唯神夜行 >> シキガミクス・レヴォリューション 作:家葉 テイク
「あううう……あううう……」
「お嬢様。口調、口調。ですわ」
「あうううですわ……あうううですわ……」
「そうではなく」
あまりのことに頭を抱える
だが、生徒集会での洗脳が相手の既定路線である以上、相手にその方針を捨てさせるにはこれくらい大きな隙を見せないといけないという事情もある。
「まァ切り替えな、お嬢様」
「無茶言いますわねぇ!?」
ぽん、と肩に軽く手を置いてはそう言う
あまりに気軽に提示された無理難題に、
しかし、当の傍若無人メイドは主人の激昂など素知らぬ顔で、
「だから、とっとと潰すんだ。お嬢様と
ちなみに、役割としては
「……つまり、師匠たちが空振りしたらわたくし達が責任重大になるということでよろしいのかしら?」
「察しが良いじゃねェか。冴えてるな、お嬢様」
メイドのはずだ。
メイドのはず──なのだが、その表情にはどこか頼り甲斐のある男の影が見えたような気がした。
見る者を安心させるための笑みを浮かべながら、メイドは自信満々にお嬢様へとこう諭す。
「心配は要らねェよ。拠点防御と迎撃はメイドの十八番だ」
「そんな訳ないですわよね???」
◆ ◆ ◆
「………………」
「………………」
二人の少女達は、横並びになって無言で歩く。
長身の
──二人の間に横たわる重々しい沈黙が、そうしたほのぼのした印象を全て消し飛ばしていた。
「アナタの部下から
歩きながら、
「
「耳が痛いな。だが、君にとっては都合がよかったんじゃないか?」
「
「だとしても、友人の人望が音を立てて崩れていって楽しくなるほど
互いに今世の名で呼び合うのは、隔意の証か。
互いに互いの腹を探り合うようにしながら、二人は先を急いで行く。
「しかし妹
「
どういう原理か知らないけど、と
おそらくメイドなので、お嬢様を護ってると気分が乗るのだろう。
これで納得できている時点で、だいぶ精神の深いところをあのメイドに毒されている気がしないでもないが。
そんな精神汚染メイドの話はさておき、ピースヘイヴンは嫌そうに目を細めながら
「……万一突破されたら私は逃げるが、構わないな」
仮にも黒幕の癖にあまりにも弱腰なのであった。
「どうして始める前から失敗することばかり考えるのよぉ~。もうちょっと明るく考えましょ?」
「
「……それを、アナタが言うのね」
そこで、また会話の流れが途切れた。
数秒か、数分か。時間の経過すらも曖昧になるような重苦しい沈黙の後、二人の足音だけが廊下に響く。
「思えば……こうしてきちんと話をするのは
それは、
さりとて、『前世』を計算に含めた話でもない。彼女は前の生の最期を、横を歩く少女に看取られているのだから。
──それが示すのは、つまり。
「今年で三八歳。はっはっは、陰陽術で若さを保っているとはいえ、流石に物悲しくなってくるなぁ」
『ウラノツカサ』の事情に詳しい学生は、転生者に限らずピースヘイヴンのことをこう呼ぶ。
永久に生徒会長の座に君臨する者──『
考えてみれば、自然の流れではある。
小等部から数えれば一二年の在籍期間がある『ウラノツカサ』だが、いかにピースヘイヴンが原作者であろうと、ほんの十数年程度で原作ではモブの集まりにすぎなかった組織を学園最大の派閥へ変貌させることは難しい。
まして、大量の汎用シキガミクスを配備した万全の支配体制を作り出し、世界を揺るがすような計画を練ることなどできはしないだろう。
校則は問題にはならなかった。
そんなものは、生徒会長になって学園の権力構造の頂点に立った時点で容易に握り潰せた。
つまり──この女は、二〇年間も生徒会長としてこの学園を支配しているのだ。
「君もよくやっているな。学籍もないのに二〇年間も素知らぬ顔で学生をやっているなんて正気の沙汰じゃないぞ」
「だぁって。アナタを放ってなんておけないもの~」
からかうようなピースヘイヴンの物言いを、
──ピースヘイヴンが規則を強引に捻じ曲げて二〇年間生徒会長をやっているなら、
通常であればそんな横紙破りは通らないはずだが、彼女の手腕と──ピースヘイヴン自体が規則を捻じ曲げていることによる混乱で、そんな無法が罷り通っている。
「……どうして、デマなんて流したんだ」
そこで。
耐えきれなくなったように、