唯神夜行 >> シキガミクス・レヴォリューション 作:家葉 テイク
「やめろ
しかし、もう行動は止まらない。
我に返った時には既に、『草薙剣』は
そして、霊気の淀みと衝突する。
瞬間、霊気の淀み全体が一瞬鳴動したかと思うと、そのまままるで掃除機に吸い込まれるかのように『草薙剣』へと吸収されていった。
後には、全てを呑み込みステージの上を転がった『草薙剣』だけが残る。
「…………え……?」
何も、起こらない。
何も起こらないということは、『草薙剣』は霊気の淀みを消すことができたのでは?
──いや。
『草薙剣』は、霊気を
ならば、先ほどのような『吸い込まれる』動きはおかしい。
あれはどちらかというと、『封印型』のシキガミクスに怪異が
「く、はははっ」
笑い声が。
まさしく耐えきれなかったという風体の笑い声が、漏れた。
「はははははははっ!! 本当にすまない! そしてありがとう
笑い声の主は、今まさに投擲された『草薙剣』の設計図を描いた張本人であるピースヘイヴンだった。
そう。
そもそも、ピースヘイヴンは最初から
であるならば──裏切るつもりの相手に、馬鹿正直に本物の『草薙剣』の設計図を渡してやる必要もない。
考えてみれば当然の話だが──だからこそ、ピースヘイヴンはそこに至る思考の道筋を断つ策を打った。
「それは、『草薙剣』じゃあない。正式名称を『
──
古事記に伝承される神話においては、
つまり、今ある何かと引き換えに新しいものを生み出すアーティファクト。
その名を冠するシキガミクスを眺めながら、ピースヘイヴンは笑う。
「怖かったろう? 場違いだと思ったろう? それでも君は必死に仲間達の助力たらんと、自分が役に立てる要素を探したはずだ。
そして諦めなかったはずだ! 信じ抜いたはずだ! 手ひどく裏切ったこの私の善性をも、君は信じてくれていたはずだ!!!! 何故なら、君はそういう
だから私はそれに賭けた!
「……正直なところ、私はかなり追い詰められていてね。
そのリカバリに関してはなんとか上手くいったんだが……その分、
そんな時に、君の存在を思い出したんだ。設計図さえあればどんなシキガミクスだろうと作り出すことができる、君の存在を」
あからさまに
そこさえ固まってしまえば、あとは間違った前提の上に推測を積み重ね──そして
「だから一か八か……君の反則的な霊能によるショートカットに頼った。
賭けだったよ。
随分薄氷の上に成り立った策だったが……私は勝った!!!!」
「あ、あ…………わ、わた、わたし……」
「聞く耳を持つなァッ
そこで、一陣の風が舞った。
演説に夢中だったピースヘイヴンは無視して、
(
もちろん、ピースヘイヴンが持ち出してきた『草薙剣』が罠である可能性について、
何ならピースヘイヴンが裏切る前からその可能性を考えていたくらいだ。
だから、ピースヘイヴンの裏切りが確定した段階で
だからこそ──
──少しでも綻びがあれば、
それもまた、
(……だが、まだ終わっちゃいねェ。
霊気の淀みがシキガミクスに内包されているのも考えようによっちゃあこっちに有利。戦闘中にタイムリミットが来ねェってことだからな。
あとはこいつをぶちのめして、
「あっごっ、ごめ、ごめんなさい……! 私、役に立とうと思って、とっ、取り返しのつかないことっ……」
「クズの術中だ、
狼狽してただ詫びることしかできない
「ありゃあお前の心を折る為の話術でしかねェ! 現状はこっちの有利に進んでる!! お前がこっちの切り札なのは何一つ変わらねェんだ!!
……さて
問われて、
一瞬後、そこには一人の令嬢がいるだけだった。
「……はしたない姿を見せましたわ!
舞台袖へ引き下がった
現在地はステージの上。
背後には
眼前二メートルほど先に、
ステージの下には
少し離れたところに
(……ああは言ったがまだ
……今それをやると、ピースヘイヴンはマジで
この状況では、秘密の内緒話をする余裕もない。
何かを手渡そうものなら、ピースヘイヴンのことだしそれだけで
(クソったれ……。マジで前以て言っておけば良かったことばっかりじゃねェか。
……いや、こんなもん結果論だ。終わったことに気を取られている時点で半ば敵の術中……! 切り替えろ、お前はメイドだろ!!)
心の裡で己を叱咤すると、薫織の目の色がスッと平時に戻る。
(もう立て直したか……。本当に一瞬の狼狽だったな。まったく厄介な精神力のメイドだ……)
それを認めて、ピースヘイヴンは一瞬だけ忌々し気に眉を顰め、
「先ほど、君は私の狙いを『大怪異』の誕生と看破したが……これは正確には少し間違いでね」
いかにも上機嫌といった調子で、そんなことを語り出した。
謎の霊能によるカウンターを警戒して
「
つまり、それは。
「
大妖怪を操る少年──を超える。
主人公の、上位互換。
計画の全貌を詳らかにした黒幕は、次にこう宣言した。
「さあ、
────直後。
『天尾羽張』から迸った霊気の奔流が、