未来が視える元海兵が麦わらの一味について行く話   作:テロン

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海賊リオ

 

 

 

 

 魚人島に魚人、ひいては魚人海賊団とリオの間には奇妙な縁がある。

 一つは白ひげを通した縁。

 

 

 そうしてもう一つは、12年前まで遡る。

 

 

 当時14だったリオ──メルリオールは、海軍へ入隊後なるべく早く階級を上げるに足る成果を要求され、様々な島に赴き、海賊捕縛作戦に参加した。その一つが、当時奴隷解放の英雄──政府から見れば逆賊であったフィッシャー・タイガー率いる魚人海賊団の討滅作戦。

 

 

 事前の提言通り殆どの構成員は取り逃がすことにはなるが、フィッシャー・タイガーは死亡、離反したと見られる一部構成員の捕縛には成功した。

 

 

 実行時メルリオールは別の島で別の海賊を追いかけていたとはいえ、作戦立案者としてメルリオールの名前だけが公式記録に残っている。

 

 

 船長を失った魚人海賊団はその後ジンベエを長に据え、ほどなく七武海の勧誘を受けることになる。フィッシャー・タイガーさえいなければ、魚人海賊団の七武海入りは魚人との融和の象徴として政府にも都合が良い。メルリオールも、断られることはない、と太鼓判を押した。

 

 

 ジンベエや当時の魚人海賊団の面々からは、メルリオールに恨み言の百や二百はあるだろう。海軍時代のリオは七武海との接触を徹底的に避けていたが、彼らの方は知っていてもおかしくない。

 

 

 フィッシャー・タイガーは、直接的には人間への憎しみでその命を閉じた。

 

 

 2年前ジンベエから追及がなかったのはルフィに気を遣ってか、その死に思うところがあるからか。その清算はしなければならない。

 

 

 とはいえ、今はリオの記念すべき第一回目の冒険中なのだ。まずはやりたい事をやりたいように。

 隠れるのをやめ、裏道から姿を出す。突然現れた人間に、島民たちは意識を向けなかった。先程から何やら騒がしかったが、彼らの意識はリオとは反対方向に向いている。

 

 

「なんだか民衆が一斉に移動しているみたいではあるけれど……。お祭りかな」

 

 

 んなわけあるかとツッコミを入れる仲間も側にいない。

 クザンにもう少し説明させれば良かった、と首を振って、リオは彼らの後ろを充分離れて尾けていった。

 

 

 

 

 

 

 所変わって陽樹イブの恵み届く海の森。

 

 

 しらほし姫を連れ出したルフィは、何故かヘロヘロのまま姫に求婚するバンダー・デッケンをぶちのめし、サンジ、チョッパー、ハチと共に海の森へと訪れていた。

 そこで竜宮城から抜け出したナミとケイミー、サニー号についていたフランキー、周辺の調査をしていたロビンと合流し、ジンベエと再会。喜ぶ間も無く映像電伝虫により魚人島で起きているクーデターを知らされていた。国王の公開処刑に、親人間派の島民の排除。そして、竜宮城に残った仲間が人質にされていることも。

 

 

 フィッシャー・タイガーとオトヒメ王妃の『人間への恨みを次代に遺さない』という願いを聞いた一味は、ジンベエ主導の下王族奪還の作戦を立てていた。人間への不信感を募らせる今の魚人島に、人間の海賊が表立って助けに行くのは憚られる。

 

 

「簡潔に言えば、わしがお前さんに助けを求める。それを助けてくれたらええ。まずわしとメガロがあいつらにわざと捕まり広場に侵入する! その間メガロの腹の中からこっそり抜け出し、敵の持つ『天竜人の書状』、『国王の錠の鍵』を盗み出すんじゃ!」

 

 

 そして別働隊が城に捕まっている面々を助け出し、広場に集合する。

 

 

「こんな事が起きれば国民はどう思う」

「ニュ〜、ジンベエさんは魚人島民も魚人街の連中も皆一目置く存在だ」

「うん、親分が国王さまを助ける為にルフィちん達に命を預けたとわかったら、みんなルフィちん達の事応援するよ!」

「でもちょっと待ってね」

 

 

 ナミが片手を上げて話を遮った。

 

 

「どうしたの?」

「作戦には賛成よ。そうじゃなくて……ケイミー、私たちが城を抜け出した時、広間にリオはいなかったわよね」

「あ、そうだ! 確かホーディ達が襲って来るときに居なくなってて……」

「そして、さっきの映像で捕まってるゾロたちの中にリオの姿は無かった」

「なに、じゃあリオさんはどこへ!?」

「城に潜んでいるならいいけど……あの子、襲撃に気付かずルフィを追って島内に降りているかもしれないわ」

 

 

 顔を見合わせた一味に、ジンベエは焦ったように「先に手を出されたら作戦はおしまいじゃ」とルフィに詰め寄った。

 

 

「電伝虫か何かで連絡を取れないか?」

「いや、大丈夫だろ」

「なんじゃと? しかし、あのメルリオールが暴動を見過ごすとはとても思えんのだが……」

「ジンベエ、あいつとはちゃんと話してねェもんな」

 

 

 ニシシと笑ったルフィは、「リオはまだ見習いだけど、海賊だからよ」と言って麦わら帽子をずり上げた。

 

 

 

 

 

 

「これでよし、と」

「あんた……ありがてェが、早く逃げた方がいい」

「あァ、大丈夫大丈夫。甘いものとか食べる? 元気が出るよ」

 

 

 軽く言って、リオは巻き終えた包帯を軽く摩った。魚人は人間より丈夫だからか、リオの応急処置だけでも命に別状はなさそうだ。

 

 

 一斉に移動を始めた島民の他に、建物の倒壊や怪我等で各地で動けないでいる人々がいる事に気付いたリオは、救護活動や手当に、と助力しながら魚人島内を練り歩き、情報を集めていた。

 

 

「魚人至上主義に国王の処刑、ねェ」

「あ、ああ。姉ちゃんさっきの放送見てなかったのか? 魚人街の奴ら、召集だとかでみんなギョンコルド広場へ行っちまったよ」

「そう。私以外の人間は見かけた?」

「いや……。奴らにやられちまったのか、おれは見てねェ。おい、お前らはどうだ?」

「さあ、見てねェな」

 

 

 ある程度、状況は読めてきた。魚人島は今、クーデターの真っ只中にある。お祭り騒ぎではあるが、お祭りではなかった。いや、お祭り騒ぎでもないか。

 

 

 人間の魚人差別に反するように、魚人こそが至高の種族だとする主張。それも極端に過激派な者たちが、人間との融和政策を取ろうとしている王族や、それに賛同する魚人島の島民たちを排除し、自分達の王国を作り上げようとしている。よりによって新魚人海賊団を名乗って。

 

 

 その第一歩として竜宮城を襲撃し、王を拘束してその公開処刑をこれからギョンコルド広場で行うというのだ。

 

 

 因みに、王が捕まったのはおおよそリオたちのせいと言える。なんなら襲撃を知って尚引き返さなかったリオの失態だ。

 

 

「ただ、ゾロたちが負けるとも思えないんだよなァ」

 

 

 立ち上がって、リオは周囲の島民にギョンコルド広場の場所を尋ねた。

 

 

「それならあっちの方だが……本当に大丈夫なのか?」

「うん。良い時期に来れて良かった」

 

 

 そう言い残し、リオはまた別の場所へと歩き出した。直接原因を叩くなら、広場に直行しそこにいる勢力を全滅させればいい。けれど、今のリオは見習い海賊だ。曲がりなりにも()()()と名乗る勢力が相手であるならば。

 リオは、船長の号令を待つべきだ。

 心配する事はない、と次の怪我人を探すリオの足取りは軽かった。

 

 

 

 

 

 

 

「後ろに倒れて」

 

 

 一発の銃弾を放った銃をホルスターに納め、リオは自分より大きい身体を引き倒した。

 場所は魚人島の北西、ギョンコルド広場の縁だ。そろそろか、と目星をつけて向かった所、良いタイミングで辿り着けた。

 

 

「貴女は……」

「余計な手出しだったかな?」

「いえ……」

 

 

 マダムの後ろに隠れながら、リオは小声で囁いた。広場は三方を切り立った崖のようなものに取り囲まれており、多くの島民たちがその上から広場の様子を伺っている。

 リオが探った限り、広場内には拘束された海神や王子達と、殺気立った魚人や人間の大軍が犇めいていた。彼らの目的は王族を排除し、魚人島を乗っ取る事。

 

 

「ここに人間がいると面倒でしょう。倒れたフリをして私を隠していて」

 

 

 賊のリーダー、ホーディが反抗的な言動をしたマダム・シャーリーに対し攻撃を行った。直前に銃弾を滑り込ませて相殺したリオは、マダムを引き倒して撃たれたように見せかけた、という具合だ。

 咄嗟に黙っているよう周囲の島民たちに合図を送れば、承知したように皆ぎこちないながらもマダムが本当に撃たれたかのように振舞ってくれた。

 

 

「小さな占い師さん、私は……あんた達の事を……」

「私も散々迷惑をかけた自覚がある以上、他人の占いにとやかくは言わないよ。それに、まァ分からなくもないんだ」

「麦わら帽子の坊やは……。不思議な子ね。どうしても、見たくなったのよ」

「うん。気になるでしょう。目が離せないよね。私が選んだ船長だもの」

 

 

 似たような力を持つ者として、時代を動かしそうな人間に惹かれる気持ちは理解できる。勿論、リオはそれだからルフィに着いてきたわけじゃないけれど、ルフィに会って水晶を覗いてしまったマダムを責める気にはならなかった。

 リオやマダムのような者には、常に『未来を視る』ことが行動の選択肢として存在し続ける。どうしても、無視ができない選択肢。視ないことは、時に視力を失うことよりも恐ろしい。

 

 

 広場では、既にジンベエ、しらほしが罠にかかったとして連れてこられている──が。

 

 

「もう少しだけ待っててね。全て上手くいくから。今の私は未来を視れないけれど……」

 

 

 自分に、島民たちに、言い聞かせるように呟く。

 

 

「かつて『白ひげ』が守ったこの島を、好き勝手にはさせないから」

 

 

 それは単なるリオのエゴだ。

 けれど、としらほし姫と共にいたサメから飛び出した船長の姿に、リオはキュッと唇を噛み締めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 蜃気楼で姿を消していたナミが天竜人の書状と王たちの錠の鍵を盗み出し、ロビンが彼らを解放していく。フランキーがサニー号の砲撃と共に広場に乗り込み、竜宮城に捕らわれていた皆も姿を現した。

 

 

「麦わらの一味! 全員来た」

「おい! 麦わらのルフィ! お前らは本当にこの島を滅ぼす気なのか!?」

「答えてくれ! お前たちは魚人島の敵なのか!? 味方なのか!?」

 

 

 ホーディを吹き飛ばし、王たちを解放した一味に島民たちが問いかける。歓声の中、ルフィの後ろに飛び降りたリオは「味方だよね!」と弾んだ声で言ってルフィに頭をチョップされた。

 

 

「何言ってんだ、リオ。おれたちは海賊だぞ? ヒーローなんかごめんだ」

「あ、そっか」

「おいおいしっかりしろよ、『見習い』海賊?」

 

 

 ウソップの言葉に舌を出したリオを他所に、ルフィは「敵か味方か、そんな事」と言いながら一歩前に出た。

 

 

「お前らが勝手に決めろ!」

 

 

 ふふ、と笑って駆け寄ってきたジンベエに振り向く。恐らくリオが何も計画を聞いていないと思ったのだろう。

 

 

「メルリオール少……いや、リオ。説明出来とらんかったが……」

「ああ、大丈夫。少なくとも、一味の中で戦う理由が一番あるのは私だ」

 

 

 片手で制して、リオは一房伸びた横髪を揺らした。エースから貰った髪ゴムは、今もその先端を結わえている。

 

 

「そうか、親父さんの……」

「積もる話は後にしよう」

 

 

 お互い頷いて、大軍に向き直る。広場を埋め尽くす10万の兵。2年前の頂上戦争と同じだけの兵力。今度は初めから、立ち向かう側。

 けれどもこんなに不安がないのは何故だろう。

 

 

 ルフィの覇王色が戦場を覆うと同時に、魚人島の未来を賭けた戦闘が始まった。

 

 

「あ、救急セット10万人分も無いんだけど、どうしよう」

「全員手当する気か!?」

「大丈夫よ、リオ。チョッパーなら何とかしてくれるわ」

「そっか! 良かった〜」

「おれ!?」

 

 

 





未来視がなくなったので、暫くライブ感でガバチャーを走ります
BAKAとも言う

GABAはパワーで解決すれば良いのだよ
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