未来が視える元海兵が麦わらの一味について行く話   作:テロン

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夢を叶えるための夢
深海とサンゴと海賊旗


 

 

 

 

 自由に生きること。

 夢を持つこと。

 

 これらはきっと、同じ意味だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと、皆さん、オヒサシブリです」

「なんでカタコトなのよ」

 

 

 腰に両手を当てたナミが土下座体勢のリオの顔を覗き込んだ。

 海軍に追い立てられるように海中に出航したサニー号の上で、リオは非常に気まずい思いをしていた。

 

 

 ゾロ相手は急いでいたからともかく──サンジは論外。ほかの一味のみんなとは、リオが思いっきり裏切って以来の再会となる。恨み言の一つや二つ向けられて当然だ。なんなら、船を降りろと言われるかもしれない。

 

 

「降りないけど。降りないけど……!」

 

 

 小さく呟いたリオの頭を軽く叩いて、ナミは「ルフィが連れてきたんなら文句ないわよ」と快活に笑った。

 

 

「はい……その節は大変ご迷惑をおかけしました。麦わら一味『見習い』、改めてよろしくお願いします!」

「今度はちゃんと乗ったんでしょ? 懸賞金5億6470万ベリー、『白鳴(はくめい)のメルリオール』さん?」

「わ、バレてる……」

 

 

 ペラ、と顔の横に紙──おそらくリオの手配書をちらつかせ、ナミは「随分と派手にやったのね」と呟いた。

 

 

 後ろで様子を見ていた一味のみんながワラワラと手配書を覗き込み、「おれもこれ見たぜ!」だとか、「いい笑顔ね」だとか好き勝手言ってる。

 

 

「これ、おれ達もメルリオールって呼んだ方がいいのか? 本名なんだろ?」

「一応本名はリオの方なんだ。まァ、メルリオールって呼びたいならそれでもいいけど」

「じゃあリオでいいな、分かりやすい」

「え、リオお前おれより懸賞金高くなってんのか!?」

「あ! ダメダメ、うそうそ!」

 

 

 にゅん、と伸びてきたルフィの腕が手配書を持って行こうとするので、リオは慌てて手配書に飛びついた。けれど、ヒラリと躱されてルフィの手に渡る。

 

 

「一、二、三、四……ほんとだ! 何で言わねェんだよ!」

「エーン、だって私今手配書読めないし……金額知ったの今だし……楽園でしか活動してない割にだいぶ厳つい金額ついてるな……機密情報の塊だからかな」

「あ、そっか。じゃあ仕方ねェな!」

「読めない?」

 

 

 食いついたロビンに、リオは素直に頷いた。

 

 

「今私、目が見えないの!」

「目が?」

「そのメガネが変なんだよ」

 

 

 そうそう、と頷いてリオはサングラスの留め具を外した。簡単には外せないような作りになっているが、手順を知っていれば問題ない。

 

 

「はい、覗いてみれば分かると思う」

 

 

 説明するよりは早い、と自前で目を瞑ってサングラスを差し出す。受け取ったロビンはすぐに「そういうこと」と頷いた。

 

 

「おれにも見せてくれ!」

「ほう、前が見えないようになってるのか。つけた状態だと分からねェな」

「へェ、器用なことすんなァ」

 

 

 返して、と差し出した手にロビンがウソップから受け取ったサングラスを乗せた。

 

 

「もしかして、そのイヤーマフも?」

「うん、聞こえないようにしてる」

 

 

 サングラスをかけてようやく目を開けたリオは、トントン、とイヤーマフを叩いて頷く。

 

 

「私もこの2年で覇気について知ったのだけど、その状態で会話が出来ているのは見聞色によるものでいいのかしら」

「そうだね。日常生活は何とかやれてるよ」

「スゲェよなァ」

 

 

 もう慣れているルフィはそう言いながら、ハンコックからの弁当を開けた。美味しそうな匂いはするが、何が入っているんだろうか。

 

 

「他人事じゃないんだからね、ルフィ。新世界に行ったら、私と同レベルの見聞色使いがごまんと……はいないけど、少なくとも一人はいるんだから!」

「前も言ってたよな。そんなスゲェなら会ってみてェなァ」

「私は絶対会いたくない!!」

 

 

 思わず叫んだリオに、ルフィは楽しそうに笑っていた。友達に会うんじゃないんだぞ。

 

 

「近くにいたら紹介してくれよな」

「ウ……。ハイ……。所詮私は君の忠犬ですよ、ワンワン……じゃなかった、君の船のクルーだからね」

 

 

 早いところ、新世界の要注意人物講座百選をみんなに叩き込んだ方が良いかもしれない。ルフィは聞いてくれないけど、ナミ辺りがぶん殴ってくれたら止まるかもしれないし。

 

 

「あ、でも新世界における注意事項百選はハンコックに手伝ってもらって作ったから今から読み上げます!」

「は?」

「ウソップが!」

「おれか!?」

「だって私文字読めないもん」

 

 

 懐からシャキーンと分厚い冊子を取り出したリオに対して、ロビンが「それで」と話を戻した。

 

 

「あ、ハイ。なんでしょう」

「理由は『占い』……いえ、未来視を封じるため、かしら」

「うん。今は治療の第一段階、って感じで全部塞いでるけど、ゆくゆくは外せるようになるかもって」

「誰が言ったの?」

「トラ男だぞ!」

 

 

 誰だそれ? と首を傾げたみんなに、リオは特に補足することなく「レイリーも同じ意見だってさ。まあ、外すつもりはないけれど」と続けた。

 

 

「というか、リオおめェ、この2年ルフィと一緒にいたのか?」

「ずっとじゃないけど、そうだね。頂上戦争のあと少しは私も療養してたし」

「新聞見たぞ! ルフィの後ろに写ってた!」

「うんうん。治ってからは手配書の通り、色々回ったりルフィの修行の様子を見たりしてたよ」

「目が見えてないってことは記録指針(ログ・ポース)も見えないってことよね? どうやって旅をしていたの?」

「漂流……?」

偉大なる航路(グランドライン)を!?」

「うん。でもホラ」

 

 

 ポケットから何枚かのビブルカードを収めた小さなケースが連なっている道具を取り出した。

 

 

「女ヶ島とシャボンディの場所はこれで」

「ビブルカードね、なるほど」

「他にも何枚かあるようだけど?」

「私のだったり、あとは……うーん、ナイショ!」

 

 

 へへ、と笑ってリオは隠すようにケースを仕舞った。

 

 

「ともかく、今は魚人島でしょ? 海の中の航海なんて初めて!」

 

 

 両手を広げて大きく息を吸ったリオは、はたと気付いて表情を固めた。

 

 

「あ、見えないから景色が分かんない! どうしよう!!」

 

 

 

 

 

 

 

「魚が一匹、魚が二匹」

「クジラだ! リオ、あそこにデッケェクジラがいるぞ!」

「どこどこ!?」

 

 

 チョッパーの腕の先を触って確かめて、見えないけれど目を凝らす。

 

 

「どのくらい大きいの? サニー号より?」

「もっとだ! サニーの何倍も大きい!」

「わー!」

 

 

 パチパチと手を鳴らしたリオに、隣で見えるものを全て報告させられていたゾロが「声が聞こえてんのにあんなデケェ魚が見えねェわけねェだろ」と呟いた。なんてことを言うんだ。

 

 

「え、リオにも見えてたのか?」

「チョッパーが教えてくれたからね! 方向がわかれば何かいるなーってのはなんとか。ちょっとゾロ! 君もチョッパーを見習って! 色とか模様とか、他にもあるでしょ!?」

「黒だぞリオ! 真っ黒なクジラだ!」

「うんうん」

「泡が一つ」

「コラ!」

 

 

 怒鳴り散らして威嚇するように横に置いていた刀を持ち上げると、「そういえば」とゾロの手が自分の刀を触った。

 

 

「刀を使うのか?」

「ん? まァ……ゾロも知ってる通り、私は剣士じゃないから上手くはないよ。一応この2年でレイリーにも手解きを受けたけど」

 

 

 それより、と力を込めて覇気を刀に流す。

 

 

「基本は覇気の伝達用かな。そういやゾロもさっき良い覇気だったよね。この先実戦でもっと磨かれてくと思うと楽しみだなァ」

「お前は2年前から覇気の存在を知って使ってたわけだ」

「あ。まあ、はい、うん」

 

 

 そういえばリオは覇気についてはボカした話しかして来なかった。それで自然系と戦わせていたのだから酷い話だ。

 

 

「別に怒っちゃいねェよ、あの時点じゃまだまだ雲の上の技術だった、教えたところで何も出来やしなかった。そうだろ?」

「どうかな。案外スルッと使えたのかもね。ま、世の中には覇気こそが全てを凌駕する、とか言ってるインチキおじさんとかがいるのも事実だ。要注意人物百選のNo.2ね。個人的にはゾロはもう一段階上まで行けるんじゃないかと思ってるよ」

「一段上? なんだ、お得意の占いはもう使わねェんだろ?」

「そう、だけど。こういうのは分かるもんだ、分かる人にはね」

 

 

 究極、白ひげたちがメルリオールを認めたのだって同じ理由だろう。あまり言って変に意識させるのも良くないのでむんと口を噤めば、反対側のチョッパーがリオの腰元をのぞきこんできた。

 

 

「刀が補助なら、こっちの銃がリオの本命の武器ってことなのか?」

「武器って意味ならそうかなァ。この銃、『凪』って言うんだけど、元々はあんまり使ってなくてさ」

「綺麗な銃だよな」

「でしょ? 今はそんなことしないけど、元は警告用の銃だったし、見てすぐわかった方がいいからね」

「警告?」

「そう。死相が出てますよ〜っていう」

「死相!? 怖いこと言うなよ!」

「まァまァ、もうしてないから。けど、この銃を持ってる時の私が一番強いんじゃないかな。銃だとやり過ぎちゃうから、人に向けることはあんましないけどね」

 

 

 銃というのは人を殺すための道具だ。生かすためにはあまり必要がない。とはいえリオの覇気を十全に使えるのはこちらというのは皮肉な話だ。

 軽く流して、リオは手に持ったまの刀を柄を握った。

 

 

「で、この刀は貰い物なんだ」

「おまッ!」

「ん?」

 

 

 少し抜いて見せれば、ゾロが前のめりになって覗き込んだ。

 

 

「誰から貰ったんだ、こりゃ相当な名刀だぞ?」

「そうなの?」

「あれま、いーい刀ですねェ」

 

 

 刀の話をしていたからか、横合いからブルックも覗き込んできた。そんなに良い刀なのか。

 

 

「お父さんからの餞別だけど」

「父親というと、あの海軍大将の?」

「そう」

「銘は?」

「さァ」

「お前な……」

 

 

 呆れたゾロに笑いながら、リオはブルックに「そんなわけで一刀流仲間だね」と片手を差し出した。

 

 

「ブルックとはスリラーバークでもほぼ話さなかったし、加入直後に裏切っちゃってあんまお互いをよく知らないよね。ルンバー海賊団、だったっけ?」

「おや、ご存知でしたか、元海兵のお嬢さん。随分と昔の話なんですがねェ……」

「私、発行されてる手配書は全部余さず見てるから、取り下げられてない限りは知ってるよ。骨格そのままだしね」

 

 

 流石にガイコツのまま海賊をやってる人間はリオも初めて見たけれど、ガイコツになっちゃった海賊ならチラホラ居るので、そういうのを見つけて身元を特定し、賞金を取り下げるのも海軍の仕事だ。

 

 

 そんなこんなでブルックと握手をしていると、船尾の方からドタドタとウソップが走ってきた。

 

 

「おいみんな! 後ろから船らしき影が!」

「船!?」

「こっちへ突っ込んでくる!」

 

 

 おや、とゾロから刀を受け取る。ゾロの方も素早く立ち上がって柄に手をかけた。

 

 

「海賊船かな? 殺気立ってる。雑魚だったらみんなが出るまでもないし、見習いの私が穏便に片付けてくるね。ちょっとシャボンを小さくしてあげれば逃げ出すでしょう」

 

 

 言うが早いか、ドン、と船が揺れた。コーティング船を押し付けられたようだ。

 シャボンを突き抜けて一人の海賊が乗り込んでくるが、入れ違いに船を引いていた海獣が一目散に離れていく。

 

 

 取り残された海賊は、一転孤立無援となって固まった。そう来たか。

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、お前シャボンディにいたか?」

 

 

 ルフィと一緒に、拘束されている海賊をツンツンと突く。本人はどうもすぐ抜け出せるとタカをくくっているみたいだが、あの意味のわからない集会に参加してるくらいならそんな大した海賊じゃないだろう。ルフィに対する敬意も感じないし。

 

 

「みんなコートでも羽織った方がいいわよ、ここから先寒くなるから」

「寒ィとこに行くのか? 深海じゃねェのか」

「バカヤロー深海の水は冷てェに決まってんじゃねェか!」

 

 

 なるほど、と頷いてリオは自分の荷物を探しに甲板を歩いた。いくらかは2年間船室に置きっ放しのはずだ。

 

 

「私が取りましょうか? どんなコートがいい?」

「ありがとうロビン。紺っぽいのなかったっけ」

「これね」

 

 

 着いてきてくれたロビンに礼を言い、マントを脱いでコートを着込んだ。マントはその上から羽織っておく。今はまだ少し暑いくらいだが、これからどんどん寒くなるだろう。

 

 

「頂上戦争のこと……少し聞いてもいいかしら?」

「うん」

 

 

 頷いて部屋を出る。みかんの木付近の手すりに寄りかかりながら、ロビンに「新聞だけじゃよく分からないよね」と笑った。

 

 

「そうね。でも事実を語らせたいんじゃないの。リオ、あなたがすごく自然な顔をするようになったから……素敵ね、って言いたいだけなのよ」

「ふふ。ありがとう」

 

 

 元々ね、と切り出す。

 

 

「白ひげ海賊団とは10年近くの付き合いで……もちろん、敵として、だけど。エースのことも、加入したときからずっと見てたの。ロビンは会ったことはないよね」

「ええ。少し話を聞いたくらい」

「エースは、私の弟みたいなもので……。あの子が親と仰いだ白ひげたちも、私のことを……多分、家族ではないけれど、身内のようには想ってくれてた。私もそう。けど、あの時の私はそれを分かってなかった」

 

 

 こんな風に彼らのことを語れるようになっただけでも、リオにとっては進歩なのだ。それを分かってか、ロビンはニッコリと微笑んだ。

 

 

「良い出会いだったのね」

「うん。結局、私は何も出来なかったけど……。今度はこの船で、自分の思うままに生きてみるよ」

 

 

 その為の装置だしね、とサングラスを指差して、「一応反対したけど、本当は目と耳潰しちゃおうか、みたいな話だったんだ」と言ってみる。

 

 

「その方が確実だし」

「あら、好きでその色のサングラスなのかと思ったわ」

「え?」

「大将黄猿と同じ色でしょう?」

「ああ」

 

 

 そういうことか、と頷いて、リオは伸ばした髪の先端部分を揺らした。

 

 

「上手くいってればこの先も黄色くなってるよね?」

「ええ。染めていたのよね」

「うん。こっちは自分でやったけど、サングラスの方は向こうが勝手に指定したんだと思うよ」

「それを作った人のことかしら」

「そう」

 

 

 ナイショ! とビブルカードを隠したリオを思い出したロビンは可笑しそうに笑って、リオは「歳をとるって荷物が増えるばっかで大変だよね」と舌を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 深海へ向かう海流を見つけたサニー号は、その先で待ち構えていたクラーケンをボコりに出て行ったルフィ、ゾロ、サンジと共に下降流に突っ込んでいた。

 およそ7,000メートルの深海。光の通らぬそこは海獣たちの住処だ。

 

 

「わー、チョッパー! さっきのクジラより大きくない!? 何色? どんな模様!?」

「暗くてなんも見えねェし、なんでそんな元気なんだ?」

 

 

 一人深海を楽しんでいたが、船は動いていく。逸れたルフィたちを探さないといけないし……。

 

 

「ん、樽型? いや……」

 

 

 船室近くへ移動し、ペシペシと転がっている樽を叩く。普通の樽だ。

 

 

「どうしたリオ?」

「フランキー、この樽多分さっきのやつが入ってるよ」

「何だと? 悪魔の実の能力者か?」

自然系(ロギア)かなァ」

 

 

 もう一回ペシペシと叩いて、樽はフランキーに預けた。出てこられないように封をしてくれるだろう。

 

 

 とはいえ海底は危険がたくさんだ。

 巨大なクラゲに深海魚、肉食チューブワーム、のっぺらガニ、へんな魚、アンコウ、海坊主まで。

 

 

「ねェ、海坊主ってどんな顔してるの?」

「あんたもいい加減にしなさいリオ!」

「待ってください、何か聞こえませんか……?」

 

 

 ブルックの言葉に振り返った一味は、一斉に「ゴースト(シップ)〜〜!?」と叫んだ。

 

 

「エー、見たァい!」

「あれは本物ですよ! あの帆を見てください! 有名な船『フライング・ダッチマン号』!」

「あの伝説の!? いいなァ、見たァ〜い!」

 

 

 万歳をしたリオは、序でに銃を抜いて巨大な気配──多分海坊主の方へ向けた。

 

 

「私にもコーティングやってよ! スリラーバークの時みたいに探検に行こう?」

 

 

 言って銃を撃とうとして、リオは隣から猛スピードで突っ込んでくる気配に首を傾げた。ルフィたちではあると思うけど、妙にデカい。

 

 

「うそ、クラーケン!?!?」

「そんなことなる?」

 

 

 

 

 

 

 なんやかんやでクラーケンを従えたルフィたちと合流し、海底火山の噴火から逃れ、海底一万メートルの深海、魚人島へ到達した。その際無理に突っ込んだせいで島のシャボンの中で見事に難破してしまったけれど。

 リオは咄嗟にルフィを掴んだが、水面に上がる頃には他のみんなの姿は見えなくなっていた。

 

 

「ルフィ、ルフィ〜!?」

「んあ……?」

「よかった、気がついたね!」

 

 

 思い切り水を飲んでいたようなので押し出してやればピューと水を吹き、しばらくしてようやく意識が戻った。

 

 

「リオか……みんなは?」

「ごめん、分からなくて……、魚人島にはついたと思うんだけど。うーん、ちょっと待ってね」

 

 

 言いながらイヤーマフに手をかけると、ルフィが慌てて「いい、それはいい!」と制止した。

 

 

「あいつらみんな強ェから大丈夫だ。それ取るとまた前みてェになっちまうんだろ?」

「ちょっとなら問題ないし、少し気配を探るだけだよ……。まァ、そう言うならやめておく」

 

 

 それなら、とあたりを見回す。人の気配を避けて水上に上がったが、近くには往来がありそうだ。殺伐とした気配も感じないし、逸れたみんなもそう危険な目には遭わないだろう。

 

 

「何が見える? 街の裏手なんじゃないかと思うんだけど」

「おお……サンゴの街だ!」

「サンゴ!? へェ、綺麗なんだろうなァ」

「これが魚人島か〜! よしリオ、みんなも探すけど、ジンベエにも会いに行こう! この島で会おうって約束しただろ?」

「うん。じゃあとりあえず、街の方へ行ってみようか。どこで会えるのか、誰かに聞いてみよう」

 

 

 立ち上がって、走り出すルフィを追いかけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すごい、魚人に人魚に……ほとんど人間はいないみたい」

「魚人島って観光スコップなんだろ?」

「スコ……? ああ、そうだね、観光スポットだと思うけど、人間の海賊が少ない……何かあったのかな」

「あ、オバハン人魚だ! 二股の!」

「コラ!」

 

 

 ペシンと頭を叩き、すぐにでもどこかへ走っていってしまいそうなルフィの腕を引いた。この人混みだと迷子になりかねない。それに、そろそろルフィが腹を空かせる頃だろう。兄弟共に食事には一直線なんだから、置いていかれたら堪らない。

 

 

「魚人島って深海だけど、明かりがあるってこと?」

「おう、なんか上が明るいぞ」

「上……?」

 

 

 魚人島についての話を小耳に挟んだことはあるのだけど、なんと言っていたっけ。

 

 

「なあリオ、建物に海賊旗があるぞ。なんでだ?」

「あー、どんなの?」

「うーん、黒い帽子で唇がでかくて、木が生えてる」

「げ、ビッグ・マム海賊団か。古傷が痛んできた……。えっとね、新世界だと世界政府の手が回ってない国は海賊が治安維持を担ってたりするんだよ。元々魚人島は白ひげのナワバリだったんだけど、今はマムの旗を借りてるんだね」

「白ひげのおっさんか!」

「にしても、よりによってビッグ・マムかァ……。手勢に鉢合わせなきゃいいんだけど」

「知ってるのか?」

「まァ……。そりゃ四皇だし。百選のNo.3ってとこかな。まァ私の偏見だから序列は気にしなくていいんだけど、個人的にあそこはなァ……」

 

 

 マムの名前を考えるだけで頭痛がしてきた。いや実際リオは今も生きていることから分かる通りマムと鉢合わせたことはないのだが、嫌な思い出はたくさんある。

 

 

「っと、もうこんな時間か。お昼にしよう」

「時間? まァ腹減ったしな」

「何か食べれそうなところはある? レストランとか」

「うーん……。あ! 向こうにカフェって書いてあるぞ!」

「じゃあそこに寄ろうか。ついでにみんなのことも聞いてみよう」

 

 

 先導に従って通りを進んでいく。絞っただけのマントが体にまとわりついて歩きにくいが、これだけ暖かければすぐに乾きそうだ。本当に、深海にあるとは思えない楽園のような島。

 

 

 ここがかつての白ひげの縄張りか、と道行く人々に意識を向けた。気配を探れば、彼らと同質の温かさを感じ取ることが出来る。

 白ひげの海賊旗は外されてしまったが、きっと固い絆で結ばれていたのだろう。なんて考えながら、リオは未知の冒険に胸を躍らせていた。

 

 






滅茶苦茶テンション高いですが、これは流石に対一味や一部の例外限定です。
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