唯神夜行 >> シキガミクス・レヴォリューション 作:家葉 テイク
そもそも、
それは、怪異という存在が根本的には霊気の塊であることに起因する。
霊気淀みの濃度が維持可能な限界点を超えると、霊気は拡散しようと乱雑に動きはじめ、これが結果として
しかしこの時、霊気の拡散は
結果、臨界濃度を超えて収束した霊気は、まるで食塩水が結晶化するみたいにして具象化するのだ。
──それが
これは、この世界の『設定』を一から構築したトレイシー=ピースヘイヴンと、それを伝えられた
未だこの世界の何者にも解き明かされていない世界の法則の秘奥である。
そしてその秘奥を知るピースヘイヴンは考えた。
霊気濃度臨界超過崩壊の際に発生する霊気の乱雑な拡散を、一定方向に整えることができないか──と。
元々は、無秩序な破壊を生み出す
実験的に
この怪異による被害はピースヘイヴンの霊能により事なきを得るに至ったが、この方策では霊気の奔流による被害を抑えることはできても、新たな怪異の被害が発生することが分かった。
文句なしの失敗である。
しかし、ピースヘイヴンはこの『失敗』にこそ着目した。
怪異の誕生が避けられないのなら──その怪異をシキガミクスに組み込むことで、制御すればいいのではないか。
それが可能なのであれば、
そうした発想によって実行された計画が、『唯神夜行』である。
ピースヘイヴンが『草薙剣』の内部血路に偽装するように設計し、
このシキガミクスは内部に蓄積した霊気を粒子加速器のように一定方向に回転させ、うずまきのようにやがて中心で収束する仕組みを持っている。
この仕組みによって膨大な量の霊気が一点に集中し、『神様』が誕生するという仕組みなのだが──
「……馬鹿な」
その時。
ピースヘイヴンは、顔を引き攣らせて状況を睥睨していた。
ステージ中央に、『唯神夜行』を秘めた『天尾羽張』。
そこから三メートルほど離れたところに、
そこから一メートルほど離れた壁際にめり込む形で倒れている
ステージの下から一〇メートルあたりの位置に
これが、今の戦場の状況だった。
ピースヘイヴンはひと跳びでステージまで移動すると、信じられないようなものを見る目で己が設計したシキガミクスを見遣る。
「
……!
ピースヘイヴンの推察通り──先ほどの花蓮との接触で、
それ自体は些細な効能ではあるが、それでも『神様』の霊能が授けられていることに変わりはない。
それが『唯神夜行』に干渉することで、完璧だった霊気の収束を乱し──結果として霊気の奔流が発生した可能性は、なくもなかった。
(だが……解せない……)
とはいえ、疑問符は残る。
もしもそうだとしたら、均衡が崩れた今、霊気の奔流があの程度で収まっているのは些か不気味ではある。
失敗したなら、もっと大規模な霊気の奔流が起こっていてもいいだろう。
それに、霊気に関しては生態レベルで熟知しているはずの花蓮が、この状況を予期できずに『加護』を渡してしまったというのも妙な話ではある。
「ぐ…………!」
総合的に言って。
呻くものの、ピースヘイヴンはそれ以上の身動きが取れない。
計画の失敗が確定したわけではなかった。
もしも仮に『唯神夜行』に何らかの綻びがあって、計画が破綻しているならば、今頃『天尾羽張』は瓦解して霊気の奔流が勃発していないとおかしい。
霊気の奔流が
ただし、成功を確信するのもまた早計。
『天尾羽張』自体は
「
そんな中、二もなく動き出したのは
片手に携帯端末を持っているあたり、おそらくは既に
程なくして
「ごめん……ごめん……なさい……私の、せいで……」
実際問題、ピースヘイヴンの悪辣な誘導があったとはいえ最後の一手を打ったのは
彼女の抱える罪悪感は、計り知れないものがあるだろう。
(………………、)
ピースヘイヴンはその後ろ姿を見て何かを言おうとして、
「…………、……大丈夫だからね!! 心配要らないよ! 今、今、
その後の