未来が視える元海兵が麦わらの一味について行く話   作:テロン

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章題回ですが、例によって今話後半〜次話まで次章導入が入ります。
次は多分明日あげます。






夢を叶えるための夢

 

 

 

 

「うーん、手頃……」

「何がだ?」

 

 

 ヨンタマリア大船団の主船、ヨンタマリア号。コロシアムの面々が用意したドレスローザ脱出用の船だ。

 そこに、ドレスローザで名を挙げた数多の海賊が集っていた。あと、トンタッタ族も。

 

 

「結構大きな船だと思うのだけど」

「あ、船じゃなくてね」

 

 

 首を振って、ウソップとロビンに「元海兵の血が騒いじゃって」と舌を出した。

 

 

「昔の私なら諸手を挙げて捕まえようとしていたくらいの海賊だもん。濡れ手に粟っていうの?」

「おい、滅多なこと言うなよ、乗せてもらってる身だぞ?」

「でもほら、ルフィの子分になるんでしょ?」

 

 

 一味の傘下になる、と言い出した面々を指差した。「窮屈」の一言で却下されてるが。

 

 

「だからよ! おれは海賊王になるんだよ! 偉くなりてェわけじゃねェ!」

「オイ、何言ってんだ? こいつ」

 

 

 引いてるローの後ろで、差し出された盃の酒はゾロが飲んでる。

 

 

「ジョッキある?」

「お前も飲むか?」

「どれどれ」

 

 

 割といいお酒だ。彼らの方は勝手に子分盃を飲み干して麦わら大船団が結成されてる。ともあれ終わったなら、宴の準備だ。

 

 

「料理はもう出来てるんじゃない?」

「おっ、じゃあちょっくら覗いてくるな」

「あ、待てウソップ!」

 

 

 グイ、とルフィの腕が伸びて駆け出したウソップを捕まえた。

 

 

「サンジたち居ねェけど、こっちもまだ終わってねェだろ」

「あァ、トラ男の()()の話か?」

「おう、それもだ。まだ治ってねェんなら、あいつらと合流したらチョッパーに診てもらうか?」

「それが、怪我じゃないって言うのよ」

 

 

 ロビンの視線がリオに向いた。つられるようにルフィがリオを向く。

 ひと目見れば誰でも気付く異変。昨日から、ローの右目には黒い眼帯が巻かれていた。原因はまァ、ロビンの読み通り、リオにある。

 

 

()()()を見せた方が手っ取り早いかなァ。いい?」

「ああ」

 

 

 ローが頷くのを待って、サングラスを外した。一度瞬いて、目を開く。出航前にセンゴクさんに見せたものと同じだ。

 

 

「そういう……!」

「あれ、なんか変わったか?」

「ちゃんと見ろよ、左右で色が違ェだろ」

 

 

 ウソップにペシリと叩かれたルフィが、リオの右目を覗き込む。両目を開いた目の前にいるのに、その様子はリオにはあまり見えていない。

 

 

「目を交換したの。私の右目にはローの右目が入ってて、ローの右目には私の目がある」

「視える限りすべてを救うのがこいつの正義だ。なら目は必要だろ」

「という理屈だそうです」

 

 

 形に残す、と言ったローが提案したのが目の交換だった。単純な移植ではなく、視神経は元の持ち主と繋がっている、らしい。つまり、今リオの右目で見た光景はローが受け取っている、ということだ。オペオペの実の力があってこそ出来る処置である。

 

 

「それは……どうなるのかしら。リオの未来視は視覚に占める割合が高いのよね?」

「うん。だから閉じてれば大体はシャットアウトできるし、半分になれば頻度も減る。まァ視えちゃうようにはなるんだけど」

「ただし、こいつが未来視をすれば片目を通じておれにも伝わる。これが妥協点だ」

「とはいえロー側の目は基本閉じて貰ってるし」

 

 

 言いながら、ローの眼帯を示す。

 

 

「私も普段は両目とも閉じてること、に……」

 

 

バチンと視界が切り替わる。

 

 

 目の前で咽び泣いているトサカくんが何かを自慢していた。なんじゃこりゃ。

 両手で示される方へ、リオとローの視線が向く。

 

 

 グ、とローが眼帯を抑えたのに気付いて慌ててサングラスをかけ直した。両目が別々の視界を映しているのに加えて未来視だ、そりゃあ大変だろう。リオは視界が複数あるのは日常だったから慣れてるけど。

 

 

「クソ、慣れねェな……」

「いや一日二日で慣れられても……」

「トラ男の方はそれで戦闘とか大丈夫なのか?」

「私も言ったんだけどね」

「未来視で釣りが来る」

「だって。ってかどういう理屈で私の未来視を覗いてんの……? よく分からん……」

 

 

 肩を竦めて、心配そうなロビンに「なんかトサカくんが感涙で咽び泣いててただけ」と伝えておく。

 

 

「そう、……それはいつも通りね」

「そうか、大丈夫なのはわかった。トラ男ありがとう! じゃあリオ、お前うちの見習いはクビな!」

「え!?」

 

 

 驚いた声をあげたのはウソップだけだった。

 なんだか感慨深くて、ゆっくりと息を吸う。リオは未来視抜きでここまで辿り着かなきゃならなくて、どうやらそれは果たせたらしい。

 

 

「うん。約束守ってくれてありがとう」

 

 

 ルフィとリオは一つ約束をして仲間になった。お互いの夢を叶えること。ルフィは海賊王。リオはドレスローザへの寄港。と、死ぬつもりのローを止めること、というのも含まれている。言ってないけれど、多分ルフィは分かってた。

 

 

 今、リオの夢は叶った。でもこれは、ルフィに言わせれば夢じゃない。リオという人間が心からやりたいと思うことを見つけるための、前座。いわば、夢を叶えるための夢。

 

 

 だから、中途半端な約束はここで終わり。ここで漸く、最初の約束を果たすことが出来る。

 

 

「約束だぞ、リオ。おれの夢はお前が叶える。お前の夢はおれが叶える」

 

 

 常に夢を持つこと。一つ夢を叶えたなら、次の夢を見つけること。

 それが、夢追い人の流儀だ。

 

 

「おれの夢は変わらねェ。海賊王になる事だ」

 

 

 それで? と促される。リオはどうだ。

 

 

「考えてたんだけど……私も、ルフィを海賊王にすることを夢にしようかな、と思う」

「……うーん?」

 

 

 微妙な反応だ。首を傾げるルフィに、リオはその場でくるりと一回転した。白いマントが揺れる。リオが正義を願ったもの。リオの象徴。

 

 

「メルリオールはすべてを救う正義だ。私の一挙手一投足はそのためにある。ちゃんと私も考えたよ。考えて、君を海賊王にすると決めた」

 

 

 海軍でメルリオールのしていたことは、本質的には海賊討伐ではなかった。海兵なのに、海賊の知り合いが多くいる不良海兵の筆頭だったのだから間違いない。

 ただ、平和を目指す過程で障害となる殆どが、海賊だっただけだ。だから、海賊を減らせばいい。

 

 

 胸に手を当てて、大きく息を吸う。

 

 

「私は、君を海賊王にして……そして、この大海賊時代を、終わらせる!」

 

 

「おう! 面白ェな!」

 

 

 ニシシ、と笑ったルフィはいつかのようにまた、リオに手を差し伸べた。

 

 

「よし、じゃあもう一回だ。おれは海賊王になる。お前はおれを海賊王にする!」

「うん」

「おれの船に乗るだろ? リオ。これからお前は、うちの『参謀』だ!」

 

 

 パシ、と力強い握手の後、ルフィが「宴だァ!」と叫ぶ。

 

 

「なんだそういうことか、ヒヤヒヤさせんなよ!」

「ふふ、ようこそ、リオ」

「めでてェな! ここがサニーなら記念に何か作ってやれたんだが」

 

 

 ポン、と最後にゾロがリオの背中を叩いた。

 

 

「ってわけで、ローとはライバルだね! 今は同盟だけど」

 

 

 腕を組んで見守っていたローが、少し笑って「そうだな」と呟いた。

 

 

ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)、取りに行くでしょ?」

「奪えるもんは全部奪う。海賊だからな」

 

 

 自由に生きること。

 夢を持つこと。

 

 

 これらはきっと、同じ意味だ。

 ドレスローザを超えても続いた命を、受け止めて前に進んで行かなきゃならない。

 

 

「サニー号に戻ったら、荷ほどきしなきゃ」

 

 

 呟いたリオを、横からロビンがぎゅ、っと抱きしめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝、宴の余韻も冷めやらぬまま、大船団とは別れてゾウまで送ってくれるというトサカくんの船に乗り換えた。

 リオも見せてもらったが、船首にルフィを掲げている、その名もゴーイングルフィセンパイ号。筋金入りだな。

 船首を自慢するトサカくんを見て、これか、とローが顔をしかめていた。

 

 

「あ、それ捨てるならちょうだい」

「リオ先ペェ!?」

 

 

 新聞を広げていたトサカくんたちの所に割り込んで、捨てられそうになっていた手配書をもらう。

 

 

「ルフィたちは懸賞金あがってた?」

「そ、そりゃあもう! これから皆さんの手配書を額縁にいれて飾るんだべ、先輩も見てってくだせェ!」

「へー」

 

 

 どうぞこちらに、と示されるので後方にいたルフィたちに声をかける。

 

 

「新しい手配書出たって〜!」

「お、上がってるかな!」

 

 

 ローのはこれ、と手に持っていたのを見せる。「5億か!」「へェ、なかなか」と頷いて、ルフィたちはトサカくんの後をついていく。

 

 

「おい、それどうするつもりだ?」

「え? 持って帰るけど」

 

 

 すんごい嫌そう。

 通された先の部屋は、言った通り額縁が飾られていた。これ全部に一味の手配書が飾られているのか。

 

 

「5億だやったー!」

「おい、酒はあるか」

「やだ、上がってるわ」

「もう一声〜! しかも写真がフランキー将軍!」

「ギャー、素顔でドエライ額出たー! 狙われるー! でも嬉しい〜! だが写真がいまいち〜!」

 

 

 ルフィも5億か。チラチラとサングラスをずらしつつ盗み見た限り、ゾロが3億2千万、ロビンが1億3千万、フランキーが1億にちょっと届かず9400万、ウソップが跳ね上がって2億。

 ドレスローザ決戦にいなかった面々もそれぞれあがってるみたいだ。一部を除いてはだいたい5千万アップ、という感じらしい。麦わらの名自体が脅威になったということだろう。

 

 

「あ! サンジの手配書が似顔絵じゃなくなった! つまらねぇ!」

「ほんとだ」

「あれ、お前リオのやつ間違えてるぞ?」

「それが、そっちが新しい方で間違いないんだべ……」

「下がってるね〜」

 

 

 メルリオール、3億。手配書の写真は街で救護活動していた時のだろう。イヤーマフがない。

 

 

「ま、妥当な金額かな。元の5億6470万は海兵メルリオールに懸賞金をつけるならその額になる、ってことだから」

 

 

 言いながらサングラスをかけ直す。

 

 

「どういうこと?」

「そのまんまの意味だよ。3億の海賊を倒したら賞金額が3億になるでしょ?」

「5億の海賊を倒したってことか?」

「いや逆」

「逆? なんだそりゃ」

 

 

 賞金額がリオの元のものからきっちり10億上となる、15億6470万ベリーの海賊がいるのだ。いるというか、そうしちゃったというか。メルリオールをポコポコ殴ってると懸賞金が億単位であがるというか。

 そこからもじって取られたんだろうな、と額を聞いた瞬間に悟った。正確にメルリオールの価値を示すなら5億770万ベリーとするべきだけど、多分警告の意味合いが強い。

 

 

「にしても、下がるってあるんだな」

「そりゃ、危険度が低いとなれば下がることもあるよ。賞金額って強さを表す指標じゃないからね。私の場合は多分、船に乗ったからかなァ」

「なんでだ? 徒党を組んだら普通は上がるもんだろ?」

「ルフィに四皇とか、闇との繋がりがないからね。まァやってることは破壊神なんだけど……。一応ちゃんと洗ってけばクリーンだから、その分未来視を悪用される危険がないでしょ」

 

 

 それだけの理由じゃないだろうが、外れてもないはずだ。乗った船が例えば七武海を降りたドンキホーテファミリーだったら、かなり金額が吊り上がっただろう。

 

 

「リオ先輩もだけんど、ちょっとこれも見てけろ? 黒足のサンジ先輩は額の上がり方も手配書も少しおかしいんだべ……」

「ん? 生け捕りのみ……?」

 

 

 ONLY ALIVEときたか。ドレスローザで活躍したわけでもないのに1億上がってるのも気になる。

 

 

「元海兵からすると、どう思う?」

「うーん、本人に心当たりを聞くのが早いとは思うけど……。誰かお偉いさんの怒りを買ったか、世界政府に近い権力者が身柄を欲しがってるとか?」

「なんだそりゃ。サンジだぞ?」

「さァ……ともかく、ゾウでサンジたちと合流すれば分かるでしょ」

「ああ、航海はナミがいるから問題ねェが、ビッグ・マムの船がどうなったか……!」

「え、ビッグ・マム!?」

 

 

 驚いたリオに、みんながあれ、というリアクションをした。

 

 

「あ、そうか。お前聞いてないのか! サンジたち、ドレスローザを離れた直後にビッグ・マムの船に襲われてよ!」

「上手く撒いてりゃいいがな」

「ひえ、そうなのか。や、やっべ〜〜! そういや喧嘩も売ってるんだった!」

「向こうさんもシーザーを狙ってたらしいが、詳しいことはゾウに着いてみねェとな」

「ええー、流石にもう新聞見てるよな。あ、あのさあ……。ずっと言ってなかったんだけど、実は私……」

 

 

 冷や汗をかきながらごにょごにょしていれば、ドカン、と甲板の方で大きな物音がした。

 

 

「なんだ!?」

「雹です! 人間の頭程あります!」

「甲板に穴が空きましたァ〜!」

 

 

 ドタドタと船員が駆け込んでくる。新世界特有の急激な気候の変化だろう。知らずのうちに荒れた海域に入り込んでしまったみたいだ。

 

 

「ありゃ、じゃあ早くこの海域抜けないと」

「船どっちに動かす!? 航海士は誰だ? 指示しろ!」

「あ、ウチ航海士いねェんです。おれら元々陸のギャングなんで」

「新世界だぞここ!」

「嘘でしょ!?」

 

 

 困った時は田舎のばーちゃんに電伝虫を、と言いながら次々と知恵袋が披露された。どれも雹の対策じゃないのが難点だ。

 

 

「ヤベェこの船沈む! ナミ助けてくれー!」

「あれだけ船を選べたのに乗る船間違えた!」

 

 

 ガシ、とルフィの手がリオの腕を掴んだ。嫌な予感がする。

 

 

「頼む参謀! どうにかしてくれェ〜!」

「初仕事これ!?!?」

 

 

 叫んで、やけっぱちで腕をまくった。

 

 

「任せとけよ、チクショウ! 新世界歴10年舐めんじゃねェ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、着いた……?」

「お前が驚くなよ……」

 

 

 波乱万丈の旅を超え一週間、霧の中にビブルカードが示す巨大な影が見えてきた。ゾウだ。その名前の通り、巨大な象の背に栄えた土地。

 

 

「あ、サニーが見えるぞ!」

「うおおおおー! これが麦わらの一味のご神体を運ぶ偉大なる船(グランドシップ)サウザンド・サニー号先輩……! ありがたやー! ありがたやー!」

「拝むな!」

「よかった、間違いなくゾウに辿り着いてたわね……」

 

 

 サニーに乗り移り、船内をざっと確認する。人影はないから、みんな上陸したんだろう。

 

 

「じゃあな、ロメ男たち、送ってくれてありがとう!」

「じゃあね〜」

 

 

 トサカくんたちはわーきゃー言いながら去っていった。リオたちも、カン十郎の描いた絵を実体化させる能力を使って象の足をよじ登っていく。

 と思ったら後ろのサムライ二人が落ちた。上から落ちてきたものに激突したみたいだ。

 

 

「急に降ってきた今の何だったんだ!?」

「小さい猿だったね」

 

 

 無事ではあるらしいからと、とりあえず登頂。象の背の上の王国の門を潜った。ルフィは一人で先に行ってしまったが、リオはみんなとゆっくり追いかけることにする。

 

 

 人気はない。細かくみていけば、破壊の跡があちこちにある。不穏な気配だ。

 

 

「っ、敵襲!」

「! ……任せろ!」

 

 

 リオの声にゾロが剣を抜いた。小さな人影が森から飛び出して襲ってくる。

 

 

「!? 待って、受けるな!」

「うお!?」

 

 

 電撃が見えた。素早く弾いたゾロが一歩後退する。

 前後して、森の中から別人の声が届いた。

 

 

「待て! やめるのだキャロット!」

 

 

 攻撃してきたのはウサギの、森から出てきたのは犬のミンク族だ。

 くじらの森というところで侵入者が出たらしく、こちらを放っておいて慌ただしく去っていく。

 

 去り際、何やら道順を指示し、そこに仲間の死体がある、と残して。

 

 





原作の眼帯海賊はいつ出てくるんでしょう。



ちなみにリオの当初の賞金額、5億6470万にそこまで意味はないんですが、一応5647(ころすな)になってます。別に海軍がそのつもりでつけたとかそういう訳では無いです。
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