唯神夜行 >> シキガミクス・レヴォリューション 作:家葉 テイク
裏切り。
それ自体は、何の不思議もない。
というか、そうでもなければ黒幕であるはずのピースヘイヴンが刺されるという異常事態はあり得ないだろう。
つまり、次なる興味は『誰が』裏切ったのかという話になるが──当然、そこで『
「
聞き慣れない、中性的な響の名前だった。
──
「コイツの部下、生徒会の書記長に
「はァ? 何でまた。生徒会の連中にとってはコイツは『勝ち馬』なんじゃなかったのか?」
それに対し、
ピースヘイヴン──
そのネームバリューを信じて、もうどうしようもない『
それが、生徒会におけるピースヘイヴンの求心力の正体のはずだ。
それなのに生徒会役員の半旗が翻るのでは、そもそもの前提が崩れてしまう。
怪訝そうな表情を浮かべる
「学園の『外』の利権だよ」
そんな、どうしようもない『大人の世界』の理論を。
「このバカは
その機に介入すれば、唯一の陰陽師育成機関を牛耳ることができる。是非とも牛耳りたい。
…………『ウラノツカサ』は唯一の陰陽師育成機関だ。牛耳って自分の利益の為に動かしたいと考える組織だって、少なくはない」
「だからピースヘイヴンが進めている
その上でピースヘイヴンを暗殺することで、あえて完全にアンコントローラブルな
「ということらしい。俺はその情報を別の生徒会書記の生徒から知って、慌てて
とんでもない話だった。
何より、外部組織が凶行に踏み切った理由が
「……ちなみに、テメェが復活した理由は?」
「それは企業秘密だ。教えることはできないな」
「チッ……」
舌打ちするが、
本能的に、此処についてはどう掘り下げようと有益な情報が得られるとは思えなかったのだ。
むしろ此処で下手に拘泥すれば、ピースヘイヴンとの敵対関係がより強固になってしまうリスクもある。
「……な? マズイことになっただろう?」
そう言って、ピースヘイヴンは苦笑しながら肩を竦めた。
この状況でコミカルな動作をしてきやがる黒幕野郎に腹を立てた
「いたぁ! 酷いな……。まぁ、そこの柚香が盗み見た通り、私の計画は
……その為の手足となる生徒会メンバーの半数が敵対したとなると……どうなるか分かるかね」
ピースヘイヴンは一呼吸おいて、
「つまり」
神妙な面持ちで、こう告げた。
「『霊威簒奪』のデマ拡散から始まり、君達が抵抗していた私の計画は────早くも失敗が確定したことになる」
もう一発ブン殴った。
「痛いなぁ!? 私のこの世界の至宝たる頭脳がバカになったらどうしてくれる!?」
「うるせェボケ!! 今まで散々こっちを振り回してくれやがった黒幕野郎が今更ラスボス降りますっつったら、それはもう殴るのが正解だろうが!!!!」
憤慨するピースヘイヴンだったが、悪態を吐く暴力メイドにハァと溜息を吐く。
気を取り直して調子を取り戻すと、ピースヘイヴンは咳ばらいを一つして話を前に進めた。
「とにかく。破壊と混沌しか生まない
現時刻から私は誰が敵だか分からない生徒会を離れてひとまず
…………君達も似たような感じだろ? 一緒に協力しないかね?」
悪びれた様子もなく協力を申し出てくる元黒幕バカに、『コイツもう五発くらいブン殴ってもいいんじゃねェかな……』とわりと真剣に考える鉄拳メイド。
だが、これ以上話の腰を折ってもしょうがない。
「協力の意志が偽装でない確証は? つい数分前まで敵対してたんだ。裏切らない確証がねェ限り
「確証は出せない。それは悪魔の証明だからな。だが、『
「!!」
その言葉に、
「君達の『策』は分かっている。何らかの方法で私の頭の中を覗き『草薙剣』の内部血路の図面を確保して、
確かに、その解決策は的を射ている。その為の設計図を私から提供しようと言っているんだ」
急転直下の提案。
ピースヘイヴンからの提示に、まず口を開いたのは
「…………その解法があると分かっていたなら、何故『シキガミクス・レヴォリューション』を……捨てた?」
「……、……『草薙剣』の紛失はきっかけでしかなかった。言っただろう。私が見据えている問題の根は、もっと深いところにあるんだよ。シロウ」
互いに、少女とは思えないくらいにくたびれた声色。
そこには見た目からは想像もつかない重い歴史があるのだろう。
ピースヘイヴンはそこで、パンと手を叩いて空気を切り替える。
「ともあれ、だ! 私のことは信頼できないだろうし、今すぐ信頼できるだけの材料を提示することも私には不可能。
だが、
「…………有能なカスほど扱いに困るモンもねェな」
つまり、
それに最低限、
「さて、懸念事項は解決したな! では晴れてラスボスは廃業だ。これからは先達として、君達に協力させてもらうよ」
「なんでコイツこの流れでこんなイキイキできるんだ?」
「……気にしないでやってくれ。コイツは
何故か二人を先導して歩き始めるピースヘイヴンの背を眺めながら。