短編集(夢小説)   作:苺のタルトですが

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旦那様は七武海4ー6

さて果て、旦那(仮)が帰ってきた後はそのままお別れかと思いきや夕方のお茶会、又はティータイムに移った。

 

話しをしようと言われ、仕方なく付き合う事にしたのだ。

 

自身の中ではまだドールプレイは続行中なので無言である。

 

凄くない?つまりまだ一言も言ってないんだよ。

 

なのに、怒るでもなく涼しい顔をしてコーヒー飲んでるんですよ目の前の人。

 

お茶会なのにコーヒーなところも凄いけれど。

 

因みにリーシャはストレートティーはあまり好きではない。

 

ミルクティーがどちらかと言えば好きだ。

 

結構若くして死んだから味覚は大人使用になりかけである。

 

ちゃんと男女のイロハだって知っています。

 

けれど試す相手がおりません。

 

可笑しい、学生時代の保健体育の成績は悪くなかった筈なのに。

 

閑話休題。

 

ああ、そういえばこの『閑話休題』と言うのは本来の話しに話しを戻す。

 

それは置いといて、話しを戻そう、という感じの意味である。

 

別に今の説明は忘れてくれて構わない。

 

「静かだな。いつもは煩い様に何か言ってくるか怯えていただろ」

 

(それは単に結婚相手が海賊だからでしょ。ていうか、そっちこそ話しかけてくるなんて珍しいと言い返すべきか)

 

恐らく話しかけてきたのはシャンデ、もといシャチがローに何かしらの報告をした為と推測される。

 

十中八九当たりだろう。

 

きっとこの男はリーシャが部下をまんまと屋敷に入れた事を知らないとでも思って、良いご身分で居る。

 

でも、それも含めてこちらの手の平の上であって、別に困る事はない。

 

メイドも居るし、今の生活に不安があるとすればそれはローだけだろう。

 

でも、リーシャの野望の一つに貢献して貰ってから別れた方が無駄婚に思う気持ちが少しだけなくなる。

 

それに、今貴方の計画を知っていますよと囁いたらシャチとペンギンもセットでとんずらするだろう。

 

ローの計画といえばやはりパンクハザードのスライムの件だ。

 

スライムは関係なかったか。

 

まだシナリオまで一年と半年くらいはあるからそれまでにこちらの野望を完遂したい。

 

こんな衰退しているのか発展しているのか分からない世界だが、己が金字塔を打ち立てる事を一度はしてみたいと憧れる。

 

先程からローが何やら話しかけているが話を全く聞いていなかった。

 

(やば、どうしよっかな)

 

聞いてなかったと言ったら怒られて首チョンされてしまうだろうか。

 

は!そういえばローの能力は死なないからされても割と生きてられる。

 

だったら無理に聞いてなくても大丈夫だ。

 

「聞いてんのか」

 

(聞いてないって言ったのに……心の中で)

 

ふふふ、と心の中では笑い、外面は大変無表情である。

 

ローは比較的優しい方の海賊だと原作でも夢小説でも解釈されているし、リーシャもそう思う。

 

いくら興味がなくても自分は女だ。

 

手を出さないだなんて結構理性的な人だとは思う。

 

「旦那様。女性の部位で好きな所はどこですか?」

 

「……旦那様?……なんだその質問は」

 

凄く困惑されております。

 

そうだろう、女がいきなり呼んだ事のない旦那様呼びをして好きな~という珍妙な質問を掛ければ誰だってびっくりする。

 

ローは顔芸が大変達者だ。

 

訳の分からないと言う顔をしている、笑えた。

 

「手ですか足ですか胸ですかどこでしょうか?」

 

「……特にねェ」

 

「……成る程、節操なしですか分かりました」

 

「な、せっ……!?」

 

ローが何か言い掛けた時、ガチャンと音がした。

 

振り向くとシャンデと……名前が長くてペンギンの偽名を忘れてしまったのでもうペンギンとシャチでいいかな?

 

その二人が今にも死にそうな顔でこちらを見ていた。

 

「おおおお、奥様、せ、節操なしはさすがに……その」

 

ペンギンが話しかけてきた。

 

無闇に会話に入ると貴族なら即刻クビだからあれ程止めなさいと……心の中で言ったから伝わる訳もないけどさ。

 

彼等の言いたい事はよく分からないけれど。

 

「?……別に嫌味ではなく褒め言葉として言っただけですわよ?」

 

「え!?褒め言葉!?」

 

「今のが?節操なしが!?」

 

シャチとペンギンの順でツッコまれたが褒めたものは褒めた。

 

そっちの方向では凄く褒めている。

 

これで沢山妄想にひた走れるぞ。

 

わくわくすると顔に出ていたのかローは静かに目を閉じた。

 

「何が起こったんだ、おれの居ない間に……」

 

なにがって、がっつり前世と今世が融合しただけだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

薄暗い部屋の一室でロウソクを灯す部屋でカリカリと羽ペンの刻む音が静かな場所で響く。

 

時折手先で零れる髪束を耳に掛け、その度に集中していた体を緩ませる。

 

「ふう……今日はこの辺にしとこ」

 

誰も居ない部屋で呟く度にふと、話し相手が欲しいな、と馳せる。

 

こんな世界で貴族なんぞではなく海賊とか、兎に角自由な職業に就きたかった。

 

まあ、海賊が職業かは不明なのだが。

 

(海賊か~。いいな、私も宴したいな)

 

入るのなら無論麦藁海賊団が良い。

 

確かにローも人気だからハートの海賊団に入団したいという子は現代に沢山居た。

 

今もその願いを持っている人だって絶対に居る。

 

でも、妻になって色々と現実が襲ってきたわけで。

 

自由も何にもない。

 

娯楽は貴族の嗜(たしな)みである黒いお遊びばかり。

 

清い貴族なんて居るのかやら。

 

(ん?待てよ……)

 

奴隷という言葉に閃きがチカリと光る。

 

「奴隷か。その手があったっ」

 

ただ特徴を捉えてメモをしているだけでは野望までは届かない。

 

これは幸いだと嬉しくなりながら席を立ちベッドへ向かう。

 

これは明日からまた忙しくなりそうだと目を閉じた。

 

 

 

さてさて、お買い物の時間です。

 

私服に着替えていざ行かん!

 

あ、宇宙には飛び出さないのでご心配なく。

 

RPGで言えば始まりの町を出たばかりら辺だ。

 

「奥様」

 

シャンデにエンカウント。

 

接触確率九十九パーセントだったから覚悟はしていた。

 

「どちらへ行かれるので?」

 

聞かれたけれど腹を探る目という技を自動的に発動させたシャンデ。

 

理由は言えるには言えるけれど、そう言えばこの男はロー側のスパイだと思い出して言うのを止める。

 

「ちょっと川に洗濯に行くわ」

 

「付くにしたってもうちょっとマシな嘘吐けません!?」

 

「じゃあ山へ芝刈りに」

 

「じゃあって付いてる時点でアウトなんですけど!?」

 

ガッと勢いよくツッコむシャチにナイスだ、と笑う。

 

ノリの良さはハート仕込みですね。

 

「ん?奥様……その格好……凄く、普通ですね」

 

(やっぱりそこに気付くよねー)

 

いつもはドレスを来ているのだが(本当はラフな姿で居たい)今は貴族ではなく一般の庶民服と言うものを来ている。

 

使用人を解雇した後に沢山(たくさん)買った。

 

沢山と言っても今あるドレスに比べたらまだまだ少ないが。

 

なのでこれからも購入をチマチマとしていこうと検討している。

 

そんな服装を意外そうに見ているシャチは首を傾げた。

 

「たまには庶民の体験も必要だと思って」

 

(ドレス着るのって神経使うから疲れるし)

 

結構あれは大変だ。

 

トイレや座るのも布が分厚くて浮いている感覚がするし碌(ろく)に走れもしない。

 

長年慣れた部分はあるにしろ、やはり身動きの取れる物を着るのが自分的には好ましい。

 

「そうですか」

 

貴族あるあるにありそうな発言を試しに言ってみたら納得してくれたのでそのまま進む。

 

だが、諦めてはいないのかまた呼び止められた。

 

「奥様っ。お一人は危険です」

 

「この姿で誰も私が貴族だと思わないわ」

 

(それに海賊の妻だなんて誰も気にしないし、関係ないと新聞紙のページをめくるのが人の常)

 

誰だってニュースに親近感なんて覚えない。

 

感じるのは当事者か傍にいたか、或いはその内容を知っている者だけだ。

 

誰も彼もが関係のない事だと記憶にすら置かない。

 

結婚した時だって、同情されたりしただろう。

 

けれどそれも他のニュースによって、内容も人々の中では既に遠い記憶へと追いやられているだろうと遠い目をした。

 

(七武海の妻だから贅沢三昧が出来るか、いいや、しても特に生活は寂しいものだ)

 

貴族の結婚なんてこんなものだろうと思ってはいたが、やはり相手が海賊だとここまで悪化する。

 

貴族だってここまで帰ってこない事は滅多にないだろう。

 

嘘の仮面夫婦だって夫婦らしく装う。

 

それが、こんな風に放っておかれてしまうのは偏(ひとえ)に自分の夫が海賊という自由人だから。

 

「どうした」

 

話し込んでいると元締めげふんげふん。

 

ローがやってきた。

 

「奥様が出かけられるのですが、お一人で行くとおっしゃっておりまして」

 

おい、告げ口とか止めろよ。

 

ボスはこっちなんだぞ。

 

いや、雇い主はロー名義なんだろうけど、雇ったのはリーシャだ。

 

人権くらい守ろうぜ青年。

 

「一人でか……誰か付けていけ」

 

「私は一人で行きたいのです。そうだ、丁度良かった。旦那様、バストはお幾つ?」

 

「………………何?」

 

聞き間違いをしたという表情で再度聞いてきたローに今度は噛み砕いて言う。

 

「胸周りの幅はどれくらいですか」

 

「それを聞いて……どうする」

 

「今から行くのは所謂女性御用達のお店なのです。旦那様に何かを渡した記憶がないので今回は丁度良い機会ですので買ってきますわ」

 

「…………何を買うつもりだ?」

 

凄く危機混濁な声音で聞いてきている。

 

「あら旦那様ってば、そんなに嬉しいのですか?うふふ……腕によりを掛けて選んできますわ。ああ、大丈夫です。ちゃんとサイズは買ってきます。トリプルAのサイズならきっとありますから……ランジェリーショップに」

 

ピシャリと言い終えるとズガガーンとローの背後に雷が落ちた。

 

この世の地獄を垣間見た、と言った顔芸だ。

 

全くこんな風に反応してくれるから弄び甲斐がある。

 

良い男をからかうのが楽しいという事を知った頭の中は青春真っ只中なリーシャだった。

 

 

 

家の玄関先、つまりRPGでいうと始まりの町を出た所でラスボス級に足止めをくらったが、そこは薬草をくれる町人の如くペンギン(偽名を忘れてしまった)が助け船を出してくれた。

 

「では旦那様と行かれては」

 

何の解決にもなっちゃいねえ。

 

と、心の中でどす黒く呟いた。

 

しかし、反論するのは亭主関白(勝手にそう思っているだけ)に反するので本当は嫌だが、付いてきてもらう事にした。

 

亭主関白は時々であって臨機応変にその形を変えるのだ。

 

「旦那様、お仕事は平気ですか?」

 

「……ああ」

 

凄く困惑している男に一拍置いて気付く。

 

そういえば結婚した当初の今世の自分はプリプリと短気で我が儘で人の予定を全く考慮しない悪い方に偏っている癇癪持ちなテンプレ悪役令嬢だった。

 

すっかり元の言葉遣いや気遣いが出てしまっている。

 

こうなったら今からでも止めよう。

 

「そうですか……今から貴方を沢山こき使うんですからそうでなくては迷惑ですわ」

 

これじゃあツンデレだ。

 

もうなんか墓穴と後戻り出来ない変人みたいに思われてしまう。

 

どうしよう、とオロオロとした後ちらりと彼を見上げた。 

 

そしたら震えていた。

 

ブルブルと震えていた。

 

まるでルフィに振り回された後ハッとなる時の顔でこちらを凝視している。

 

その目はまるで「こいつ頭大丈夫か」みたいな感じだ。

 

別に患っていない。

 

そして中二で掛かるあの病が世界規模で行われているこの世界の能力者にそんな目で見られるのはとても心外だ(褒め言葉)。

 

「今のは軽い冗談ですわ。おほほ。あ、旦那様。ランジェリーショップが見えて来ましたわ」

 

話しを変えようと見えてきた店を指すとまだ何か言いたそうなローだったが、敢えて知らない、気付かないフリをした。

 

てくてくと歩いて行くと大きな店を見上げてから中へ入店。

 

待っていると思ったがやはり付いてきた。

 

夢小説の設定も生きている、成る程成る程。

 

こういう場合は待っているパターンより一緒に入って行くパターンの方が夢設定には多い。

 

やはり夢小説を網羅しておいて良かった。

 

いらっしゃいませとお迎えしてくれる人を横目にカゴをもって品物を見る。

 

「旦那様」

 

「?……何だ」

 

こっちへ来る様に手招いて試着室へと押し込む。

 

何をされるのか分からないと言う顔でこちらを仰ぎ見るので「見られては困ります」と言い添える。

 

それで合点がいったローは大人しく試着室に入った。

 

そしてリーシャも入るとカーテンを閉めて品物を一品手に持つ。

 

「よいしょっと」

 

「……何故おれの胸に当てる」

 

低い声で聞いてきたローに至極当たり前だと眉を寄せた。

 

「そんなの、言わなくても分かっているでしょうに……あ、この色で宜しくて?ホワイトが殿方には人気なのでしょう?」

 

「っ、っっっ!」

 

ガタガタを震えて顔に陰を作るローにリーシャは色男を弄ぶ楽しさを満喫していた。

 

だから私はMではないの……と心の中で言ったので誰にも伝わらない。

 

Sなのかと聞かれれば臨機応変に、という回答を己の中に持っている青春真っ只中な思考を持つリーシャであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自宅に帰ってきた二人の夫婦(仮)は先ずシャチに出会った。

 

シャチもといシャンデは帰ってきたローを見てギョッとした。

 

「せっ……じゃなくて、旦那様!いかがなされたのですか!?」

 

今彼は自白した(二度目)。

 

明らかに船長のせ、を口にしかけた。

 

笑っている暇はなく彼は隈がいつもよりも濃くなった船長に歩み寄る。

 

そのついでにこれを渡しておこう。

 

「はい、シャンデ。日頃のお礼よ」

 

「そんな何事もなかったかのように……いえ、ありがとうございます」

 

戸惑うシャンデはもごもごと口にする。

 

使用人と言う立場だからか、心配だと口にしないのはまあスパイとしては次第点だろう。

 

いや、既に色々しでかしている数々の失敗により無効な気もするが。

 

ローよ、何故シャチを寄越したのだ(何度でも問いたくなる)。

 

「て、ピンヒール??」

 

「ええ。取り敢えずちょっとそこに座ってみて……そして、四つん這いに……そう、それで良いわ」

 

「あ、あの?え?え?」

 

四つん這いという従僕スタイルになったシャチ。

 

戸惑っているがそんな戸惑いなんて捨ててしまえば良いだろう。

 

「さ、旦那様。靴を……」

 

と、彼のブーツを脱がす。

 

「ちょっ、ちょっと待って下さい!」

 

顔を青くしたシャチがそのままの姿勢で止めてくる。

 

「何で旦那様に履かそうとしてるんですか!?」

 

「何でって……踏んでもらうからに決まっているでしょう?」

 

「ええええええ!?な、何が起こって……!」

 

「シャンデ、私はね……貴方が旦那様を見る時……とても熱い眼差しを向けている事に気付いたの……嗚呼……きっと貴方は内なる自分を必死に隠していたのね」

 

「それが何でピンヒールで踏まれる事に繋がるんですかっ!?」

 

「貴方は使用人で旦那様は主人……後はもうお約束だからよ」

 

「それはお約束であっておれは望んでな……いてててて!?」

 

片足にピンヒールを履かせたのでリーシャはローの足を持ち上げた。

 

重かったけれど何とか上げられたのでふう、と額の汗を拭う。

 

「何一仕事終えたみたいな仕草してんのこの子!痛い!旦那様!ちょ、退かして下さいこの足!」

 

すると、生気がなかったローが今し方気が付いた様子で声の出所を見る。

 

「何やってる……お前はそんなにピンヒールで踏まれたかったのか?」

 

「えええ!?嘘だろっ、今まで会話聞いてなかったの!?だから望んでないと言ってるでしょうがああああ!!」

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