唯神夜行 >> シキガミクス・レヴォリューション   作:家葉 テイク

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53 縛られた神秘 >> SOOTY DIVINITY ①

 と、いうわけで。

 

 現在、暴走メイドは廊下を全力疾走中である。

 それにしては流知(ルシル)のお腹にそこまで負担がかかっていないのが不思議だった。

 

 

「あの、薫織(かおり)。……裏切りって……?」

 

 

 例によって俵のような形で、お尻を前に向けて肩に担がれながら。

 

 流知(ルシル)は戸惑いつつ、薫織(かおり)にそう問いかけていた。

 

 

 平穏な生徒集会。

 現れない生徒会長。

 かつての確執。

 『裏切り』。

 

 ──思い当たる節は、流知(ルシル)にもあった。

 

 状況はさっぱり分からないが、動機と呼べるものならば幾らでもある。

 そう、そういえばあの生徒集会にはピースヘイヴンの他にも、嵐殿(らしでん)の姿がなかったではないか──。

 

 

 

「決まってんだろ。()()()()()()()()()()()()!」

 

「あっやっぱりあのダメ生徒会長でしたの!?」

 

 

 一瞬でも、『師匠が思い余ってピースヘイヴン会長と揉め事起こしちゃったんじゃないかな……』とか思ったことに、激しく反省する流知(ルシル)であった。

 

 しかしそれはそれとして、ピースヘイヴンが『裏切った』となると、急に事態の緊迫度は増していく。

 

 薫織(かおり)は吐き捨てるように言って、

 

 

「昨日の段階で、もっと深く考えておくべきだった……!」

 

 

 流知(ルシル)を俵のように肩に担ぎながら、爆走するメイドは忸怩たる思いを滲ませながら呻いた。

 その様子にただならぬ非常事態の気配を感じつつ、流知(ルシル)は身をよじってなんとか顔を前方に向けようとしながら問い返す。

 

 

「何がですのっ?」

 

「何故、花蓮(かれん)の野郎がピースヘイヴンの計画の内容を知っているような口ぶりだったか、をだ。……あの時はそれどころじゃねェ危機が転がっていたから気にする余裕がなかったが……そもそも、『神様』っつったって別に全知全能って訳じゃねェだろ」

 

 

 それは、『原作』においても提示されている事実だ。

 『神様』は全知でも全能でもない。本質的には、ただ圧倒的な出力を誇るだけの『怪異の一種』。それが、この世界においての『神様』だ。

 だから、秘されていた事実を知っているならばそれは長い歴史からの推察であったり、何かしらの情報源があったり、さもなくば特有の霊能だったり──とにかく何かしらの『からくり』がある。無条件に何もかもお見通しというわけではない。

 そして。

 

 

「ヤツの霊能は、詳細じゃねェが概要が分かる程度には(オレ)も見たことがある。確かにほぼほぼ無敵みてェな霊能だったが、他者の頭の中を読み取って企みを全部問答無用で暴くようなモンじゃなかった。(オレ)はてっきり何かの繋がりで知ったモンだと納得しちまっていたが……」

 

 

 薫織(かおり)は真実後悔しながら、

 

 

「……そうじゃなかった。花蓮(かれん)側に特別な事情があったんじゃねェ。ピースヘイヴンの野郎が進めていた企みの方が、特別だったんだ」

 

 

 そう、断言した。

 

 

「会長の企みが……? あの、百鬼夜行(カタストロフ)の前倒しがですの?」

 

「『神様』に限らず、怪異ってのは存在の維持に霊気を必要とする。だから現世に存在する連中は生物、とりわけ人の霊気を取り込んでいるわけだが……『神様』は特別でな。連中は、大気中に残存している霊気を吸収することで存在を維持することができる」

 

「それは流石に覚えていますわよっ! それがどうしたんですの?」

 

「おそらく『神様』は、その生態上霊気の流れをある程度読むことができる」

 

 

 言われて、流知(ルシル)は思わず言葉に詰まった。

 

 

「……これは『原作』では明言されていねェ。『神様』は大抵独自の情報網を持っていたし、本筋に絡みづらい以上、作中でのそれらしい描写も『「百鬼夜行(カタストロフ)」前に意味深な表情で霊気が荒れていることに言及すること』くらいしかなかったからな。いわば……『裏設定』だ」

 

「『裏設定』……」

 

 

 流知(ルシル)が言葉を濁すのも無理はない。

 そもそもの発端となった『霊威簒奪』だって、そもそも裏設定という触れ込みで広まったデマだ。そんな『裏設定』がこの局面に来て重要な判断基準となることには、何か皮肉な因果を感じざるを得ない。

 

 

「つまり、花蓮(かれん)の奴がピースヘイヴンの計画について知った風な態度を取っていたのは、ピースヘイヴンの計画の全容を察していたからじゃあなく……『神様』の生態として、ピースヘイヴンの計画によって変容していた霊気の流れを把握していたからって訳だ」

 

「カガミサマが会長の企みを察知していた理屈は分かりましたわ。でも……それって結局、『百鬼夜行(カタストロフ)を前倒ししようとしていた』ことを知っていたってだけでしょう?」

 

「あァ。(オレ)も最初はそうかと思った。だがヤツはあの時こう言っていただろ? 『アナタが為そうとしていた「決着」には目を瞑る』って」

 

「…………?」

 

 

 意図が読めずに首を傾げる流知(ルシル)に、薫織(かおり)はさらに説明を重ねる。

 

 

「あの時点で周知の事実だった百鬼夜行(カタストロフ)の前倒しをわざわざ濁した言い回しで表現したことに違和感を覚えてたんだが……あの時点で、ヤツは『神様』としての感覚で霊気淀みの集積に何かしらの異常を検知していたんじゃねェのか」

 

「え……それって」

 

百鬼夜行(カタストロフ)のコントロール。おそらく、それがヤツの狙いだろう」

 

 

 薫織(かおり)は、端的に断言した。

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