短編集(夢小説)   作:苺のタルトですが

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旦那様は七武海(番外編)1ー4

本当の夫婦(強制的)となった後、彼はリーシャの叫んだ願いを次々と叶えてくれた。

 

例えば土地を離れて海へ連れ出してくれた。

 

「どうだ?海は」

 

「広い、青い、綺麗」

 

「海だからな」

 

ククク、と笑う隣に居るロー。

 

此処は彼の船であるハートの海賊団の船員達が集う海賊船だ。

 

そこに初めて乗せてもらう。

 

夫の船に乗るなんて不思議な感じだ。

 

「で、願いは叶ったか?」

 

「叶ってない」

 

「あ?」

 

また凄んでくるので無視してボソリと言う。

 

「麦藁海賊団の船に乗りたかったって私は言った気がする」

 

そう言ったのに、と言うとローはハッと鼻で笑ってくる。

 

リーシャはローに外で文句を言ったあの日から色々吹っ切れたので令嬢特有の~ですわ、という言葉遣いを使うのを一時的に止めてみた。

 

なんというか、ローに使うには敬う気に到底なれないからだ。

 

「お前、本当遠慮も態度もなくなったな。令嬢の欠片も残ってねェな」

 

「それを言うならシャチとペンギンだって態度も敬語もなくなってるけど?」

 

「そりゃ、密偵だからだ。元々おれの部下だったからな」

 

知ってる。

 

「あっそ。なんというか、貴方にはもう恭しく従う気がなくなったというか、兎に角、なんだか余所余所しくするのが馬鹿らしくなってね」

 

「へェ、そりゃ光栄だ」

 

彼はからかうように言ってからこちらを向いてそっと顔を近付けてきてキスをした。

 

その秒刻みの行いにパッと離れて口を拭く。

 

「なにするの!許した覚えないから!気安く触れないで、金輪際ね!」

 

「夫が妻の許しが無い限り手を出しちゃいけねェなんて法律ねェよ」

 

勝手にするのは許さないと言う自分にそう言ってくるロー。

 

青筋が浮かびそうになる。

 

肌を合わせてからというもの、彼には節操という物が欠落してしまった気がしないでもない。

 

元々キスも隙があればやってきたので今更な事だが。

 

「うるさい!」

 

揚げ足を取られるのがなにより腹立たしい。

 

これならシャチやペンギンと居る方がまだ楽しい。

 

彼等は今どこに居るのだろうか、と探そうと歩き出す。

 

これ以上一緒に居たら破廉恥な事をし出す可能性があるので逃げた。

 

それを追ってくる素振りもなかったので内心安堵して船内へ戻る。

 

廊下を縫って元使用人の二人を探す。

 

彼等は船へ戻るとツナギを着た、それからリーシャに謝った。

 

騙していてすまなかったと言われたので慌てて気にしていないと言った。

 

それに、スパイと知っていながら採用したのだと言うと、彼等は目をパチパチとしばたかせて驚いていたので笑った。

 

「シャチー、ペンギン?」

 

呼び掛けても返事がない、昼寝でもしているのだろうか。

 

それともゲームでもしていて盛り上がっているのだろうか。

 

彼等は屋敷に居たときより遙かに顔が活き活きとしていたので、やはりこの船が好きで、仲間やローが居るこの場所が好きなのだろう。

 

自身には用意出来ないこの場所へ帰ってきた時、仲間達が返ってきた事を喜んでいたのを見た時、言いようの無い寂しさを感じた。

 

友達が親友と出会って喜んでいた、そんな類の寂しさだ。

 

「はぁ、よく考えたら、私、友達居ないなあ」

 

考え無くても居ない。

 

胡乱になる思考を止めて、彼等を探し出す為にまた呼び掛けを開始。

 

しかし、出てくる様子もなく彷徨いていると廊下の曲がり角でローとぶつかる。

 

「いった!」

 

鼻をぶつけてしまい相手を見ると「まだこんな所に居たのか」と言われムッとなる。

 

「この船は構造が複雑なので疲れただけですわ?」

 

嫌味を言う為に令嬢口調へチェンジ。

 

ローはそれを聞いてジィっと見てきたので怯む。

 

「な、なんですの?不躾な視線は紳士としてあるまじき行動ですわよ?」

 

「いいや?口は不器用なのに体は素直だと思っただけだ」

 

「なっ!?破廉恥!スケベ!節操なし!」

 

こんな誰に聞かれるとも分からない場所でそんな発言をするローに赤面。

 

数々の罵倒を浴びせて、浴びせ終わる頃にはこちらの息が乱れていた。

 

「暇ならおれと過ごせ」

 

「暇じゃありませんわ!」

 

「暇だろ?うろついていると報告は来ていた」

 

誰かに見られていたのだろうか、それにしては会わないが。

 

疑問を感じていると彼は徐にリーシャの腰を引き寄せて熱烈な口付けをしてきた。

 

相手の瞬発力には驚かされる。

 

こちらが何か反応する前には行動を全て終わらせているから何も出来ずじまいだ。

 

酸素がなくなりかける感覚にクラクラした。

 

ローの微かな香水の香りが鼻を刺激して心臓を高鳴らせる。

 

「嫌がってても分かる。おれの事、言う程嫌いじゃないだろ?」

 

「ご冗談!」

 

(くそ、バレてる……)

 

好きか嫌いかと言われれば……好きに傾いている。

 

ローはそれを見透かしているという事だ。

 

ぐぬぬ、と悔しく思いながら顔は馬鹿らしいという仮面を張り付ける。

 

隙を見せたらいけない男だ、こいつは。

 

ススス、と太股をズボンの上から撫でつけてくる相手にビクッとなる。

 

なんて厭らしい触り方なのか、止めさせようと蹴りつけるが足をキャッチされて寸止めされた。

 

片足がぶらついてバランスが保てなくなり反射的にローの肩へ掴まる。

 

「お前も結構乗り気だな、くくく」

 

了承した訳ではないと知っている筈なのに意気揚々と身体を持ち上げて移動し出すローに慌てて降ろせ、離せ、と叫ぶが本人はそれを総じて無視した挙げ句、部屋へと直行して気が付いた時には船長室の扉がパタリと閉まる音が耳に聞こえ、自分の行く末を垣間見た。

 

 

 

夜、呼び出されたので行くと眠い目をこすりながら手を掛ける。

 

お化けでも用意して何か驚かそうとしているのかもしれない。

 

ごくりと喉を鳴らしてバッと開けると視界にカラフルな物が散らばる。

 

呆気に取られていると男達の集大成が聞こえた。

 

「入団を記念してェ」

 

「「「宴を催しまーす!」」」

 

入ってきた時に聞いたのがクラッカーの音だと理解してからの言葉に言葉が出てこない。

 

もしかして、今日まで周りが余所余所しかったりあまり接触をしてこなかったのはそういう事だったのかもしれないと頭が回るまで時間が掛かった。

 

「これ、えっと、え?」

 

令嬢言葉をど忘れしてしまい混乱する。

 

「お前の歓迎会だ」

 

ローはシレッと言う。

 

更に混乱しながらも理解して、この歓迎会の意味を見出していく。

 

「シャチもペンギンも、私の事なんてもうどうでも良いんだとばかり……」

 

目に涙を溜めてグイッと拭う。

 

すると、シャチが近寄ってきて頭をポンポンと叩くようにクシャクシャにする。

 

「お前、ほんと令嬢っぽくねーのな。んな事、気にしてたなんてよ」

 

「するっての。普通。私の近くにまともな人格者なんて居たかったし、寂しかったんだからっ!」

 

シャチに愚痴ると船員達は面白い令嬢だと笑う。

 

その笑いは嘲りではなく愉快であるという空気である。

 

「ていうか、私入団しないよ?麦藁海賊団に入るから」

 

ケロッと言うと船員達がずっこけた。

 

ローに空気読めと叱られたが、訂正する気は毛頭無いので無視。

 

でも、歓迎会は嬉しかったのでありがとうと言うと皆はホッとした顔で仕切り直しだと騒ぎ出した。[newpage]バタバタと足音がする。

 

護身用にと持たされたクレイモアと小さめの拳銃(それでも重い)の取り付けた場所を触った。

 

今現在、ハートの海賊団は物資を得る為に海賊へ攻撃を仕掛けて略奪行為をしている。

 

七武海になるとやってきたり挑んでくる同業者が居なくて、こうしてこちらから襲わなくては相手は逃げるらしい。

 

シャチに聞かされた。

 

シャチは屋敷に居た時と何も変わらず能天気で少し抜けている男性である。

 

隠密行動に長けている訳でもなく、ドヘタであった。

 

ペンギンはそこそこ隠密出来ていたが、慣れない事をしていたのだろうから穴抜け状態だ。

 

ローにそれを後から指摘して上げたら「勉強だと思って肝に命じさせとく」と言った。

 

その前にスパイを送ってごめんなさいはどこいった!

 

まだ謝罪を聞いていないぞ。

 

回想をしていたら船長室の扉がガチャガチャと煩い。

 

ローが出て行く前に鍵を掛けておけと言っていたので掛けておいたが、どうやら敵のお出ましのようだ。

 

隣にある魚取り網をスタンバイして扉が嫌な音を立てて亀裂を入れて壊れていく様を見る。

 

この部屋はローの部屋なので当分は寒々しい事になるなと他人事に思う。

 

というか、とっとと麦藁海賊団と会わせろと直談判しているのに聞く耳を持たない。

 

言ったらその後に寝室に連れて行かれるし、嫌な思いしかしないので最近は偶に言うだけに留めていた。

 

しかし、そろそろローがパンクハザードに行く日も近い。

 

付いて行けば漏れなく会えるのは理解している。

 

「此処、すげェ厳重だぜ?お宝があるかもしんねェな!」

 

「おっし、体当たりかませ!」

 

頭脳が筋肉の会話が聞こえてきた。

 

この船には沢山部屋があるから此処が船長室だと分からないのは仕方ないとして、船から宝を持ち出してバレずに自船に帰れるかとなれば難しい。

 

それに、ローが貰うと踏んで襲った船の相手だ、壊滅一直線だろう。

 

ついに、扉が破壊された。

 

 

 

部屋に帰ってきたローは自分の部屋の異質さに驚いていた。

 

何がどうなっているのだと椅子に座っていたリーシャに問いかけてくる。

 

そんなの見れば分かるだろうと眉を顰めたくなるのを抑えて捕らえたのだと簡潔に言う。

 

「本当に、お前、貴族の中で育ったのか?」

 

「だから……はァ……それを教える義理はないって言ってますでしょう?」

 

一々聞かれるのがとても面倒だ。

 

「大体ねえ、私を頭の悪い性格最悪な令嬢だから結婚してもどうせとか思って私を選んだんでしょうが、そっちが勝手に想像して私の本性、見ようとしてなかっただけなのですわ。私ではなく貴方の目が節穴ってこった」

 

「お前、口調。後、サラッと色々言ったな」

 

「うっせーですわ。とっととそのこそ泥を向こうに持って行きやがれですぅ」

 

お淑やかに笑うと口元をピクピクさせたローは能力でこそ泥二人をどこかへやった。

 

それからローは刀と共にリーシャの横に座る。

 

それを合図にもう行こうと立ち上がると腕を引かれて目を眇めて相手を見た。

 

「もう戦闘は終わったんですよね?じゃあお暇させていただきますんで、腕、離して下さる?旦那様」

 

「その旦那っつーの止めろ」

 

「は?今更なにを?ていうか、私のロマンスウエディングを汚い政略婚で済まされた事、まだ許してないんですけれどー?ていうか、離せ!」

 

ブゥン!と腕を外すために自分の腕を振るうとローは無表情でグッと引いて、その反動で椅子に倒れ込む。

 

咄嗟の事で声も出ず、目を瞑る。

 

次いで直ぐに目を開けると見下ろされている状態で相手の輪郭がボヤける程近くあって、キスされていた。

 

「っ、なに、す!」

 

退けようと力むけれど、七武海の男を退けられるなんて奇跡は起こらない。

 

呼吸も息も全て奪われる。

 

何を考えてキスしているのか分からない。

 

少し前まで全く興味もなさげにこちらを見ていたのに。

 

地位を強固にしたくて結婚したのはそっちなのに。

 

夢心地な結婚生活も奪い、自由も奪った癖に。

 

今まで泣くまいとしてきたのに、色々な思いが胸からせり上がってきて、ポロリと涙を零してしまう。

 

彼が微かに動揺するのが見えた。

 

困ってしまえ、なんて毒づく。

 

「確かに、お前は恰好の女だった」

 

泣いた女の前でデリカシーの無い事を言う。

 

モテないだろうなこいつ。

 

「泥だらけで遊んだり、幽霊の騒動の犯人を捕まえたり、おれに嫌いなもん食わそうとしたり……都合の良い女じゃいつの間にかなくなっていたがな」

 

それはそれは良い事である。

 

この男の悔しがる心情にスカッとした。

 

困らせられたのは出来ていたらしい。

 

「いつの間にか、お前を目で追うようになって……あの屋敷に帰るのが義務だと思わなくなっていた」

 

その前までは義務だと思っていたと白状したぞ。

 

締めてやる、ボコボコにしてやる。

 

ジトリと睨むと頬をゆるりと撫でられてくすぐったさに身を捩った。

 

甘やかされているみたいで何だか嫌だ。

 

「くく、照れてんのか?可愛い奴」

 

(なにこの外科医!?)

 

可愛いなんて言葉が出てきた事の方が衝撃だ。

 

驚いて目をぱちくりとしているとローがまた近付いてきた。

 

きっとキスするつもりだと気付いて手でガード。

 

これで接吻出来ない。

 

接吻って古いとかそこ突っ込まない!

 

ローはガッとガードしている手を外しに掛かり、攻防が開始する。

 

ぐぬぬぬう、と踏ん張っていると彼が耳に息を吹きかけてきたせいで背にゾクッとした感覚が流れ込む。

 

そのせいで「うあ!」と力が緩み腕を退かされてしまう。

 

「あ、あっち行け!」

 

「その命令は聞けねーな」

 

「命令じゃないし!決定事項だし!」

 

頬に赤みが差しているだろう。

 

「もう、解放してよ!貴方、どうせ私じゃなくても良いんでしょ!?」

 

たまたま丁度良い地位の女が結婚し易く、白羽の矢が立った生け贄である。

 

というか、離婚届はあるのでそこにサインしてくれたら良いのだ。

 

「そ、そうだ!丁度離婚届あるからさ、サインしてよ!」

 

名案だと提示するとローが凄まじい眼孔でこちらを見て腕の力がとても強くなり痛みが発生。

 

いたっ、と声を出しても緩められない。

 

これだから海賊はと悪態を付く。

 

「離婚届?サインするか、馬鹿」

 

嘲る様に笑うローを見て歯を噛む。

 

「良いですわ。貴方がそう言うのなら、実家に帰らせてもらいますので!」

 

いくら海賊であれ、監禁なんて真似、出来ない。

 

これは双方の利害の一致で行われた結婚なんだから。

 

無体な真似は晒せまい。

 

「フフ、ほんと、頭の良さが別人だな」

 

(笑う所じゃ無いしー!)

 

何が面白いんだか、と呆れる。

 

まだ腕は離されていない状態で抱き起こされた。

 

恥ずかしいと暴れるが、意に介していない。

 

「生意気な女には調教が必要だと思わねェか?リーシャ」

 

その単語に嫌な汗を感じつつ「必要無いですわ」とポーカーフェイス。

 

此処で動揺したり慌てふためくと相手の思う壺である。

 

努めて何でもない顔をすると益々笑みを深めるロー。

 

「知れば知る程、手放せなくなるな、お前は……」

 

ニヤッと笑うと頭に手を添えて深く口付けてきた。

 

引っ掻いてやろうと爪を腕にギリギリと立て付けるとローが口を離して言う。

 

「そんなに立ててェなら思う存分背中に立てりゃあ良い」

 

目が濁ったのは言うまでもない。

 

やっぱり、可愛く甘えるなんて到底出来そうにないと憎々しく思った。

 

[newpage]

 

暇暇だと連呼していたシャチに業を煮て良くある暇つぶし用の提案をしてあげた。

 

提案する前に令嬢なんだから何か特技あんだろと言われたから偏見の罰として魚取り網で捕らえて吊してやった。

 

上を見上げて彼に「ほら、ご所望の特技だよシャンデくん」と過去の偽名を使って笑ってあげたら泣いて謝ってきたのでまあ下ろして上げた。

 

で、話しは戻すとその暇つぶしは怪談話。

 

という奴である。

 

コックリさんとかは危険なのでしない。

 

あれを気軽にすると案外ヤバいというのはそれなりに有名な話しであろう。

 

怪談話ならば船員達も参加しやすいだろうしと提案すると傍に居たベポが皆を呼んでくると嬉しそうに部屋を去ったのだが、どこに集める気なのだろうか。

 

そして、何人集める気なのか。

 

もしかして食堂…………いくら何でも場所を選ばないと雰囲気も何もない。

 

一旦集まってもらってまた移動するしかない。

 

人数も数えて場所の広さを査定しなければいけないだろうし。

 

少し暇を潰すつもりが考える事が増えて今日は忙しくなりそうだと内心歓喜。

 

シャチも暇だったらしいが、陸ではない船の中では誰でも暇である。

 

つまりはリーシャも暇であったという訳だが、別にそれを言う必要も無い。

 

暇と言って何か起こった時に怒られるのはシャチ一人で十分だろう。

 

狡いけれど生き残る術なので致し方有るまいと黒い笑みを浮かべた。

 

歳を重ねるとずる賢さが出てくるんだなあと思いつつ、ローはずる賢さだけは高いので見習おうとそこだけは認める。

 

ベポが連れてきた(かき集めた)のは全部で八人。

 

何てこった、ローと見張りを抜いてもほぼ全員と言っても過言ではない人数だ。

 

「ここより広い……二番目の部屋の場所を知っている人は居る?」

 

六人も居て、プラス四人なので十人である。

 

聞くと出てきたのは倉庫、又は宝や酒がある場所と言われたのでそこへ向かおうと言うとベポが嬉しそうに蝋燭も!と言う。

 

ベポ、ノリノリであった。

 

アザラシを食べたとかいうグロ系でなかったら良い。

 

蝋燭を持って大移動すると輪の形に座る。

 

「んじゃ、始めるぞ……スタートはお前からな」

 

シャチが取り仕切り出して指名したのはリーシャで、それに抗議する。

 

暇と言うから催して上げたのに恩を仇で返そうとしている不届き物が居るようだ。

 

「普通シャチだと思う。暇ならそれなりの順序って奴を示してよ……先輩様」

 

新入りらしく言うと彼は新入りだから一番初めなんだろと返してきた。

 

仕方のない我が儘だ。

 

どっちが貴族みたいなのか分かったものじゃない。

 

此処はこちらが大人になってあげようではないか。

 

「それじゃあ……」

 

蝋燭を顔の近くに寄せて雰囲気を作る。

 

「とある女の身の毛もよだつ、実話」

 

薄く笑って目元は軽く俯かせてから声は低く。

 

それが上手く出来ているようで誰かの喉を上下に揺らす音が僅かに聞こえた。

 

君達怖がるのが早いよ。

 

「ある朝、いつものように目を覚ました女はいつものように一日の始まりを開始させて」

 

ジジジ、と蝋燭の蝋が火で溶ける音がする。

 

「いつものように部屋を歩いたの」

 

この話しは実話。

 

「そしたら、足がつまずいて、転けて頭を強打。そして、気絶した」

 

その恐ろしさ、一押し。

 

「頭の痛さに目が覚めると、怖い事に気が付いたの。崖から飛び降りたって足りない事実を知ってしまうわけ」

 

「それ、どんな事だよ」

 

怖々と聞いてくる一人に待ってましたと眼力を眇めて一呼吸。

 

「その事実っていうのはね」

 

ごくり、また息を呑む音が聞こえて口角を弓なりに上げる。

 

 

 

 

 

「その女は王下七武海の妻にならされていたの」

 

 

 

 

 

「…………………………………………って、おいいい!!!!」

 

「それお前の事だろーが!それ違う!」

 

「怪談じゃねーしいい!」

 

「確かに冷や汗ものだけどな!でも、そういう話しを期待してたんじゃねェよォー!」

 

その周りの反応に少しガッカリだ。

 

共感してもらえるかなー、と思っていたのに。

 

ふてくされると船員達は冷や汗を拭う。

 

「あ、皆汗出てる!これ立派な怪談じゃない?ね?ね?」

 

指摘するとそっちの汗じゃない!とまくし立てられる。

 

とか言いつつも楽しんで聞いていたのできっとそれなりに怖かったと思っているに違いない。

 

リーシャは皆に想像してみてよと語る。

 

王下七武海、そう、たった一人の女の七武海で、確か名前はボア・ハンコック。

 

彼女の夫になってしまっていたらと想像させる。

 

「…………って、例えが駄目かこれ」

 

確かハンコックは絶世の美女で、絵も見たことがあるから美しさは絶景で最強。

 

やはり、それを想像した船員達が鼻の下を伸ばし出して呆れた。

 

「…………………………………良い」

 

周りの男達の全ての声だ。

 

「はいはい、私が悪かったから皆、叶わない夢から覚めて覚めてー」

 

パンパンと手を叩いて意識を戻らせようとするけれど、それでも戻って来ない腑抜けた奴らが居る。

 

そんな人達には魚網攻撃で覚まして上げると「ぎィえええ!」と現実に帰ってくる声。

 

「じゃあ、改めて怪談始めるよ」

 

全員が帰還したので仕切り直して大勢を整えてコホンと一つ咳払い。

 

「じゃあ、今度は難易度が高い怪談……」

 

「どうした?いきなり黙り込んで」

 

「外科系の男の気配が近くにしたような気が、して」

 

そう言うと船員達は笑ってなんだそれと言うけれど、この鳥肌は嘘を付かない。

 

本能が察知している。

 

「後ろに這い寄る外科医…………なんてね」

 

そんなジョークに周りは笑う。

 

面白いと笑う。

 

「…………こんなとこでなにやってんだ」

 

「「「ぎゃあああ!外科医!」」」

 

「いや、外科医だけど、船長だ!」

 

「マジで当たった……リーシャすげーよ」

 

来る事を予知した事に驚いた一人に言われてにっこりと笑う。

 

ローが真後ろに居たのは今知ったが、その予感が的中。

 

船員達は驚き、ローはその反応に額に皺を寄せる。

 

確かに騒がれる理由も無いのにオーバーリアクションだ。

 

ローが来たというだけで輪の間を少し開けて座れるように距離を詰めていく。

 

ロースキーが本当に多いな此処は。

 

アウェイを少し感じている間にもローは居座るつもりなのか座る。

 

帰ったりこの集まりに興味なんて無いと思っていたので残るだなんて少し意外であった。

 

一人増えた程度で何かが変わる訳も…………ある。

 

ローはちゃんと怖がってくれるのか。

 

怖がらないだろうけれど、揚げ足を取る真似をしないか不安だ。

 

疑っている目で見ていると船員達が何をして此処に集まっているのかを説明している。

 

粗方理解したのだろう男は「怪談ねェ……」と無表情。

 

下らないと思っているのか興味を感じているのか相変わらず分かり難い。

 

やる事をやろうと咳払いして蝋燭を手に持つ。

 

「前髪焦げるからもっと距離を離せ」

 

(…………やり難いなあ)

 

さっきは誰も指摘しなかった事、しかもこちらの身を案じる内容に気が飛散しそうになる。

 

雰囲気を大切にしてもらいたい。

 

こういうのは空気が大切で命なのに。

 

少し蝋燭の距離を離すと唇を湿らせた。

 

「唾液で唇を舐めると乾燥した時に荒れるからリップクリームを塗れ」

 

「っ…………、ちょっと宜しいですか、旦那様」

 

(だから空気読めよ!)

 

「なんだ?」

 

「今から怪談を話すので関係の無い言葉は謹んでもらえます?今から怪談話します、か、ら!」

 

青筋を立てないように笑みを作り頼む。

 

ローは意味を理解してくれたのか口を引き結ぶ。

 

やっと再開の目処が立ったので改めて今度こそはと蝋燭を抱え直す。

 

次の話しはちゃんとした国民に有名なホラー。

 

決して、シャチとペンギンの隠密生活を赤裸々に話すなんて事はしない。

 

まあいつかネタとして語らせてもらおうとは思っているが。

 

本人達に全力で止められそうだから心の中で温めておく。

 

「普通の一軒家に住む男のお話です」

 

少し記憶が曖昧なので細かい所は適当に自作で設定を言っておく。

 

この世界は所謂電伝虫なので電伝虫を持っているという設定でいく。

 

男の家にある日、ブルブルブルブルと電話が鳴って、それに気付いた男が電話に出る。

 

「『私、メリーさん。今、どこに居るの?』と聞かれたから、家に居る、と男はつい口にしてしまうの」

 

何故口にしたのかも曖昧なので適当にやる。

 

家に居ると言うと女の子の声は今からそっちに行くわ、と言って一方的に電話を切ってしまう。

 

切れた後に誰だったのだろうと遅い疑問を抱く男。

 

また電話が鳴って受話器を取ると先程の女の子で。

 

「『私、メリーさん。今、貴方の家の前に居るわ』と言われるの…………そして、また切れて、また掛かってきて『今、玄関の扉の前に居るの』と言われて、そこで男の背中に冷や汗が伝う」

 

船員達が真剣に、目や身体、はたまた拳を強ばらせているのが見えてシメシメと優越感に浸る。

 

「また電話が掛かってくると……リビングの扉の前に居ると言われ、男は自分から電話を切ってしまう。けれど」

 

それでも掛かってくる電話。

 

取りたくないけれど、好奇心と探索心、知りたいという気持ちのせいでまた受話器を取ってしまう。

 

いつの間にか外は雨が降っていて、カーテンを締めていないのに薄暗くなっていた。

 

あまりの恐怖に男の顔は汗が滴っていた。

 

「受話器を取ると耳に声が聞こえて、でも、受話器越しじゃなくて…………二重に聞こえたの」

 

『私、メリーさん。今、貴方の後ろに居るわ』

 

「男の恐怖心がゆっくりと振り向かせるの。後ろを見ると……一週間前に捨てた筈のビクスドールが真っ直ぐ男を見抜いて、人形なのに、口は不気味なくらいに笑っ」

 

「「ぎゃああああああ!!?」」

 

ていた、と言い終わる前に叫ばれた。

 

ローがその煩い声の合唱に耳に手を当ててシャットアウトしていた。

 

リーシャもその音量にビクゥ!と肩を揺らしてしまう。

 

どうやら怪談は成功らしい。

 

ベポも怖がっていたし、シャチも周りもガタガタと震えていた。

 

構造のオリジナル八割だったけれど、上手く話せて良かったものの。

 

此処って、海賊船……だったよね?

 

後日、船員の一人の肩に埃が付いていたから肩に付いてるよ、と言ったら「うわああ!おれメリーさん捨ててねェよォ!」と泣かれた。

 

いくらメリーさんだって、異世界に出張して海賊にホラーを体験させる程ハイスペックじゃないと思います。[newpage]

 

手配書を手にルンルン気分で足取り軽く部屋へ向かう。

 

偶に挟んであったり海兵が撒いているらしく、手配書には事欠かない。

 

手に入れたその手配書を一度見てニヤニヤする。

 

何となく察した人はもうお分かりになったかもしれないが、そう、話題の超新星達と嘗(かつ)て騒がれた麦藁海賊団のものである。

 

彼等が復活するのはまだ先だが、生きている事を知っている身としては活躍を見逃したくない。

 

「……なんか、私みたいな熱狂的ファンのキャラが居たような居ないような……うーん」

 

もう、すっかり凡キャラは忘れてしまったのだったらもう思い出さなくても良いか。

 

そう完結させてせっせとベッドの上に紙を置いていく。

 

鼻歌が思わず出てしまう。

 

「なんだ、上機嫌じゃ…………お前……それ」

 

ガチャッとなんのお触れもノックも無しに唐突に扉を開けて顔を覗かせて現れたローはとても驚いた顔をしてベッドに並べられている手配書を凝視している。

 

というか、色々言いたい事があるが、取り敢えずノックはしろと言う。

 

冷たい目を向けているとローは気を取り直して改めてこの手配書について聞いてきた。

 

ノックについては無視されたようだ。

 

無視されたのにローに構う何てしない。

 

ツンと横を向いて手配書を庇うように移動する。

 

するとツカツカとやってきて彼は顎をクイッとして、あのイケメンあるあるお家芸をされた。

 

心底イラッとしたので振り払う。

 

「お止め下さい“旦那様″」

 

「旦那様何だから別に良いだろ?」

 

「いいえ。良くありませんわ」

 

この令嬢口調は最早癖になってしまったので、直ぐにパッと口調を普通に変えられない。

 

ムカムカと青筋を浮かべつつ睨みつけると彼は楽しそうにクスッと笑う。

 

可笑しい事なんて言っていないし、此処で笑う何て空気読めよ、と思う。

 

というか、手配書の事はもう忘れてさっさと部屋を出て欲しいのだが。

 

念じていても出て行く訳がなく、ローはベッドの上をまた見始める。

 

そして、何か言いたそうに口をへの字にしている。

 

言いたい事があるのなら言えと言いたいところだが、何を言いたいのか既に何となく予期している身としてはあまり口を開かせたくない。

 

というか、さっさと出て行ってくれないかと何度目の思いを感じつつも知らんぷりをして手配書に向き直る。

 

「もしかして、前々から入りてェと言っていた理由は……好きな奴が居るからか?」

 

(……ああ、そう捉える訳ね)

 

どうしてそう飛んでいるのかと飽きて溜め息を吐く代わりに嫌味を言う。

 

「あらあら。旦那様は私のお言葉を覚えてらしたしたのですねぇ。すっかり忘れているのだと思っていました」

 

嫌味な顔をして嫌味な雰囲気で言うとローはそこで眉を顰めてギュッと眉間に皺を寄せる。

 

とちらに反応したのだろう。

 

嫌味か、覚えていたけれど再び言われた事か。

 

「別に最初から覚えてる。だからと言ってあの麦藁海賊団に入りてェ何て……箱入り娘であるお前には、あそこは難易度が高すぎる。あそこは政府すら敵に回す事を厭わない」

 

「貴方だって、政府に取り入って何を考えていらっしゃるのかしらね……きっと麦藁海賊団と全く違わない事を考えているとお見受けします」

 

「……こりゃァ、随分と馬鹿げた邪推をされてるらしいな」

 

そう言って口を大げさに歪めているけれど、内心鋭いなこの女、とでも思っているに違いない。

 

ローの計画も過去も知らない筈のリーシャがパンクハザードとドレスローザについて知る訳もなく、何故そう思うのだろうと頭の中の混乱が透けて見える。

 

「この一年……貴方は只単に七武海に入ってその生温い制約と鎖を甘んじて受け入れるように思えませんでしたわ」

 

こんな風に言われればローだって満更でもないだろうと考えておいた理由である。

 

食らえ『正論』!

 

どうだ、我に死角等有りはしないのだっ。

 

「成る程な……貴族にしておくには惜しい頭脳だ」

 

「海賊の妻ですけどね。勝手に結婚させられましたからね。拒否権の無い結婚届けを押させられましたからね」

 

「……そんなに鬱憤を溜めてたのか?かなり今更過ぎるが」

 

「前々からたっくさん溜まってましたの……これからは出し惜しみ無しのブースト込みで行きますわ」

 

ふふふ、笑み付きで言うとローはムスッとしてから再び手配書を見る。

 

まだ話しは終わっていないようだ。

 

こっちもこっちでムスリとなる。

 

それはそうと、と話を変えてローの気を紛れさせようと考えた。

 

そんな事は分かっているのかローは話題変換させないようにとジリジリ近寄ってくる。

 

鼻と鼻がくっつきそうなくらいの距離である。

 

追い込まれている気持ちになるのは気のせいだろうか。

 

思わず汗が出そうになるけれど、我慢する。

 

此処は耐えろと歯を噛み締めて笑顔を浮かべるとローはニヤニヤと笑う。

 

何と憎たらしい顔なんだ。

 

ムカムカと胃が縮まる気持ちで関係ない事だと突っぱねて見る。

 

これでどうだと息を吐くと彼は益々不機嫌になっていくので部屋の空気が段々と悪くなっていく。

 

そうなったら最終的に秘技を使わせて貰おう。

 

「旦那様。私少々気分が優れませんのでお休みさせて頂きますわ」

 

これで出て行ってもらえる口実が出きたと笑う。

 

外面はあくまでも頼りない弱々しい女であるが。

 

ローは、なら風邪かどうか診察してやるよと言い出すが、そんな隙は与え無い。

 

憎たらしくなるのは仕方ないとして、問題は手配書の件を逃れられそうにないという事だ。

 

「お医者にわざわざ見ていただくようなものでもありませんわ」

 

にこやかにノーと言うと、彼は逃さないとばかりに、また先程のように同じ事を聞いてくる。

 

だから、好きな男など居る訳もないので居ないと言って安心させてあげるしかない。

 

やっと少し間を開けてくれたので遠慮なく離れる。

 

リーシャはササッと手配書を集めて腕に抱えるとローの視界から守るように抱き締める。

 

決してこれには触れさせない。

 

「おい、それをどうする気だ」

 

ローが不機嫌そうにしていても素知らぬ顔で飾るんです、と当たり前の事を返す。

 

部屋に飾るのが目的で九枚集めたのだから。

 

早くローがパンクハザードに行かないかと期待して会えますようにと祈る。

 

別にローが会えなくても自分が会えるのならどっちでも良い。

 

ローが構われなくなったのがそんなに嫌だったのか、こちらに付いてくる。

 

張っているのを助けてくれる訳でも手伝ってくれるわけでもなさそうだ。

 

というか、いつまでこの話しを続ければならないのかと飽きてきた。

 

そろそろちゃんと眺めて楽しみたいのだが。

 

ローにそろそろ出ていってもらっても良いかと訊ねると彼は当分この部屋に居ると言って設置してあるソファーに座る。

 

いやいや、出ていって欲しいのたがと思いつつも、邪魔しないのならば良いかと放置決定だ。

 

そのまま大人しくしていてと念じてから至福の時間を堪能。

 

可愛いからカッコイイまで何でもありな一味はサンジの手配書を除くとそれぞれ癖がある。

 

というか、彼に只々居座られるのは初めてかもしれない。

 

何故長居されるのか、恐らく監視の意味もあるのだろう。

 

なんて素直で無い居座り方をされているのだと笑いそうになるものの、耐える。

 

素直に言えば良いののに。

 

「もう五分くれェ眺めてるが、飽きて来ないのか?」

 

全然このくらい余裕である。

 

彼の言葉を否定してからまた手配書を見始めると耐久レースのような雰囲気が漂ってくるのでローの仕業だなと思う。

 

そんなに待てないなのなら此処に居続けなければ良い。

 

ローは物好きな奴、と不機嫌そうに、面白くなさそうに言う。

 

確かに同じ世代としても賞金首だった海賊としてもあまり愉しくないと思うが、ローの目的はワンピース、秘宝ではなく、とある男の為に本懐を遂げようとしているので、競う意味が分からない。

 

「旦那様。そろそろ部屋から去ろうと思いませんの?」

 

「………前から思っていたが、その令嬢言葉はわざとか?癖か?」

 

「癖ですわ。人生の九割はこの口調で生きていましたので………急には変えられません」

 

こっちだって早くこの口調を改めて普通の話し方をデフォルトにしたいが、なかなか切り替え出来ないのだ。

 

無理矢理変えようとすると僅かに時間が掛かる。

 

少し考えてから言うのは当然の事だ。

 

ローが部屋から出ていかないのならば、こちらから出ていこうと、手配書を集めて抱えるとそそくさと扉へ向かう。

 

「え、あっ」

 

パッと手を引かれてその反動で手から手配書が抜けるとハラハラと頭上に舞う。天井とローの頭が視界を埋めていて、彼が近付いてきて顔が視界を独占。

 

息を詰めて頬を叩こうとすると手を止められて絡められる。

 

「退いてください、節操無し」

 

「くくく、酷ェ言いようだ」

 

そう言う割には笑っている。

 

というか、何故押し倒すなんて真似をしたのだろう。

 

聞いてもどうせ欲情したからとか何とか言うに決まっている。

 

付き合ってなんかいられない。

 

早く退いて欲しい、今後の時間も予定(手配書鑑賞)が詰まっていて忙しいのだ。

 

手を取られたので噛み付いてやろうと歯を見せてカチリと鳴らす。

 

女として褒められた行為ではないが、やるしかない。

 

この男には常識が通じないのならば獣道の方法でやる。

 

今の自分にはそれが出来るのだから、躊躇しないで突撃。

 

「!?」

 

唐突に目を見開いて肩に噛み付こうとした令嬢の行動を察したのか避けてしまう。

 

流石は七武海だ。

 

瞬発力も並外れていくものなのだなと感心。

 

肩を外してしまい舌打ちをする前に、違う箇所を狙うとついにローが退いた。

 

「令嬢じゃなくて猛獣だな」

 

「あらあらまあまあ。海軍の犬と呼ばれている貴方に言われるなんて光栄ですわ。ふふっ(ざまあっ)」

 

内心せせら笑っているとローが再度近付いてきたので咄嗟に後ろへ下がって小型のビーカーを投げる。

 

海水入りなので能力者には効果抜群であるが、当たればの話しだ。

 

ローはそれを直ぐに理解したのかビンを避けてしまうので第二の追撃をお見舞いする。

 

彼は丁度良い所に立っているので罠が仕掛け易い。

 

これで追い出せれば手配書を見られる。

 

「チッ、地味にやり辛ェ」

 

「なら、とっとと、一昨日、来やがれっですわっ」

 

ローにヒュンヒュンと投げていると相手はついに撤退した。

 

男、旦那、それに勝てたのはかなり優越感を感じる。

 

これでじっくり見られると地面に落ちた手配書に目を向けると唖然となった。

 

「なくなってる!」

 

直ぐにローが回収したんだと脱力すると、負けるものかとローの部屋にダッシュして捕まる未来は予測出来なかった。

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