短編集(夢小説)   作:苺のタルトですが

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旦那様は七武海1ー3

もしもこれが小説ならば、ここに一組の夫婦がおりました……と出だしが始まるのだろうか。

 

もし自分なら夫婦の前に(仮)を付け足す。

 

嗚呼、そんな言葉では、何故そんな事を言い出すのか周りは理解出来ないと苦笑する。

 

先ずは自身の自己紹介といこう。

 

とある世界の海軍と呼ばれる組織の一人の娘として生を受けた。

 

それから甘やかされて育ってきた。

 

なので、我が儘でお馬鹿で間抜けで頭のネジを生まれてきた時に落っことしたとしか思えないような頭の悪さを兼かね揃えた女──それがリーシャという性別メス、己である。

 

何故自分をここまでこコケに出来るのかというと、ある意味前のリーシャは別人で他人という表現に相応な人間だからだ。

 

そう、俗に言う前世の記憶持ちという奇っ怪のせいである。

 

頭がイかれた等という現実味のある事を考えるのは出来れば止めて欲しい。

 

なんせ切実かつ真面目なお話しだからだ。

 

そして、此処が一番重要なのだが、記憶が戻った時には既に既婚者でしたという笑えない事実。

 

もういっそ笑ってくれ!

 

いや、涙が出るほど泣き笑いしてしまいたい。

 

家事や家の事を任せているメイドがいるので心の中でしか悲しめなかった。

 

しかし、問題はこれだけではなかった。

 

神様は何を考えているのやら。

 

(七武海の生け贄に宛てがうだなんて……)

 

何故七武海に捧げたんだ海軍よ。

 

君達は天竜人とか言う大金持ちを独占して、契約しているからお金には困っていないだろうに。

 

さては海賊という犬に首輪を付ける為なのかな?

 

でも海賊であり無法者の彼らをそんな書類上の物だけで縛れるとは思えないのだけれど……。

 

バーソロミューくまみたいに弱みを握るならば話は別なのだが。

 

それに、お相手は自分なんて眼中にないくらい結婚なんてどうでも良かったみたいだ。

 

所謂、政略結婚の当日の初夜に当たる時間に相手は「夫婦の関係を望んでねェ。浮気もしたけりゃ好きにしろ。だから一切こっちにも干渉してくるな。精々(せいぜい)夜会やそっち関係のパーティーがある時くらいに夫婦って奴を演じてくれりゃあ良い。部屋も別だ。何かを押し付けるな。俺は船で寝るからお前は好きな所へ寝ろ」

 

と、言いたい事だけ言って初夜を放って脇目も振らずに帰っていった。

 

勿論この事は記憶が戻る前なので今世の彼女はプライドをベキベキに折られて憤慨していた。

 

でも、相手は海賊で四億の賞金額だった賞金首。

 

あれやこれやと怒鳴る勇気など無く悔しい気持ちでいっぱいだった。

 

だが、前世の自分にとってはラッキー以外の何者でもない。

 

こうして純潔を奪われずに紅茶を飲んでいられるのだ。

 

このまま無関心でいてくれれば尚良い。

 

それに、家に帰ってこないのならば好きに過ごせる。

 

だから離婚もスムーズに出来る、という事だ。

 

こんな人生はやっていられないので速やかに離婚してもらおうと今、画策している。

 

父親(前世の自分にとっては最早赤の他人という認識)が何と言おうと我が儘なお嬢様をある意味合いで利用して、徹底的に叩き潰すつもりで話し合おう。

 

(それにしても今世の私はよくこんな結婚我慢して出来たな)

 

我が儘な癖に何故か拒否らなかったのがとても不思議だ、と自分でも思う。

 

でも、今世の自分も前世の自分も己なので気持ちははっきりと分かっているし、熟知している。

 

自分の心、自分知らずと、今世はこんな女だ。

 

でも、少なくとも前世の自身はこんな鳥籠の人生は真っ平御免だと思っている。

 

息が詰まるし、全く遺憾だ。

 

相手は乱暴者ではないが、リーシャという地位のある存在を夫婦となって利用してしまう程には権力を欲している。

 

そんなに欲しけりゃくれてやる……探せ!

 

おっと失礼、つい思考がプロローグに飛んでしまったようだ。

 

休憩をちょこっと挟もう。

 

嗚呼、そう言えば旦那様で夫で海賊で七武海の婿(むこ)の名前をまだ紹介してなかった。

 

彼の名は、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドヤファルガーだ!

 

 

 

 

 

おっと間違えた、トラファルガー・ローだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、先ずは使用人を丸っと交換から行こうかな、と腕捲りをする。

 

目の前には書類が山詰み。

 

手には判子。

 

もうここら辺でお分かりだろうか、そう。

 

「父親の息が掛かった使用人が居ると、これからの計画の邪魔になるんだよね」

 

この屋敷にいる使用人やメイドは全員漏れなく父親の手付き(深い意味は無し)なのだ。

 

だから、何か不審な事をした場合即刻父親の所へ報告が行く。

 

そんな息苦しい屋敷で何かをするなんてとんでもない。

 

なので、使用人をツルッと総入れ替えする予定だ。

 

先ずは募集の前に使用人のクビと次の就職先を案内する。

 

まあ、今世のこの子に友達なんていないから、紹介先はあくまで募集を掛けているお屋敷等だ。

 

それと同時に此処のお屋敷の募集も掛けるつもりでいる。

 

自分で出来る範囲では自分でしたいので使用人は二、三人でいいだろう。

 

掃除なんて使う部屋だけでもう十分だ。

 

お屋敷にこんなに余分な使用人が居るのはリーシャを見張っているというのもあるが、それと同時に夫のトラファルガー・ローも逐一見張られている。

 

しかし、彼は賞金を無効にされたがそれでも億越えの賞金首だから簡単に使用人を撒けるし、見られないように行動する事だって朝飯前。

 

トラファルガーの姓を名乗るのも凄く凄く違和感を拭えないが、前世と同じ名前なのは馴染みもあってホッとする。

 

それにしても、彼の船の船員達も良く結婚に納得出来たな。

 

否、本当はしていないのだろう。

 

そんなのは当然だ。

 

利用するだけだから結婚はノーカウントだ、なんて言っているローを想像するとしっくりきた。

 

きっとそんな感じの台詞でも言って船員達を納得させたのだろうか。

 

なら、こっちだって好きにやらせてもらおう。

 

夫の居ぬ間に、と薄ら笑った。

 

そして、後日使用人を全員解雇したのだった。

 

何、今までの自分の我が儘のレベルを思えば全く違和感も不信感もない。

 

おほほ、と何かを言われても笑えばいいのだし。

 

それよりも、使用人募集の際に直ぐには集まらないだろうと踏んだのに、何故か二人も面接を希望してきた。

 

いきなり使用人を解雇する貴族の家で働きたいだなんて変人で物好きだな、と感想を抱く。

 

そして、当日に会った。

 

勿論使用人の主人なので直々に面接官として試す。

 

もう使用人は居ないので自分しか見る人が居ないというのもあったが。

 

「ペンダリオンさんに、シャンデさんね。一人ずつお好きな順で面接室に入ってきて下さい。終わったら呼びます」

 

はい、ありがとうございます。

 

貴女達はトラファルガー・ローの船員、シャチとペンギンですね。

 

二人共私服で帽子を被っていないが片鱗がある。

 

それに一番印象的なのはやはり名前か。

 

何故、名前の始めを取って格好いい名前を付けたのかと内心笑った。

 

そして、何故結婚相手の住む屋敷に潜り込んできたのだろうかと疑問に思う。

 

ローに探ってこいとでも言われたかな。

 

じゃあお前が帰って来いよ先に、と彼に言いたいが。

 

何も探る事なんてないのに。

 

おかしな事を始めた彼らに退屈だし、何より面白そうだから採用する事にした。

 

でも、海賊の一員である彼らに使用人めいた真似が務まるのか。

 

そこはまあやってもらうしかないかとお手並み拝見である。

 

ついでにメイドも二人雇った。

 

服もヒラヒラしているのは外出する時だけで室内様に揃えようとこれからの生活へと準備を進め始めた。

 

時間はたくさんある。

 

何せ、ローが一ヶ月毎に帰ってくるのは一回あるかないのかなのだから。

 

結婚したがあくまでお飾りの妻という訳だ。

 

初夜を無視される前から分かっていた事だから寧ろ万々歳。

 

好機として着々と離婚の準備を進められ、彼に捨てられるのではなく捨てる側として報復出来る。

 

別に嫌な事をされた事はないが、乙女の結婚を利用するなんて自分としては許すまじ、という具合だ。

 

貴族だから政略結婚は当たり前?

 

今の私は結婚を夢見る女の一人なんだよっ!

 

こんな結婚、結婚とは認めません!

 

離婚しても貴族なら結婚相手はわんさかいるだろうし、前世の性格もあれば我が儘姫なんて言われて敬遠される日々もおさらばだ。

 

そして相手とイチャイチャラブラブ、略してイチャらぶな人生を送りたい。

 

妄想は留まることを知らないのだ。 

 

自室で奮闘しているとノックが聞こえたのでどうぞと許す。

 

入って来たのはペンダリオン(本名ペンギン)だ。

 

紅茶を持ってきてくれたらしい。

 

こうして、密偵のような事をされても痛くも痒くもないのは、以前働いてた使用人が一人もいないからだ。

 

人の口に戸は立てられない。

 

これが一番の理由である。

 

知る者がいなければ隠す事も可能だ。

 

外で何かを聞いてきても家の中にいるリーシャとの性格のギャップに混乱するだけだ。

 

噂はあくまで噂。

 

信憑性なんて信用しないのが普通なのだ。

 

「紅茶をお持ちしました」

 

「ありがとう」

 

海賊の一員にしてはマメな人だ。

 

あ、そういえば自分は実はこの世界の作品を知っている。

 

そして、夢小説も網羅しているのだ。

 

どんな性格の彼らが来ても平気だったりする。

 

それにしても、彼もシャンデ(本名シャチ)も大分ここの生活に慣れてくれた。

 

リーシャの性格も分かり始めている。

 

最初はとても困惑していた。

 

ここでなら普通は噂で知ったのだろうかと推測するが、ノンノン。

 

リーシャは知識有りの転生なので分かる、きっと船長のローにここの女は我が儘だ、気を付けろよ、とでも言われたに違いない。

 

彼等の「え、聞いていたのと全然違う!」という変顔を見るのは大変楽しかった。

 

退屈を紛らわせると共に二人の性格やノリの良さも計れたので満足だ。

 

頬を緩ませて思い出しているとペンギンが何かを言いたそうにしていた。

 

面白くなる予感にどうしたの、と聞いてみる。

 

「奥様は、旦那様をどう思っておられるのでしょうか」

 

聞きにくい質問ランキング上位に食い込む質問をあっさりと聞いてくるので肩が揺れそうになる、主に笑いで。

 

恐らくその質問は個人の疑問なのだろう。

 

ローが聞いてこいと言うにはあり得なさそうだ。

 

「どうって……特に言うことはないわ」

 

なので無難な返事ランキング上位の言葉を選んでみた。

 

 

 

ペンギンに質問されてから数日後、庭師として役割を果たしてもらっているシャチと庭でバッタリ出会った。

 

まあ庭師なのだから当然だが。

 

何故か告白される手前みたいな様子でソワソワとこちらを見ている。

 

まるで純情ボーイかとツッコミたくなる。

 

ちょっと不審な態度である事を注意すべきなのだろうが、こちらとて気になるのだ。

 

少しばかりせっついてみようか。

 

「シャンデさん。お仕事はいかが?」

 

「…………?……!、あ、シャンデおれだ!」

 

偽名を呼ばれ慣れていないのだろう、今彼は自白した。

 

と笑っている場合じゃない。

 

ここまで天然な彼のある意味うっかりな発言をスルーしてあげるには、天然を装わなければいけないのだ。

 

頬の筋肉がひくりとなる。

 

ほほほ、とお嬢様フェイスで聞こえなかったフリをして再度尋ねた。

 

「シャンデさん、仕事には慣れましたか?」

 

「はいっ」

 

とっても良い返事だ。

 

でも、次からは墓穴を掘らないで欲しい。 

 

そして、ローよ、何故密偵にこの子を起用した(真剣)。

 

ペンギンだって海賊女帝に骨抜きにされるムッツリなのを知っているんだぞ。

 

明らかに人選ミスだ。

 

もしリーシャが前世じゃなくて今世のままだったなら既にスパイとして干されていたであろう。

 

でも会話は普通に楽しい。

 

探ろうとかいう魂胆は今の所片鱗すらないので、早く聞かれないかと楽しみにしている。

 

こんな心の中を知られた日には、彼等は盛大に身を引くように何処かへ飛んでしまうかもしれない。

 

それは寂しいのでまだ止めて欲しい。

 

本当は心から話せる友達が欲しいのだが、貴族でありトラファルガー・ローの妻である限り疑心暗鬼は無くならないだろう。

 

そういえば、しょうもない父から(貶している)手紙が来ていた。

 

今思い出してシャチに聞いてしまおうと会話を変える。

 

「それで、先程から聞きたい事があるみたいですね。気兼ねなく聞きなさい」

 

「えっ、そ、そんな……えっと」

 

思いっきり遠慮したかと思えば聞いてくる気が満々なシャンデに苦笑する。

 

遠慮してる癖にしたたかだな。

 

「実は……奥様が噂と違い優しくてとても日々が充実しています。是非奥様が心を和らげた方法を俺にも教えていただきたい」

 

「まあ……それは嬉しいわ」

 

(とか柔らかく言ってるつもりでも目は鋭く光っている無自覚アサシンのシャチくんでした!)

 

その探る目は止めた方がいいよ。

 

貴族は特にそういう腹を探る真似に敏感だからさ、と内心あーあと勿体ない所業に溜息を付く。

 

変な所でミスをする癖に何故こんな事を言ってくるのか不思議だ。

 

そして、お待ちかねの疑心暗鬼な質問に胸をたぎらせる。

 

スパイっぽい事をやっと掛けてきたか。

 

さてさて、こんな質問が来るだろうと予期して考えておいた答えを口に出す。

 

「私はメイス家の一人であり、一人の男性の妻……と虚勢を張るのも疲れたからよ」

 

「虚勢?奥様が?」

 

普通は使用人がこんな風にズケズケと内情に入ってくるとクビとかのレベルなのだが、それに気付かない彼等には使用人と言う設定は合わないだろう。

 

全てが終わった後に教えて上げようと心の中の予定に書く。

 

女は秘密がある程魅力的、という言葉に習って「ふふ、これ以上は秘密よ」と笑顔で終わらせた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

またまた数日後、ついにこの家の大ボスであるローが帰還した。

 

実は手のひらでコロコロと転がしているのはこちらというのに気が付いていない彼等を見ているのはちょっぴり楽しい。

 

例えば派手なドレスを着ていたりするのも、シャチがローに先日の事を報告しているだろうと予想してる事も全ては計算した上で仕組まれているなど。

 

きっと彼等は知らない。

 

うっかり自分を殺してしまいそうなフラグと芽はしっかり摘み取っておきたいのだ。

 

それを見届ける前には彼と自分は夫婦ではなくなっているだろうが。

 

あんな意味深な事を言ってローの興味を引かせないか、だって?

 

勿論それも計算通りさ。

 

うっかりと防止と同情を集める為の一手間だ。

 

「奥様、旦那様がお帰りになられましたよ」

 

「分かったわ」

 

「私達も紹介した方が宜しいでしょうか?」

 

彼女達は最近雇ったメイドだ。

 

きっと、帰って来たのが彼(か)の死の外科医だからか不安が滲み出ている。

 

「貴女達が良いと思う時で良いわ。無理にする必要はないです」

 

そう口にするとホッと息を吐き出す。

 

ストレスフルな事をさせる程リーシャは鬼畜ではない。

 

でも、ローが何か変な事を言ったのなら般若にでも鬼でも修羅にでもなってやる。

 

女はただ家に留まる事が使命ではない。

 

こんなに頑張って家を切り盛りして結婚までしてあげたのに、帰ってくるのは月一とかふざけんな。

 

思わず本音がおっとっと。

 

しかも浮気してもいいだと?

 

このリーシャ様を舐めすぎだ小僧。

 

精神年齢は貴様よりも上なんだよお。

 

一体どんな面下げて帰ってきたのか見てあげようじゃないか。

 

「…………」

 

無言でこっちに来ましたありがとうございます。

 

本当、期待を裏切らない程政略結婚感がする。

 

仕方なく帰ってきたオーラが凄い。

 

え、これおかえりーって言わないとダメですか?

 

「…………」

 

もう、なんて言うか帰って欲しい古巣に。

 

ほら、君潜水艦持ってるじゃん?

 

もうそこに帰ってくれよ。

 

そして二度と此処へ帰ってこないで。

 

あ、離婚届の判子だけ置いていってよ。

 

なんて心の中で清々しい未来を想像する。

 

無言な旦那とか誰得だよほんと。

 

たまに、無言で希にデレる人は胸きゅんなんて話しがあるけど、あれリアルに好きな人限定だと思う。

 

政略結婚で明らかに恋愛結婚してない夫婦にはブリザードしかないね。

 

べ、別にブリザードが不愉快とかそういうんじゃないんだからねっ、とツンデレを擬似体験してみた。

 

「…………ついに何も言わなくなったな」

 

クスリと笑うようにこちらを見るロー。

 

開口一番がその言葉とか、自分Mじゃないんすけど。

 

喜ばないんですって旦那さんよ。

 

貴方、お飾りの妻が望ましいんでしょ。

 

だからご希望に合わせてドールプレイを実行したのに。

 

頭の中が中学生な思春期リーシャさんたあー私のことだ!

 

と、一人ドヤ顔を決めてみた。

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