決闘の日、当日 11時30分
オルトは、まだ来ていなかった。
「ふん、僕に恐れをなして逃げたか」
マリアはその姿を見ながら天に祈った。
「オルト......」
その時、オルトは、
「zzz....」
寝坊していた。
そして、11時50分
オルトはまだ来ていなかった。
「やはり、来ないか」
マルカスは振り返り帰ろうとした。
「待って!まだ時間じゃないでしょう!」
「ふん、この時間だ。もう来ないだろう」
マリアはマルカスを必死に止めるが、マルカスはそれを聞かず帰ろうとする。
「お願い!もう少しだけ待って!」
「しょうがない。今は、君に免じて待ってあげよう」
そして、約束の時間がきた。
「来ない、か」
「オルト......」
マルカスはつまらなそうに、マリアは悲しそうな顔をした。
「帰るぞ」
マルカスが帰ろうとした、その時、
「待った!!」
オルトは現れた。
「オルトっ!」
マリアは、顔を上げオルトを見る。
他の者も、突然現れたオルトに、色々な視線を向けた。
「オルト・バルトリウス、遅かったな」
「ん?ああ、悪い悪い、少し寝坊してな」
寝坊?こんな大事な時に?
「本当に君は身勝手なんだな」
「なに?」
マルカスの言葉にオルトは眉を潜めた。
「だってそうだろう? 僕の結婚式を中断させ、婚約者を賭けた決闘を申し込まれ、挙げ句に寝坊して遅れそうになった? ふざけるのも大概にしろ」
「......」
「なにも言い返せないか」
マルカスはふぅ、と息を吐き出しつけた。
「まあいい、早く決闘を始めよう。審判、開始の合図を」
「は、はい」
マルカスは審判であろう男に開始を促せる。
審判は、吃りながら応え、徐に手を上げる。
「いざ、尋常に...」
そして、その手を、
「始めっ!!」
降り下ろした。
「はあぁぁぁぁぁ!」
開始の合図同じに、マルカスはオルトに斬りかかった。
キィィィィン
と音を鳴らせ、火花を散らせる。
そのスピードは早く、その早さに会場は歓声で包まれた。
「ふん、流石に受け止めるか」
「当たり前......だ!!」
だが、オルトは、仮にもSランクの冒険者。
しかも、Sランクになったとき、剣を持たせたら誰にも負けないことから『剣神』という二つ名をつけられるほど剣がたつのだ。
そんなオルトがたかが少し早いくらいの剣で斬られる訳がない。
そして、オルトは剣を押し返し、反撃に転じる。
上段からの袈裟斬り、そこから、フェイントを入れながらの回転斬り。
オルトは、手を休めずにマルカスに斬りかかる。
「クッ! 平民上がりの分際で...!」
マルカスは悪態を付きながら、オルトから距離をとる。
そして、高速で魔法陣を組み立て、詠唱を始めた。
「灼熱の炎よ、汝の力を持って、我が敵を焼き払え!『フレイム・バーン』!」
マルカスは、下位魔法の上級にあたる魔法を放った。
「そんなもん、たたっ斬ってやる!」
対するオルトも、それに負けじと魔法を放とうとする。
「生命の源である水よ、汝の力を剣に宿し、我が敵を切断せよ!『アクア・スパーダ』!」
「「「な!?」」」
アリーナにいる者達は驚愕した。
何故ならオルトの使った魔法は付与魔法。
普通の魔法とは違うのだ。
ちなみに魔法とは、 体内にある魔力と言う力を外に出し、それを媒介にして様々な現象を起こすことである。
魔法の種類としては、まず事象魔法というものがあり、その中でも、火、水、土風が下級魔法となり、雷、氷、木、爆発が中級魔法となる。他に、光、闇、が上級魔法となり、最上級魔法が空間と時間である。
下級魔法は魔力があれば使えるが(強弱はある)、その派生である中級魔法は並みの努力では使えない。上級魔法は派生ではないため、努力では使えるようにはならない。そのため、生まれた時の才能で使えるかが決まる。最上級魔法は伝説の魔法とされ、使える者は現在ではほとんどいないとされている。
他にも、強化魔法、召喚魔法、治癒魔法、付与魔法、これらは特殊な技能がいるモノもある。他にも、様々な魔法があるが、国によって形式が違う。
この上げたなかで、オルトは特殊技能がいる付与魔法をやって見せたのだ。
しかも、元々平民の成り立て貴族が、だ。
そして、二人の放った魔法が衝突した。
マルカスの放った魔法が霧散し、オルトが放った魔法はそのまま威力を弱めることなく、マルカスの方に向かって行った。
「クッ!」
マルカスは辛うじて避ける。
「クソッ!! この僕がたかが平民上がりの魔法に負けるかあぁぁぁぁぁあ!!」
そして、マルカスはオルトに斬りかかった。
ブンッ ブンッ ブンッ
下手に剣を振る濁った音が聞こえる。
オルトが放った付与魔法がマルカスを相当焦らせているのだろう。
「クソッ! クソッ! クソッ!! なんで当たらないんだ!!」
「...そんな剣じゃ当たらねぇよ」
ドゴォ!
マルカスの腹を蹴る
「ぐぼはあぁぁ!」
マルカスは、10メートルほど吹き飛んだ。
「クッ...クソッ! 剣が駄目なら僕の最大魔法でっ!」
マルカスの最大魔法。
中級である爆発魔法 エクスプロージョンの上位に位置する魔法
『イムプルスス・エクスプロージョン』
それは、広範囲に爆発とそれから発せられる衝撃をメインとした全範囲破壊魔法
その魔法は、自分の周りを跡形も無く吹き飛ばす恐ろしい魔法だ。
「全てを破壊する灼熱の衝撃よ、汝の力を持って、我が敵を焼き尽くせ!『イムプルスス・エクスプロージョン』!!」
魔法が発せられた瞬間的、辺りが光りに覆われた。
そして、光りが無くなり、煙が晴れた。
そこには、マルカスを囲う結界が張ってあった。
「...これは..」
「間に合ってよかった...」
観客の方を見ると、魔法陣を書き、息を切らしているマリアがいた。
「マリアっ! 無事たったか!?」
マリアは切れている息を整え、それから話始めた。
「ええ、大丈夫よ」
「それはよかった。て言うかこれ、お前がやったんだよな?」
「そうよ、そしてそれは、神聖術
中級魔法からなら容易く守れる結界よ」
「...すごいな」
「その代わり、すごく疲れるのよ? これ
」
「わざわざありがとな!」
「ええ、どういたしまして」
皆が唖然としているなか二人は話を進める。
そして、
ドゴォォォォォン!!!
と音がなり、結界が崩れていった。
「っ!? そんな...なんで? まだ効力はあるはずなのに..」
そう、まだ結界の効力は切れていない。
なら何故結界が破られたのか。
結界を破るには、中級魔法以上の威力があるもので結界を破壊するしかない。
「ふふ.....ふははははは!! この僕がこの程度の結界を破れない訳ないだろう! なぁ、マリアぁ」
崩れた結界から出てきたのは、黒い靄を纏ったマルカスだった。
「マルカス...貴方、その姿は..」
マリアは怪訝な顔をマルカスに向けた。
「すごいだろう? どんどん力が溢れてくるんだ」
「その力...まさか、悪魔の力ではないでしょうね」
「ほう、流石聖女なだけはある。そのとうりだよ」
アリーナにいるマルカスの家臣以外の者は驚愕した。
それもそうだろう。伯爵家の長男であるマルカスが悪魔と契約していたのだ。
「それほどの力、並の悪魔ではないでしょう。
貴方は、どうやってその力を得たのですか?」
マリアはその力の原因をマルカスに問いた。
「ああ、確かアリアンド村だったかな? そこの村人全員生け贄にしたら契約に応じてくれたよ」
「なっ!?」
その応えに、オルトは驚きの表情を隠しきれなかった。
何故なら、その村は、
オルトの故郷だったのだから。
「貴様か.....貴様が、俺の家族を、村の人達を....!!」
「ああ、君はあの村の出身だったね。
そう、僕がやったんだ。
ああ、そういえば、君の父親と母親なんだけどね、『オルト..オルト...』って死ぬ間際まで君の名前を呼んでたよ。
その姿は、とても滑稽で可笑しくて、つい笑ってしまったよ。そのせいでお腹かがいたかったよ」
ブチンッ
オルトの中で何かが切れた。
「マルカスゥゥゥゥゥウ!!!
貴様ぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!」
オルトは剣を取りだしマルカスに斬りかかった。
そのスピードは、先程の試合の中でも一番早い斬撃だった。
だが、マルカスはその剣を片手で持った剣で易々と受け止めた。
「遅い、遅いぞ。オルト・バルトリウス!」
マルカスは剣を押し返し、反撃に転じた。
その剣のスピードは凄まじく、先程のオルトの剣を凌駕していた。
「ほらほらほら!! 貴様の剣はそんなものか!!」
「クッ!」
マルカスの四方八方の剣さばきに、オルトは苦戦を強いられた。
「ふん、最後に私の最強の魔法で貴様の命を散らしてやる」
マルカスは、そう言いながら、魔法陣を組み立て、詠唱を始める。
「我、悪魔に見初められし者、彼の者の力よ、我の願いに基づき、憎き者に地獄の鉄槌を下したまえ『ヘイトレド・フォール・インフェルノ』」
マルカスが放った魔法は、赤黒く、大きな炎の玉だった。
「うわぁぁぁぁぁぁ!!」
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」
その魔法を見た観客は恐怖のあまりマリアを除いた全員が悲鳴を上げ逃げ出した。
そして、その魔法は、オルトの方へ向かっていった。
「クソッ!」
オルトも、大きく、避けることが出来ないと判断したのか、対抗して今ある全ての魔力を使い、自身の最強魔法を放った。
「生命の源の水よ、大気に渦巻く風よ、今、二つは一つと成りて、我が剣に宿り、我が敵を断絶せよ!『フルス・アルモニア・ウィンド・エルスパーダ』!!」
風と水属性の合成付与魔法。
これが、オルトが寝坊して来た理由。
昨日までずっとこれの練習をしてきた。
夜遅くまで鍛錬していたせいで寝坊してしまったのだ。
だが、それまで一度も成功はしなかったが、今、ようやく成功した。
いや、土壇場で成功させたのだ。
だが、マルカスが放った魔法と衝突し、無惨にも消し飛んだ。
「ふはははは!所詮、貴様の魔法などその程度なのだ!」
マルカスは、オルトの消し飛んだ魔法を見て嘲笑った。
「消し飛べ! オルト・バルトリウス!!」
「いやー! オルトーー!!」
マルカスは、狂喜の笑みを浮かべ、マリアは悲しみのあまり叫んだ。
そして、マルカスの放った魔法がオルトに当たった。
「グガァァァァァア......!!」
オルトは、マルカスの放った魔法と一緒に、アリーナの壁に衝突した。
ドゴォォォォォォォォォォォ!!!
今までにない音がアリーナ全体に響いた。
オルトは、瓦礫に埋もれ、アリーナは静寂した。
「ふは、ふははははは!! 勝った!勝ったぞ!! 僕が勝ったんだ!!」
「そんな、オルト...オルトォ...」
マルカスが勝利の雄叫びを上げる中、マリアはその場にへたりこんだ。
オルトが死んだ。その言葉がマリアの頭の中を占めていた。
ガラッ
瓦礫から音が聞こえた。
マルカスとマリアが瓦礫の方を見る。
するとそこには、
オルトが立っていた。
「な...に..」
「オルトッ!!」
マルカスは先程までしていた狂喜の笑みを止め驚愕した。
マリアはオルトが生きていたことに喜びの声を上げる。
「まだだ、まだ...終ってねぇ....!!」
「何故だ...何故そこまでして立ち上がる!!」
「それは、家族の、村の人達の仇をとるため....愛する女を助けるためだ!!!」
オルトは叫び、意味嫌っていた力を解放する。
「戦神アルトリウスよ、 咎人に鉄槌を下すため汝の力、我に与えよ、さすれば、咎人の首を汝に捧げよう!」
オルトの体から神力が溢れ出す。
それはまるで、オルトの怒りを具現するが如く渦巻いていた。
「なんだそれは...なんだそれは!?」
「これは、皆の思いだ...!!
てめぇが殺してきた人の...皆の思いだ...!
てめぇが散々、助けを求めて来ては、踏みにじって来た人達の...思いだ!!
そして、マルカス、貴様が泣かしたマリアの思いなんだ!!!」
オルトは、神力で剣を造り出し、マルカスに歩み寄っていく。
「来るなぁ! 来るなぁぁ!!」
マルカスは、転けながらも逃げようとした。
「あの世で、死んだ人達に詫びろ!クソヤロォーーー!!!」
「グガァァァァァ!!!」
オルトは、剣を降り下ろした。
降り下ろした剣は、マルカスに当たったとたんに、黄金に輝く、光の柱ができた。
その光の柱は、天にまで届くほど高く昇った。
そして、マルカスは跡形も無く消え去った。
「はあ...はあ...はあ...」
バタンッ!
「っ!?オルトッ!」
オルトは力尽きたようにその場に倒れ込んだ。
マリアは、ハッとなり、オルトに駆け寄っていく。
「オルト!大丈夫!?オルト!!」
マリアは涙目になりながら、オルトに呼び掛けた。
「..マリ...ア..、俺.....やったよ...」
「うん! うん!! よくやったわ!本当によくやったわよ!!」
オルトは途切れ途切れの言葉で言った。
マリアは、その言葉に涙で顔をグチャグチャにしながら喜んだ。
「これ....で...お前...を..失わずに......すむ...」
そう言い残し、オルトは気を失った。
「オルトっ!? 大丈夫!? オルト!」
マリアは急いで、オルトが生きているか確認する。
「はあ~、よかった~。死んでたらどうしようかと思ったわ」
生きているとわかり、安堵の息をはいた。
「本当に、最後に絞まらないわねぇ」
マリアは、オルトに向けて呆れた笑みを浮かべる。
「でも、私のためにマルカスに向かって行った姿は、とてもかっこよかったわ。
ありがとう、オルト」
そして、マリアは、自身の唇をオルトの唇に重ねた。
その姿は、お姫様が騎士に褒美のキスをしているみたいで、童話の中にいるようでであった。
--永遠に貴方を愛しているわ、オルト--
オルトさーーん!
さすが俺の大好きなキャラ!
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