唯神夜行 >> シキガミクス・レヴォリューション   作:家葉 テイク

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23 陰謀は重層する >> DEEP-LAID PLOT ④

『『『……ば、バカな……!? ……開発者は俺だぞ!? その俺すらも意識していなかった仕様を突いて、シキガミクスを操作不能に陥れる!? そんなことできるわけ……!!!!』』』

 

「何言ってやがる。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 呆れたように、薫織(かおり)は言う。

 

 

「気付かれてねェとでも思ったか? 最初から他者を透明にして攻撃に利用する運用を想定していたなら、そもそもシキガミクスに射撃能力を搭載しているべきだ。

 ……どうせ、脇で片手間の指示出しでもしているピースヘイヴンの入れ知恵だろ?」

 

 

 完膚なきまでに、図星だった。

 

 ──自分で設計開発したモノ、なんて言葉に意味はない。

 そんなものを易々と踏み越えてくるのが──『本物の実力者』の世界だ。

 

 

「どうした、動かねェのか。()()()()()()()()()()? 思考停止のテメェにはお似合いだが」

 

『『『くそっ……くそっ!! くそっくそっ!! 動け!! 動けこのポンコツ!!!!』』』

 

 

 それが、最後だった。

 打鳥(だどり)は『投影』を解除して処理落ち状態を解消しようと試みるが、そもそも対象指定を全自動にしていたのがまずかった。

 何度能力を解除しようとしても、足元の銀食器たちが欺瞞情報の投影対象に選択されてしまい処理落ちが解消されない。

 

 

「悟ったか? 理解したか? ()()()()()()()()()()()。決断も、責任も、自分(テメェ)の生み出したモノの解釈すら他人に委ねているような雑魚が、諦めずに積み重ねている人間に勝てる訳がねェだろうが」

 

 

 そうこうしているうちに、到達してしまう。

 

 

「…………テメェだって本当は最初から分かってんだろ、そのくらい。

 どうしようもねェってんなら手くらいは貸してやるから、初心に帰って最初から出直しやがれこのボケ野郎」

 

 

 必殺女中(リーサルメイド)の、致命確定圏内へと。

 

 

「『メイド百手』」

 

 

 至近距離。

 まさに肉薄と表現すべき距離で、メイドの拳が振り上げられ──

 

 

「『鉄拳奉仕(フィストサービス)』!!」

 

 

 ──そして、シンプルに振り下ろされた。

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 電球のように巨大な頭部を持つ人型のシキガミクス。体長はおよそ一・五メートルほど。

 灰色をベースにした都市迷彩のカラーリングをしている。

 

 透明になる能力。

 機体を外部から透明になっているように見せることができる。

 これは本当に透明になっている訳ではなく、正確にはプロジェクションマッピングのように外部の景色をリアルタイムで機体表面に投影する『光学迷彩』である。

 この投影は機体周辺にも影響を及ぼすことができ、影や周辺の反射物にも着彩することで疑似的な完全透明を実現した。

 また、この能力を応用することで二つ程度ならば機体以外のものも透明化可能。

 

 一方で、大量の物質に対してリアルタイムで投影を実行するのは非常な演算負荷がかかる上、対象の算出自体はオートで実施しているため対象の取捨選択ができず、負荷によっては機体スペックが落ちることもある。

 

 投影が届くのは機体から半径一〇メートル程度。

 つまり、一〇メートル以上にまで影が伸びるなどした場合は影を消しきることができず、透明化に不備が出る。

 

 元々は光線操作系の能力だったが、レーザーのような高出力の実現ができなかった為妥協で今の形に至る。

 

場当たり主義の迷彩(ハプハザードアサシン)

攻撃性:50 防護性:60 俊敏性:60

持久性:60 精密性:60 発展性:10

※100点満点で評価

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「片付いたみたいね~」

 

 

 と。

 場当たり主義の迷彩(ハプハザードアサシン)の頭部を一撃で陥没させた鉄拳メイドの前に、嵐殿(らしでん)が現れた。それを見た薫織(かおり)は眉をひそめて、

 

 

「……どういうことだ。(オレ)が陽動やってるうちにお前は腹心の情報を抜くって手筈じゃなかったか。もしかして失敗したか?」

 

「んもう! 失礼しちゃうわねん!」

 

 

 嵐殿(らしでん)はコミカルに頬を膨らませながら一通り憤慨すると、スッと真顔に戻る。

 細められた目が静かに開かれ、理知的な眼差しが薫織(かおり)を射抜いた。

 

 

「情報は生徒会の書記の子から抜き終えた。こっちの目的は完了だ。……ただし、拾った情報が大分マズくてね…………。その為に、一刻も早く生徒会長のところに行かないといけない。場所は分かっているから、さっさと行こう」

 

「おい、その前に生徒会長の計画を共有しろよ。あと流知(ルシル)達は?」

 

「そのへんの部屋に隠れさせているよ。今はとにかく時間がないから詳しい話は後で。早くしないと間に合わなくなる!」

 

 

 そう言って、嵐殿(らしでん)は走るようにして薫織(かおり)を先導する。

 

 あまりにも性急な話運びに対して薫織(かおり)が不信感を覚えなかったのは、その横顔に不自然さを上回るほどの鬼気迫る焦燥感が現れていたからだ。

 こういう場合は、安心の為に行動を遅延させるよりも、あらゆる方面の『不測の事態』に備えておいた方が総合的には上手く立ち回れるものだ。

 経験上そう判断した薫織(かおり)は、それ以上何も言わずに嵐殿(らしでん)の後を追走する。

 

 

 果たして、目的地はすぐ近くだった。

 

 生徒会室から少し離れた場所。何の変哲もない空き教室に見せかけられた扉の前で、嵐殿(らしでん)は立ち止まる。

 おそらく、陽動用の襲撃を事前に察知してこちらの方に本拠地を移していたのだろう。

 

 走った後だからか肩で息をしている嵐殿(らしでん)は、背後に控えている戦闘メイドに視線を寄越すと、

 

 

薫織(かおり)。此処だ」

 

「仰せのままに……とお嬢様以外に言うつもりはねェが」

 

 

 不良メイドは、特に断りを入れなかった。

 

 バギャア!! と、派手な音を立てて生徒会準備室の扉が蹴破られる。

 薫織(かおり)はすぐさま室内へ飛び込み、嵐殿(らしでん)もそれを追うようにして室内に入っていく。

 

 

 そこには、二人の男女がいた。

 

 

 一人は、打鳥(だどり)保親(やすちか)

 生徒会副会長でありピースヘイヴンの腹心。先程薫織(かおり)に敗北し、シキガミクスを失った少年だ。

 

 もう一人は、トレイシー=ピースヘイヴン。

 生徒会会長であり、今回の黒幕。彼女もまた、此処で潜伏していたらしい。

 

 

 いずれも、顔ぶれとしては薫織(かおり)の予想の範囲を超えないものだった。

 他の伏兵は気配を探る限りはおらず、この室内にいるのは薫織(かおり)達を含めて四人だけ。

 

 ただし──状況については、薫織(かおり)が予想すらしていない異常事態となっていた。

 

 

 端的に説明するならば。

 

 

「……あれ……? 違う……俺は、勝ち馬、に…………?」

 

「…………()()…………?」

 

 

 打鳥(だどり)保親(やすちか)が握っているナイフが。

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

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