未来が視える元海兵が麦わらの一味について行く話   作:テロン

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海賊同盟

 

 

 

 

 今もまた、雪が降っていた。

 

 

「同盟!?」

 

 

 一味が周りにいる事を承知で、ローはルフィに向けて同盟を持ちかけた。四皇を一人、引きずり下ろすという。

 

 

「その四皇って誰だ?」

「待ってルフィ」

 

 

 口を挟んだロビンが「海賊の同盟には裏切りがつきものよ」と諭した。まァ事実、同盟が上手くいくケースは少ない。海賊は自分たちの利益を追求するものだし。

 

 

「その前に、四皇相手なんか無茶よ! 絶対やめて!」

「そうだぞ、お前ただでさえ魚人島でやらかしてるのに!」

「やめてくれルフィ〜!」

「カイドウだよ」

 

 

 ビビリ三人衆が縋り付く中、リオは少しだけ離れたところで呟いた。

 

 

「カイドウ?」

「そう、百獣のカイドウ。長らくワノ国を拠点にしている海賊だ」

 

 

 そうでしょ? と水を向ければ、ローはコクリと頷いた。まァ、ローに本当に四皇を落とすつもりがあるのかは置いておいて、だ。

 

 

 ふう、と息を整え、リオは全力で踏み込みを行った。音を置き去りにして、右手で剣を抜き、最大出力の覇気を乗せて斬りかかる。

 

 

「リオ!?」

 

 

 ルフィは驚いたが、すぐには制止しなかった。それを良いことに、受け太刀したローの眉間めがけて左の銃を打ち鳴らす。ポトン、と雪の上に投げ捨てたイヤーマフが落ちた。

 同時に、仰け反って銃弾を躱したローの刀がリオの首元に押し付けられる。

 辺りはもう、ローの手術室──ROOMが展開されていた。

 

 

「まァ、及第点かなァ」

 

 

 数拍置いて呟いたリオは、ローの喉元に押し付けていた銃口を下げる。硬化させた首を振って刀を弾けば、すぐにROOMも閉じた。

 

 

「船長同士の話だ。お前が割って入るな、リオ」

「同盟相手の戦力は確認しておくもんだろ」

 

 

 舌打ち。不思議そうに首を傾げたルフィは、「同盟はいいけど、おれたちにも行きてェ島があるんだ」とローに向き直った。その間に、拾ってくれたウソップから受け取ってイヤーマフを装着しておく。

 

 

「計画に支障のねェ限りなら問題ない。航路がズレるようなら後にしてくれ」

「だってよリオ。やらなきゃいけない仕事があるって言ってたけど、すぐ行かなきゃいけねェんだったか?」

「ううん。目的地は同じだから同じことだ。ま、同盟は断ってくれても良いけどね」

 

 

 首を振った途端、目を剥いたローが「テメェ!」と詰め寄った。

 

 

「話が違ェ!」

「なんの()だ。パンクハザードの情報は用意しただろ。そもそも抜け駆けしないなんて言ってないし、パンクハザードが見えたからちゃんと寄ってやった」

「あら、寄ってやった、と言う割には島が見えた時大喜びしていたようだけど?」

「グ」

 

 

 ロビンに指摘され、リオは無駄にいくらか咳払いをした。牙が抜けたのか、ローは「続きは後だ」と言って話を切る。これ、後で怒られるやつだ。

 

 

「なんだ、会っといた方がいい奴ってトラ男だったのか。それならそう言やァいいのに」

 

 

 のんびりとしたルフィの声に、「ちょっと待って」とフランキー──ナミが口を挟んだ。

 

 

「リオの話の途中だったわね。あんたがこの島に来たがった理由は、そこのトラファルガー・ローがいるから?」

「うん。あ、でも航路に口を挟んでまで寄る気はなかったよ。それならそれでコッチにもやりようがあるし」

「テメェ……あとで覚えてろよ」

「わあ」

「じゃあ彼の計画にはリオも噛んでいたのね?」

「まァ……」

 

 

 曖昧に頷いて、「これ以上は同盟がちゃんと成立してからね」と首を振った。

 

 

「でも、個人的な意見を言わせてもらうなら、ローは同盟相手としては理想的だよ。私は一番信頼してる」

 

 

 いきなり斬りかかったリオの言うことか、というような視線が集中したが、声には上がらなかった。急に対四皇の同盟が飛び込んできて、皆考えることはあるだろう。

 

 

「その計画ってのはリオがやりたい事でもあるんだろ?」

「……そうだね」

 

 

 フランキー入りのチョッパーに頷けば、皆は顔を見合わせて、少し肩を竦めた。

 

 

「……ま、いいでしょ。ルフィの判断に従うわ」

「右に同じだ!」

「ゾロたちにも話さないといけないけれど、私も同感ね」

 

 

 それぞれが頷いて、ルフィは「じゃあ成立だな。トラ男、これからよろしく!」と屈託無く笑った。

 

 

「おい、ニヤニヤするなリオ」

「ふふん。あ、イテ」

 

 

 隣に並んだローに容赦なく刀の柄で殴りかかられた。照れ隠しってやつだ。

 

 

「で? リオとそこのトラ男くんって昔からの知り合いなの?」

「うん。もう10年以上の付き合いになるかな。正確には12年? と言っても、会ってない期間も長いけど……。わたしの主治医なの」

「え!」

 

 

 サンジの体が飛び跳ねたが、これはチョッパーだろう。

 

 

「お、おれじゃ不満だったか!?」

「まさか。チョッパーの腕も信用してるよ」

 

 

 首を振って、コートの前ボタンを外して右腕を引き抜いた。

 

 

「海軍時代割と怪我が絶えなかったから、会う度治してもらってたの。ホラ、腕がちぎれかけたときのとか」

 

 

 言いながら腕をまくる。肘のあたりをなぞれば、今でも手術痕が薄く盛り上がっている。

 

 

「あとはほら、お腹のあたりの」

 

 

 と服の裾を捲ろうとすると、「おい、やめろ」と腕が掴まれ制止された。

 

 

「寒々しいだろ」

「あ、そう?」

 

 

 まァ確かに寒いしな、と頷いてコートを直していく。リオは割と回復力が高い方なので、余程の怪我でもなければ傷跡は残っていない。大体はローが綺麗に治してくれていたし。

 

 

「お」

「あら」

「おやァ?」

 

 

 ウソップ、ロビン、ナミが揃って手を口に当てた。何をしてるんだか。呆れ混じりに首を振って、リオはローの顔を見上げた。

 

 

「そんな感じで古馴染みなの。一応、厳密に言うと海兵になる前から」

「そんな変わらねェだろ」

「まァね。そこから2年か3年か頻繁に会ってたけど、ローはほら、海賊になったでしょ? だからそれからはそんなに」

「何かと理由つけて纏わりついてただろうが……」

「『非番』の海兵が何処で何してようが勝手でしょ」

「そういう事は本当に休暇を取ってから言え!」

「元々非番の日も艦動かしてたんだから、私がいつ休暇扱いにしたって同じですー!」

「リオあんた、よくそれで海兵務まってたわね……」

 

 

 本当にな、と頷いてリオは「北は管轄外だし。新世界以外の海賊にまで手を出すなって言われてたし」とブチブチ文句を垂れた。まァ、これも聞いたことのない命令だったが。

 

 

 一度、メチャクチャな航路で片っ端から海を梯子し、視えるだけの未来を全部解決しようと突撃を繰り返した事があった。一応それなりに海賊を捕まえたり、不正を暴いたりはしたものの、中途半端に高い階級のせいで各地の支部の指揮系統をぐちゃぐちゃにし、人的、物的に洒落にならない損害を出し、結果リオは大目玉を食らった。

 上層部は大層頭を抱えただろう。クビにすることも出来ない、降格もできない、まして下手に行動を制限すると潰れかねないじゃじゃ馬だ。減給くらいしか出来ることがなくて、お陰でリオはいつも金欠だった。

 

 

 一応それ以降はリオも、新世界以外の作戦の時は上官に相談するようになったし、月一くらいで勝手に飛び出していくのは目を瞑る、と言うところでお互い譲歩はできていた。多分。

 

 

「あと、リオのサングラスとかを用意したのがトラ男だぞ」

 

 

 ルフィの指摘に頷いた。正確にはローは依頼と運搬担当だが。

 

 

「あとこのマントとか」

 

 

 と言いながらマントをはためかせ、そのまま「シーザーを抑える? 今から潜入は厳しいと思うけど」とローの方を向く。

 

 

「だがやるしかねェ。SAD製造室の破壊と同時にだ」

「それでアレが交渉に乗る、と」

「釣れればいい。後は足元の製造工場でチェックだ」

「竜の尾を踏まなきゃな」

「……踏むのはあいつだ」

「そう。まァ、起点は同意だ。後はやってみないと」

 

 

 お互い頷いて、クエスチョンマークを飛ばしている一味の方に、「作戦目標はシーザーの誘拐と、とある設備の破壊ね」と研究所を指差した。

 

 

「待って、それはいいけど子供たちが……この子達の安全を確認できるまでは、絶対にこの島を出ないわ!」

「そうだな。トラ男、同盟組むんならこっちのことも手伝えよ」

「こいつらか……」

 

 

 ローの視線が眠っている子供たちに向いた。これは完全に別件だろうから、彼も詳しくはないだろう。知っていて放置するとはとても思えないし。

 

 

「薬の詳細はローとチョッパーにお願いしよう。シーザーは私が捕まえてくるよ。ガスガスの実、だっけ。この中じゃ私が一番自然系(ロギア)に慣れてる」

 

 

 それから、「サンジがサムライをくっつけたがってたからそれもな」とルフィが口を挟んだ。

 

 

「サンジたちに任せておけば大丈夫な気がするけど、戻りが遅いね」

「よし、じゃあ班を分けるか」

「待て、おれはそっちに協力するとは言ってねェ。同盟には無関係だろう」

 

 

 トントン拍子に進んでいく話にローが待ったをかけた。何人かの視線がリオに向いて、リオはそのままローを見上げて首を傾げた。

 

 

「……しないの?」

「いや……」

 

 

 ハァ、と息を吐いて、ローの指が能力を行使した。リオにはイマイチわからないが、入れ替えられていた精神が戻ったのだろう。となると恐らくナミだけこの場に自分の体が無いので、サンジの中だろうか。

 

 

「念を押しておくが、この計画はいきなり四皇を落とすわけじゃねェ。順を追っていけばいずれは、という話だ。ただし、シーザーの誘拐に成功した時点で事態はおのずと大きく動き出す」

 

 

 そうなるともう、引き返すことはできない。

 

 

「考え直せるのは今だけだが?」

「大丈夫だ、お前らと組むよ! 2年前からやるつもりだったんだ、仲間が増えるならそれに越したことはねェ」

 

 

 ルフィが大きく頷いて、ここに両海賊団での同盟が成った。リオやローがこの2年──いや、13年準備してきたことも、もうすぐ結果が出る。

 

 

「じゃあ、まずは第一目標だ」

 

 

 言いながら、雪原へ向けて銃を撃った。

 

 

「ん?」

「どうかしたか?」

「見えてない? あァ、能力者かな」

 

 

 言いながら、撃った先に小走りで移動する。心当たりがあったのか、ローも着いてきた。イヤーマフを外した時、こちらを観察している妙な気配に気が付いたのだ。

 

 

「モネか……」

「ちゃんと気絶しているように思うけど、どう?」

「今更お前の腕は疑わねェよ」

「君は疑われてたみたいね」

 

 

 膝を着き、倒れ込んだ背中に触れる。翼、だろうか。外していなければ、肩口に弾丸を受けたはずだ。撃ち込んだ覇気で気絶した女性は、ローの後をつけてきたようだった。

 

 

「ユキユキの実の能力者だ。シーザーの秘書をしている」

「なーんだ自然系(ロギア)か、大した事なくて良かった」

「いや……。まァ……その調子でシーザーも頼む」

「うん。後、ここは一応G-5(ファイブ)の管轄だから、忘れるなよ。私もセンゴクさんも退いて、監視がどこまで継続しているかわからない」

「分かってる」

 

 

 本当に分かっているのか、と肩を竦めながら、何事かとこちらの様子を伺う皆に手を振った。

 

 

「さて、作戦開始だ。新世界をひっかき回してやろうね!」

 

 

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