唯神夜行 >> シキガミクス・レヴォリューション   作:家葉 テイク

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80 そしてまた、新たなる序章 >> NEXT CHAPTER ①

 ──そうして、生徒会長トレイシー=ピースヘイヴンの陰謀は幕を下ろした。

 

 

 学園中を巻き込む『霊威簒奪』の騒動はありはしたものの、それはあくまで全校生徒の一割しかいない転生者の一部でのみ出回った噂。

 多くの生徒達にとっては──『シキガミクス・レヴォリューション』に登場する主要な人物達含め──生徒会長の挨拶がなかったことを除けば、何事もない終業式を経てゴールデンウィークを迎えたのだった。

 

 

 ゴールデンウィーク初日。

 

 薫織と流知は、()()()()()の為に一つの校舎へと足を運んでいた。

 

 

 その校舎の名は、正式名称を『特別生活指導過程学習棟』。

 

 生徒数は一〇〇〇人を超え、そしてその全校生徒が一つの島で生活しているというこの学園都市では、その一〇倍近くの人員が都市運営の為に必要となる。

 占めて一万人もの人間が生活する環境ではインフラはもちろん、犯罪への対応も不可欠となる訳だが──『ウラノツカサ』はその性質上、学生の大半が陰陽師という異能を扱う技術を持つ人間となる。

 

 そして一〇〇〇人も学生がいれば、当然その中のいくらかは犯罪に手を染めることも想定しなければならない。

 この校舎・通称『学生牢』は、その為に存在する問題生徒収監施設でもあった。

 

 先日の『生徒会』のクーデターにおいては、伽退(きゃのく)悠里(ゆうり)を始めとする多くの反逆生徒がこの学生牢に収監された。

 しかし──その後のピースヘイヴンの陰謀の失墜に伴い、多くの生徒は仮釈放として寛大な処分を受けていた。

 

 

 ゆえに、薫織達の目的は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「……なんだか、こういうところにはあまり来たくありませんわね……」

 

 

 学生牢の受付を済ませて、まるで古い校舎のような木造の廊下を歩き──流知は不安そうに言う。

 周囲を忙しなく見渡す彼女の横顔には、明らかに普段と異なるロケーションに身を置く緊張が見て取れた。

 

 まぁ、『ウラノツカサ』の外で喩えれば凶悪犯罪者が収容されるような刑務所に足を運んでいるようなものなのだから、それも当然かもしれないが。

 

 

「心配すんなよ。中にいる連中がどんなモンかは知らねェが、()()()()()()鹿()()。そう考えたら大したことねェように感じるだろ?」

 

「まだ見ぬ悪人たちの格を勝手に下げるのはあまりよろしくありませんわよ……」

 

 

 対照的に泰然自若としている薫織の言葉に、流知はちょっとげんなりしてみせる。

 

 今回、二人が学生牢に足を運んだ目的。

 

 それは──()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

   ◆ ◆ ◆

 

 

 

 学生牢の中でも最奥、地下四階の一番奥にある『特別教室』に、その人物は収監されている。

 

 遠隔操縦の汎用シキガミクスに案内され、重々しい鉄の扉が開いたその先には刑務所の面会室のような小部屋があり、その先に透明のプラスチック板を隔てて広い空き教室のような空間が広がっていた。

 

 

「──やぁ、よく来たね」

 

 

 そしてその空間の中心。

 

 学校においてあるそれそのものの学習机の上に腰かけながら、空色の髪の少女は薫織達を出迎える。

 

 

 トレイシー=ピースヘイヴン。

 

 永世会長(デスポット)にして、現在は最重要問題生徒として学生牢への無期収監を言い渡されている罪人でもあった。

 

 

「……随分と良い暮らしをしているようだな。大人しく収監されたのは反省のあらわれか?」

 

 

 つまらなさそうにしながら、薫織は問いかける。

 

 ピースヘイヴンは頷いて、

 

 

「まぁそんなものかな」

 

「原作者である自分はもう表舞台には関わらない、か? 言っておくが、そりゃ潔さに見せかけた無責任だぞ」

 

「メイドと言うのは心配性だね。無気力になっていないか気を遣ってくれているのかい? だが、心配には及ばないさ」

 

 

 鋭い薫織の言葉に、ピースヘイヴンはあくまで穏やかに切り返す。

 

 ──ピースヘイヴンは、既に学生牢への無期収監を言い渡されている。

 

 彼女が生きてこの学生牢を出るには、それこそ学園が転覆するレベルの異常事態が発生しなければならない。

 

 そういう風に、()()()()()()()()()()のだ。

 

 

 ただしピースヘイヴンはそんな前提を打ち崩すかのように、

 

 

「そもそも、私は今以てまだ生徒会長のままだしな」

 

 

 などと、とんでもないことを言い始めやがった。

 

 

「……は? 学生牢に収監されてるのに? ……あァ、まだ手続きが終わってないからか」

 

「いや違う。そもそも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「急に何を言ってるんですのこの極悪人???」

 

 

 ──殊勝な姿を見せていたから、流知も若干忘れかけていたが。

 

 そもそも、責任感からの行動とはいえピースヘイヴンは学園全体を揺るがす『霊威簒奪』のデマを流して多くの転生者を手玉にとってきた悪人である。

 そしてそんな悪人が二〇年も権力の頂点に立っておきながら、ルールを自分に都合の良い形に変えていないわけなどないのである。

 

 

「そういうわけだから私自身は罪を償う為に牢屋暮らしだが、生徒会長としての影響力は変わらず行使し続けるし、シキガミクスも問題なく運用する。

 君達を此処まで案内した『スニークウルフ』達も私が操作していたんだぞ」

 

「この学園ヤベェな」

 

 

 得意そうに言うピースヘイヴンに、薫織は真顔で言うしかなかった。

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