それからしばらく。
あれこれと言い合いを重ねた上、話は戻って未来視についてに立ち返っていた。
「勘違いされることが多いから言っておくけれど。そもそも未来というのは、遠ければ遠いほど確定した事項だ」
「お前の未来視は、長くて一年先を視るんだったか」
「そう。遠く先が視えるということは、その未来がそれほどまでに変わりようがない、ということ。逆に言えば、数秒後の未来は適切な力さえあれば容易く覆る。これが所謂見聞色による覇気」
通常、未来視と言えば後者を指すだろう。
無為にシーツを玩びながら、思考に耽る。
リオは相変わらずサニー号の医務室で寝転んだまま、不定期に入ってくる未来視をただローに流しながら彼の目で自分を見下ろす、なんて不思議なことをしていた。
「こっちは他人の感情は伴わない。まァ、伴ってなくても目の前にいるんなら見えるだろうし、仕組みとしてはかなり近い」
「適切な力さえあれば、というのは?」
「文字通りだ。強者であれば数秒先の未来を視てすぐ行動することで、その未来を覆せる。そして、大抵未来視の域に達した者はそれが出来る強者だ。誰かに殴られようとしているとして、喧嘩慣れしてれば防ぐなり殴り返すなり選択肢は色々取れるだろ?」
「それが、未来視による戦闘のカラクリか」
「そう。両者共が同程度の未来視をするのなら、単純により強い方が勝つ」
その理屈は、リオの未来視でも変わらない。一応どちらも、見聞色の覇気による観測だから。つまりは見て、聞く事による未来視だ。物理的に塞げば使えなくなる。
「視た未来が先であればあるほど、その対策に取れる時間が増える。その分未来が変えやすくなる……って、具合ではねェと」
「そう、逆。数秒前に確定した未来は、個人の力で変えられる。時間が経てば経つほど、未来の強度は跳ね上がり、覆すために必要な力は増大していく。私は今まで、一日を超えた先の未来が変化した所を見たことがない」
「一日。それが、お前の力の境界線か」
「そうだろうね。変わる未来と、変わらない未来の、境だ」
肯定してから、リオは大きく息を吐いた。
これこそが、リオが一度折れた理由だ。強くなれば、変えられると思った。それも、間違ってはいないだろう。けれど、果たして一人の人間が到達できる地点であるのか。
自分の力の領分を超えた未来視は、どうにもならない事実をその未来が実現するまで見せつけられるだけ。
「短い方は、鍛えりゃ使えるようになるんだな?」
「うん」
「さっきの戦いで、お前は一度自分の心に転写しておれに見せていたが、おれが自分で出来るようになれば負担は減るか?」
「ローもできるようにはなると思うけど、私を使っていい。むしろ、私の視た未来の方に力を貸して」
同じだけの未来視をするなら、純粋な力勝負になると言った。ただ、その前提はリオには当てはまらない。
「私が一番先を視てる。より先の未来である方が、正確だっていう仕組みな以上、そこに明確な上下関係がある。だから……」
「分かった。なら未来視はお前に任せる。多少は、慣れてもきた。そろそろ動くか?」
「そうだね」
修練の成果は──。実戦で測るしかないだろう。
「まずはトニー屋のところか」
「うん。女子部屋の鏡が一番大きいかな。呼びかけてみよう」
頷いたローがリオを背負って、部屋を移動した。女子部屋に入るついでに、心の中で散々見ていたファイルを回収する。
「チョッパ〜〜、私たちも入れて〜〜」
「その声、リオか!」
すぐに答えがあった。鏡の向こうに突然チョッパーの姿が現れ、片手が差し出される。
「良かった、トラ男が助けられたんだな!」
チョッパーの後ろでは鏡世界とを行き来する能力者、ブリュレが気絶した上で簀巻きにされていた。彼女に触れていれば自由に出入りできるらしい。
「あれ、ここサニーか?」
「そう、戻ってたの。他のみんなを探してたんだよね?」
「おう! ここからなら城中の鏡に繋がってるはずだ」
もう少しかかるかもね、と返してリオはローに下ろしてもらうよう頼んだ。チョッパーが汽車っぽい人を足代わりに使っていたので、そこへ。
「もう少し? あ、リオ目が見えてるぞ!」
「うん、色々取られちゃって、取り返さないと。後ロー、君も寝てないでしょ。こっからは少しでも休んでおいて」
武器は元より、サングラスも奪われている。リオの視た限りではみんなを回収できるまで少し時間がかかるから、その間に回収しておきたい。
「先にそれを手伝ってもらえる?」
「分かった、そうしよう」
それから、とウサギのミンクの方に視線をうつせば、心得たように「キャロットだよ!」と返された。
「そうか、キャロット。戦力と思って良いんだよね?」
「勿論!」
「よし。じゃあ道すがら情報共有だ。君たちが見てきたものを教えてね」
もう一人着いてきてくれたというミンクのペドロを鏡世界に回収し、続いて逃げる途中のナミとジンベエを迎え入れ、これで半分は合流できた。
「リオ、あんた……! 何ともないのね!?」
「うん!」
あちこちバキバキのまま安請け合いしたリオは、飛びついてきたナミに悲鳴を上げた。言われた通りに仮眠を取ろうとしていたローがビクッと飛び上がる。
「ちょっと、ボロボロじゃない!」
「なんだ……!?」
「いや、大体は大丈夫なんだよ」
腕の良い医者が二人もいるし、と取り返したサングラスをかけ直した。リオの荷物は割とすぐに見つかっていた。城内のどこかの小部屋に、全てまとめて置かれていたのだ。どう考えてもカタクリの仕業で、リオへの態度は相変わらずのようだった。
辺りを見渡していたローの方は、見切りをつけてまた目を閉じる。そうそう、少しでも寝ておかないと。
「メルリオール!? 来ておったのか!」
「あれ、ジンベエちゃん知らなかったの? この子、サンジくんと同じように捕まってたのよ」
「いや、傘下にそのような情報は入っとらん。それに、トラファルガーが来ているとも」
「おや、そっちはなんでだろ」
荷台の真横まで来て、ジンベエはナミにピッタリとくっつかれているリオを覗き込んだ。魚人島ぶりの再会だ。
彼は魚人島がビッグ・マムの旗を掲げていた通り、今はマムの傘下だ。ここにいても不思議ではないが、今まさに盛大に裏切っている。
「そうだ、プリン! あの子が私たちの情報を流したのね。だとしたら、あの場に居なかったトラ男くんのことは知られていないのかも」
「え、プリンが? でもそうか、トラ男は別で買い出しに出てたもんな。変装してたし」
「あの変装意味あったんだ。あ、起きなくて良いよ、ロー。知られてないなら良かった。それであいつ、割とあっさり引いたのか……」
「あいつ?」
問いかけたナミに「後でね」と首を振って、リオは「次はブルックを探さないと」と辺りを見回した。
まァ、見えていないのでポーズだけれど。
鏡世界はうねったような廊下の壁中に、能力が及ぶ範囲のあらゆる鏡が取り付けられている。どれが何処の鏡なのかは鏡に尋ねれば大体分かるし、映っているものも教えてもらえる。
「ちょっと、まだ話は終わってないわよ! ブルックも探すけど、あんた、本当に……!」
ムニ、と頬が引っ張られた。それが精一杯の抗議なんだろう。
「そうだ、おれたちなんでリオが捕まってたのか知らねェな」
「私とルフィは聞いたわ。幹部のクラッカーっていうやつと戦ったのよ」
「あいつねェ。倒した?」
「ルフィがぶっ飛ばしてやったわ!」
「いいね、やりィ!」
純粋に喜んで見せれば、ナミは反対にブスくれる。まァ、気持ちのいい話じゃなかっただろう。
「もう、本当に心配したんだから! トラ男くんが向かったから信じてたけど、何もされてないのよね?」
「うん。ある意味この島で一番安全なところにいたしね」
なんの話だ、と疑問符を飛ばしている周囲に、「大体はサンジと同じような目的だよ」とちょっと濁して伝える。
「クラッカー、どうせ誇張して伝えたでしょ。どうにもあいつとは折り合いが悪くて……や、大体の海賊とそうだけど、私ってマムの一味からは相当恨まれてるんだよね」
「ええ、聞くに耐えない言葉だったわ。ルフィがぶっ飛ばしてくれてスッキリした」
「お礼言っておかなきゃ」
「でも、そうね。プリンに聞いた時もリオのことは知らないって言ってたし。捕まってた時ビッグ・マムと話したけれど、リオの事はしらばっくれたし。ジンベエちゃんも知らなかったって変な話よね」
そうだね、と首肯する。
「その辺、君は詳しいんじゃないの。実行犯でしょ?」
と、キャロットに雑に運ばれている簀巻きのブリュレに水を向ける。目は覚ましたものの黙り込んでいた彼女は、「誰が教えるか!」と牙を剥いた。
「そうね、ゾウでリオは鏡の中に連れていかれた。ってことはあんたの仕業よね」
「かなり小規模な編隊っぽかったけど。君とカタクリと、後はせいぜい水夫数名でしょ?」
自領に戻るにしては船旅が長かったのも、人手不足と考えれば頷ける。島に来てから出会ったのもメイド数名に医者、マム、クラッカーだけ。
「カタクリ!?」
驚いた声をあげたジンベエは「お前さん、よく無事だったな」と呆れている。
「知ってるの?」
「ああ、ビッグ・マムの次男でな。スイート3将星の頂点、つまり最高幹部だ」
「あのクラッカーより上ってこと?」
「え、いつのまに『3』将星になったの?」
「そうよ、カタクリお兄ちゃんは強いんだから! なのに、なのになんでお前は逃げ出せてるのよ!?」
リオの疑問を無視してブリュレが声をあげた。なるほど、それでずっと黙ってたのか。カタクリは身内に甘く、完璧な男。それは、彼女のような弟妹たちにこそ向けられた姿勢だ。
「まァ、向こうがあんまり乗り気じゃないんだろうね」
リオの返事に、ブリュレはウッと言葉に詰まった。心当たりはあるらしい。
そりゃそうだ、海賊団をあげての作戦なら少人数でコソコソなんかせず、堂々と襲いにくればいい。
「どういう事?」
「君ら、どっちかというと私の事は殺したい派が多いだろ?」
「どっちかというと、じゃないよ! たかだか一海兵の癖に、どれだけうちに損害を出したか! いくら潰しても、害虫みたく生き残って歯向かってくるのよ!」
「はは、こっちの損害の方が桁違いに多いんだけど。でもまァ、その様子じゃ賛成派はマムとカタクリくらいかな」
けれど子供たちや傘下がどう考えていても、マムが右といえば右になるのがこの組織だ。
「カタクリお兄ちゃんはお前と出会っておかしくなった! それでも、ママがお前を迎え入れるなんて言いださなけりゃ、事故でも装ってお前を殺せば終わってた話なんだよ!」
「カタクリはこれっぽっちも変わってないよ」
「うるさい、お前がお兄ちゃんを語るな!」
「面倒くさいなァ。君たちって本当、揃いも揃ってみんなそう。『カタクリに何をしたんだ』って殺しにくるブラコンとシスコンばっか。私は何もしてないのに」
腕を組めば、ナミが少し呆れたように「また、あんたの海兵時代のお友達?」と聞いてくる。
また、って、そんなに多くはないだろうに。
「お友達な訳あるかい。あいつのせいでどんだけ死にかけたと……。いや、まァ。実際、本気で殺す気は無かったんだろうけど」
途中からは連れ去りにシフトしていたし。
それでもクラッカーだとか、他の将星のスムージーだとかはほぼ殺す気で来ていたから、あんまり統制は取れていないだろうな、とは思っていた。マムがリオを欲していたのはこれまでの通り。子供たちは表向き従いつつも、隙あらば殺そうとしていた。カタクリはただ愚直に命令に従っていただけ。
では、ないんだろう。
ビッグ・マム海賊団には絶対者であるマムではない者が敷いた不文律が一つあった。
メルリオールを、許可なく殺さないこと。
マムの命令に反するものでもなく、強制力があるものでもなく。今に至るまで破られていないだけの、馬鹿げた掟。
「そう、ま、海賊だものね」
「うん。ただちょっと、なんというか……」
憎みきれない。
これは多分、リオの性質のせい。悪意や殺意、敵意をぶつけられないと、特段嫌ったり憎んだりしないし、出来ない。
あくまで向けられたものを咀嚼して、返していたのがリオだからだ。その時期を抜けた今も、印象は変わらなかった。
「お前……!」
「違う、違います! 誤解です!」
なにを察したか、右隣のローが恐ろしい声をあげながらリオに掴みかかってきた。全然寝れてないな、彼。
ひとまずなんの関係もないことをアピールして、じゃあなんだ、という問いに答えを探す。
「凄く、感覚的な話なんだよ。今のローは、少し分かるかな」
「あ?」
「視点が近い、というか。アプローチの仕方が似てる、というか。こう、雲の上にズボっと頭を出して周りを見渡すでしょ。そうすると、私とカタクリがいるんだ」
魚人島でマダム・シャーリーと顔を合わせた時、「違うな」と思った。何故なら、同じだと思った人間に会ったことがあるから。
黙り込んだローに代わって、少し思考を巡らせたナミが、それって、と口籠った。
「カタクリってやつも未来視が出来るのか!?」
代わりにチョッパーが口にした。ミンクの二人はなんのことやら、と視線を向けてくるだけだが、ジンベエは納得したように頷いている。
「そう。とはいえ私ほどじゃないけどね」
「それは良かったけど、また面倒な相手ね……」
「ある意味、あいつの未来視は私が鍛えちゃったも同然というか。少し共鳴する部分があったから、こっちの先天性のものを努力で再現されてるというか」
「嫌な話しないで!」
「まァ、私も死にかけながら武装色鍛えたからおあいこというか……。なんならもうひとつの方も周りにあんま使える人が居なくて……って、これはいいか。ま、カタクリも未来が視えるって言っても数秒……いや、数分。場合によっては数十分……」
「イヤー! 化け物じゃない!!」
「ナミさん、それだと私も巻き添えで化け物になるんですけど」
「いや『メルリオール』は充分化け物じゃろ」
全然味方いないじゃん。リオより強いやつは両手の指じゃ数え切れないというのに。足の指まで必要かどうかは数えたことがないから一考の価値がありそうだけど。
でも、化け物の名前をあげろと言われて、リオはカタクリの名前は出さないかもしれない。こういう呼称は得体が知れないからつけられるものだ。それこそマムとか、赤髪とか。リオにとってカタクリはそういう対象じゃない。
波長が合ってしまった、というのが一番近いだろうか。気を引き締めとかないと、視線を合わせるだけで伝わってしまう。
そう、未来視に至るほどの見聞色の使い手は、何もカタクリとリオだけじゃない。リオの異能は、誰にも再現ができないから、そこが共通点ではない。
覇気は、意志の力だ。だとすれば、きっと元になる思想が似通っている。
何のために未来を欲するか。その、答えが。
「で、そのカタクリってのは命令に従ってるだけで、頼めばリオを逃してくれそうなの?」
「私がここでうんって言ったら兄弟姉妹たち全員に殺されちゃうよ〜」
「当たり前だよ!」
まんまと逃げおおせている現状だけ見ればイエスなのだが。
あながち、本人にも分かっていないのかもしれない。リオをどうしたいのか。『完璧な次男』としては、どうすべきなのか。
騒いでいるブリュレを見下ろしながら、ナミが小さく溜息を吐いた。
「なんとなく分かってきたわ。あんたきっと、そのカタクリってやつに『何か』はしたのよ」
兄弟姉妹たちは、親の仇でも見るようにリオを睨めつける。カタクリは、メルリオールと出会っておかしくなったらしい。
リオに言わせれば、そんなことは一切ない。同じなのだ。
同じように、与えられたものに向き合っている。
「さて。生きてるだけで『何かをした』ことになるのなら。確かに、メルリオールは何かをしたかもね」
これは、生き方の名前だから。
「ブリュレ、一つ教えてよ。カタクリはなんと言って君を連れてゾウまで来たの?」
滅茶苦茶に顔を歪めただろうな、というのが見えなくても分かった。
「教えるもんか!」
「君、少し素直すぎるね」
「あ!?」
リオの問いの通りに当時の状況を思い浮かべたブリュレに、リオは少し笑って背もたれに体を預けた。
これだから、マムとは敵対したくなかったのだ。
「なに、一人で納得してないで教えなさいよ」
「いやァ……。機会があればね。さ、そろそろいい時間だ。ブルックを探そう」
そうしてしばらく後。一行はブルックが捕らえられたビッグ・マムの部屋の鏡前で尻込みしていた。サングラスを意味もなくカタカタやって、リオは溜息を吐く。
「これで寝首掻ければ最高なんだけどなァ」
「とんでもないこと言わないで!」
部屋に飛んでるハエを過剰な火力で薙ぎ払ったマムを指差して、青ざめたナミが叫んだ。
叫んだと言っても、向こうが起きたら困るから、声量は絞っているけど。
睡眠中のマムはブルックを後生大事に抱きしめていた。珍しいもの好きの血が騒いだのだろう。鏡からベッドまでは少し距離があるし、よしんばブルックを抜き取れても、マムが目覚めて仕舞えばジ・エンド。
「ローが回収するのが一番手っ取り早いんだけど」
言いながら意識を向けるが、今度こそちゃんと寝落ちている。起こすのは忍びない。
「仕方ない、私がちょっと行ってくるね」
「いやいやいや」
よいせ、と立ち上がろうとしたところを総出で止められた。
「その怪我、ろくに歩けんじゃろう!?」
「そうよリオ、安静にしてないと!」
「おれが行ってくるよ! 一番小さくなれるし、足音も立てにくいだろ?」
チョッパーの立候補に薄笑いして、リオは「無理しなくていいよ」と首を振った。
「ブルックと差し替えるダミー人形を用意しよう。それさえ用意してもらえたら後は私がやる。足が使えなくても大した問題じゃないから」
よろしく、と腕を組む。
性に合わないが、他者の見聞色をすり抜けるには同じく高度な見聞色を扱うしかない。その点、この場ではリオが最も適任だった。
「よし」
「本当にやりおったな」
呆れ混じりのジンベエに、リオはパンパンと手を払いながら頷いた。
さっと侵入し、ブルックを引き抜き、鏡に向けて投擲。後はペドロが用意した身代わりを置いて、自分も鏡に突っ込む。しめて数秒の作業だ。マムの寝返りなんかを見透かせるので、リオ的には大した作業じゃない。
「いやァ、助かりました!」
「命があってよかった……」
いきなり吹っ飛ばされたブルックは目を白黒と──正確には目はないけれど──させていたが、状況を把握すれば飄々と鏡世界を見回している。
「やはり、あの警備網を敷かれた時点でロード
落ち込むペドロが回収前に大立ち回りを演じていたのは、囮役を勝って出たから、らしい。けれどもブルックは宝物庫でマムに捕まってしまった、と。
拘束の縄をナミが解くと、ブルックは「はい、これ写しですね!」と頭蓋骨の中から紙を取り出して、「いやーそんな事よりペドロさんこそよくご無事で!」と朗らかに笑った。
「お、全部とれたの?」
「ええ」
「え?」
ナミが慌てて受け取った紙を広げている。
「待ってブルック! これ何? この紙まさか……」
「え?
「て、手に入れてたのかァ〜〜!?」
ワイワイ盛り上がるみんなをよそに、リオはチラリとサングラスをずらした。
大きな紙片に、写し取られた古代文字が並んでいる。
「うーん、読めない」
唸って、またサングラスを戻した。そりゃ、読めるわけがないのだが。