短編集(夢小説)   作:苺のタルトですが

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旦那様は七武海15ー16

屋敷にただただ籠もっていてはカビが己に生えてしまうと懸念したので屋敷を漁って何か面白いものが無いかと探した。

 

これと言って暇な時間を潰せるものもなくガッカリしているとそれを見かねたメイドが買い物でもしてきてはどうですか、と言うのでお言葉に甘えて外へ外出。

 

今は好都合にローも出払っている。

 

海軍の収集が掛かったとかで行かなければと至極面倒臭がっていた。

 

アレに真面目に参加する海賊なんてほんの少しなのに勤勉な事だ。

 

それに、ローの本来の目的とは随分かけ離れていると思う。

 

そう考えれば別に収集など無視してしまえば良いのではないだろうか。

 

頂上戦争の七武海の参加は七武海の称号の剥奪という致命的な物だが、今回はそんな切羽詰まったものではないと考えられる。

 

そんな事を暇人故にのんびりと思考していると前方に町が見えてきた。

 

貴族というのは楽だ。

 

何せ馬車で手間も掛けずに町へ乗せて貰える。

 

既に駄賃も払い終えているし帰りも楽。

 

しかし、それでも海の海賊への憧れはなくならない。

 

刺激のある人生が羨ましい。

 

リーシャも暴れたかった。

 

こんな風に屋敷を行ったり来たりするだけの時間が勿体ない。

 

鬱憤らへんが溜まっているのだろうと深呼吸する。

 

このままだと死んでしまいそうだと悲観した。

 

ガタガタと振動がお尻に響く。

 

馬車を操っている業者の着きましたよ、という声に降りた。

 

やっと着いた、と体を解していると業者の男が笑顔で帰りはいつ頃に、と聞いてくるので二時間後にすると告げる。

 

そして、店のある道へ歩みを進めた。

 

進んでいくともう見慣れた町が目に入る。

 

とても小さな世界だな、と感傷的になりながらもお店を覗き込んで冷やかしていると不意に視線がある物を捉えた。

 

これは面白そうだと直感が働いてそれを購入。

 

帰ってこれを見せたらさぞ皆、驚いてやりたくなるだろう、と頬を緩ませる。

 

業者に二時間後と言ってしまった事を後悔しながら直ぐに帰りたい気持ちを我慢して買い物の続きをした。

 

今世のままの自分ならば我慢など縁遠い言葉だっただろう。

 

リーシャはふと思う時がある、自分が前世を思い出したのは幸福なのか、それとも不幸なのか。

 

今は幸福だったと言える。

 

けれど、ローに放って置かれて何もかもに押し込められている生活だと気付かなくても良かったんじゃないかと思う時もあった。

 

どちらも正解で、不正解。

 

まだ今がどちらなのかは判断出来ない。

 

何十年後かにどちらかだと分かるだろうと物思いに更(ふ)けった。

 

 

 

二時間後、屋敷に帰るとまだ日は高かったのでまだ大丈夫だと安堵する。

 

彼等と直ぐにでもこれでやりたいとうずうずしてきた。

 

お迎えをしてくれた四人にただいまと告げてからシャチとペンギンに相談。

 

「実は町でとても面白そうな物を買ってきたの。よければ一緒にしない?」

 

そう言って物を見せる。

 

やはり、二人は困惑してそれを見た。

 

「奥様……それはアウトレットのものですが」

 

「いくら奥様でも無理な気が」

 

シャチ達がそう告げても意地としてやることは決めた。

 

なので、ドレスから着替えて汚れても良い様にズボンに履き変える。

 

その姿で出てくると二人には流石に本気だと伝わった。

 

それを手にして三人は森へと進む。

 

入った森は私有地で、メイス家の管理する土地だから問題はない。

 

「奥様、私とシャンデ、どちらと組みますか」

 

組むの前提なのか、余程弱いと思われてるな。

 

かなり不服だが、彼等は海賊だからハンデが必要だと自身を納得させてペンギンを選ぶ。

 

それから十秒を数えてそれは始まった。

 

「奥様、私が撃つので奥様は援護をして下さい」

 

「分かったわ」

 

背後を狙われないようにと注意して周りを見なくては。

 

いよいよ始まるバトルに闘志が燃える。

 

リーシャが買ってきたのはアウトドアグッズのカラーボールが弾というおもちゃの銃だ。

 

ペインティングボールなので当たるとペンキが付く。

 

他にも罠などあったが、次回にしようと思っている。

 

ニヤニヤと笑みが浮かんでいれば程なくリーシャの肩にペインティングボールが掠った。

 

背筋がヒヤッとしたが、気を取り直す。

 

一発で死んだ事になるのは流石に早く終わるのと同じなので、五発当たったら死んだ事、というルールだ。

 

折角初めてのバトルだというのに早死には面白くないと銃を構える。

 

視覚の何処にもシャチの姿が見当たらず流石だと冷や汗が背中を伝う。

 

「ペンダ、シャンデが何処に居るか貴方は分かる?」

 

「ええ、気配が漂っています。アイツ、余裕ぶってるな……」

 

余裕なのはきっとリーシャと言う荷物をペンギンが抱えているのが分かっているからだろう。

 

そこまで思われているのなら、こちらとて容赦しない。

 

ペンギンと相手の動きを見るために木の幹へ隠れて小石を拾う。

 

何処に居るのか分からないのなら、誘き出すまでだ。

 

小石を投げて落ちる時と同時に声を出す。

 

「きゃ!」

 

「!」

 

ペンギンはこちらの行動が見えていたので助けに行くフリをして隙を与える。

 

それに対してシャンデも動きを見せた。

 

小石が落ちたところへと銃口を見せた時、一発のペインティングボールがシャチの背中へ当たる。

 

シャチが間の抜けた顔をすると罠だった事を知ったらしいその目に火が宿るのが見えた。

 

「お嬢様、やりますね」

 

「此処までしないと勝てないので」

 

「おれ達をそこまで買って下さっているようでとても嬉しいです」

 

敵側のシャチは闘志に火を付けたからか、口調が海賊っぽいものになりかけていた。

 

ペンギンにも挑戦的な笑みを向けてまた三人は隠れる。

 

どうしよう、と次の作戦を考えるがダミー作戦はもう通用しないと考えてから、ペンギンの方へ向く。

 

すると、彼は上を指しているので頷いて上へ登る。

 

銃を片手に登るのは結構キツかったが、何とか登り切ると下を見た。

 

ここならシャチを見つけられる、と思ったのだが、どうやら相手も此方の位置を把握してしまったようだ。

 

目が合う、ニヤリと笑う男。

 

身動きの取れない女、銃口を向けるシャチ。

 

逃げられないとそれを受ける。

 

破裂音の次に服へベタリと付く音に一度目の攻撃を受けた。

 

二発目を受ける前に相手が頭へ食らう。

 

それは、味方のペンギンが放った攻撃。

 

それに当たったシャチは悔しそうにペンギンへ当てるが彼は避ける。

 

リーシャもシャチが気を取られているうちに一発シャチに向けて撃つ。

 

当然、避けられてしまった。

 

銃口を向けて当てられるのは彼等が海賊でこれらを扱いなれているからという他ない。

 

初心者の自分は恐らく目の前に行かなくては当てられないだろう。

 

そうだ、それがあった。

 

己が唯一出来るであろう事は特攻。

 

それだと行き着いた答えに木から降りる。

 

ペンギンとシャチがリーシャの存在を放置して撃ち合いをしているのも気にならないくらい今は興奮で頭が一杯だった。

 

撃つか撃たれるか、それならば後三回撃たれたらシャチは負ける。

 

その事実ならば、それだけがリーシャの思考を占めた。

 

撃ち合いに思考や気配を持って行かれているシャチに背後から忍び寄る。

 

シャチに気付かれた時が勝負だ。

 

ほふく前進で前へ進む。

 

明日はきっと筋肉痛で悲鳴を上げるこの体に今だけは頑張ってくれ、と言い聞かせる。

 

「?……!……なっ」

 

シャチが気付いた時には目の前に迫っていた。

 

そして、相手が驚いている隙に一発、二発と撃ち込んでいく。

 

シャチも一発二発と相撃ちでこちらにぶつける。

 

奇襲しているのに正確にここへ撃ち込んでくるのは悔しいがそれが海賊故の反射的対応だろう。

 

「後、一発!」

 

まだ自分は三発まで撃たれても平気だ。

 

これでチェックメイト、と心の中で呟いて最後の一発をシャチへと放つ。

 

--パァン!

 

その音を最後に静寂が辺りを包んだ。

 

「嘘だろ……」

 

シャチが肩を落としてリーシャは確信する。

 

「おれが、負けた……なんて……」

 

勝利した事を。

 

 

 

LAW side

 

前の時は二週間と立たずに帰ってきたのだが、今回は海軍からの収集という七面倒臭い物に参加しなければいけなくなったので参加した。

 

予定よりも長引いた事に苛つきながら屋敷へ帰ると屋敷の中はほぼ無人だったことに更に苛立ちが募る。

 

メイド服の女にリーシャの居場所を聞くと怯えられながら教えられた。

 

そんなに怖いのならばここで働かなかったらいいのだと虫の居所が悪い機嫌で女を後にする。

 

しかし、何故森なんかに居るのだろうと疑問に思う。

 

探索したくなったのだろうかと理由を並べていると森へ近付く事に銃声よりも軽い音が森から聞こえてきている。

 

鹿狩りでもやっているのかと思った。

 

だが、シャチとペンギンの姿を確認した時に、その事は頭から綺麗に忘れる。

 

何故なら、シャチの背後にリーシャが忍び寄っている、這い寄っているとも言う。

 

そんな思わず唖然としてしまう光景を前にシャチが彼女の接近に気付いた時にはかなり近くに来ていた。

 

彼女は気付かれたと知るや迷わずシャチをおもちゃと思わしき銃口を向けて発射する。

 

どうやらペインティングボールだと周りのカラフルな光景に知った。

 

あっと言う間にシャチとリーシャの撃ち合いは終わって勝者が立ち上がる。

 

ペンギンもリーシャの所へやってきて二人で喜び合う。

 

シャチはガクリと膝を付いて負けに浸っている。

 

(一体俺の居ない間に何が……)

 

その気持ちにデジャヴを感じた。

 

己の妻が別人になった時と同じく似たような心境だ。

 

シャチとペンギンがそれに付き合っている時点で何となく展開は読める。

 

しかし、リーシャがシャチの背後に忍び寄って捨て身の特攻をした事が大きくローの全ての根底を覆させていく。

 

貴族なんじゃないのか?

 

その服は何なんだ。

 

何故ゲームにあんな捨て身な技を用いたんだ?

 

その笑顔は何なのだ、と。

 

様々な出来事がローの頭を混乱させていく。

 

冷や汗と言っても過言ではないものが額から出ている事も気にならない程見つめていると、最初に気付いたのは負けた男だった。

 

「あ、旦那様……帰ってきたんですねー!」

 

シャチがよく分からないテンションで立ち上がって此方へ来る。

 

それに続いてペンギンも来るが、リーシャは何かをペンギンに伝えてから屋敷の方へ歩いて行く。

 

「アイツは何処へ行くんだ」

 

ペンギンに問う。

 

「服が汚れているから身を綺麗にしてからお出迎えすると伝える様に言われました」

 

(……!)

 

ペンギンやシャチの前ではあんなにボロボロでベタベタで破格な笑顔を見せるのに、ローを前にして二人と真逆な対応に己も気付かない憤りを感じた。

 

(おれには本当の姿を見せられないのか)

 

偽りの夫婦、偽りの結婚、偽りの生活。

 

彼女がそういう態度になる要素がローにはあるという事は良く理解している。

 

けれども、頭では理解しているが、何故か納得する事が出来なかった。

 

 

 

***

 

 

 

シャチ side

 

初めてその姿と性格を間近で見た時はギャップにかなり苦しめられた。

 

屋敷に潜伏する事になったのは、彼のトラファルガー・ローの書類上『嫁』が以前まで沢山いた使用人を一斉に解雇した事が主な理由だ。

 

ローはとても多忙な身であるが故に船長の船員であるシャチとペンギンに内情を探る密偵として白羽の矢が立つ。

 

特にすることもなく、刺激的な事も起こらないところで身体を鈍らせるよりはずっとマシだから参加する事にした。

 

面接をするという訳で先ずは偽名を考えなくてはいけないと思って、ペンギンとカッコイい名前を考える。

 

密偵と言えばやはり偽名は必需品。

 

それを得てからいざ面接へ。

 

何というか、キャプテンからは「我が儘な女で煩い」と聞いていたので拍子抜けした。

 

即採用なのも驚いた。

 

ペンギンもだ。

 

お互いに大きく頷いたのもローに報告出来るからだ。

 

「つーか、マジキャプテンが言ってたイメージと……」

 

「正反対だな、今の所」

 

対面した時も改めて思ったし、ペンギンも混乱したように腕を組む。

 

こうして二人揃って潜入する事に成功した。

 

キャプテンは喜んでくれるだろう。

 

しかし、その日だけの驚きでは済まなかった。

 

庭師になるように言われたので外に居る事が多くなる。

 

そして、何日も経過した後でも特に身構えていたような事態は起こらなかった。

 

例えばローが言っていたような我が儘も癇癪もなく、寧ろかなり自由に屋敷を歩いていても咎められる事もない。

 

数日してからやっとローが屋敷に帰ってきた。

 

既に使用人として雇われている事は伝えてある。

 

外に居てると奥様がラフな格好で出てきた。

 

とても貴族が着る様な服ではない。

 

驚いていれば外へ出ようとする。

 

一人もメイドを連れていないし、川へ洗濯へ……なんて出てくる言葉に思わずツッコむ。

 

押し問答を繰り返しているとローが後ろに居てリーシャ達にどうしたと聞いてくるので訳を述べる。

 

全てを理解したらしいローは付いて行くと言うので見送った。

 

だが、帰ってきたローはぐったりしていたので何があったのだろう、と目を白黒させる。

 

その間に彼女は袋から箱を取り出す。

 

そして、シャチに四つん這いになるように指示をするのでその通りにした。

 

そうしていると意気消沈しているローにピンヒールを履かせ出すので嫌な予感を覚える。

 

本能が逃げろと言う。

 

ローに履かせ終えたリーシャはその大きな足をシャチの背中に勢い良く乗せた。

 

ピンヒールの尖った部分がめり込んで痛い。

 

痛いという悲鳴を上げていると意識を戻したローが何をやっているんだと言ってきたので救世主等何処にも居なかった。

 

それから数日後、ローとリーシャは夜会のパーティーへ行く為にダンスをしているのを眺める。

 

貴族の令嬢と結婚したからってこんな面倒な事をしなければいけないなんてローがとても不憫に思えた。

 

でも、彼は嫌な顔せずに綺麗に踊っているし、踊りのことは全く分からないが完璧に見える。

 

この調子なら貴族の鼻を明かしてやれる、と一人で盛り上がった。

 

けれど、パーティーから帰ってきた二人、詳しくはリーシャの様子が変だった事が気になる。

 

翌日、彼女から手伝うように言われた作業をこなして朝から働くと箱から出てきたのはなんと様々な形をした棺桶だった。

 

ペンギンも仰天していて互いに顔を見合わした。

 

けれども、そんな事はお構いなしで何処か怒ったオーラを纏う奥様はローを呼びに言ったのだが、まだ朝食も用意出来ていない。

 

ローが此方へやってきた時、良い笑顔の女と顔を引き吊らせた男の二人が棺桶の目の前に立つ図が朝から出来る。

 

これにはペンギンと苦笑いせざるおえなかい。

 

一体に二人の間に何があったんだろう。

 

そして、衝撃的な事にキャプテンが女物の下着を付けているという疑惑が浮上した。

 

キャプテンは否定していたからないと信じたい。

 

それにしても奥様はとても怖いもの知らずな性格をしている。

 

前からそうだったのだろうか。

 

それにしてはローの態度に違和感を覚える。

 

彼は彼女を嫌っているようにも鬱陶しく思っているような素振り等していない。

 

それについてはペンギンも同じ意見だった。

 

またまた数日後、リーシャが実家に帰る事になった。

 

何でも父親から手紙を渡されて帰ってくるようにと一時的な帰還らしい。

 

奥様が留守なんて暇になる。

 

貴族の家で護衛と監視なんてつまらないと思っていた当初に比べたら予想よりも楽しく過ごせた。

 

堅苦しい生活になると踏んでいたのにかなり自由に過ごせた事は幸運だ。

 

当日の朝になって突然ローも着いていくと言われて、驚く。

 

確か彼女の父親は海軍で貴族だという男だ。 

 

一番会いたくない部類だろう人間に会いに行こうとするなんてローの考えは今のところ不明。

 

それよりも一人で行くつもりだった彼女の反応が知りたい所だ。

 

二人が居ない間に変化等は特になかった。

 

夫婦の二人が帰ってきたので出迎える。

 

何処か雰囲気が緩んだような緩んでいないような気がするが、笑顔で対応。

 

すると、リーシャがとあるお土産をくれた。

 

それに、この屋敷に仕えていて良かったと思った事を記そう。

 

ペンギンと交換しあった所謂男達のロマンの詰まった本は女性が買ったからかセンスが良かった。

 

奥様、あんた最高だぜ。

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