未来が視える元海兵が麦わらの一味について行く話   作:テロン

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予約投稿状態でなんとか全弾用意することができました。この章は26話で終わるみたいです。
予約投稿だとどうも設定した日付順に並ぶらしく、どれが何話か分からなくなるのでサブタイに話数をつけていたのですが、流石に味気ないので過去分含めて◯◯話から何かしらの文言に変更しました。
そのせいで改稿されたことになってますが、文章は一切変わってないです。


骸骨と銃弾一発

 

 

 

 

 センゴク元帥に怒られたガープ中将がとんぼ返りで襲って来る一幕はあったものの、ウソップも無事に帰還し、一行は魚人島を目指し海を進んでいた。

 リオにできることは少ないので、船を掃除したり、備品の在庫チェックをしたり、新聞を読みながら「ルーキーは懸賞金の上がり方も早いんだなァ」なんてぼやいていた。ついでに手配書をごっそり貰ってファイリングする。

 

 

 同室のナミやロビンなんかは「職業病?」なんて首を傾げていたが、どっちかと言うと()()()だろう。

 実は同名の手配書が大量にファイリングされていたりすることを、中を開いたことのない彼女たちは知らない。ついでに気に食わない海賊のそれが千切られて海に散っていることも。

 

 

 途中、流し樽から赤い閃光弾が発射され、その意図を考える間もなく嵐に遭遇。抜けた頃には魔の三角地帯に踏み込んでしまった。霧に包まれた嫌な海域だ。

 

 

「ホラー展開はあんまり好みじゃないんだよね」

 

 

 のんびりとサンジにもらったジュースを飲んでいると、ウソップやチョッパーが「リオ〜〜」と飛びついてきた。

 

 

「おめェの占いでなんか視えないか!?」

「うーん。そもそも『占い』なんてオカルトの筆頭じゃない?」

「じゃあオカルト繋がりで悪霊退散グッズだしてくれよーー!!」

「うーん」

 

 

 リオはもう既に体験してしまっているので、今怖がっている彼らに共感することは難しい。というかそもそもリオに『驚く』とか、『怖がる』という機微はないが。

 

 

「今驚くのと、あとで実物見て驚くの、どっちが良い?」

「実物!? 実物ってなんだよ!! 怖ェ事言うなよな!」

「あ、ほら来たよ」

 

 

 霧の中、のっそりと巨大なガレオン船が姿を現した。陽気な歌声とは裏腹にボロボロの様相。まさしく。

 

 

「ゴースト(シップ)〜〜!!」

「ギャアァアァ!!」

 

 

 ヨホホホ〜と響くのは、ビンクスの酒だろうか。世代を問わず、海賊たちの歌だ。彼は海賊ということらしい。

 あの船に調査に行くということで行きたがり筆頭のルフィと、くじでサンジとナミが選ばれた。

 

 

「リオ! ホントのホントに大丈夫なのよね!?!?」

「だから大丈夫だって。まァ何をもって大丈夫と言うかは人によるけど」

「不安になること言わないで!」

「おいナミ! 早く行くぞ!」

 

 

 震えるナミがルフィに連れていかれ、残った面々は見送りを済ませて一斉にリオの方を向いた。

 正確に言えば一人、フランキーの方はまだリオの占いについて詳しく知らなかったが。

 

 

「ちゃんと帰ってくるよ」

 

 

 それだけ言って、リオは残ったジュースを飲み干した。

 

 

 

 

 

 

 

 ルフィたちは騒々しいガイコツを連れて戻ってきた。やたらテンションの高いガイコツは喜び勇んでナンパ(?)をし、食事をし、自分が一度死んで悪魔の実の力で甦ったことを語った。ついでに影がないことも。

 

 

「影は数年前、ある男に奪われました」

「影を……?」

 

 

 影を奪われると、鏡や写真に写らなくなり、直射日光で体が消滅してしまうという。どこかで聞いたような話だ。

 

 

「それ、やった男はすぐ近くに来てるよ」

 

 

 『生きている人間に会えた』と喜ぶガイコツ──ブルックに、リオはそう声をかけた。どうせもう捕捉されているのだし、これくらいはすぐ知れる。

 

 

「え?」

「モリアでしょ、それやったの」

 

 

 言いながらキッチンの扉を開ける。モリアの居城、スリラーバークは既にサニー号を取り囲んでいた。

 

 

「…………お嬢さん、あなたは一体……」

「リオは元海軍将校なのよ。それよりモリアというのは、王下七武海、ゲッコー・モリアのことかしら」

「そう」

 

 

 頷いて、スリラーバークの方を観察した。無数の気配が蠢いているが、リオの視た通り、現時点ではモリアの傘下や一部の海賊ぐらいしかいない。

 

 

「七武海入りする前の懸賞金は3億越え。今のルフィより少し高いくらいだけど、ルフィはエニエス・ロビーの一件で上乗せされてるからね。それに、昔と今じゃ懸賞金もインフレしてるから、額で強さを測らない方が良いかな」

 

 

 ブルックはリオの話に首を振って、「どれだけの手練れだろうと、みなさん、戦おうなんて考えちゃいけません」と静かに言った。

 

 

「あなた方は今すぐ後ろにそびえる門を何とか突き破り脱出して下さい! 絶対に海岸で錨など下ろしてはいけません!」

 

 

 出会いと食事に感謝をして、ブルックは海の上を走って消えていく。骨だけだから、とは言うが、海面を走るとは恐ろしいスピードだ。

 

 

「と、とにかくルフィ! あいつの言う通りにしましょう! 何が起きてるのかわからないけど完全にヤバイわこの島!」

「ん? なんか言ったか?」

 

 

 ニコニコ笑顔のルフィが振り返った。

 いつもの構図だ。ルフィの方は行く気満々。ロビンは「どう思う?」なんてリオに聞いて来たので、「行った方が良いと思うよ」とだけ答えた。

 

 

「少なくとも私には『行かなかった』未来は視えないからね」

「ふふ。確かに、まるで占いね」

 

 

 リオは答えずに、ウインクだけを返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ナミとウソップ、チョッパーがフランキーの秘密兵器、ミニメリー2号に乗って悲鳴と共に姿を消した。

 

 

「あ」

「あ、ってなんだお前。なんか視えたのか?」

「う、うーん。そんなに大事じゃないと思う」

 

 

 それより、とリオは数歩移動して拳を握った。

 ガコ、と、独りでに錨が降ろされる。

 

 

「勝手に錨が!」

「錨なんて誰も触ってねェぞ!?」

「造ったばっかで歯車が緩むわけねェしな」

 

 

 とにかく上げよう、と動くゾロたちを他所にリオはなるべく自然体を装って片手を引いた。透明人間が好き勝手するというのも気味が悪いし、ひとまずご退場願おう。

 

 

「えいっ」

「ウグッ」

 

 

 ドゴッ、と思ったよりは派手な音が鳴った。狙ったわけじゃないが、上手く鳩尾に入ったらしい。

 

 

「誰!?」

 

 

 素早く振り向いたロビンが声のした付近に腕を咲かせる。探るように動かした手に触れるものはない。

 

 

「…………いなくなったね」

「なんだったんだ?」

「さあ? でも、島の方へ去っていったよ」

「よく分かったわね、リオ」

「未来を視るより簡単だよ。でも、大してダメージは入ってないだろうね」

 

 

 それなら、とみんなの意識が島へと向く。第二陣、上陸だ。

 

 

 三つ首の番犬を超え、墓地のゾンビを蹴散らして進むと、生きた人間に出くわした。彼らもモリアに影を取られた被害者だという。本体が死んでしまえば影も消滅するため、こうして影を取られた人々は島の中で息を潜めているのだろう。

 

 

 打倒モリアを約束し屋敷へ乗り込むと、そこは先ほどより強力なゾンビの巣窟。各個撃破を約束して散り散りになると、リオは真っ先に部屋を脱出した。

 

 

「ロビンと……フランキーだけかな、来れるのは。しばらく待つか」

 

 

 モリアについてリオが知ってることは少ない。そもそもリオは外回りの多い仕事柄だったし、モリアも別に政府に協力的ではなかった。強力な悪魔の実の能力者で、かつてはあのカイドウとも戦争を起こしたほどの実力者。もちろん四皇ほどではないだろうが、油断できる相手ではない。

 最終的にはルフィとの勝負になるはずだ。万が一の時はリオも参戦するが、おそらくそうはならない。

 

 

「…………この後はシャボンディで……。うーん」

 

 

 リオの占いは、実のところそこまで先の未来が視えるわけじゃない。

 今まで視た未来で最も先のもので約一年後。だいたいが数週間から数ヶ月後のものだ。そして視える時間軸はバラバラで、リオの方で繋ぎ合わせる必要がある。

 因みに本物の予言者は何十年と先のことを言い当てるとも聞くし、リオのそれとは別の力であることが分かる。

 

 

 一方通常の見聞色の範疇であれば、ある程度時間軸と深度が一致しているような感覚がある。

 つまり、見聞色で探れる範囲であれば、占いと照らし合わせて順序を推測することが可能だ。このくらいの規模の島であれば、リオが見落とすような場所も存在しないし。島に踏み入った時点でこの島でこれから起こる大まかな出来事は視えたので、リオからするとスリラーバークでの冒険はもう終わったようなものだ。

 

 

「3人の影が取られ、巨人オーズの暴走、ナミの結婚……。幹部3名の撃破、侍ゾンビの打倒。モリアの操縦するオーズとの戦闘、影を取り込んだモリアとの持久戦。やがて日が昇る。この順番かな?」

 

 

 魔の三角地帯の空を見上げる。最後の時点ではこの海域を抜け出してしまっていた。自発的に脱出するとは思えないから、不確定要素が加わるのだろう。日光が完全に影を取られた面々の体を溶かし尽くす前に影の解放が出来るかは賭けになる。

 

 

「それから、くまの襲撃。これは完全にルフィたちの手に余る。…………うん、先は決まってないし、これで大丈夫かな」

 

 

 ともかく、ゾロの怪我が少し大きすぎる。

 やる事が決まればすぐ行動だ。リオはいつだってそうしてた。戦闘音の響く部屋を一度振り返って、リオは屋敷の中枢に向けて走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 熟練した見聞色の使い手であれば、敵地で一切勘付かれずに行動するくらいは朝飯前だ。

 まァ海軍時代のリオにそんな繊細な仕事は縁遠かったが。こう、ガッと行ってガン、とする方が得意だ。

 

 

「んー、ピンクも白もいらないんだよなァ。黒だよ黒」

 

 

 リオの今いる部屋は、衣装部屋のようだった。ドレスもあるが、リオの目当ては仕立てられる前の布だ。光沢のあるなしや布の厚みは気にせず、濃い色の布をありったけ引っ掴む。

 

 

「お、来たな」

 

 

 強大な気配が島の前方に出現した。直に到達するだろう。

 その前に、といつもの電伝虫を取り出した。流石にもうクザンにはかけない。

 

 

 プルプルプルと呼び出し音のあと、『はい』と静かな声がする。

 

 

 答える前に、リオは少し目を瞑った。今更、痛む心もないと思っていたが、どうやら本当のようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「しけてんなァ」

 

 

 屋根の上でライフルを構えながら、リオはそうボヤく。城内に武器庫はないかと探してみたが、まともな狙撃銃は殆ど無かった。おそらくゾンビにする人選からして接近戦重視であり、狙撃の名手のゾンビなどはいないのかもしれない。それか、予備は用意してないか。

 リオはこっちの方が専門なので、相性が悪かったと言う他ない。

 

 

 仕方ないのでそのまま壁をよじ登って屋根まで上がり、最終盤、オーズとの戦闘が始まるのを待っていた。かっぱらってきた暗色の布を体に巻いているため、いつもの白いマントよりは目立たないだろう。

 

 

 流石に戦闘ゼロとは行かず、道中キッチンで調達した塩で何体かのゾンビを屠っている。監視役のゴーストは会わないよう避けて通って来たが、恐らく会ってしまっても支障はなかっただろう。

 

 

「さて」

 

 

 別の屋根の方では、ゾロは剣士のゾンビと戦闘を繰り広げていた。あそこに割って入るとリオの方が集中砲火を食らいかねない。サンジ、ウソップ、チョッパーとロビンの方は室内で手が出せないが、つつがなく進行中だ。

 

 

 屋敷の壁の一点に向けて銃を構える。一発の銃弾に、覇気を丹念に織り込んでいく。過剰とも言えるほどだが、これだけ準備期間があれば調整は問題ない。

 

 

 各地点の戦いが終結していく。

 そして……。来た。騒々しい気配だ。

 

 

「出て来ォ〜〜い! 麦わらの一味ィ〜〜!」

 

 

「そこッ!!」

 

 

バチンと高らかに音が鳴る。

リオにしか聞こえない音。

リオにしか見えない雷。

 

 

 撃ち出した銃弾が、オーズの右肩を打ち砕いた。ゾンビ故に痛みは感じていないだろうが、動かすには支障が出るだろう。

 

 

「あ、リオ! お前そんなところで何してんだ!」

「こっちのセリフだよ! ゾロ!」

「いいからこっちへ移れ、狙われてんぞ!」

ワン!(はーい!)

 

 

 一発で壊れたライフルを投げ捨て、隣の屋根へ飛び移る。

 

 

「おっと」

 

 

 跳んだ瞬間、リオがいた側の屋根がオーズの左腕によって見るも無惨に砕かれてしまった。流石、国を引いたという伝説の残る巨体だ。

 危なっかしく見えたのか、片手を差し出してくれていたゾロの好意に甘え、中庭でオーズに応戦しようとしているサンジを見下ろす。

 

 

「ありゃダメだね、一人じゃ立ち向かえない」

「だろうな。おいフランキー、何とか狙いをこっちに向けれねェか? おれが出る!」

「よしきた!」

「待って、フランキー!」

 

 

 射撃しようとしたフランキーの左手に触れて、少し左に動かした。

 

 

「半分だけ撃って、1秒後にもう半分射出! 出来る!?」

「お、オウ任せな!」

 

 

 オーズはただ反射神経に優れているだけだ。それなら躱した先に銃弾を置いておけばいい。オーズの動きを見ながら、懐から小刀をいくつか取り出した。W7で買っておいて良かった。

 

 

「当たった!」

「でもあんま効いてねェぞ!」

「問題ねェ、少し止まった!」

 

 

 飛び出したゾロが三本の刀を煌めかせ、技を放った。流石に素早い。回避行動を取られたが、頬に掠って切り裂いた。合わせるようにサンジが下から蹴りを放つ。

 

 

小通連(しょうとうれん)・棘!」

「火の鳥星!」

 

 

 リオの覇気を込めた小刀と、ウソップの燃え盛る炎弾がバランスを崩したオーズに突き刺さる。まだダメージ自体はそこまでじゃないが、確実に蓄積している。

 とはいえオーズも黙ってやられるほどヤワじゃない。

 

 

「ゴムゴムの〜〜」

「散って!」

「尻モチ!」

「そんな技ねェだろ!」

「うお!」

「あ、ルフィのゾンビなんだ」

「今それか!?」

 

 

 驚いたフランキーに頷いて、リオは少し離れた船の方を観察した。もうくまが到着してる。

 

 

「リオ、時間があればさっきのもう一発いけるか!?」

「無理ね、良さげな狙撃銃がもうないの」

「しゃあねェな。ロビン、関節決められるか?」

「ええ、任せて!」

「くらえ必殺特用油星三連発!」

「フランキー、私ちょっと離脱するね」

「おおう!?」

 

 

 屋根の上から一度戦場を見下ろして、フランキーの返事を待たずに中庭へ向けて飛び降りた。一本小刀を抜き、すれ違いざまに斬りつける。薄皮一枚!

 そりゃそうだ、リオもこの攻撃が本命じゃない。

 

 

「月歩……」

 

 

 空中で切り返し、右足に弾けんばかりの覇気を纏う。リオにだけ聞こえる、バチバチと跳ねる音と共に。

 

 

十種(とくさ)八握剣(やつかのつるぎ)!」

 

 

 鍛え抜いた蹴りがオーズの頬に突き刺さった。内部に浸透し、片側の器官をズタズタに引き裂いていく。多少の破損はものともしないだろうが、動きが鈍くなれば儲けもの。

 隙を逃さずチョッパーが駆け抜けるのが視えた。他のみんなもまだ戦える。あとはルフィが来るまで持たせられればここは大丈夫。

 リオはまだ用がある。反撃が来る前に、離脱しないといけない。

 

 

「ゾロ、頼んだ!」

「あ? ……ったく、しっかりやれよ!」

「……うん! あ、ワン!(ラジャー!)

「キャラはいんだよ、とっとと行け!」

「あい!」

 

 

 空を蹴って、一目散に戦場から離れていった。目指すは七武海、バーソロミュー・くま。モリアとの会談を終え、こちらをジッと観察しているだろう男の元だ。

 

 

 

 

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