未来が視える元海兵が麦わらの一味について行く話   作:テロン

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宿敵

 

 

 

 

 死体がどうこうと言われたが、確かにリオの見聞色に引っかかる一味の数は一人足りていない。けれども緊張状態にあるようにも感じなかった。

 ひとまず見ず知らずのミンクのいうことを信じるのも、となり、ローの持っていたもう一つのベポのビブルカードを頼りにした一行は、中心部の町で生々しい戦闘の後を目の当たりにした。

 この国は、滅んでいる。それも、ここ一、二週間の間に。

 

 

 そこから象の水浴びのもたらした洪水に巻き込まれ、先に行ったルフィと合流し、よく分からないがミンク族たちに盛大な歓迎を受けた。

 

 

「ガルチュ〜!」

「ようこそ!」

 

 

 そして、建物から出てきたナミとチョッパーに、サンジがいなくなったことを聞いたのだった。

 とはいえ手紙もあり、攫われたわけではないようだが。一方ミンク族の国、モコモ公国は半月前からジャックという海賊に、『雷ぞう』という男を差し出せ、と襲撃を受け、壊滅状態だったという。

 

 

「旱害のジャックか」

「ああ、知っているのか」

「そりゃあね」

 

 

 カイドウのところの大看板だ。3人の大看板の中じゃ一番の若手とはいえ、強大な海賊。

 

 

 公国側はそんな者は知らない、と要求を突っぱねたが受け入れられず、激しい戦闘状態に突入した。昼を統べる王イヌアラシ、夜を統べる王ネコマムシの指揮の下彼らは優勢に立ち回っていたが、痺れを切らしたジャックはシーザーの毒ガス兵器を持ち出したそうだ。

 破壊の限りを尽くしたジャックは、ところが突然この地を去り、その翌日サンジたちが到着し、シーザーを使って毒ガスを中和、生き残った者たちに治療を施した。皮肉なことに、ばら撒かれた毒ガスの製作者がいたわけだ。

 

 

 島を去ったジャックの行方は新聞が伝えている。ドフラミンゴの護送船の襲撃、のち、行方不明。ドレスローザ援護の命が下ったのだろうが、護衛についていたおつるさんやセンゴクさんに撃退されたようだ。

 

 

 日が落ち、イヌアラシの元からネコマムシの領域へと移動しながら、今度は一味に起こったことを聞く。

 

 

 どうやらビッグ・マムの船に目的地を聞かれ、向こうにミンク族がいたことでゾウまでの追跡を許してしまったらしい。船にいたミンク族の男は国を救った一味に感謝し、シーザーの引き渡しのみで手打ちにしようとしたが、同行していた最悪の世代の一人、ギャング・ベッジは任務を優先。ナミたちを人質にサンジを交渉のテーブルに着かせると、お茶会の招待状を渡した。

 

 

 題目は『ヴィンスモーク』家三男であるサンジと、シャーロット家三十五女プリンの結婚。

 サンジは最初それを断ったが、何かを耳打ちされた途端、手紙をナミに託して行ってしまったという。

 

 

『野郎共へ。女に会って来る。必ず戻る』

 

 

 それが、サンジの残した手紙の文面だ。

 

 

「ヴィンスモーク……。そりゃあ、生け捕りのみになるかァ……」

「リオ、知ってるの?」

「まァ、一応世界政府加盟国だし……。でもこうなると除名だろうな……。それで、政略結婚……。うーん……最悪なシナリオだ」

「おい、サンジは帰ってくるんだよな? そう書いてあるし!」

 

 

 ふう、と息を吸って、リオはわかる限りの情報をざっと整理した。

 

 

「ヴィンスモーク家三男として、という招待状なら、この結婚は四皇とヴィンスモーク家……つまり、ジェルマ66との政略結婚だ」

「ジェルマ? でもそれっておとぎ話じゃ……」

「いいや、実在する国だよ。国土を持たない国、ジェルマ。戦争屋だね。四皇の幹部や身内との結婚は通常傘下入りを表すから、両陣営が手を組むってことだろう。サンジは黒足として呼ばれてない……。つまり、うちの一味とは無関係な結婚だ」

「無関係ならいいんじゃねェか?」

「違うんだ、ルフィ。無関係にさせられる……。この結婚が成立すると、サンジは麦わらの一味じゃいられなくなるんだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 ベッジに置いていかれたというビッグ・マムのところのミンク、ペコムズから聞き出せたのは、おおよそリオが想定していたものと同じ話だ。

 リオの顔を見るなりやいのやいのと少し面倒なことを言い出しかけていたのは、聞かれる前にえいっとやって黙らせた。本当にここの一派は家族の話となると面倒臭い。これが血族となるともう本当に……という話は追々するとして。

 

 

 聞き終えたルフィは、一人でサンジを取り戻しに向かうと言い出した。確かに、カイドウとの決戦を控える今、大勢で押しかけて事を荒だてても問題だ。潜入し、こっそりサンジを取り戻せばいい。

 

 

「な、リオもそれでいいだろ?」

「え、うーん……。大筋はそれでいいんだけど……」

 

 

 一応リオに確認を取るのは、『参謀』だからだ。因みに、リオを参謀に採用するのは割ととち狂った行為である。作戦立案能力が死んでいるので。

 

 

「おれ、チョッパー呼んでくる! こいつ早く治すぞ!」

「あ、待ってルフィ!」

 

 

 追いかければ、ちょうどローも一味を引き連れて出てきていた。

 

 

「あー! リオちゃんだ!」

「ベポ!」

 

 

 駆け寄って、モフモフに突っ込んだ。ハートの船員も、古参とは長い付き合いになる。その間ルフィとローで情報交換をして、よくわからないが宴になった。まァ、そんなこともあるか。海賊だもの。

 

 

「で?」

 

 

 酒をジョッキに並々と注いだナミが、どかりと隣に腰を下ろす。

 リオの方は隅っこで「サンジのおやつ食べれると思ったのに……」と、しくしくやっていた。飲めはするけど、甘党なのでそんなに得意じゃないのだ。

 

 

「なーに?」

「何か浮かない顔だけど。ドレスローザのことはだいたいロビンたちに聞いてきたわ。うまくやったみたいじゃない」

「あー」

 

 

 そうか、これもか、と溜息一つ。

 

 

「もー、冷やかさないでよ」

「いいじゃないの、人の恋路の一つや二つ、冷やかしてなんぼでしょ? で? どこまでいったの? 付き合うことにはなったんでしょ!?」

「え、なってないけど」

「え!?」

 

 

 がしゃん、とナミがジョッキを取り落とした。

 

 

「え?」

 

 

 もう一度言って、ナミは立ち上がり、そのまま座り込んだ。

 

 

「どういうこと!?」

「どうもこうも……。言った通りだけど」

「ロビン呼んでくるわ!」

「やめなよ、見張りするみたいだから」

「じゃあウソップ!」

「宴会芸中だよ?」

「もう! この際ゾロでいいわ、連れてくるから!」

「こらこら」

 

 

 本当に突撃しそうで、かつナミなら本当に引っ張ってこれてしまうので止めにかかった。

 

 

「だから冷やかさないでって言ったじゃん……」

「え、ごめんなさい……そんな微妙な関係だったの? ロビンがやりきった、みたいな顔してたからあたしてっきり……!」

「それはそれ、これはこれというか……。私はルフィの船で海賊王目指すし、ローも自分の船があるし。好きだね、ってなったから、それでいいんじゃない?」

「リオがそれでいいならいいけど……」

 

 

 納得してなさそうに俯いて、ナミは「上手くいかなかったわけじゃないのよね?」と念押しした。

 

 

「上手くっていうか……まァ、うん。そこは大丈夫」

「じゃあ浮かない顔をしてたのは? サンジくんのこと?」

「うん……マムのとことはあんま敵対したくないんだよね……」

 

 

 はァ、とため息を吐く。

 

 

「ま、四皇だものね。リオが心配になるのも分かるわ」

「うーん……。いや、話せるだけは明日になったら話すね」

 

 

 リオにしては珍しく明日の宿題へと棚上げして、グイッと酒を飲み干す。

 

 

「いい飲みっぷりだなァ!」

「話は聞かせてもらったぜ!」

「げ、面倒なのが来た」

「あんたたち、トラ男君のとこの……」

 

 

 シャチとペンギンだ。すでに出来上がってるようだが、完全に潰れるまでには時間がかかりそう。

 

 

「おれ達はキャプテンともう10年以上の付き合いでな」

「つまり……分かるな?」

「それってつまり……!」

 

 

 逃げようと立ち上がりかけたところをナミが力付くで押さえ込んだ。動けない。

 なーにがか弱い乙女だ。対クルー限定でナミは度々とんでもないことをする。

 

 

「2人の馴れ初めから逢瀬の数々までそりゃあもうバッチリよ!」

「いいわね、聞かせなさい!」

「やめて〜!! 本当にやめて、ロー、ロー!? あ、待ってやっぱり来ないで!!」

 

 

 どんちゃん騒ぎの宴の隅で、リオは赤くなったり青くなったり、騒がしい夜を過ごしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夜が明け、合流したサムライとミンク族たちにより、ワノ国の光月家とミンク族が固い絆で結ばれていること、雷ぞうは確かにゾウに辿り着いており、それをひた隠しにしていたこと。そしてサムライたちは光月家──その後継、モモの助の家臣であったことが明かされた。

 

 

「どお? ナミ」

歴史の本文(ポーネグリフ)にこれが書いてあったの? 確かにこれを元に海図が描ける!」

 

 

 忍者の雷ぞうが匿われていたのはミンク族が守ってきたクジラの森の巨大樹の中。そこには歴史の本文(ポーネグリフ)が隠されていた。リオはあんまり興味がなくて自分の目では見ていないが、石が赤いらしい。そもそも普通のやつの色も知らないけど。

 

 

「その赤い石の名はロード歴史の本文(ポーネグリフ)! 海の猛者共が探し求める偉大なる航路(グランドライン)の最終地点! そこへ導くための石だ!」

「ラフテル〜!?」

 

 

 海賊王を目指すと言った側から最重要アイテムが転がり込んできた。

 ただし、一つ見つけてゴールではなく、世界に4つあるそれを見つけ、解読し、海図に起こす必要があるらしい。そしてその4地点を結んだ時、最後の島ラフテルの場所が浮かび上がるんだとか。

 

 

「なるほど、それ残りの3つのうち、2つの場所には心当たりがあるな」

「え!?」

「ワノ国とホールケーキアイランド。どうかな」

「お前さん、よう知りおるな」

「推測だけど……だからこその四皇って事でしょう」

 

 

 それで、とワノ国の面々に皆の意識が移る。このことを知り、隠してきた人たち。

 

 

「君たちは、『光月おでん』の臣下と息子たちだ。少し気になる点もあるけど……違わないね?」

「なんと、そこまで……!」

「白ひげとは親交があって。ワノ国に行った奴からも話を聞いたことがある。君たちが狙われているのは、光月おでんが全てを知っているからだ。……海賊王のクルーとして、彼はラフテルに辿り着いている」

 

 

 ワノ国は今、カイドウが支配している。そして、光月おでんは20年前にカイドウによって処刑されている。

 その息子が8歳、というのは年が合わないが、一旦飲み込もう。サムライたちの話によれば、彼らは光月おでんに生かされ、ラフテルの情報を狙うカイドウやその一派に狙われながらも『ワノ国を開国せよ』という遺言に従い、同志を募っているのだ。

 となればここに集った面々の目的は一致する。対カイドウの共同戦線。

 忍者海賊ミンク侍同盟の結成だ。

 

 

「長ェな」

「忍者いるの?」

「いるだろ!」

「それから、同盟は組むけど条件がある!」

「ふむ。ん? いや。それは組む前に言う事ではござらんか!?」

「ウチは今仲間が一人欠けてんだ」

「あァ、サンジの件か……!」

 

 

 サンジを取り返すまで、決戦は少しお預けだ。

 クジラの森を降り、街に戻るまでの間ロジャーや白ひげの船に乗っていたと言うイヌアラシ、ネコマムシの話を聞いた。時間が許せば、もう少し白ひげの昔話に興じたいところだ。

 

 

「あー、じゃあルフィ。詰め込めるだけ私の知ってる情報を詰め込むからね」

「いるか? それ。戦いに行くわけじゃねェんだからよ」

「だから、戦わずに済むように詰め込むの! いい? 覇王色持ちの気配を感じたらすぐにその場を離れるんだよ。今の君ならとりあえずそれで最悪は免れるから」

「気配ィ? 覇王色持ってるかなんて戦ってみないと分かんねェぞ」

「え? いや分かるでしょ。覇王色に覚醒してる人間同士なら近くにいれば感じるはず」

 

 

 リオの言葉にはその場にいた誰もが同意しなかった。おかしいな。

 

 

「それ、リオがそう思ってるだけじゃねェのか?」

「そ、そんなはずは……。まァ、それなら顔を見て判断するのでもいいから。最低限幹部クラスの顔だけでも覚えて……あー、手配書あった方がいいな。サニーに戻るか……」

「リオ、ルフィに詰め込むのは無理だと思うわ」

「じゃあ、あたしが覚えておくわ。一緒に行くから」

「え、ナミもか?」

「決まってるでしょ? 責任感じてるし、第一この新世界の海をあたしなしであんた、渡れるの!?」

「あ」

 

 

 ペコムズの治療のために、とチョッパー、目の前でサンジを奪われたから、とブルックも手を挙げた。

 

 

「リオはどうする? お前、マムには詳しいんだろ?」

「いや、私は行かない。余計な火種は持ち込みたくないしね」

「そういえばあんた、前に四皇の船を砲撃しまくってたみたいなこと言ってたわよね。まさかとは思うけど……」

「あ、いや。えーっと。えへへへへ……」

「褒めてないわよ!!」

「まァそれで行くとカイドウのとこもなんだけど、まだあっちの方が拗れてないんだよね。それに島の構造はペコムズの方が詳しいでしょ。そういうわけで、あと覚えておくことは……」

 

 

 ジェルマの方か。大体の算段をつけ、強制的に話を終わらせる。ここに至ってもリオは滅茶苦茶大事な情報を言い渋っているわけだが、見られなきゃ無いも同然なのだ。

 

 

「ルフィ、歴史の本文(ポーネグリフ)に出会ったら写し一枚お願い」

「いいぞ」

「私もワノ国でカイドウの方の歴史の本文(ポーネグリフ)を調べておくわ」

「じゃあ私、先にサニーに寄って色々取ってくる。帰る用にロープだけ垂らして──!?」

 

 

 ズシン、と島が揺れた。足元のゾウが鳴き、傾いていく。

 

 

「家が崩れるぞ!」

「建物から離れろ、木にしがみつけ!」

 

 

 凄まじい振動の中、ルフィとモモの助が、何かが聞こえると呻き出した。他の皆には聞こえない、大きな声。意思。

 

 

「……それ、このゾウの声じゃない!?」

 

 

 恐らく、リオは『聞こえない』側だ。けれど、薄皮一枚隔てた先で、何かの意思が島中を取り巻いていることは分かる。大きな波のようなものが見えるのだ。

 

 

「ジャックでござる! 強そうな船が5せき! 九時の方角に……!」

「なぜここからそれが!?」

「ジャックはやはり生きてたのか!?」

「でもどうして。ここは常に移動しているはずなのに……?」

 

 

 生きていたのはともかく、彼らがこうも簡単にゾウに辿り着いたことには疑念がある。ジャック側にもミンクがいるのだろうか。もしくは、何処かにビブルカードでも仕込まれたか。

 

 

 象が攻撃を受け、更に大地が揺れる。モモの助に、象の意思が雪崩れ込んでいるが分かる。この象は大昔罪を犯し、ただ歩くことしか許されていない。けれど。

 

 

「モモ! お前の声なら届く気がする!」

「しかし、どんな大声を出せば……」

「いいから叫べ! ゾウが死ぬぞ!」

「……負けるなゾウ! 倒れてはならぬ! ジャックを追い払ってくれー!」

「わ」

 

 

 大きな揺れに、リオはバランスを崩した。多分、ゾウが攻勢に出た。

 聞こえないけれど、ビリビリとリオの五感を刺激して、平衡感覚を失いそうだ。リオの力が悪い方に作用している。

 

 

「リオ!」

 

 

 ローの手が伸ばされて、吹き飛びかけたリオを掴む。そのまま、腕に巻き込むようにして耳を塞がれた。息も苦しいんだが。

 やがて、地響きは静まっていく。ゾウが、ジャックの艦隊を打ち砕いたらしい。

 

 

「終わった……?」

「……もう声は聞こえなくなったぞ」

「うん。そうみたいだね」

 

 

 頷いて、「なんの話してたっけ」と腕を組む。

 

 

「作戦だろ? ナミと話しててくれよ。おれちょっと、食い物もらってくる!」

「あ、そっか。じゃあナミ、サニーまでついてきてくれる?」

「ええ」

「他はローの船でワノ国に向かうよね。そっちの話は船でしよう」

 

 

 言った途端、隣のローが嫌そうな顔をした。見えてなくても分かるからな。

 

 

「お前を乗せるスペースはねェんだが……」

「はァ?」

「そもそも、案内人がいるとはいえビッグ・マムに一番詳しいのも、見聞色が一番得意なのもお前だろうが。潜入作戦にお前より適してる奴がいるか?」

「そっ……。ともかく、私はホールケーキアイランドには行けないの! 意地張ってないで私の部屋の準備でもしてろ! 時間あげるから、見られて困るものは隠しといて!」

「ねェよ!!」

 

 

 噛み付いたローは、プイ、と視線を逸らして何処かへ去って行ってしまった。まァ、あるのは知ってるけどね。リオがせっせと贈っていた小物とか宝石とか。

 

 

「ったく! ……ローがまたサニーに乗ることあるかな? 私もローの手配書隠しといた方がいい?」

「あんたたちは……」

 

 

 呆れた、と言わんばかりのナミを連れて、サニーが停まってるあたりまで戻る。

 

 

「あれ、何かしら」

「え?」

 

 

 あれ、とナミが指差すのは、この国の門だ。門自体はジャックとの戦いですでに破られているが、その少し脇の辺りだろうか。

 

 

「どうかした?」

「いや……。鏡があるのよ。門の横、ちょっと見辛い所に。こんなのあったかしら?」

「鏡?」

 

 

 なんだろう、とサングラスをズラす。ほら、あそこ、とナミが示す先に目を凝らせば、確かに陽光を反射してチカリと光っている。草木に覆われているが、全身が映りそうな鏡だ。

 

 

「よく割れずに残ったね。門番の私物とかかな?」

「野晒しの鏡が?」

「だよねー」

 

 

 笑って、サングラスを戻しかけた途端。

 

 

バチン、と視界が切り替わった。

 

 

「ナミ!」

「っきゃ!」

 

 

 視えたものに、慌ててナミを突き飛ばす。腰を打ち付けたナミに構う暇もなく、覇気を思い切り放出した。

 

 

「リオ!」

「ッあ」

 

 

 けれど、意味がない。何かに巻き取られて、門の方に──。いや、()()()に引っ張られる。

 何か、なんて見なくても分かる。粘度の高い、白い物体。リオの覇気が通じない、強者の気配。古い記憶と傷が疼き出す。この海において、リオの前に立ちはだかるものは多かれど。宿敵、と呼ぶべきはこの一人を置いて他に居ない。

 

 

「リオ、我慢してね! 離しなさい、サンダー・テンポ!」

 

 

 ナミの雷が、一瞬引っ張られる速度を落とした。なんとか踏ん張って、抜け出そうともがく。その間に、町の方から2つの気配。

 リオに覇気に気付いたルフィと、リオと同じものを見た、ロー。

 

 

「おい、何があった!」

「ルフィ、リオが!」

「──リオ!」

 

 

 ルフィが、ローが手を伸ばした。ダメだ、()の攻撃に阻まれる。吹き飛ばされる2人が致命傷にはならないことを確認して、リオは口元だけを何とか解放した。

 

 

「ルフィ!」

「ッ、待ってろリオ、今助けて──!」

()()()! ()()()()()()!!」

「!」

 

 

 それだけ言い残して、ズルリ、と鏡の中に取り込まれていく。大丈夫、すぐに殺されるようなことにはならない。

 

 

 連れていかれる先は心当たりがある。ドフラミンゴが言っていた、リオに高値をつけていた勢力。リオの本名を調べ上げた者たち。リオの懸賞金額がずっと警告していたもの。

 海兵時代は流石に本格的には手を出してこなかった。海賊になって、後ろ盾を失ったと判断したんだろう。二年間の沈黙期間は、リオがソロであまりにも神出鬼没だった。一味に合流した今、リオの居場所を完璧に把握出来る者たち。

 

 

 ──ビッグ・マム海賊団。

 

 

 彼らは昔から、『生きた状態のメルリオール』を欲しがっていた。

 

 

 





ということで、二章終幕です。
次回から最終章。

と言っても、話数としてはそこまで多くありません。この話はワノ国に……行かない!!
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