唯神夜行 >> シキガミクス・レヴォリューション   作:家葉 テイク

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47 束の間の安穏 >> BRIEF TEA TIME ①

 そんなこんなで。

 

 ピースヘイヴンが『草薙剣』の設計図を書いている間、暇になった面々は居間でゲームをしている久遠達と合流することに。

 

 

『おお、戻ってきましたか冷的(さまと)。待っていましたよ』

 

「何だよサメガキ、お前も好かれてんじゃん」

 

「わたしみたいな小悪党はいつ神様の逆鱗に触れるか分かったもんじゃないから怖いんだぞ……!」

 

『この小動物感、可愛いと思いませんか? 薫織(かおり)

 

 

 完全に愛玩動物としての好意であった。

 

 神様の尺度での『好かれている』は、必ずしも人間の尺度で喜ばしいものとは限らない。

 特に、自分が悪行を働いた自覚のある冷的(さまと)にしてみれば、自分の悪性がいつ見抜かれるか恐ろしいのだろう。

 ──そんな風に自分を省みることができる時点で、そう心配は要らないと思う薫織(かおり)だが。

 

 ともあれ、非常に気の毒な事になっている冷的(さまと)に対して、ゲームを一時中断した久遠は冷的(さまと)に肩を組みながら、

 

 

「まぁまぁ。静夏(しずか)はわたしの友達ですから、花蓮ちゃんも手荒な真似はしないのです。そんなに緊張するこたぁないのですよ」

 

「あ、姐さん……!」

 

「そういう格付けになってんのか……」

 

 

 ちょっと見ない間に久遠を姐さん呼ばわりすることになっている冷的(さまと)に、薫織(かおり)は同情の念を禁じえなかった。

 

 

「……う。やっぱりちょっと情けない気がするぞ……」

 

 

 薫織(かおり)の同情を察知したのか、冷的(さまと)は少なからずしょぼくれた顔つきで溜息を吐く。

 同情していた張本人であるところの薫織(かおり)は訝しげに眉を顰めて、

 

 

「あ? 何が情けないんだ?」

 

 

 流石に、後ろめたいところのある人間が『神様』と同じ空間に叩き込まれてしょぼくれるのを『情けない』と形容するのは辛辣すぎるだろう。

 何せ、相手は単身で百鬼夜行(カタストロフ)と同等の被害を齎すことのできる化け物である。

 同情することはあっても、馬鹿にするようなことはない武人メイドであった。

 

 対する冷的(さまと)は溜息がちに、

 

 

「何がって……姐さんの前世は猫なんだぞ。つまり、精神年齢は今世の分くらいしかカウントできないだろ」

 

「おう?」

 

 

 要領を得ない感じで頷く薫織(かおり)

 冷的(さまと)は構わず続けて、

 

 

「わたしは前世と合わせたらもー精神年齢は三一歳だぞ……。中身は立派な大人なのに、情けない……」

 

「あー……」

 

 

 肩を落とす冷的(さまと)に、薫織(かおり)はどこか得心がいったようだった。

 薫織(かおり)は言葉を選びながら、

 

 

「そもそも、精神年齢は加算式じゃねェぞ」

 

「えっ」

 

 

 するりと、冷的(さまと)()()()()を指摘する。

 

 

「人間の『大人さ』なんてのは、そいつが身を置いて来た境遇によって変わるもんだ。何十年と生きていようが生き様がガキなら精神だってガキだよ。(オレ)だって、今世じゃ一六年ガキの立場でやってんだ。立派なガキだろ」

 

「本当の子どもは自分のことを堂々とガキだなんて名乗らないと思いますけれど……」

 

 

 そこについては、今世でも一〇年はプロの陰陽師をやっているこの例外メイドなので、そもそも本人の理論に則ればずっと立派な大人をやっているという説もある。

 

 お嬢様からのもっともすぎる指摘を受けた大人メイドは、大人らしく都合の悪い事実には目を瞑り、

 

 

「ともかく、だ。……ガキでいいんだよ。テメェはこれから『大人』になれるんだ。余計なこと考えて気負うんじゃねェ」

 

 

 そう言って、薫織(かおり)冷的(さまと)の頭を乱暴に撫でる。

 

 ────冷的(さまと)は、精神年齢は三一歳と語った。

 今世での冷的(さまと)の年齢が一五歳であることを考えれば──彼女の前世での享年は、一六歳ということになる。

 

 若くして、命を落とした少女。

 

 大人になることができなかった子ども。

 

 このメイドの精神性は、そうした『ガキ』を前にして何もしないでいられるようにはできていなかった。

 冷的(さまと)は少し照れ臭そうにはにかんで、

 

 

「……うん、ありがとー。ママ」

 

「ママ!?!?!?」

 

「あっ間違えた! 違う! 今のなしだぞ!!!!」

 

 

 突然のママ呼びに全力で目を剥く流知(ルシル)に、慌てて失言を撤回する冷的(さまと)

 だが、一度口から出た言葉は取り消せないのであった。

 

 

「おー、園縁(姉)君。その歳で一児の母とは業が深いね。流石のママみという訳だ」

 

「まァ慣れたもんだよ」

 

「ママみって何なのです?」

 

「話を引っ張るなぁ!! ってゆーか慣れたもんってオマエはいったいどーゆー人生を歩んできたんだぞ!?!?」

 

 

 顔を真っ赤にして抗議する冷的(さまと)だったが、カスがこんな絶好のオモシロ失言を見逃すはずもなかった。

 『草薙剣』の設計図を起こしていたはずなのに作業をほっぽりだして嬉々として話題に参戦するピースヘイヴンである。

 

 こういうところでウキウキと失言を擦るからカスなんだなぁ、と流知(ルシル)はぼんやり思った。

 お前もめちゃくちゃ目を剥いてリアクションしてただろ。

 

 

「そこはまァ、(オレ)の前世的にな……」

 

 

 特に隠すようなことでもないので前世の話をしてもよかったのだが、話すと長くなることこの上ない話題だったので薫織(かおり)は適当にぼかしておく。

 この手の話は、酒の席で適当に話すに限るのだ。

 今は年齢的に酒を飲める年齢ではないのだが。

 

 と、

 

 

「よーし、わたくしも混ぜてくださいまし!」

 

 

 カスのママイジリから冷的(さまと)を守る為、ゲーム戦線に参戦する流知(ルシル)

 パーティゲーム要素の強い対戦ゲームに興じていた久遠はそれを受けて、両手を広げて歓待する。

 

 

「お! 歓迎するのです流知(ルシル)ちゃん。何故ならこのゲームは四人用なので……!」

 

『──フ、果たして人の子に私の牙城が崩せますか──?』

 

「ゲームでそんな神様アピールされても困るんだぞ」

 

 

 なんだかんだでワイワイと楽しみつつある(地味に神様にツッコミもできてる)四人を少し離れたところから見守り、薫織(かおり)はらしくない優し気な笑みを浮かべていた。

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