未来が視える元海兵が麦わらの一味について行く話   作:テロン

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今日2話投稿なのでご注意下さい。
次章の導入なので、かなり短いです。






シャボンと旅立ちの島

 

 

 

 

 サングラスよし、イヤーマフよし。視界真っ暗、無音の世界!

 

 

「ぶ」

 

 

 シャボン玉に頭から突っ込んで、リオは慌てて顔の周りを叩いた。パチンと割れた膜が顔にへばりつく。もう、格好つかないな。

 

 

「おいリオ、何してんだ早く行くぞ!」

「待ってよルフィ! ねえこのマント、本当に黒なの? 白くない?」

「おう! レイリーが黒って言ってたから黒だろ!」

「笑ってたじゃんあの人!」

 

 

 2年前、ルフィと共に海軍本部に殴り込みをかけたリオは、再出発を2年後にすると聞いて一旦彼の元を離れた。たまにルフィの様子を見ながらも海を巡り自分なりに修行をして、少しは強くなったと思う。

 

 

 一度七武海になったローがリオのビブルカードを頼りにやってきて、サングラスとイヤーマフを渡してきた。彼なりの『オペ』ということらしい。

 当時のリオが見た限りでは、薄くオレンジの入ったサングラスと、両耳部分を頭の後ろの細いバンドがつなげる黒いイヤーマフだった。

 サングラスはリオ側の視界を完全に遮断するけれど、向こうからは普通に見えるらしい。言わずもがな、イヤーマフは遮音性に特化したもので、どちらも頑丈かつ柔軟な素材で出来ていて寝たままでもつけられる。

 

 

 海軍科学部の天才ベガパンクが片手間に作ったもので、リオの『目と耳を潰す』秘密兵器だ。七武海の特権だ、と笑ったローだが、どういう経路で要請が通ったのかは想像に難くない。

 その()()を伝ってメルリオールの『凪』と、よく研がれた名刀が一本、それから小さな赤い石がおまけについてきた。

 

 

 一刀と一挺は今もリオの両腰に治まっていて、赤い石を通した髪ゴムは右の横髪だけを伸ばしたリオの髪を結わえている。

 

 

 視覚と聴覚を制限したリオは、未来を視ることはない。発達した見聞色で常人と同じように暮らしながら、読めない新聞を大量に抱えて途方に暮れていた。

 

 

 なんて話はともかく、ローの言った通り、少しずつ自分と向き合って、心もちゃんと戻ってきている。

 強くなったのはその辺りも関係あるかもしれない。覇気は意志の力で、今のリオには自分の意志がある。

 

 

「あ、こらルフィ、荷物大きいんだからぶつからないようにね」

 

 

 ついでに、と意地悪くもリオがサングラスをしてから渡されたマントをリオは律儀に纏っているが、誰も色を教えてくれないのだ。白だったらあんまりにも未練がましくないだろうか?

 

 

 大荷物を抱えて歩くルフィの手を引いて、リオはシャボンディ諸島の周辺に意識を向けた。九蛇の船は有らん限りの贈り物をルフィにして、先に上陸して待っていたリオは彼の背負ったリュックに呆れたばかりだ。

 

 

「おう、さっきもぶつけちまったんだよなァ」

「エェ、目を離した隙に……。ちょっと、変なトラブルは起こさないようにね?」

 

 

 ここ海兵多いんだから、と続けていると、ルフィがいきなり立ち止まった。

 

 

「何?」

「いや。……お前ら、ゾロとサンジか?」

「はァ?」

 

 

 どこ? と首を傾げるも、ルフィの近くに立っているのは知らない気配だ。

 

 

「あ? お前麦わらの一味の知り合いか?」

「なんだよお前ら、2年で顔変わったか?」

「え、え?」

 

 

 何を言ってるんだか、と状況が読めないでいるうちにルフィは知らない二人組に着いて歩き出してしまった。向かう先は、何やら人混みの中のようだ。

 

 

「なになに、ルフィ、あいつら変なこと言ってない?」

「あ、あいつさっきぶつかったやつだ!」

「ほらァなんか恨み買っちゃったんじゃん!」

 

 

 舞台の上のようなところにルフィが連れていかれ、リオは無視される。なんでだ。

 知り合いもいないし、全部倒しちゃっていいのかな、と思っていれば後ろの方からまた大勢の気配が駆け寄ってきた。

 

 

「そこまでだァ、海賊共! 麦わらのルフィ及びその子分共、大人しく投降しろ!!」

 

 

 海軍だ。

 

 

「ちょっとォルフィ、絶対なんかしたでしょ。バレてるじゃん」

「おれよりリオの方が先に着いただろ?」

「私はマント黒にしたからバレないよ!」

 

 

 よいせ、と舞台に上がりながら言えば、ルフィは「あァ、内側はな」と頷いた後、露骨に「ヤベッ」と口を押さえた。

 

 

「やっぱ白いんじゃん!」

「いいだろ、リオといえば白マントだし」

「リオじゃなくて、メルリオールが白マントなの!!」

「どっちでも同じだろ」

「もう海兵じゃないって言ってるでしょ!!」

 

 

 ぽこぽこと何度か頭を殴って、リオは腰から刀を抜いた。機械音と巨大な気配は、パシフィスタのそれだろう。

 

 

 リオはこの2年、各地を回りながら義賊のようなことをしていた。ロシナンテの言葉を、今度こそ自分なりに消化するための行いだ。当然ながら海軍に見つかって今度こそちゃんとした手配書が出回り、今では立派なお尋ね者だ。海兵とも完全に敵対している。

 

 

「手前にいるのって戦桃丸じゃない?」

「ん? ああ、まさかりの!」

「戦ちゃーん! 久しぶり!!」

「あ? おいこらお前ッ! リオ! この駄犬が! 何やっとんじゃァ!!」

 

 

 懐かしいなァ、と笑うルフィはパシフィスタのビームを飛んで避け、リオに山のようなリュックを投げ渡した。

 

 

「弁当持っててくれ!」

「前が見えない……まァ、元から見えてないんだけど!」

 

 

 続く二射目を反射させるように斬り返し、リオはルフィの後に続いて飛んだ。広場の海賊たちが吹き飛んでいるが、パシフィスタはルフィが一撃で壊したようだ。

 

 

「戦ちゃんは大丈夫だろうけど、ここに集まった海賊たちって大丈夫なのかな? 麦わらって言われてるってことはルフィのファンなんじゃないの?」

「そうか? おれの知らねェ奴らだけどな」

「うーん、確かに! まァ戦ちゃんなら悪いようにはしないでしょ」

「よし、じゃあいくぞ、リオ!」

「うん!」

 

 

 頷いて駆け寄れば、ダダ、と前方から今度こそ見知った気配がした。

 

 

「おいルフィ〜!」

「と、隣にいるのはもしかして……!」

「あ〜〜〜! ゾロ! サンジ!」

「わ、本物だァ!」

 

 

 何故か顎を外して驚いているサンジを余所に、ゾロが割って入ったパシフィスタを斬り壊した。恐ろしく技が冴えている。覇気も乗っていて、随分と強くなったようだ。

 

 

「おいルフィ、お前は9番だぞ。それから……」

 

 

 ゾロの視線がリオに向く。リュックをルフィに投げ返し、リオは背筋をピンと伸ばした。

 

 

「正確には私が9番、ルフィが10番のビリっけつです……!」

「そうか」

 

 

 ニッと笑って、ゾロは「オラ行くぞ」と走り出した。

 

 

「うん! サンジも……サンジ? どうかした?」

「美、美女……生の……」

「ダメだこりゃ、ゾロちょっと拾ってって!」

「捨てておけ!」

「エーン」

 

 

 サンジの服を掴んで引きずりながら走る。ルフィは少し立ち止まって、後ろに見えたレイリーに手を振っていた。随分と頼もしい見送りだ。

 

 

「レイリー! おれはやるぞ!」

 

 

 叫ぶ言葉に、リオたちは自然と立ち止まっていた。船長の言葉だ、聞かないわけが無い。

 

 

「海賊王に! おれはなるっ!!」

 

 

 2年の空白を経て。これから、リオにとっては初めての冒険が始まるのだ。

 





ということで、視覚&聴覚封印で二年後編スタートです。暫くは初期と同じのんびりスタイルに戻ります。多少の緩急はあれど、もうシリアスもないんじゃないかなと思われます。


『未来が視える元海兵が麦わらの一味に着いていく話』、ようやく『元海兵』になりました。未来は視えなくなりましたが……。


第二部はこれまでとは少し毛色の違う話になっていきます。まだ概要欄の「恋愛する話です」を回収してないので。元々そこがやりたくて始めた話だったんだけどなぁ。
流石にここまでで恋愛のかほりを感じ取った猛者はいないと思うんですが、頑張れば嗅げるとは思います。
頂上戦争をがっつりやったのは、ある人と出会うきっかけ&関係を築く理由&ある場所に居合わせる動機のためにオリ主に渡した設定の一つが原因です。


ワンピって言ったら愛の話だよなあ!?のテンションで舵を切ります。
改めて、よろしくお願いします。

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