未来が視える元海兵が麦わらの一味について行く話   作:テロン

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未来視と占い師

 

 

 

 

「いらっしゃいませ〜!」

 

 

 店に入った途端黄色い声で出迎えられ、リオは面食らった。

 

 

「カフェって言わなかった?」

「マーメイドカフェへようこそ〜♡」

「カフェだろ? おい、肉はあるか!?」

「二名様ご案内!」

 

 

 メニューをどうぞ、と渡されたのをルフィに横流しして読み上げてもらう。

 

 

「ワカメブリュレ、モズクタルト、コンブスフレ……おい、肉がねェぞ!」

「へんなメニューだね、さすが魚人島。私モズクタルトで!」

「は〜い♡ お連れ様はどうなさいますか? お肉なら貝のお肉がありますよ」

「ホタテサンドにシジミピザもおススメです!」

「それにしなよルフィ。ないものは仕方ないでしょ」

「貝は肉じゃねェ!」

「はいはい。すみません、ホタテサンドとシジミピザ二つずつ。あとコンブスフレもお願いします」

「かしこまりました〜♡」

「テンション高いな〜この店」

 

 

 語尾にハートを散らしてメニューを回収していくおそらく若い人魚たち。ここって、いわゆる『そういうお店』なのでは?

 だとしたら女のリオは大分場違いだ。

 

 

「ルフィ、機嫌直してよ。肉はまた後で探してあげるからさ」

「んー」

「海底なら海獣や海王類も多いでしょ。多分どこかにはあるよ」

 

 

 そういえば、とポケットからビブルカードのケースを取り出す。大抵は上を指しているだろうが、とそれぞれ触っていく。

 

 

「こっちが女ヶ島、これがシャボンディ、これが海軍本部で……。って事はやっぱ新世界か」

「誰のだ?」

()()()()()()()()って言ったでしょ?」

 

 

 少し濁したリオの言葉に、ルフィは「新世界の島だろ?」と返した。

 

 

「そう」

「リオの仕事」

「仕事言うな! 夢と言え!」

「行きたいと行かなきゃなんねェは違うだろ。で、どうせこの後行くんだし、それがどうかしたか?」

「その前に会っておけると楽な人がいるんだけど……まァ、運が良ければだね」

 

 

 ふうん、とあまり興味のなさそうなルフィの前に料理が運ばれてくる。

 

 

「お待たせしました!」

「お、これはこれで美味そうだな!」

「ありがとう。ついでに聞いてもいい?」

「ええ、なんでもどうぞ」

「魚人海賊団のジンベエと魚人島で会う約束をしているんだけど、どこにいるか分かる?」

「ジンベエ親分ですかァ?」

 

 

 困った、と人魚たちは首を傾げた。悪感情は感じないし、本当にただ困っているだけだろう。

 

 

「親分はホラ、七武海じゃなくなったでしょう? だから魚人島にはいられなくて、今はいないのよ」

「えっ、ジンベエには会えないのか!」

「そうか、魚人島も世界政府加盟国だしねェ」

「私たちもどこにいるか分からないけど、会いたいならマダムに聞いてみるといいわよ」

「マダム?」

 

 

 ええ、と頷いて恐らく店の奥を示す。

 

 

「マダム・シャーリー。この店のオーナーよ。マダムの占いは百発百中なの」

「占い……」

「ヘー、リオみたいな奴が他にもいんのか?」

「あら、お客さんも占いができるの?」

「まァ……」

 

 

 ゲシ、と机の下でルフィの足を蹴り飛ばした。あれほどリオの未来視のことを吹聴するなと言ったのに。

 

 

「イテッ!」

「そのマダム……話す事はできるか?」

 

 

 立ち上がったリオに少し面食らった人魚は一つ頷いて「聞いてみるわ」とバックヤードへ戻っていった。

 

 

「ルフィ、私はちょっと行ってくるから、先食べてて!」

「おう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 マダムがいるという別の部屋に通されたリオは、そこで思わぬ再会をしていた。

 

 

「リオ!」

「チョッパー、ウソップ!? それにサンジ、どうしたの……?」

「鼻血で失血寸前だったんだ! この国は法律で人間に輸血しちゃいけねェらしい」

「あァ……まァ、差別は根深いよね」

 

 

 人魚に興奮して失血死寸前まで鼻血を噴き出すとは。サンジらしいといえばらしいか。航海中も殆ど女性陣に話しかけられてなかったし。

 私もいるよ、と横から手を振ったのは人魚のケイミーだった。2年前のシャボンディでハチと共に島を案内してくれた子だ。

 

 

「なんとか街で血を分けてくれる人間の海賊は見つけたけど……また鼻血を吹き出したら危ねェぞ」

「少しずつ慣らしてくしかねェな」

「うん……そうだ、さっきまではルフィといて、表の店にいるはずだよ」

「マーメイドカフェにか!?」

「うん」

 

 

 それで、と奥でタバコをふかしていた人魚を見上げる。

 

 

「貴女がマダム・シャーリー?」

「……私と話したいことがおありだって?」

「ああ、少し、あなたの占いについて知りたい」

 

 

 リオの目に何を見たのか、マダムは「着いてきな」と背中を向けた。

 

 

 着いていきながら、リオは「違うな」なんて失礼なことを考えていた。多分、彼女はリオと違う。()()()()()だ、という感覚がない。

 そういう人間をどう感じるかには覚えがあって、もう少し泥臭いというか、切羽詰まった感じになる。

 

 

「貴女も占いをするらしいわね」

「……良い感情が無さそうなのは私によりも、占い自体に、か。マダム、似たような力を持つ貴女に……いくつか聞きたい事がある」

 

 

 リオは隣の部屋へ移動したマダムの前に指を一本立てた。

 

 

「一つ目、貴女が視た未来が実現しなかった事はある?」

「……ないわね」

「そう。私も同じ。じゃあ二つ目」

 

 

 指をもう一本立てる。

 

 

「どうやって未来を視ている? 私は『視覚』と『聴覚』を使って人間の『感情』にリンクして視ていた。貴女は?」

「随分違うのね……。私は水晶玉を覗き込むのよ。そうすると、未来の光景が見える」

「なるほど。じゃあやっぱり視ないようにする方法はあるのか」

 

 

 最後に、とリオは三本目の指を立てた。

 

 

「貴女は、視えた未来を変えようと動いたことはある?」

 

 

 マダムは考え込むようにゆっくりと煙草を吸った。時間をかけて吸い込んで、フゥ、と吹きかけるように吐き出す。

 

 

「もう、未来を視るのはやめたのよ」

「そう。じゃあそれも私と同じだ」

 

 

 リオは肩を竦めて、「魚人島に住んでるなら、頂上決戦のことは知ってるだろ?」と呟いた。

 良くも悪くもリオの転機となった戦争。2年前、リオはエースと白ひげの死をきっかけに未来視を封じることを決めた。けれど、もう一度視ようと思えばいつでも視れる。目を、耳を封じているのはリオの意思だ。

 

 

「当たって欲しくない予言ほど当たるものね。我ながら、気味が悪いわ……」

()()()()()、ね。それは、私とは違うのか。…………貴重な時間をありがとう」

 

 

 言いたいことだけ言って退室しようとしたリオに、マダムは「迷っているのね」と囁いた。

 

 

「その力は必ず、『誰か』の役には立つわ。それが貴女のお仲間かどうかは、分からないけれど……」

「だとしても、塞げと言ってもらって今ここにいるの。私が誰の為に生きるかは私が決める。……返さなきゃならないものが、今の私にはちゃんとあるんだ。ただ少し、同類の考えを聞いてみたくなっただけ」

「どんな人間でも、抗えないものはあるものよ」

「そうだね、それは『未来』という恐ろしい怪物の姿をしている。よく知っているさ」

 

 

 『それ』に対処出来るのはリオだけだろうとも、知っているのだ。

 

 

 その上で、リオはいつでも外せる拘束を解かない。

 

 

 優先順位を、つけることにしたから。自分の中で何がどのような位置にあるものかきちんと整理する為に、未来視は必要ない。

 例え矛盾していたとしても、そのまま走り続けるのがリオだ。

 

 

「それを、迷っていると言うのよ。行先が分からないことを迷子と呼ぶのだから」

「誰もがそうでしょう。それが普通だ」

「普通でいたいの? 贅沢な悩みね」

 

 

 リオは返事をしなかった。2年前ならともかく、今のリオには図星を突かれていることが分かるからだ。

 

 

 リオの行動原理は至極単純で、その点は一切成長をしていない。かつてリオが自分の未来を視なかったように、リオは鏡なのだ。これがリオの最大の欠陥であり、意義であり、今一番頭を悩ませている要因でもあり。

 今、未来視を封じている一因でもあるだろう。

 

 

 リオには一つだけ、抱くことの出来なかった感情がある。

 

 

「何に悩んでいるか、当ててあげましょうか。貴女のような若い人魚は沢山いるの」

「ああ、未来が視えなくても何を言われるか分かったな。穏便に済ませたいなら続けないでくれ。私、その話嫌いなんだ」

「おや、将来の夢の話が嫌いとは思えないけどねェ」

「あ!? ちょっと待って、全部分かった上で揶揄ったね?」

「勿論、そっちの話も歓迎さ。聞きたくなったらいつでもおいで」

「いやァ、占いってろくなもんじゃないなァ!」

 

 

 外への扉を開こうとして、リオは直前で手を引っ込めた。向こう側から無造作にドアが開かれる。

 

 

「ここにいたか、リオ!」

「ああルフィ、どうしたの? 迎えに行こうとしてたんだけど」

「サンジ達だろ? 店にブルックの奴が来たからリオを呼びに来たら、あいつらいて驚いたぞ」

「あれ、じゃあ後はゾロにロビン、フランキーとナミか。皆一人でも大丈夫そうだけど」

「あ、お前がサンジ匿ってくれたっていうやつか?」

 

 

 ヒョイ、とリオの横から後ろのマダムを覗くルフィに、リオは入れ違うようにして部屋を出た。

 

 

「ルフィ、全部は食べてないよね? 私魚人島の料理食べてみたいから、店の方戻ってる!」

「あ」

「あって何!?」

 

 

 

 

 

 

 

 ブルックのテーブルの料理をやけ食いしたリオは、彼と合流していたヒトデ、パッパグの案内によりサンジとチョッパーを除いたみんなで彼の構える店へ移動し、そこでショッピングをしていたナミと合流した。リオはナミに服を色々と見立ててもらってホクホクだ。

 そして今はリュウグウ王国の海神ネプチューンに招かれ、竜宮城へと訪れていた。

 みんなの反応を聞くに海中の美しい宮殿だと言う。

 

 

「ルフィいなくない? キッチンにでも行っちゃったのかな」

「あらほんと。まァ宴が始まれば戻ってくるでしょ」

「そうだといいけど」

 

 

 とのんびりしていたら、歓待ムードが一転、よく分からぬ罪状で麦わらの一味は逮捕されることになってしまった。魚人島が壊滅する未来が占われたのだとか。

 

 

「おれたちが未来で魚人島を滅ぼすゥ?」

「マダムかァ……参ったな、釘刺しときゃ良かった」

「楽しみにしてたのに。竜宮城のお酒」

 

 

 それぞれが背中合わせに武器を抜く。ここの警備兵くらいならみんなで充分対処出来るだろう。

 

 

「怯むな兵士達! 見ろ、これこそが予知された未来の序章だ! 必ず仕留めよ! この国を守るのだ!」

「リオ、お前ェ反対の占いとか適当言えねェか?」

「少なくとも魚人島においては私よりマダムの方が信頼がある。残念だけど最悪魚人島には潔く滅びてもらって……」

「ちょっと、叛逆者そのもののセリフですよ、リオさん!」

「てへ」

 

 

 リオの言葉を聞いて、海神ネプチューンが得物を振り下ろした。素早く抜刀してその三叉槍を弾く。──重い。

 

 

「冗談だよ海神。私も白ひげに縁ある者として、彼が長年守ってきた魚人島と敵対するつもりはない」

 

 

 マダムは何を思って水晶を覗いたのだろうか。手放した未来視をもう一度しようと思った理由。

 

 

 まァ、少なくとも今のリオが考えるべき事ではない。

 二撃目を警戒して剣を構えるブルックを制したリオは、マントを翻してこちらへ向かってくるゾロの気配に意識を向けた。

 

 

 これ、もしかして過剰戦力じゃないか?

 

 

 

 

 

 






そういえば、リオに関してはまだ伏せてる設定が二つあります。なんで伏せてるのかと言うと、場を整える為の設定なので人格面や恋路(恋路!?)には関係ないからです。

どちらも割とありきたりですし、何度か匂わせてはいるので、頑張れば見つけられる範疇のはずです。多分。
その要素が出る度にリオは一応律儀に反応してコメントしてたりします。


因みに一つは過去の話でガチで本筋に関わらない為、本編中で出す予定はありません(番外編でサラッと触れるくらい)が、一部の要素がノイズになってるだけでド直球だとは思われます。
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