唯神夜行 >> シキガミクス・レヴォリューション   作:家葉 テイク

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54 縛られた神秘 >> SOOTY DIVINITY ②

 ──百鬼夜行(カタストロフ)とは、霊気淀みの濃度が一定を超えて、霊気が暴走する事象のことである。

 その際に発生するのは、大規模な霊気の奔流による物理的な破壊と、()()()()()()()()()()だ。

 

 たとえば、純粋な霊気の結合によって発生した妖怪。

 たとえば、大量の霊気を浴びたことで器物が変質した化生。

 たとえば、霊気の奔流によって命を落とした人間の幽霊。

 

 いずれも強さ・種類共に状況によるのでまちまちだ。

 しかし、場合によっては大怪異と呼ばれるような強力な個体が発生することもある。

 こうした大怪異はただでさえ霊気の奔流によって破滅的な被害が齎された上に圧倒的な武力を誇って君臨し始めるし、往々にしてただの怪異よりも知能が高いことが多い。

 どういう訳か、どこからか──おそらくは霊気経由で──人語など人間の知識すらも記憶した状態の怪異も誕生するくらいである。

 

 『原作』では、それによるピンチが何度かあった。

 

 発生した百鬼夜行(カタストロフ)の第一波で土砂崩れが発生した山の中で全長五メートルの精霊の大怪異が暴れ狂う、なんてことも。

 上空一万メートルで発生した百鬼夜行(カタストロフ)で飛行機が変異した化生の大怪異の中から乗客を救出しなければならない、なんてことも。

 敵の黒幕が百鬼夜行(カタストロフ)によって命を落とした後幽霊の大怪異に変貌して第二ラウンドが始まる、なんてことも。

 

 百鬼夜行(カタストロフ)とそれに付随する大怪異の発生リスクは、むしろこの世界の住民よりもかつての読者(てんせいしゃ)の方が印象深いだろう。

 

 

「短い付き合いだが……ヤツの人間性の一端くらいは(オレ)にも分かる。アイツは確かにカスでクズなデリカシーのないアホだ。

 だが……意味のない破壊に意味を見出してバカ真面目に計画を打ち立てるような、どうしようもねェバカではねェ」

 

 

 そんな百鬼夜行(カタストロフ)によって発生する怪異を、任意で調整することができるとしたら?

 

 

 大量に怪異を発生させる百鬼夜行(カタストロフ)の霊気の奔流を。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「あの野郎はおそらく……自分の思い通りの大妖怪を作り出す為だけに、百鬼夜行(カタストロフ)を引き起こそうとしている」

 

「そ、そんなこと、できるわけ!」

 

 

 反射的に流知(ルシル)が言い返したのも、無理もない。

 

 百鬼夜行(カタストロフ)の原理を考えてみれば分かるだろう。

 そもそも、百鬼夜行(カタストロフ)で怪異が生まれるのだって大規模な霊気によって偶発的に引き起こされる事象なのだ。

 

 太古の海に落ちた雷で、偶発的に原始生命が生まれるようなもの。

 

 これを狙ってやろうというのは、太古の海に雷を堕とすだけで海に複雑な脊椎動物を生み出そうと言っているようなものだ。

 

 まさに、神の御業。

 

 しかし。

 

 

「できねェと、言い切れるか? 相手はこの世界の法則を作り出した張本人だぞ」

 

 

 陰陽術を極めた不老。

 高性能なシキガミクス。

 確かに確定していたはずの死の回避。

 

 見え隠れしている事象を並べ立てるだけでも、ピースヘイヴンがこの世界でも有数の猛者なのは分かる。

 それを考えれば──可能性は大いにあると言えるだろう。

 

 そしてこの推論が正しいなら、ピースヘイヴンが出番になっても現れなかったのは百鬼夜行(カタストロフ)の発生現場でその動きを精密に調整しているから──ということで、一連の流れにも筋が通ってしまう。

 

 

「で、でも望み通りの怪異を生み出せたとしても、怪異は怪異ですわよ? 狙い通りに動くとは限らないのではなくって……?」

 

「『封印型』だ」

 

 

 それに対し、薫織(かおり)は端的に断言した。

 

 

「あの野郎、発生した怪異をそのままダイレクトにシキガミクスの中へと取り込むつもりだろうな。元を正せば、それが()()()()()()()だし」

 

 

 ──シキガミクスは、『怪異の再発』に対する抑止力として発明された。

 では、それが具体的にどういう機能を以て抑止力とされたのか?

 

 その答えが、『封印型』と呼ばれる運用方式(タイプ)だ。

 

 怪異は、特定の条件を満たすことで何かに封印することができる。

 『神様』をその身に封印している久遠の例がその典型だが──かつては現人神や人柱と呼ばれた『それ』を現代のロボット工学を用いて再現したのが、原初のシキガミクスであった。

 

 原初のシキガミクスは何らかの方法で弱らせた怪異を機体に封印することでその霊能を人間の為に行使する『封印型』から始まっている。

 そこから、人間の霊気で稼働するように作り替えたのが『ミスティックミメティクス』シリーズを始めとした怪異をモチーフとした汎用シキガミクスで、その他の汎用シキガミクスはその系譜に連なっている。

 

 現在主流となっている『陰陽師の霊能の使用補助・利便性向上』としての機能にしても、元をただせば『封印型』を基準にして使用者の霊能を司る要素の一部をシキガミクス内に転写することで疑似的な封印を行うという原理が取られている。

 このようにして、『封印型』というのは実はあらゆるシキガミクスの基礎ともいえる運用方式(タイプ)なのだ。

 

 もっとも、ランダムに発生する怪異をリスクを負ってまで封印して運用するより術者の霊能をカスタマイズする方が圧倒的に安価・安全かつ強力ということで、今はほぼ廃れた運用方式なのだが────。

 

 この流行り廃りについては、何かと例外の多かった『原作』においても、数えるほどしか例外はなかった。

 

 ただし、その数少ない例外があまりにも有名すぎるせいで、いまいち例外感が薄かったという評もあるのだが──。

 

 

「……つまり、神織(こうおる)さんと浄蓮(じょうれん)さんの再現ってことですの?」

 

「ああ。そういうことになるだろうな」

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