唯神夜行 >> シキガミクス・レヴォリューション   作:家葉 テイク

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46 ある反逆の終了 >> DEEP GROOVE ④

「シキガミクスってのは、()()()()()()()()()()()()()モンだろ」

 

 

 首を傾げる冷的(さまと)だったが、薫織(かおり)の一言を聞いてそのまま顔を蒼褪めさせる。

 

 それは──つまり。

 

 

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 設計図さえあれば。

 本来唯一無二のはずのシキガミクスの複製を、自由に可能ということ。

 

 

「と、とんでもないチート霊能だぞ……」

 

「此処だけ聞けば、そうかもしれねェが……」

 

 

 唖然とする冷的(さまと)だったが、薫織(かおり)の含みのある言葉を聞いて思い直した。

 

 確かに、作中の重要なアイテムを完璧に複製できるという点だけ聞けば反則(チート)級の霊能だが──あまりにも活躍できる場所がピンポイントすぎるのだ。

 

 乾いていないペンキなどを使って足場を悪くする応用もあるにはあるが、触れたところからイラストを描くという霊能の性質上、影響を真っ先に受けるのはよほど状況をコントロールできない限り自分になってしまう。

 引火しやすいシンナー等を発現して火をつけるにしても同様の難点が立ちはだかるし──考えれば考えるほど、戦闘的な意味での伸びしろが見いだせなくなる。

 

 むしろ──。

 

 

「察したか? ……この話が下手に広まれば、流知(ルシル)はシキガミクスの複製ってところだけが無用にピックアップされて警戒されるだろう。

 人格的にも霊能的にも戦闘向きじゃねェのに、たった一つの抜け穴みてェな悪用法だけがクリティカルすぎる。……これはそういう厄介なシキガミクスなんだよ」

 

「な、なんて難儀な……」

 

 

 冷的(さまと)だったら、その事実に気付いた時点で速攻で放り投げるシキガミクスである。

 もっとも、放り投げたところで『そんなシキガミクスを運用できる』という事実があるだけでその後も狙われ続ける、そういう類の厄ネタなのだが……。

 

 そう考えたら、流知(ルシル)を襲った際の薫織(かおり)の異様な合流速度の早さにも頷ける冷的(さまと)だった。

 むしろ、冷的(さまと)流知(ルシル)を襲えたのがある種のイレギュラーと呼べるかもしれない。

 

 

(……考えてみれば、コイツにしたら自分を襲ってきたわたしは、『稀有な霊能を狙ってきた怖いヤツ』に映っていたのかもしれないな……)

 

 

 改めて自分の罪を思い出した冷的(さまと)は、人知れず落ち込んで視線を下に落とす。

 

 薫織(かおり)はそこから話を若干逸らして、

 

 

「それに、飛躍する絵筆(ピクトゥラ)がいくら理論上完璧な内部血路を描けるとしても、霊能の性質上、元となる図面がなければお話にもならねェ。

 原作者(ピースヘイヴン)っていう『完璧な図面を用意できる存在』がいて初めて実現する策なんだよ、これは」

 

 

 だからこそ、ピースヘイヴンから図面を引き出すことが可能(という触れ込み)な嵐殿(らしでん)のはたらきが重要視されていたという部分もある。

 もっとも、今はピースヘイヴン本人の協力を取り付けることができているが。

 

 

「だからわたくし、最初に冷的(さまと)さんに襲われた時は、てっきり何か再現して欲しいシキガミクスの図面でもあるのかと思ってましたの」

 

 

 世間話でもするみたいに、流知(ルシル)はのほほんと言った。

 思い出したくない己の罪をつつかれた冷的(さまと)はしゅんと俯いて視線を逸らす。

 

 なお、元凶であるピースヘイヴンはどこ吹く風であった。

 

 

「そ、その節は……悪かったんだぞ……」

 

「あ、いえ! そうではなくてですね、あの時『困っていることがあるなら協力しますわ』って言っていたでしょう? アレ、実はちょっと『草薙剣』の図面を持ってるんじゃないかって期待も半分だったのでしてよ。

 わたくしを襲うということは、わたくしの霊能に何かしら期待している可能性があるということかもしれませんから……」

 

 

 流知(ルシル)は気まずそうに苦笑して、

 

 

「わたくし、レイア様ほど人間ができているわけではありませんの。だからこういう風にわりと現金なことを考えていたりするので……あんまり気にしすぎないでくださいましね」

 

「……なんていうか、もー、わたし、オマエに一生頭が上がらない気がしてきたぞ……」

 

「どうして今の流れでそうなるんですのっ!?」

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 一目で全体が木製だと分かるGペン型シキガミクス。

 片手で扱える通常サイズだが、持ち手を捻ることで最大で一・五メートル程度まで伸長し、槍のように取り回せる。槍状態では通常の槍に比べるとかなり細身となるが、それでも鉄棒以上の頑強さを誇る。

 

 触れたものの表面にイラストを描いていく能力。

 書く動作を行わず、触れた箇所からインクが広がるように描画される。

 また、下書きなどを無視していきなり術者のイメージしたイラストの完成形を描画することができる。

 

 材質も無視することができ、ガラスの上に鉛筆画を描いて定着させることも可能。また、乾燥具合や塗料の材質なども実在する限りで自在に設定できる。

 

 元々は物質創造系の能力だったが、本人の趣向でイラスト具現化能力に調整された。

 

飛躍する絵筆(ピクトゥラ)

攻撃性:40 防護性:40 俊敏性:20

持久性:20 精密性:本人次第 発展性:70

※100点満点で評価

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