唯神夜行 >> シキガミクス・レヴォリューション 作:家葉 テイク
「『シキガミクス・レヴォリューション』の裏設定? ……そういう風に自分の作品を
「おいおい、神格化しすぎじゃあないか? 『シキガミクス・レヴォリューション』という作品のことも、
血を吐くように言う
なんでもないことのように気楽に、かつてそこにあったものの価値を切り捨てるような明るさで。
「私はただの人間だし、アレは今となっては実現することのない虚構の歴史に過ぎない。そんなものに拘泥するほど感傷的だったつもりはないがね」
「…………、」
それほど、彼女にとっては大きな問題だった。
『シキガミクス・レヴォリューション』とは。
単なる策謀の為にその価値を毀損できるような、そんな手札の一枚であるべきではなかった。
少なくとも、オオカミシブキにとっては。
「分かった分かった。デマを撒いたことは詫びるよ。多くの生徒達の人間関係を破壊したことにではなく、『
「煙に巻こうとするな。俺は『何故デマを撒いたんだ』と聞いているんだ」
ピースヘイヴンのはぐらかしに対しても、
その口調からは、既に常の遊びは一切失われていた。
ピースヘイヴンはしかし、そんな鬼気迫るようにさえ見える
悪びれた様子もなく、彼女は語る。
「何故って……単に、それが最善手だと判断したからだが?」
「『霊威簒奪』がか? 生徒会長として学校行事を掌握できる立場なら、学内での試合イベントを増量した方が霊気の蓄積速度は速いし波風も立たないだろう」
──生徒会長として学園を掌握しているのならば、こと学校行事においてできないことはないと言って良い。
それに加え、彼女はもともとこの世界のあらゆるイベントを構築してきた人間だ。
学校行事のデザインくらいは事も無げに行えるだろう。
そんな彼女の立場と手腕であれば──『霊威簒奪』などという、争いを拡散するだけのデマを流布するのは非効率的な様に、
──いや。
正確には、『他にやりようがあるはず』なのにわざわざピースヘイヴンが──
そんな
何か言葉を選ぶような逡巡を見せた後、
「……君の存在を意識していたからだよ。学内で混乱が起これば
「…………、」
ピースヘイヴンはすらすらと語るが、
証言については全く信用されていないらしい。
ピースヘイヴンは困ったように肩を竦めると、続いてこう返した。
「そうこうしているうちに目的地だぞ、
「はぁい。…………ごめんね、
その会話のやりとりを以て、二人の間に横たわる空気が弛緩する。
居合わせた者の精神を削る類の重々しい沈黙から、空々しい喧騒へと。
一旦足を止めて二人が見上げた先。
そこは先ほどまでの校舎の外──正確には、部活動や生徒会活動にまつわる教室が集約された『部室棟』の外だった。
彼女達の視線の先にある校舎は、『図書棟』と呼ばれている。図書館を校舎単位まで拡大した施設で、四階建ての建物には総勢二〇万冊にも及ぶ本が所蔵されていると言われていた。
──
遊撃するならば、此処に突貫するのが話は早い。
──もっとも、それだけ騒ぎを大きくすれば、向こうも当然手薄な久遠たちの方を狙ってくることは容易に想像できるが。
というわけで。
原作関係者二名は、敵の本丸にカチコミへ向かう。
──防備を二人の後輩(今世年齢二二歳差)に丸投げして。
◆ ◆ ◆
「あァ……お嬢様。どうやら予想は悪いほうに当たったらしいな」
時を同じくして。
足を止めた
そこにいたのは、深緑色のストレートヘアを腰ほどまで伸ばした、物静かな少女だった。
眼鏡の向こうの落ち着いた眼差しと言い、楚々とした歩き方と言い、およそ戦闘とは無縁のような印象を見る者に与える。
こんな状況でなければ──いや、こんな状況であっても警戒することを忘れてしまいそうなほどには。
ただし。
その全身からは、尋常ではない戦意が滲み出ている。
──既に外面を取り繕うような段階は過ぎ去っていると悟っているのか、敵対心を隠そうともしていない。
そして──隠そうともしていないのは敵対心だけではなかった。
傍らに佇んでいるのは、人型のシキガミクス。
体長二メートル程度の機体の頭部は顔面にあたる部分がデジタルモニタのような作りになっており、能面のような表情を画像で表示している。
新聞紙を巻きつけたみたいに文字列が乱雑にプリントされた体躯の中で、左胸に浮かび上がる『NO』の文字が特徴的だった。
「…………こちらの素性は、わざわざ説明せずともよろしいでしょうか」
秘書然としたその女は、左手の指でメガネを静かに押し上げながら口を開いた。
「ピースヘイヴンがいないのは好都合。
「へェ、見くびられたモンだな」
「
『外』で名を上げた
傍らのシキガミクスが、両手を構えてファイティングポーズをとる。
「先に警告しましょう。『自分』を保ち続けたいのであれば、今すぐ降伏して私に道を譲ることをお勧めします」
「何ィ? ガチで戦って勝てる気がしないから勝ちを譲ってくださいだって?」
静かに言う秘書然とした少女──
挑発に対し、
代わりにその傍らに立つ機体のデジタルの表情が、引き裂く笑みを表示して──
「……『
「『
二人の『プロ』が、激突する。