唯神夜行 >> シキガミクス・レヴォリューション 作:家葉 テイク
《何……? 上に跳躍することで飛沫の壁を乗り越えるつもりか……? だが今の轟音で本体も
飛び道具による遠隔攻撃、ステージに移動しての『唯神夜行』の処理、あるいは重量物の発現による圧殺か。
あらゆる可能性を考慮して構えていると──
「……初志貫徹して『待ち』は崩さず、か。つまんねェぞ、最強」
ひゅるん、と。
追撃も、奇襲も、想定外の策もない。
単なる小休止の発生に、
『どういうつもりだ? 空中でも機動性が失われないという君の特性は理解したが、そうして攻撃の手を止めれば私が先手を取り、君は後手後手になっていくばかりだと思うがな』
「あァ、それは分かっている」
焦燥を煽る目的の
まるで、そうして悠長に構えていることそのものが作戦とでも言うかのような圧倒的自信を携えながら。
「
唯一使用可能な右手に、束になった大量のマッチ棒を発現した。
両足でロープを挟み込んだ
『炎……?』
シキガミクスにとって、火は弱点の一つだ。
基本的に霊気を帯びない物質の攻撃は通用しないシキガミクスだが、内部の回路は熱によってダメージを受けうる。
木製であることも手伝って、火はシキガミクスにとっては天敵なのである。
だが一方で、そんな分かり切った弱点を放置するほど陰陽師は馬鹿ではない。
大多数のシキガミクスは耐火・耐熱塗料によって全体を覆うことで炎対策を行っている。
大量の可燃物を浴びているならともかく、マッチ棒程度の火を被った程度で無力化することは不可能だ。
しかし、
念には念を入れて、
ずるっ。
──と、
地面が変形していたわけではない。
ただ、足元に『何か』が撒かれていたのだ。足に力を入れるだけで滑ってしまうような液体が。
そしてその瞬間、
『ま、さか…………!!』
「メイド百手、『
────大量の、ガソリン。
嗅覚を持たないゆえに気付くのが遅れたが、足元を確認すれば微妙な光の反射具合から特定は容易だった。
そしてそれ以上に危険なのは──それが分かったところで、粘性の液体によって足を取られ転倒した直後では、大量のマッチの火によるガソリンの引火は不可避という点だ。
「ご明察──こいつは『ホワイトガソリン』の缶だッ!」
『ま、さか……先ほどまで足場に発現していた缶は、このための……!!』
全ては、この戦況を描くための布石だった。
飛石の為に発現した缶は、
これを足場として使用しつつ、中のホワイトガソリンを垂れ流すことで引火の準備を整えていたのだ。
もちろん、積極的に撒いている訳ではないので、
だからこそ、
さらに、本体を狙うそぶりを見せることでその警戒を全て自分に集中させたうえで、あえてロープで宙吊りになることで他への警戒が散漫になるように仕向けたのだ。
その結実として現れたのが、この火責め。
しかもガソリンによる『まとわりつく炎』は、耐火・耐熱塗装による防御すらも超えて内部に熱を与え──それだけでなく霊気を帯びている『女中道具』によって発生した炎もまた霊気を帯びている為、シキガミクスにも極めて有効になっている。
いかに
地面を踏んで移動しなくてはならない以上、ガソリンで床全体を滑りやすくされては踏ん張りが効かない。
大量のマッチを迎撃しようとしても、ガソリンにまみれた今の機体では確実に引火は免れない。
「……
その言葉が、
『…………!』
しかし、
それが──、
『「
直後、世界が崩落していく。
空間そのものに走った亀裂の向こう側から見える宇宙のような暗闇から噴き出す突風に押し流されるような形で、世界全体の時間が巻き戻る。
『ハァ……ハァ……。なんというヤツだ……! 「
時の遡行に従い、空中に放り投げられた大量のマッチ棒が
体育館の天井から吊るされたロープに掴まる格好の
『だが、戦況の決定権は私が持っている! 時間遡行完了後の「一〇秒」! この一〇秒ですべてのカタをつける!!』