未来が視える元海兵が麦わらの一味について行く話   作:テロン

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暫くリオが本筋に関わることはありません。悩みましたがウイスキーピークとリトルガーデンはばっさりカットしています。
寝てるか甲板掃除してるかなので脳内で補完していただきたく。


※しょうもない誤字をしていたようで、報告して下さった方ありがとうございます!
自分だとどうしても見つけられないので助かります。


冬島とコーヒー

 

 

 

「で?」

 

 

 と正座させられてるのは、この度海軍歴の露呈したリオだ。

 

 

 凪の帯に迷い込むというアクシデントを超え、リヴァースマウンテンを駆け上った一行は、クジラの腹での出会いを経て休憩を取っていた。

 

 

「誰が忠犬だって?」

 

 

 腕を組んだナミが怒ってるのは、リオの見聞色によれば経歴自体ではなく黙っていたことについてのようだったので、申し開きをしようにも開くものがない。黙っていたのは相手が海賊だったからその方が良いかな、というくらいで大半は何となく、で済む理由なのだ。

 

 

「いや〜政府の、なんちゃって〜」

「海賊がいなくて安全な島っていうのは?」

「海軍本部マリンフォードですね」

「ほらあ!」

「でも辞めたんだろ?」

 

 

 はい、とサンジが紅茶をサーブした。双子岬の地面の上に正座中のリオのため綺麗なランチョンマットを敷いて、さもお茶会のような有様だ。

 

 

「そういう事じゃないのよ、サンジくん。海軍准将なんて、上から数えた方が早いじゃないの! ルフィに賞金ついちゃったし、お尋ね者なのよ、あたしたちは」

最弱の海(イースト・ブルー)ならともかく偉大なる航路(グランドライン)に入ったし、3000万なら海軍もそこまで目くじら立てないと思うけどね」

「何言ってんの、3000万ベリーって大金よ!? それにリオあなた、ローグタウンで海軍時代の知り合いに顔見られたんでしょ。准将クラスが海賊になったって知られたら、一体いくらの懸賞金がつくか!」

「多分大丈夫だと思うけどなあ。見習いだし」

 

 

 ずそ、とサンジの淹れてくれた紅茶を啜る。コーヒー派だったが、鞍替えしてもいいくらい美味しい。

 

 

「役職は関係ないでしょうが!」

「う。でもでも、ルフィは私を降ろさないよね!?」

 

 

 口いっぱいにものを詰めたルフィは、訴えかけるようなリオの目線にふごふごと何事かを答えた。全く聞き取れないが、多分「そんなわけないだろ! お前はうちの大事な見習いだ!」と言っているに違いない。

 

 

「そうそう、そうだよね! 大事な見習いだもんね!」

「言ってねェけどな」

「う」

「でも、なんで辞めたんだ?」

 

 

 骨ごと料理を飲み込んだルフィに、ウソップがそれもそうだと頷く。

 

 

「准将なんて高給取りだろ。出世コースだ」

「そうよ。リオってあたしよりは年上だろうけど、まだ若いしスピード出世なんじゃない?」

「うーん、私の出世って内部の細々とした事情つきだから、実際の階級だと中佐くらいだよ。スモーカーと同じくらい」

「あのモクモクなら、大佐って呼ばれてなかったか?」

「あれ、出世したんだ。まあ佐官も人数かなりいるし、把握できてないや」

 

 

 サンジの言葉に何度か任務を共にした跳ねっ返りの部下を思い出す。まあ部下と言ってもその時リオに指揮権があった訳じゃないし、直接会話したことも殆どないけど。

 

 

「まあ、東の海(イースト・ブルー)にいたのは一身上の都合、かなー。音楽性の違い、みたいなやつ」

 

 

 隠居先に東をおすすめされたから引っ越したのだ、と言えば一同が顔を見合わせた。

 

 

「そんなバンドみてェな……」

「一応聞くけど、あたしたちを海兵に引き渡そうなんて思ってないのよね?」

「それなら偉大なる航路(グランドライン)に入っちゃう前にスモーカーに引き渡してるよ」

 

 

 それもそうね、と頷いたナミはようやくリオに「正座崩してもいいわよ」とお達しをした。

 

 

「一応、軍事機密に相当することもあるから海軍内部のことはあまり喋らないでおくね。基本的な事なら答えられるけど、お互い余計な罪状は増やさない方がいいでしょ?」

「そうね。でも、記録指針(ログポース)のことも知ってたんじゃないの。早く教えてくれたら良かったのに」

 

 

 記録指針(ログポース)はガラス玉の中に、特殊な磁気を記録する針が吊るされているアイテムだ。羅針盤があてにならない偉大なる航路(グランドライン)を航海する上で必須級のアイテムであり、これがないとまずまともな航海ができない。知っていて共有していなかったという罪もあって、リオは正座させられていたのだ。

 

 

「言ってもしょうがないよ。私は持ってないし、東の海じゃあ手に入れられない。偉大なる航路(グランドライン)に入った海賊たちは漂流しながらまず記録指針(ログポース)の奪い合いを始めるんだ」

「じゃあ私たちは安全に航海を始められるってことね」

 

 

 腕につけた記録指針(ログポース)を撫でたナミに、つい、と海の方を見やる。何か上がってきそうだ。

 暫くの冒険の顛末をなんとなく察して、リオは一気に紅茶を飲み干した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ウイスキーピーク、リトルガーデンと経て、一味は新しい仲間──ビビという。正式なクルーではないから、リオと似たポジションだ──を加えることとなった。

 

 ウイスキーピークでリオは心の中でゾロを応援しながら空気を読んで狸寝入りを決め込んでいたし、リトルガーデンでは甲板をピカピカに磨いていたので、このビビという子がどういう人で何を抱えているのか、あんまり理解をしていない。ただしリオには未来視があるため、訳知り顔で相槌を打つことができた。

 

 

 ちなみに、仮にも海兵であったリオの苦手分野は団体行動である。

 

 

 それはさておき、リオは今メリー号の見張り台で夜を明かしていた。当面の目標はビビの望み通りアラバスタ王国を巡る陰謀の解決となるが、航海士であるナミが熱病に倒れ、医者を探しての航海中なのだ。

 

 

 従軍経験から、一味の中で最も海に詳しいリオが代理の航海士を務めながら、今晩の寝ずの番をしている。他の皆はナミを心配して、彼女の部屋で雑魚寝だ。

 正航海士を欠いた状態での夜間航海は危険を極めるが、今は少しでも医者のいる島に近付くためにと、深夜を回るまではリオの判断で様子をみつつ船を進めていた。

 

 

 それも限界が来て、今は錨を下ろして停泊している。冬島の圏内に入ったからか、しんしんと降り積もる雪は些細な音なら全て吸ってしまいそうだ。雪はともかく、リオは寒いのは苦手である。

 

 

「さて、と」

 

 

 暇つぶしに月明かりで眺めていた新聞を閉じた。ナミがいない間、せっせと新聞を買って世界情勢を眺めるのもリオの仕事だ。それに、懐かしい顔ぶれが並んでいたりとなかなか面白い情報も多い。見るだけで頭痛がしてくる顔もあるが、なるべく見ないようにしていれば問題ない。

 

 

 懐から電伝虫を取り出し、頭を何度か小突いて起こす。東の海からずっと放置していたから、急に呼び出されて目がしぱしぱしていた。

 

 

 3秒待って覚醒した頃、プルプルプル、と体を震わせて通信を知らせる。

 受話器を取って「もしもし」と応答すれば、聞き慣れた声が届いた。

 

 

『……オ…………か?』

「あ、お父さん? 丁度良かった。近いうちにマリンフォードが戦場になるよ。色々備えておいた方が良いんじゃない?」

 

 

 電波が悪いのか、声が途切れ途切れだ。こちらの声はちゃんと届いているのか、了承の声だけははっきりと聞こえた。まあ、聞こえていなくてもさして問題はない。

 

 

『それは…………い…………なかっ……』

「そう。私の占い! だから絶対だよ。絶対に起きる。なんてったってこの私が、忠実なる忠犬だからね!」

 

 

 ワン、と鳴いて受話器を置いた。

 定期連絡がないから寂しくなったのだろう。ついでにいつもの通り占いを伝えておく。

 

 

 元の通りに電伝虫を仕舞うと、甲板にカツカツと人が出てきた。サンジだ。

 さっきまでぐっすり眠っていたようだが、彼は一味の中では一番朝が早い。

 

 

「リオさん、寒くないかい?」

 

 

 代わるよ、と下から声がかかる。

 

 

「大丈夫だよ、これくらい。慣れてるし」

 

 

 言いながらも甲板へ飛び降りたのは、サンジが湯気のたつコップを片手にしていたからだ。流石に片手で見張り台まで登ってもらうのは忍びない。

 

 

「おっと、お転婆だな」

「私のが年上なのに」

「レディはいつだって少女のままさ」

 

 

 はい、と差し出されたのは匂いからしてホットコーヒーだろうか。

 ありがとう、と言って口に含めばサンジは困ったように眉根を寄せた。

 

 

「どうかした?」

「いや。そうだ、リオさんは好きな料理はある?」

「ん? そうだなァ、シチューとか?」

 

 

 いきなりどうしたんだろ、と首を傾げる。サンジの料理はどれも美味しいけれど、今は体が冷えるから温かいものが食べたいかもしれない。

 

 

「リオさんはさ」

 

 

 言いながら、サンジはチラリと後ろを振り返った。ナミや皆のいる船室の方だ。

 

 

「一番年上だからとか、見習いだからって自分を押さえつけてないかい」

 

 

 優しい言い方だ。まだ煙草を咥えていないのに、外気温との差で白い煙が吐かれた。

 

 

「別に、そんなことないよ? 心配してくれてありがとう」

「……今度クソ美味いシチューを作るよ」

「うん。楽しみにしてる。ナミの様子はどう?」

「相変わらず、熱は下がらねえ」

「そう。こっちは相変わらずだね。気候は安定してるように思うけど、偉大なる航路(グランドライン)じゃ油断は出来ないから」

 

 

 そうか、と頷いたサンジにまだ熱の残るコップを抱えさせて、船室に戻るように促した。もう直ぐ夜も明けて朝食の時間だ。働き者のコックは仕込み前に少しでも休んでもらわねば。

 

 

「そうだリオさん、さっき誰かと話してなかった?」

「あれ、聞こえてた?」

 

 

 内容までは、と首を振るサンジに懐から取り出した電伝虫を見せる。

 

 

「父からかかってきたの。島を出たこと伝えてなかったから、驚いたみたい」

「お父さん? あの島にいたんじゃなかったのか」

「やだな、この歳まで一緒に暮らしてないよ」

 

 

 曖昧に同意したサンジに、「たまに電伝虫で話してるの。私も偉大なる航路(グランドライン)に戻ってきたから、そのうち皆に紹介できるかもね」と返した。

 

 

「娘が海兵から海賊に転身したって聞いたら驚いたんじゃないか?」

「そうでもないと思うよ。あの人も勝手な人だし」

 

 

 娘が何をしてようと、家族関係を理由には踏み込んでこない人だ。

 素気なく言ったリオに何を思ったのか、サンジは小さく笑ってずっと脇に抱えていたブランケットを差し出した。

 

 

「コーヒーのおかわりはいかが?」

「お願いしようかな」

 

 

 お任せを、と言って今度こそ船室に戻っていくサンジは、「お父様に会えたら、乗り込んだ海賊船で素敵な出会いがあったって紹介してくれよ」なんて言いながらキザったらしく手を振ってみせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「リオはどうする?」

「うーん」

 

 

 言いながら、サンジに背負われているナミの顔を窺った。

 やっと見つけた島で手荒な歓迎を受けた一行は、村に案内するという男たちに従って、ナミを一刻も早く医者に見せようとしていた。

 典型的な冬島だ。年中雪に包まれた島はリオに上陸を躊躇わせるに充分だった。昔は雪が好きだった気もするが、さっきも言った通りリオは寒いのは苦手だ。

 

 

「私は船に残るよ。ナミをよろしくね」

「任せろ!」

「船は頼んだぜ、リオさん。こいつはあてにならねェから」

ワン!(イエス、サー!)

 

 

 いかんせんサンジが病人のナミを背負っているせいで殴りかかれないゾロが、目を見開いてサンジと睨み合いを始めた。

 

 

「ルフィ、皆には言ったけど、私も留守番しておくからね」

「ん? おう、任せた。ゾロ、頼むな」

「そういや、何か占いはねェのか?」

「私だって何でも視えるわけじゃないよ。でも、島内にいる私の姿はあんまり視えなかったから、こっちの方が上手く行くと思う」

 

 

 そうか、と頷いたウソップを送り出し、さっきまであれだけ怖がってたのに、と不思議な気分になった。得体の知れない化け物が怖いだけなんだろうか。

 

 

「さて、ゾロ。時間もあることだし、傷を見せてもらえる?」

 

 

 リトルガーデンで負った傷はリオの海軍時代の知識で簡単な応急処置をしているが、医療物資なんてものは殆ど持ってきていないので止血がせいぜいだ。

 

 

「もう治った」

「嘘だァ」

 

 

 しゃがんで足首を確認すれば、自分で勝手にしたのだろう縫い目が見えた。麻酔もないのによくやる。

 

 

「さて、心頭滅却、寒中水泳でもやろうかね」

「ええ……?」

 

 

 よく言う、とゾロへと視線を上げながら思案する。

 

 

「まあ、君はそうしてた方が結果上手く行くんだろうね」

「なんだ、未来はいつも見えてるわけじゃないのか」

「まあね。『ちょっと先を視る』方は余っ程の危機でもなければオンオフ切り替え式みたいなものだし、些細なことでよく変わる。腕を上げる、とか刀を振り下ろす、とか一手先の動作が見えるだけで、前やってみせたように会話の先まで読むのは普段してないよ。そのまま話した方が手っ取り早いし。『占い』の方は私にもあまり制御出来ないんだけど、トリガーもしっかりあるから全部ってわけじゃないね」

「一手先が分かるだけで戦闘じゃかなりのアドバンテージだがな」

「試してみる?」

 

 

 ふむ、とゾロの視線がリオを見下ろした。

 煽るように首を傾げてみせるも、ゾロはあっさりと頭を振った。

 

 

「やめだやめ。おれはちょっと行ってくる」

「は〜い」

 

 

 手を振って飛び込んでいくのを見送って、船内に残ったカルーを呼び寄せる。この子も一体何なんだろう。ビビのペットらしいが、ガチョウでもないし、アヒルでもないし。

 

 

「ドラム王国……うーん、世界政府加盟国かぁ。アラバスタもそうだし」

「クエ?」

「ううん、なんでも。さて、仲間が増えるみたいだ。マスコット系……。君の地位も脅かされるかもね?」

 

 

 

 

 

 

 

 宣言通り島に一歩も立ち入らなかったリオは、最終的に船内に一人になりながらも船番の職務を全うした。ゾロは酷い方向音痴のようで、上手く行きそうなので放っておいたが、自力じゃ真っ直ぐ船には戻れないらしかった。

 

 

「ワポルのやつ、今度は船に手を出さなかったんだな」

 

 

 新たな仲間、チョッパーを加えての宴会もルフィの就寝によって終わりを迎え、寝る前にとウソップが船の見回りをしている。

 

 

「ワポル?」

「ああ、島に上陸してたみたいだ。メリー号を見かけたらまた食っちまったんじゃねェかって心配したんだよ」

「ああ、それっぽいのはきたけど、適当に海に沈めちゃった。あれワポルの部下だったのかな」

「おおう、頼もしいな」

「カルーがゾロを追ったと思ったら凍りついちゃっててさ。引き上げてる時だったからよく顔も見なかったや」

 

 

 実際、とウソップがあくび混じりに言った。

 

 

「眠いなら寝ちゃいなよ。今日はゾロが不寝番やってくれるみたいだから」

「そうするが、ちょっと気になってな。リオって実際どんくらい強いんだ?」

「強さかあ、どうだろうね?」

「元准将だろ? ルフィより強かったりするのか?」

「そもそもルフィやみんなの強さをあまり知らないかな」

 

 

 ここまで大して苦戦してないみたいだし、と言えば納得したのか腕を組んだ。

 

 

「確かにな。でも、ローグタウンでルフィやサンジは大佐に歯がたたなかったらしい。准将ってのはその一つ上だろ?」

「んー、階級がそのまま強さに繋がるわけじゃないし、あれは多分相性も大きいんだけどね。ルフィがボコボコにできる大佐もいると思うよ」

「そういうもんか」

「うん。私は戦闘力を買われて昇進したわけじゃないからさ。普通に海賊に負けて取り逃がしたことも何度もあったよ」

「ふーん」

 

 

 リオの言葉に何を思ったのか、ウソップは大欠伸を漏らして立ち上がった。

 

 

「寝るの?」

「おー」

 

 

 単に眠気で頭が回っていないだけかもしれない。よたよたと船室に向かうのを見送って、リオはこっちの会話を聞いていただろう人物に向き直った。

 

 

「お前も寝ろよ」

「みんなと違って、私は今日何もしてないもん」

「ワポルの部下を倒したんだろ?」

「あの程度、身体を動かしたうちに入らないよ」

「言うなァ」

 

 

 で、とゾロが残った酒を流し込みながらクツリと笑う。

 

 

「その逃した海賊の懸賞金はどんくらいだ?」

「懸賞金?」

 

 

 はてどうだっけな、と1、2、3と指を折ってから、ふと眉を顰めた。

 

 

「……それ、個々人の話? それとも海賊団の総額の話?」

 

 

 わはは、と大口を開けて笑う声を肴に、今日も夜が更けていった。

 

 

 






この時まだルフィしか手配されてません。懐かしいですね。
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