」と胸を張る姿を見ながら、リオはそっと目を細めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その、すぐ後のことだ。

 

 

「よいせっと」

 

 

 所構わず破壊をまき散らしたくまの空気爆弾の跡地。

 から少し離れたところで、リオはマントの汚れを気にしていた。白だから目立つのだ。

 

 

 流石にあの爆風の中、しれっと後退して広場から離れたリオに気付いている者はいないだろう。

 広場の方では先ほどまで何とか意識を保っていたゾロと、最終的にはゾロに気絶させられたがサンジが、ルフィを庇ってくまに立ち向かっていた。ゾロの気概を買い身代わりに了承したくまは今、彼と共に森の方にいるようだ。

 

 

 動けはせずとも他にも意識のある者はいたから、これからリオがすることを見られたくない。

 この状況でマントをジャブジャブ洗っているなんて、割とヤベー奴なので。いや、これはタイミングを見計らっているだけであって、ふざけているわけじゃないのだ。

 リオのマントは真っ白でなければならないので、さっさと洗っちゃいたかったというのも事実だけど。

 

 

 あらかた汚れを落とし終わると、リオはゾロとくまの気配の方へ向かっていった。もう、事は済んだようだ。

 

 

「じゃあ、次は約束通り私の番だ」

 

 

 夥しい血と抉れた地面を横目にくまを見上げる。ゾロは殆ど意識がないけれど、しっかりと自分の足で立ったままフラついている。リオのことには気付いているのか視線を向けようとしているようだが、体に蓄積したダメージを消化しきれてないのか、ピクリとも動かない。

 

 

 くまは頷いて、リオの前に等身大ほどの半透明な肉球を出した。ピンク色のそれは見た目の可愛らしさとは裏腹に、殺意に溢れている。

 

 

「ちょっと小さくない? 半分くらいにしてって言わなかった?」

「知らんな」

「ふーん。まァ、お前が気にくわないのも分かるけど」

 

 

 先程ゾロが決死の覚悟で受け止めた、ルフィの身体に蓄積された傷や疲労感そのもの。の、分割された一部分だ。

 

 

 オーズとの戦闘を抜け出したリオは秘密裏にくまに接触し、『もし一味の抹殺命令が出て、お前が一人の男に賭けるというのなら、誰にも知らせずにその半分を寄越せ』と要求していた。

 

 

 対価を払う必要はない。

 

 

 ゾロの気概を無下にする形になるため、恐らく誰に言っても嫌な顔をするだろう提案だ。

 

 

 けれどもくまはリオの要求を飲むしかない。可哀想に、リオを殺すこともない。

 

 

 その反骨心が、あまりにも小さいサイズに分割された肉球だろうが。

 

 

「私も場所変えようかなァ」

「…………」

「あ、心配しなくていいよ、ゾロ」

 

 

 突き刺さる視線に振り返る。

 

 

「このためになるべく()()()()ように立ち回ったんだしね」

 

 

「うん。でも、君は私を止められる立場じゃないでしょ。私も君のすることに口を挟まない」

 

 

「そう、君は一番良く知ってる。私は所詮『見習い』で、君たちの船の『お客さん』だ」

 

 

 一言も発しないゾロと会話をするリオを、くまは黙って見下ろしていた。

 

 

「言ったでしょ、忠犬だって。私は視えた未来の為なら何でもするよ。君は必ず生きて次の島へいく。不要な負担は一番元気な私が貰っていく」

「…………リ、オ……」

「もう休みなよ。じき、みんなも目覚める。もう大丈夫だ」

 

 

 薄れ切っているだろう意識の中で、ゾロは移動していくリオとくまを睨み続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一つ聞くが」

 

 

 海岸。手袋をはめながら、バーソロミュー・くまはそう言った。

 リオはさっそく、と肉球に突っ込もうとしていた手を止めて、聞く体勢に移る。そこまで急ぎの()()じゃない。

 

 

「そもそも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 はて。妙なことを言うものだ。リオは意識して口角を上げながら、「私にそんなことが出来ると思う?」と問いで返した。くまは答えない。

 

 

「まァ、その忠誠に免じて一つだけ教えてあげよう。私の異名を聞いたことない?」

「狂犬、となら」

「あァ、それは少し古い情報だね」

 

 

 一歩、二歩。

 リオは肉球の中に飛び込みながら恍惚とした表情でそう呟いた。

 

 

「今は忠犬さ。忠犬リオ。お前は襲って来るし、ゾロはここで死なないし、私たちはシャボンディ諸島へ辿り着く」

 

 

 幸運ながら、リオには『痛がる』とか、『苦しむ』といった機微はない。

 

 

バチンと音が鳴る。

 

 

 それはどこかの未来が確定した音だったかもしれないし。

 

 

 どこか、大きな血管が切れた音かもしれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当になんともないのか?」

「うん。怪我してるように見える?」

「そういうことじゃないんだ、おれは医者だぞ!」

 

 

 プンスカとするチョッパーに笑って、「じゃあこれ治療してもらおうかな。見てここ、瓦礫を動かした時にちょっと切っちゃった」と腕を見せた。

 

 

「するけど!」

 

 

 大袈裟な包帯を巻いてもらいながら、屋敷の中を見渡す。脅威が全て去った後のスリラーバークには、弛緩した空気が流れていた。

 案の定気絶したゾロはまだ目覚めていない。逆にピンピンしているルフィは、サンジの料理に舌鼓を打っていた。

 

 

 くまから受け取ったルフィの傷の一部はリオの活動に支障が出るものではなかったので、そのまま去っていく彼を見送った後は見習いらしくサニー号の掃除をしていた。おかげさまで陰気な島に停泊していた船はピカピカだ。

 簡単な手当ては自分でしたし、チョッパーが血の匂いを感じとれていないなら大した怪我じゃないということ。十中八九、リオが気配を薄くしているのと血濡れのゾロの隣に座っているのが原因だけど。

 

 

 こういうことをしていると主治医は烈火の如く怒ったが、半分諦めていたので応急手当の仕方は教えてもらっていた。自分でやり慣れているのもあって、個人的には結構な手腕だと自負している。

 

 

「やっぱり、リオは頑丈だよな」

「そうかもね」

 

 

 慣れているというか、そういう特性というか。リオは怪我に対する耐性は高い方だろう。

 チョッパーの視線がゾロに落ちた。彼の方は元々の傷に加えてルフィの怪我と疲労を受け取ったせいで重体だった。

 

 

「一味じゃゾロが一番タフだと思ってたけど」

「や、それは間違ってないんじゃない?」

「そうか?」

 

 

 頷いて、リオは目を瞑った。リオの占いは見て聞く力ではあるから、こうすると多少は未来が視えなくなるのだ。完全ではないけど。

 これにてスリラーバークの戦いも終結だ。麦わらの一味は新たな仲間を獲得して次の島へ向かう。

 

 

「ゾロは大丈夫だよ。そりゃ、怪我は酷いけどさ」

「……うん。しっかり休めば大丈夫だと思う」

 

 

 少しだけとはいえリオも受け取ったし、早めに目覚めるだろう。それで何かが変わったりはしないけど。変わらないからこそというものがある。

 

 

「ほら、チョッパーもあっちに参加してきていいんだよ?」

 

 

 ポロン、と鳴ったピアノの音に、リオはルフィの方を指差した。

 音楽があり、美味しい料理もある。とくれば宴の気配がする。

 

 

「う、うん。リオは?」

「私はこっから見てるよ。楽しんでおいで」

 

 

 手を振って見送って──といっても同じ部屋の中だ。人混みの中に飛び込んでいくチョッパーは、すぐに馴染んで踊り始めたようだ。

 気配でそれを確認して、目を瞑ったままゾロを見下ろした。

 

 

「そろそろ、喋れるくらいにはなったんじゃない?」

「…………騒がしくて敵わねェ」

「それがこの船なんでしょ」

 

 

 クツリと笑って、傷に響いたのか痛そうに顔を顰めた、ようだ。実際には見えていないけれど、表情くらいならばリオには分かる。

 体が殆ど動いていないのは、チョッパーが念入りに固定したのもあるだろう。

 

 

「見たとこ、傷の方は半々以上にゾロの方にいったのかな。まァ、サイズ違ったしね。性質上逆の方が良かっただろうけど。怪我の割に疲労感が少ないから覚醒が早かったのかな?」

「それは何と比べてるんだ?」

「推測だよ。視たわけじゃない。ただ、あれ全部受け取ってたらもう何日かは寝たきりだったかもね」

 

 

 リオの視た未来ではこの後この島で動き回るゾロは少ない。単なる推測ではあるが。

 ブルックの弾くピアノの音がだんだんとゆっくりになっていく。見えてはいないが、ルフィがブルックを誘っているのだろう。いいなァ。

 

 

「なんだ、音が変になったが」

「ルフィがブルック誘ってるんでしょ」

 

 

 ゾロは「あいつも運がねェなあ」とボヤいた後、「で?」とリオに水を向けた。

 

 

「お前、船に乗るのはもういいのか」

「なんでさ」

「『見習い』の『客人』でいいんだろ?」

「…………んー、なるほど。弁明をしろってことか」

 

 

 パチリと目を開けると、ゾロは「別にこっちを見ろとは言ってねェ」とすかさず返した。

 

 

「しんどいなら目ェ閉じてろ」

「しんどくはないけど?」

「あ? 快不快はあるんだろ?」

「おっと?」

 

 

 妙な言い回しに、閉じかけた目を見開いた。睨まれてすぐ閉じる。

 

 

「お前、自分の感情は薄いんだろ。というか、殆ど無いが近いかもしれねェな」

「おや、よく気付いたね」

「あのグル眉の方が気付いたのは早ェだろ」

「そう? 直接言われたことはないけど」

「あるだろ」

 

 

 否定の言葉は早かった。

 そうだったかな。思い当たる節はないが、ゾロが言うならそうなんだろう。

 

 

「私の笑顔ってそんなに不自然だった?」

 

 

 言いながら口角を上げてみる。確かに、あまり好評ではなかったかもしれない。

 

 

「少なくとも、こんな話しながらニコニコしてるやつは普通いねェよ」

「ふうん。まァそうかもね」

 

 

 他人事みたいに言ったリオが気に障ったのか、舌打ちを一つしてゾロは「いつまでも部外者気分でいやがって」と吐き捨てた。

 

 

「未来が視える奴ってのはみんなそうなのか?」

「さァ。ただ少し、現実に現実味はなくなると思うよ」

「……もう既に視てるからか?」

「それもあるけど。あとは、振れ幅が大きすぎるってのもあるかな」

 

 

 黙って続きを促したゾロに、リオは「W7で、宴の時ロビンとの会話聞いてたでしょ」と言いながら背中を伸ばした。

 

 

「……当然の帰結だろ。お前は自分の視た、自分自身の未来で芽生える『感情』が知りたいと言った。だが、そもそもお前はまず『感情』から視るらしい。なら初めから答えを知ってるはずだ。嘘ついてんのかと思えばそうでもねェ。かといって自分から実現させるよう働きかけもしねェ。分からないんだろう」

「………………」

「自分の『感情』ってやつがよ」

 

 

 暗闇の中、ゾロの言葉を噛み締める。こういう時、人はどういう気持ちになるのか、は分かると思う。リオの中には無数の()()()()がある。けれど今、同じようにリオの心が動いているとはとても思えなかった。

 

 

 

バチンバチンと、リオにしか聞こえない音が響いている。

鳴り響く度に、何かを壊しているのだ。

 

 

 

「そもそもお前、いつもろくに話聞いてねェし、目線もほぼ合わねェし、勘繰ってくれって言ってるようなもんだろ」

「うぐ」

「ま、疑って悪かったよ。デービーバックファイトじゃ慌てふためいてたもんなァ」

「うわァ、嫌な言い方」

 

 

 サンプルたちを眺めていれば、涙を流すガイコツの姿が一つ、消えていった。リオの視た未来がまた一つ、現実になったということだ。話がまとまったのだろうか。

 

 

「人生最大の幸福も、その逆の絶望も、私は色々知っている。私ほど『感情』に詳しい人間も他にいないと思うよ」

「だから観客気分が抜けねェと」

「そうかもね」

 

 

 囁いて、リオはそっと片手を伸ばした。その手は何にも触れない。まだ。

 

 

「ルフィは私を誘うよ。これは絶対だ」

 

 

 それなら、と続いたゾロの言葉に、リオは何も答えられなかった。

 

 

「それなら、ただ待ってりゃ良かっただろうが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんた、やっぱりどこかで見たことあると思ったけど、狂犬メルリオールよね!?」

「嗚呼、ローラってやっぱりシャーロット・ローラか」

 

 

 字面だけで頭が痛くなってきた。まァ、リオに『痛がる』という機能は無いので、ものの例えだが。

 

 

 2日程してゾロも動き回れるようになり、ブルックの仲間の墓も作り終えた頃、一味は今度こそ魚人島に向けて出航することが決まった。

 スリラーバークの被害者たちはブルックの船を使って他の島を目指すという。

 

 

 ナミと仲良くなったローラが、母のものだというビブルカードを渡しているところを覗き込めばこの反応。リオの方もなんとなく引っかかるものがあったので納得だ。

 

 

「知り合いなの?」

「いや、面識はないはず」

「どっちかって言うと、うちのに……」

「あーはいはい。思い出させないで。ま、でもそのビブルカードの持ち主、ローラの母親は有名だからね。彼女のビブルカードなら役に立つこともあると思うよ」

「へえ、そうなの。というかリオ、あんたも新世界に行ったことあるの!?」

「あるというか、海軍時代はほぼそっちにいたというか」

「メルリオールって言ったらほんと凄かったのよ! 海軍被撃墜数不動のトップ! 海賊に沈められた軍艦は数知れず!」

「うわァ不名誉な称号バラされたァ」

「リオ……」

 

 

 とんでもない暴露だ。しかも事実。

 

 

「それなのに全くめげずに新世界の海を泳いで向かってくるんだから、狂犬なんてあだ名がついたって聞いたわ!」

「あーうん、間違ってない……」

「あんたやっぱり昔からちょっとおかしかったのね……」

「そういや、エースとも知り合いだったしな」

 

 

 言いながら、ルフィは麦わら帽子に挟んでいたエースのビブルカードを取り出した。

 

 

「さっきの話聞いてて思い出したけど、これって同じやつだよな」

「あ、そう! あたしも同じこと思ってた。エースにもらってたやつよね?」

 

 

 ずい、と差し出したルフィの手元を見て、ローラをはじめビブルカードを知る人間の顔が青ざめていく。

 

 

 ビブルカード、別名命の紙。

 

 

 今にも燃え尽きようとしているその紙は、エースの命の危機を伝えていた。

 

 

 

 

 

 





そろそろ導入も終わり、次あたりからほんへです。
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