唯神夜行 >> シキガミクス・レヴォリューション   作:家葉 テイク

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51 裏切りの胎動 >> FOR THE AMBITION ③

「お疲れ様です姉御ッッッ」

 

「遅かったっすねぇメイド長!」

 

「ちょっと野暮用がな。いいから静かにしろやバカども。周りの迷惑になるだろ」

 

 

 当たり前のように転生者にも転生者じゃない者にも慕われている異常メイドは、そうやって平然と喧騒の中心に存在していた。

 アイツを見ていると転生者とかそうじゃないとかは些細なことのように見えるのだが──ここはけっこう重要な対立軸であるはずである。

 たぶん。

 

 流知(ルシル)は心の中でほろりと涙を流しながら、

 

 

薫織(かおり)……。知ってる……? 私この前転生者同士のお喋りを聞いちゃったけど、アナタって他の転生者から原作乖離の結果発生したバグキャラだと思われてるんだよ……)

 

 

 悲しき事実である。

 

 流知(ルシル)も、通りすがりの転生者達が、

 

 

『あんな濃いキャラがなんで原作に出てなかったの? BD特典の小説で登場したキャラ?』

 

『そういえばメイドキャラいなかったしな……。あり得る』

 

『原作乖離の結果誕生したキャラとかじゃないの?』

 

 

 ──と話しているのを聞いてしまったときは、なんともいたたまれない気持ちになったものだ。

 

 と。

 心で涙を流していた流知(ルシル)を見つけて、薫織(かおり)は集団の輪から出て流知(ルシル)にちょいちょいと手招きをする。

 流知(ルシル)はこくりと頷くと、友人に断りを入れてから薫織(かおり)の方へと駆け寄っていった。

 

 ──なお、薫織(かおり)の変人っぷりに内心で呆れている流知(ルシル)であるが、そんな薫織(かおり)をメイドとしている流知(ルシル)もまた周囲からはまぁまぁやべーヤツとみられているのだが、それは本人ばかりが知らないことである。

 

 

「どうしたんですの? ……あまり人の多いところでアナタと一緒にいると、わたくしまで変に噂されそうで困るのですが」

 

「口調をお嬢様にしておいてよく言うな」

 

 

 ド正論であった。

 

 

 第一体育館。

 

 全校生徒一〇八〇人+αが一堂に会した全校集会を開けるだけあって、体育館はドーム球場数個分ほどの広さが確保されている。あまりに広すぎるせいか、壇上の様子を映す為にどでかいハイヴィジョンがその上に設置されているほどである。

 

 そんな大容量の体育館の端っこの方に集まった二人は内緒話をするようなトーンで、

 

 

「そういえば、今日は遅れて来たんですのね。いつも誰よりも早く登校して色々支度するのに……何か問題でもありましたの?」

 

「あァいや、支度なら既に日が昇る前に済ませてある」

 

「えぇ……」

 

 

 ドン引きするご主人様である。

 

 どうやら朝の支度をするよりも先に諸々の支度を済ませてから一旦部屋に戻ってきていたらしい。

 校舎の施錠とかどうなってんの? と疑問に思う流知(ルシル)だが、多分そんなものはこのメイドの前では無意味だとして考えることをやめておいた。

 脱法メイドはさっさと話題を切り上げながら、

 

 

「ただ、今朝はコイツを組み立てていてな」

 

 

 そう言って、薫織(かおり)はパッと虚空から一本の木剣を取り出す。

 そして何でもないように、

 

 

「『草薙剣』のレプリカだ。さっき材料を集めてちょちょいと作った。まだ内部血路はね、」

 

「ばっっっ!?」

 

 

 帯刀メイドが最後まで言い終わる前に、流知(ルシル)は慌ててその木剣を体で覆い隠す。

 

 それから一層声のトーンを落として、

 

 

「なっ……何を考えていますの!? こんなところで! 誰かに見られたらどうしますの!!」

 

「だから場所を変えてんだろうが」

 

「……ま、まぁいいですわ。いきなりこれを出してどういうつもりなんですの」

 

 

 薫織(かおり)は言われて、『草薙剣』のレプリカを放り投げて流知(ルシル)に手渡す。

 流知(ルシル)は慌ててそれを受け取りながら、

 

 

「だから説明!! いい加減怒るよ!!」

 

「タイムリミットが分かんねェんだよ」

 

 

 薫織(かおり)は肩を竦めて、

 

 

「元々、生徒会連中は生徒集会の最中にあの野郎の暗殺を目論んでいた。つまり、百鬼夜行(カタストロフ)はこの時間にカタをつけねェとマズイ程度には差し迫った状況だったと推測できる。

 ……悲観的に見て、多分今日中ってトコだな」

 

「それは同意しますが……」

 

「……だが、昨日あの馬鹿は図書棟に乗り込んで派手に暴れた。……霊気淀みってのは霊能の大量使用によって加速する。数十人規模の戦闘なんて起きた日にゃあ……タイムリミットがどこまで縮まっているか分かったもんじゃねェだろ」

 

 

 言われてみればその通りであった。

 

 驚愕の事実に愕然とする流知(ルシル)だったが、しかし反論もある。

 

 

「で、でも……会長だってそんなこと気にした様子ではなかったじゃありませんの」

 

「あの野郎の性格を思い出せ。百鬼夜行(カタストロフ)を安全確実に潰す方法を手に入れて、設計図をそれが実現可能な勢力に預けた。

 ……その事実に安心して手前が起こした戦闘の余波を考慮に入れ忘れ、その結果、生徒集会の最中に百鬼夜行(カタストロフ)勃発! ……いかにもありそうな展開だと思わねェか?」

 

「た、確かにありそう……」

 

 

 何せ相手は『霊威簒奪』のデマをばら撒いて百鬼夜行(カタストロフ)の勃発を早めようとしていたら、そのどさくさに紛れて暗殺されかけた黒幕野郎である。

 最後の詰めを誤って大惨事なんて可能性は、全然ありえた。

 

 なので、そこをカバーする為の転ばぬ先の杖というわけである。

 

 流知(ルシル)は感心しながら飛躍する絵筆(ピクトゥラ)を手に取り、

 

 

「そういうことなら、ささっと終わらせてしまいましょう。あ、薫織(かおり)。手が足りないので設計図をわたくしに広げて見せてくださいます? 見ながらでないとちゃんとイメージが湧かないので……」

 

「あいよ」

 

 

 『草薙剣』のレプリカをいじると、柄に当たる部分に蓋のようなものがあり、そこを開くとシキガミクスの内部構造が確認できた。

 流知(ルシル)は手早くそこに絵筆の槍を差し込む。

 

 そして薫織(かおり)が広げたものを目視確認し、

 

 

「……飛躍する絵筆(ピクトゥラ)、発動っ」

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