生産者な魔王だって英雄になれる!   作:背の眼

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五話 大切なものは

あの事件から数日、俺は自分の宿に籠りっぱなしだった。

電気を消して、布団にくるまり、ただ外の世界を拒絶していた。

誰が来ても、「入るな」の一点張り。

前にパーティーを組んだことがある奴等も心配して来てくれたが、帰れ、と追い返してしまった。

自分でも、何をやってるんだろう、と思いはしたが、でも、今は外とは関わりたくなかった。

 

コンコン

とノックがした。

誰だろう。

 

「オルト、私よ。マリアよ」

 

マリア...。

 

「悪いが、帰ってくれ」

 

俺は、マリアも突き放すのか。

本当に俺は馬鹿だ。

でも、マリアには絶対に今の姿を見られたくない。

あまり、身だしなみを整えない自分でも、今の自分は酷いのだ。

 

「......オルト、私、お別れを言いに来たの」

 

今、なんて言った?

お別れ?

誰と誰が?

頭が働かない。

何も考えられず、混乱するばかりだった。

 

「私ね、本当は貴族だったの。それで、許嫁がいてね。その人と今年の10月に結婚することになってるの。だから、

さよなら、オルト。愛していたわ」

 

タッタッタッ

と走り去る音が聞こえる。

 

俺は、また、大切な人を失うのか?

............そんなのは嫌だ!

もう、何も失いたくない!!

全部は、無理かもしれない。

けど、自分の手が届くものは守ってみせる!

 

 

 

 

俺は、身なりを整え宿を出る。

向かうのはギルドだ。

確か、マリアが結婚するのは今年の10月。

今は、7月。

あと3ヶ月しかない。

3ヶ月でなにができる。

考えろ俺!

 

............

 

あ、そうだ!

確か、貴族は貴族同士の決闘で、許嫁を奪うことができたはずだ。

だが、その決闘は、決闘を申し込まれた方が決闘開催の決定権を持つ。

だから、絶対に受けて貰えるとは限らない。

なら、こちらの立場を利用すればいい。

貴族は誰もが高いプライドを持つ。

そこにつけこめばいい。

よし、そうと決まればあとは貴族になるだけだ。

だが、貴族になるのは簡単じゃない。

それなりの成果が必要になる。

成果を挙げるには、その成果の元となる依頼をこなさなければならない。

そのためには、Sランクになる必要がある。

Sランクの最高難易度を一人でクリアすれば、王との会見ぐらい出来るだろう。

まずは、Sランクになろう。話はそこからだ。

 

 

 

2ヶ月の間、俺は休まずに依頼を受け続けた。

そして、ようやく俺はSランクになった。

 

 

本来なら、この短時間でSランクになるのは普通ではない。

だが、オルトにはには確信があった。

その確信とは、オルトに産まれた時からある力のことだ。

 

元々、俺は、この力があまり好きではなかった。

この力は、他人から与えられたものだ。俺は、自分の力で強くなりたかった。

だから、俺はこの力を使わずにここまで這い上がった。

だけど、

 

「これを、この力を、大切な人を守るために使わないでいつ使うんだ」

 

そうだ。今こそ、この力を使う時だ。

そう思った。

 

 

 

 

 

 

そして、俺はギルドに向かった。

 

中に入り、迷わずに依頼をとる。

 

 

「すまないが、これを頼むよ」

 

「はい、えーと、......レッドドラゴンの殺傷......一人で行かれるんですか?」

 

受付嬢が心配そうな顔を俺に向ける。

 

「ああ、一人でなきゃいけないんだ」

 

「そうですか......では、絶対に生き残って下さいね? そうでないと、許しませんから」

 

「わかった。絶対に生き残るよ」

 

俺は振り向き、歩き出す。

 

「行ってらっしゃい」

 

後ろからそう聞こえた。

 

--行ってきます。

 

 

 

 

 

 

 

それから、さらに1ヶ月が経った。

そして、今、教会では、

結婚式が行われていた。

 

 

「では、 汝 マルカスは、この女 マリアを妻とし、

良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、

病める時も健やかなる時も、

共に歩み、他の者に依らず、

死が二人を分かつまで、愛を誓い、

妻を想い、神聖なる婚姻の契約のもとに、

誓いますか?」

 

神父の言葉に、マリアの婚約者であるマルカスは、

 

「はい、誓います」

 

神父は頷き、マリアの方を見る。

 

「 汝 マリアは、この男 マルカスを夫とし、

良き時も悪き時も、富める時も貧しき時も、

病める時も健やかなる時も、共に歩み、

他の者に依らず、死が二人を分かつまで、

愛を誓い、夫を想い、夫のみに添うことを、

神聖なる婚姻の契約のもとに、誓いますか?」

 

 

「......」

 

「新婦 マリア、早く誓いの言葉を」

 

「....はい、ちか「ちょっと待った!!!」っ!?」

 

誰かが言葉を遮った。

私は、その声の方を向いた。

 

「....オルト」

 

すごく嬉しかった。

オルトが私を助けに来てくれた。

それが、嬉しくて涙が出るぐらい嬉しかった。

 

 

 

「その結婚、ちょっと待ってもらおうか」

 

コツコツコツ

と、靴で音を鳴らしながらこちらに近寄って、私とマルカスの間に立った。

 

「なんのようかね、オルト君」

 

「おいなんで、お前が俺の名前を知ってやがる」

 

「それは、君がマリアの元恋人だったからさ。僕は、マリアのことなら何でも知っているからね」

 

オルトが、怪訝な顔をマルカスに向け、

マルカスは、オルトを嘲笑うかのように、言葉を吐き捨てた。

 

「もう一度聞く、なんのようかね?」

 

「俺と、マリアを賭けて決闘してほしい」

 

「「「な!?」」」

 

この会場にいる者達が皆、驚愕の声をあげる。

 

「おい、お前! 平民じゃ許嫁を賭けた決闘は行えない! そんなことも知らないのか!」

 

観客の男から最もな答が放たれた。

 

「俺が平民だから決闘ができない。そう言いたいんだな?」

 

「そうだ!」

 

オルトはニヤリと笑った。

何を考えてるの? オルト。

 

「それなら問題ないな」

 

「それはどういうことかね?」

 

次はマルカスがオルトに問う。

 

「本日を持ち、俺、冒険者オルトは、貴族 オルト・バルトリウスになった!」

 

 

「「「な!?」」」

 

会場は再び驚愕の声に包まれた。

 

「そんなのは出鱈目だ!陛下がお前なぞ貴族にするわけがない! 皆のもの、この者を追い出せ!!」

 

「ふん、これを見てもそんなことが言えるかな?」

 

そう言い、オルトは懐から一枚の紙を取り出した。

 

「これは、陛下が俺にくださった貴族になるための認証状だ」

 

「くっ!そんなわけがっ!?」

 

男はオルトから紙を奪い取った。

 

「そんな....本物だ..」

 

その言葉で会場内を沈黙にさせるのには十分だった。

 

「だが、お前が貴族になったとして、僕がその決闘を受けなければいいだけだ」

 

マルカスは勝ち誇ったように笑う。

だが、その表情は、

 

「へえ、貴族、それも伯爵家の人間が、逃げるのか?」

 

オルトの言葉により一瞬で歪められた。

 

「なに? もう一度言ってみろ」

 

「だから、伯爵家の人間が高々平民上がりであるこの俺から逃げるのかって言ったんだよ」

 

マルカスは険しい表情を浮かべ、

オルトは逆にニヤニヤさていた。

 

「......いいだろう。その決闘受けてやる」

 

「マルカス様!?」

 

観客の男が叫んだ。

 

「いけませんマルカス様!その男の口車に乗せられては!」

 

「おいお前、この僕が、あの平民上がりに負けるとでも?」

 

マルカスは男に殺気を放った。

 

「い、いえ、そのようなことはっ!」

 

男は怯えたように応え、

 

「なら、僕に口出しをするな!」

 

「は、はいぃぃ!」

 

急いで客席にもどった。

 

「オルト・バルトリウス」

 

「なんだ」

 

二人は互いに睨み合っている。

 

「決闘は、1週間後、正午に第一アリーナで行う。

それで構わないな?」

 

「ああ」

 

マルカスはオルトの返事を聞いたあと、観客の方に向き、

 

「では、皆様、また、決闘の時にお会いしましょう」

 

そう言い残して去っていった。

 

他の貴族達も訳がわからないまま帰っていった。

そして、その場にいたのは、オルトとマリア、二人だけになった。

 

「オルトっ!」

 

「マリアっ!」

 

二人は熱い包容を交わした。

教会の光りが射し込む中、その二人の姿は、とても幻想的で綺麗だった。

どれだけ時が経っただろう。

そう思うぐらい長い包容だった。

しかし、二人の考えていることは同じだった。

もっと一緒にいたい。

この時が永遠に続けばいいのに、と

 

「ねえ、オルト」

 

「なんだ? マリア」

 

「本当に大丈夫なの? 認めたくないけどマルカスの腕は確かよ?」

 

マリアは本当に認めたくなさそうに、そして、険しい顔で言った。

 

「大丈夫、俺はあんなやつに負けたりしない」

 

「でも......」

 

オルトはマリアを諭すように言うが、マリアの表情は暗いままだ。

 

「本当に大丈夫だ。いざとなったらあの力を使うさ」

 

「えっ!? でもあなた、その力いやがってたのに....」

 

マリアはオルトの言葉に意外そうな顔をした。

それはそうだ。オルトがその力を嫌がってたから、今まで使わなかったのだ。

だから、マリアはその言葉に驚愕した。

 

「ああ、でも今はそんなこと言ってられない。

マリアを取り戻せるなら何でもやるさ」

 

「オルト......」

 

「だから、安心して俺に任せろ」

 

「うん、任せる」

 

二人はまた、抱きしめ合った。

 

 

 

 

 

--もう、絶対に離さない。--

 




あれー?
なんかオルトが主人公っぽい...
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