唯神夜行 >> シキガミクス・レヴォリューション   作:家葉 テイク

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43 ある反逆の終了 >> DEEP GROOVE ①

 戦闘メイド・園縁(そのべり)薫織(かおり)が生徒会書記長・伽退(きゃのく)悠里(ゆうり)と激戦を繰り広げていた、ちょうどその頃──。

 

 

「早速困ったな」

 

 

 嵐殿(らしでん)とピースヘイヴンの原作者チームは、目的地である図書棟に入るその前に立ち往生していた。

 

 

 『生徒会執行部』の本拠地としては、部室棟に存在する生徒会室がある。

 あそこが生徒会執行部の首脳であることは、かつてピースヘイヴンがあの場に居座っていたことからも間違いない。

 

 しかし、生徒会執行部は役員だけで五〇人はいる大所帯である。

 

 生徒会室の広さは精々教室一つ分。

 活動中その全員が生徒会室に詰めているわけにはいかない。

 したがって、役職を持たない庶務の生徒は図書棟で様々な書類仕事をやるというのが通例になっている。

 

 嵐殿(らしでん)とピースヘイヴンは、そうした庶務生徒達が詰めているところへ乗り込んで反抗の機運を完全に叩こうとしている訳だが──

 

 

「そういえば、私の生徒証が連中に監視されている可能性を考えてなかった。どうしよう柚香(ゆずか)

 

 

 その入棟のド初っ端で躓いているのであった。

 

 ──図書棟は、蔵書の盗難を抑制する為に入場時に生徒証に内臓されている陰陽回路(OC)チップを使って個人認証をしている。

 ピースヘイヴンも嵐殿(らしでん)もそれぞれのやり方でこの生徒証問題は自力で解消しているものの、この入場記録自体は生徒会執行部権限でいくらでも随時閲覧できるような仕組みになっていた。

 

 つまり、正規の方法で図書棟に入場した場合、ピースヘイヴンが侵入したことが生徒会執行部側に速攻でバレてしまうということになる。

 

 

「あらぁ、大変そうねぇ。お姉さんにはなーんにも関係ないけど」

 

 

 が、駅の改札機のような認証システムを前にして立ち往生するピースヘイヴンの横をするっと通り抜けて、嵐殿(らしでん)はいとも容易く認証システムを通過していく。

 

 同じ立場だと思っていたピースヘイヴンは目を丸くして、

 

 

「ええっ!? 柚香(ゆずか)は何で大丈夫なんだ!?」

 

「そもそも私自身の生徒証は書類上卒業した段階で失効してるしぃ。今私が持ってるのは、他の生徒の生徒証を複製したものだから。別にスキャンとかしても私だってバレる道理はないのよん」

 

「何だそれ、ズルいな……。私にも一枚分けてくれないか? どうせ複数持ってるんだろ?」

 

「何で私が協力しなきゃいけないの? 自分で何とかしてねん☆」

 

「えーっ!! ケチ!!」

 

 

 不満そうに唇を尖らせてぶーぶー言う元ラスボスだが、嵐殿(らしでん)は取り合う気もないらしい。

 

 

「何もできないなら私はさっさと先に行っちゃうわよぉ? あぁそうだ。別に侵入がバレたってアナタの力量なら大して困らないんだし、盛大に侵入して陽動でもやったらどうかしら」

 

「そしたらお前が侵入してることも言って力の限り足を引っ張ってやる」

 

「このカス……!!」

 

 

 ギリィ……! と奥歯を噛み締める嵐殿(らしでん)だが、元ラスボスはそんなことはどうでもいいとばかりに地団太を踏んで、

 

 

「ウワーン!! なんとかしてくれよー! なーんーとーかーしーてーくーれーよー!!」

 

「分かったから敵地で泣き喚くんじゃない生徒会長!!」

 

 

 あまりのガキっぷりに、嵐殿(らしでん)のメッキの方が先に悲鳴をあげていた。

 

 嵐殿(らしでん)は頭痛をこらえるようにこめかみを指で抑える。

 

 

「……トレイシーちゃん。何か勘違いしているようだけど、私達は仲間同士じゃないわ。たまたま利害が一致しているから一時的に行動をしているだけで、私たちは敵同士。あまり馴れ合わないでくれるかしら?」

 

「それは君が、昔の感覚に戻ってしまうからかい?」

 

「…………、」

 

「待て待て待て待て! 今のは私が悪かった!!」

 

 

 最低のノンデリ発言に、急速に真顔になる嵐殿(らしでん)

 

 一気に冷え込んだ空気のその場を後にしかけた嵐殿(らしでん)に、ピースヘイヴンは慌てて待ったをかけた。

 その様子を見て重いため息を吐いて、嵐殿(らしでん)は問いかける。

 

 

「……でも、アナタならこんな認証システム程度いくらでも通過できるんじゃないの?」

 

「そうだが、君、それを見て私の霊能の推測材料にしようとしてるだろ」

 

 

 しれっと言われて、嵐殿(らしでん)は思わず息を呑んだ。

 

 コメディなノリに隠して、確かに嵐殿(らしでん)はピースヘイヴンの霊能について確認しようとしていた節はある。

 

 ──都合三八年ほどこの世界で活動していて、それなりに互いのことを認識していた期間も長い二人だが、それでも未だにお互いの霊能についてはほぼ把握できていないと言ってもいい。

 

 既に野望は折れた──と宣言しているピースヘイヴンに対して嵐殿(らしでん)が未だに能力を知ろうとする姿勢を崩さないのは、前世(かつて)の姿を知っているからか。

 

 

「もう計画自体は潰えているので教えてしまっても問題はないのだが、せっかく今まで隠し通してきた霊能なんだ。さっさと教えてしまうのも味気ないだろう?」

 

「アナタはまたそうやって……」

 

 

 ピースヘイヴンはそう言って、茶目っ気を出しましたとばかりにウインクをする。

 嵐殿(らしでん)は呆れたように首を振って嘆息するしかなかった。

 

 嵐殿(らしでん)の雰囲気がいくらか弛緩したのを見て取ったピースヘイヴンは、頼りなさげな笑みを浮かべて言う。

 

 

「……それじゃあ、スペアの学生証貸してくれないか?」

 

「そもそもスペアの学生証なんて今持ってないわよん」

 

「ちくしょーっ!!」

 

 

 だん!! と、膝から崩れ落ちるピースヘイヴン。

 

 彼女に憐れみの視線を投げかける嵐殿(らしでん)と併せ──彼女達が転生者の中でも指折りの重要人物であるとは、余人には分からない有様だった。

 

 

「それじゃ、私は一足先に潜入してるわぁ。トレイシーちゃんは派手に突入して暴れちゃってねぇ」

 

「え!? おい待て! 柚香(ゆずか)! 待って!!」

 

 

 必死に呼び止めるが、嵐殿(らしでん)は最早ピースヘイヴンの方へは振り向きもせず、ひらひらと手を振って立ち去ってしまった。

 

 そうは言っても実は戻ってきて面倒を見てくれるんじゃないか? とちょっと期待していたピースヘイヴンだったが、三〇秒ほど待っても嵐殿(らしでん)が戻って来ないのを確かめると、いそいそと立ち上がる。

 

 俯きがちなその表情は遠目には伺い知れないが──

 

 

「……分かった。じゃあもう全部めちゃくちゃにしてやる」

 

 

 顔を上げたその、いっそコメディに触れ切った不機嫌そうな表情。

 

 

 直後。

 

 

 トレイシー=ピースヘイヴンの姿が、()()()

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