唯神夜行 >> シキガミクス・レヴォリューション 作:家葉 テイク
光の出所は、なんて事のない携帯端末だった。
さらに
シャッターのライトに照らされて、壁や床が無差別に明滅し──
(…………?)
突然の奇行に、
当然だが、シキガミクスのカメラ機能はカメラのフラッシュ程度で破壊されない。
だから、大した意味はないはずなのだが──
「なるほど、そこか」
橙黒のメイドの視線が、
『『『ひっ……!?』』』
まるで、猛獣が獲物に狙いを定めたような──野性的な眼光。
カメラの放つ無機質な光とは異なる脅威の光を浴びて、カメラ越しにも拘らず
理屈は分からない。
だが、明確に『バレた』。
その事実が、まるで草食動物が本能的に危機を察知するかのように
──そう。
この場における彼我の捕食関係は、この時点で確定していた。
恐怖した
ガッシャアアアアアアアアア!!!!! と。
「……考えてみりゃあ、単純な仕組みだったんだ」
謎の奇行を働いた
先ほどまでのような高速機動をすることもなくゆったりと歩く
「シキガミクスの機体自体を透明化させる方式は、術者自身が操作不能に陥るリスクが高すぎるから使えない。なら、いったいどういう方式を使ったのか?
そこで思い出したんだ。『透明』って言うと色合いが透き通っているイメージだが……現実に研究されていた『透明化』ってのがどういう代物だったか」
──だが、
確かに足元には『鳴子』代わりの銀食器たちが散らばっているが、足の踏み場もないというわけではなかった。幸い
スッ……と
「光学系で再現可能な方式は、ざっと二つってとこか? 屈折方式と、投影方式だが……」
光の屈折を利用し、疑似的に透明になる方式──これ自体は二〇一〇年代には『量子ステルス』という技術で既に実用化されている代物だが、周囲に物質がある状態では有用性が下がる。
この状況でも有効な光学迷彩ができているという時点で、
「原理としては、プロジェクションマッピングが近いんだろうな」
「テメェの霊能は、周辺の映像をリアルタイムで投影することにより、周囲の景色に溶け込む『カメレオン』。
……おそらく、影のような周辺物への影響にも、リアルタイムで映像を投影することで違和感を消していたんだろうよ」
機体以外の物品に『透明化』──光学迷彩を施したのはピースヘイヴンの発想だが、原理としては陰を消す投影の用途と変わらない。
もっとも、霊能の射程範囲である一〇メートルを超えてしまえば投影は解除されてしまうし、あくまでも機体を中心とした『投影』なので、遮蔽物が挟まってしまえば遮られた部分については通常の見え方に戻ってしまうが。
(…………待てよ?
そこで、
『投影』の射程距離は機体から半径一〇メートル──ということは、機体の影が
「そろそろ気付いたかよ。さっきのカメラのライトは、テメェの機体から影を伸ばす為のものだ。
デフォルトじゃ『投影』で影を塗り潰すよう設定しているんだろうが……射程外にまで影が伸びちまえば、隠しきれねェテメェの尻尾は
『『『………………!!!!』』』
確かにそれならば、
本来は考慮する必要もないくらいのレアケースかもしれない。
そんな状況が自然に発生することがほぼあり得ないし、仮にその状況が偶発的に成立したとしても、普通に戦闘していれば見落とす可能性の方が高い。
ただし、意図的に脆弱性を突こうと思えば話は別だ。
霊能の──シキガミクスの戦闘とは、とどのつまりそういうこと。
その想定の広さと深さが、霊能の盤石さに繋がるのだから。
だが、最早
看破された霊能の弱点など今は良い。そんなものは後からいくらでも調整できる。
それよりも、今はこの場から退避しなければならない。
今このタイミングでシキガミクスを失えば、来るべき
そんな最悪の事態に陥ってしまえば、せっかく『原作者』という勝ち馬に乗った意味も無に帰してしまうからだ。
まだ、逃げて仕切り直せばどうとでもなる。この戦闘メイドから逃避さえすれば。
なのに。
『『『……ど……どういうことだ!?
まるで旧式のコンピュータか何かのように、
「さァな。
適当そうに言って、
彼我の距離は、いつの間にか二メートル弱にまで縮まっていた。
「テメェの霊能、よく手が込んでんな。単に機体だけや陰に対してのみ投影をするだけだと、反射物から機体情報が漏れてしまう可能性がある。
『メガセンチピード』からの逃走で
そこから情報を受け取ることができるかどうかはさておき、『透明化』という自分の居場所を隠すことが重要な霊能ならば、それらに対しても欺瞞情報を投影することで自分の居場所を隠すよう設定しておくのはある意味では当然だ。
もちろん、それだけの作業を人力で実施するのは不可能なので、
だからこそ、『場当たり主義の迷彩』というわけだ。
ただし──全自動とはいえ、その処理能力には限界が存在する。
そこに来て、自分の周囲に大量の食器類である。
顔が映るくらいに綺麗な銀食器は当然景色を余すことなく反射する為に
──結果として、