唯神夜行 >> シキガミクス・レヴォリューション 作:家葉 テイク
白煙ももう掻き消え、ピースヘイヴンと
それを改めて確認すると、
『随分余裕そうだな二人とも! 非戦闘員をこの場に置いておくなんて!』
その声を聞いて、あまりにも激しい戦闘を目の前に竦み上がっていた
「あァ……!? あのシキガミクス、今自分で……」
「
「チィ……!」
術者と自我を共有している
『それとも、私が彼女を狙わないとでも思ったか? 親近感を抱いてくれていることは喜ばしく思うが、楽観的だねぇ!
現状、戦況は私の方が優勢だ! 一瞬のスキを突いて彼女を殺そうと動くことは可能だし、そうすれば彼女を守る為に君達は高確率で痛手を負うだろう!』
この挑発が、
──先ほどの攻撃を無効化された現象。
あの原理が分からないうちには、攻撃しても
それを良いことに、
『……こんな風に、ねぇ』
言葉と同時に、
亜音速で空を引き裂く木片は、過たずに
「どういうつもりだ、コラ」
ゴギン、と。
青筋すら立てて
『こちらの台詞だが。……彼女のような非戦闘要員を戦場に連れ出して、狙われないとタカをくくる方が無責任だと思うよ?』
「
「あの馬鹿……真に受けやがって!」
「おっと。行かせないよ、
歯噛みする彼女の視界の端から、走り去る
◆ ◆ ◆
(…………どうして、会長は私のことをあんなにおどかしていたんだろう)
一方。
走り去った
(私が非戦闘要員で、
会長だって私の覚悟は十分理解しているはず。だって、短い間とはいえ一緒に過ごしたんだもん。
会長は、根っこはいい人だった。だから、
結局は裏切られた関係だが。
そもそも最初は黒幕として出会った間柄だが。
それでも、一緒に遊んだ仲として、一緒に笑い合った仲として──
その彼女が、
嘘つきで裏切り者でろくでなしで外道だが────ピースヘイヴンは、良い人だ。
それが
だからこそ、あの悪辣に振り切れたような挑発がどうしても不自然だったのだ。
まるで、
(……あのまま私が戦場にいたら、会長はたぶん困る状況だった。これは、きっと間違いないはず)
そもそも体育館から一時逃げ出したのも、思惑通りの状況になったとピースヘイヴンに勘違いさせる為。
自分の存在がピースヘイヴンにとって致命的になるならば、こっそり体育館に忍び込み直してしまえばいいのだ。
だが、それよりも先にピースヘイヴンの思惑を読む必要がある。
何故、ピースヘイヴンは
(私のシキガミクスに戦闘能力はない。だから、参戦されたら困るとかそういうのじゃない気がする……。だとすると、霊能関連? でも、今から準備をしてどうにかなるものなんて……、……あ!!)
そこで、
(私、馬鹿だ!! あるじゃん! 『草薙剣』が!!)
己の懐にある──最大のジョーカーを。
(『草薙剣』があれば、
私が
そうと決まれば、あとはもう再度体育館に突入するだけだ。
体育館には正面入り口の他に、準備室を経由する裏口が二つほど存在している。
鍵を破壊するだけなら戦闘中のピースヘイヴンには気づかれないだろうし、準備室はステージのすぐ近くに繋がっている。
そこからなら、おそらく誰にも気付かれずに
「えいっ」
最大(二メートル)まで伸長させた
いかに非戦闘タイプとはいえシキガミクス、通常の物質でしかない裏口の扉はあっさりと破壊された。
(……霊気の淀みに、近づくんだよね……)
もしかしたら流れ弾のようなもので負傷する可能性だってゼロではない。
それでも。
(……私が上手くやれば、一気に状況を変えられる。最低でも会長の目的を潰すことができて、高確率で、生まれた隙を突いて会長を倒すことができる)
ならば、やらない理由はない。
(会長が、師匠が、
裏口から準備室に入った
両手剣サイズの木剣はずしりと重たいが、
天井が崩落した薄暗いステージには、大きく空いた穴から差し込む太陽の日差しと、その風景を歪める直径三メートル程度の『空間の歪み』──霊気の淀みがある。
ステージの下では、まだ
──もっとも、
(……!)
「ッ、
真っ先に気付いたのは、
おそらくメイド特有の感覚で
「会長!!」
ピースヘイヴンの表情が強張るのを見て、
「アナタの野望は──これで終わりですわ!!!!」
そしてそのまま、霊気の淀みへと『草薙剣』を放り投げ──