短編集(夢小説)   作:苺のタルトですが

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テンプレ模様


旦那様は七武海(番外編)5ー6

船に居ると暇過ぎて発狂しそうになるから、出来るだけ交流も兼ねて魚釣りとカードゲームに積極的に参加している。

 

今日は晴天なのでクルー達は我先にと甲板へ行き、強くなる為に鍛錬や修行を始めた。

 

勿論、そんな事をしても強くならないリーシャはポツンと一人になるので、暇な時間を埋める為に考えなくても良い事を考え出す。

 

自分は謂わばガラの悪い性格の女で、貴族という地位を持っている典型的なこの世界での勝ち組。

 

悪役令嬢とゲームや小説に出てくる言葉を当て嵌めて引用してはいるものの、もう自分は悪役でも性格がネジ曲がっていない。

 

真っ白の綺麗な令嬢である。

 

そもそも、悪役悪役と言われている子達は大体ヒーロー、又は攻略対象者の何らかの関係を持っている事が多い。

 

そんなヒーローにちょっかいをかけるなんてあまりにも理不尽で横暴なのではないか。

 

しかし、ゲームでは婚約者という人間はあまり見かけない。

 

横取りに近いものならば精々が幼馴染くらいだ。

 

しかし、それでも抜け駆けにも等しい。

 

合コンで一抜けレベルであろう。

 

それと、そもそもこの世界は漫画であって、ヒロインというのが居ない。

 

誰の邪魔をするというのだろう。

 

この船にはヒロインっぽい同性すらいないのに。

 

なんて考えていたからだろうか、その思考を嘲笑うというか、おちょくっているとしか思えない事件が起こった。

 

これはあんな事を長々と考えたのがいけなかったのか!?

 

「大変だ!大事件だぞリーシャっ!」

 

慌てて食堂へやってきたシャチの様子に首を傾げながら振り返る。

 

ローも居たからか居住まいを正す。

 

そんな事よりも気になるから要件を言って欲しい。

 

大変ならもっとそれっぽくすれば良い物を。

 

残念系な男に内心溜息を吐いているとローが足す。

 

そりゃそうだ、彼だって何があったのか知りたいだろう。

 

シャチはそれに今思い出したという、うっかり仕草をして絶対忘れてなんかいないんだろうなとノリの良さを感じていたが彼の為に黙っておく。

 

ボケというのは暴いてしまうと途端に虚しくなるし恥ずかしくなるものなのだ。

 

それを知っているリーシャは生暖かい目だけを向けるだけに留めた。

 

それも傷付けるだろうという言葉は誰も言わなかったのでこれで合っているだろう。

 

シャチの慌てている原因を聞くと脳内にテンプレやお約束という単語が流れる。

 

「んで、今ペンギン達が引き上げてます。このまま船内に入れても良いですか船長」

 

彼の話しを纏めると空から何かが落ちてくるのが見えて、目を凝らすとそれは何と人で。

 

慌てて飛び込んだ船員が浮上してくると今度は女だったという事実に周りも動揺する。

 

見張りはどこにも船は見当たらないし、空を見上げても何もない。

 

何もない所から落ちてきた可能性と能力者の可能性があるという指摘を提示。

 

というか、それは……トリップだー。

 

転生もここには紛れているのにトリップも混ぜてくるなんてなかなかお目にかかれない設定である。

 

もしかして、この世界は誰かが二次創作として考えたパラレルワールドの可能性もあるという訳か。

 

という事は、こういうお約束の場合、元からこの世界に居る、この世界で生まれたリーシャが悪者になる(頼まれてもならないけど。でも、離婚出来る可能性があるなら……)可能性もある。

 

嫌なヒロイン(トリップしてきた人)だったらどうしよう。

 

そんな人に此処から追い出されるのも癪に触る。

 

「入れるわけねェだろ」

 

ピシャリという効果音が尽きそうなくらい軽快な言葉。

 

この展開はもしかして出会う事も難しいハードモードだろうか。

 

だとしたらヒロインドンマイだ。

 

手引しないのかと疑問に思うだろうが、面倒臭いというのと、ヒロインならば底辺から這い上がってこられるだろうという期待を込めてそれはしない。

 

それに、良いヒロインならば確実にトリップ体験者から邪険にされる事間違いなしだ。

 

トリップしてきた女が横取りのシナリオはやはり二次作品に多くある展開で、殆ど悪役側が社会的にか生命的に消されるのも良くある。

 

けれど、そこでふと考える。

 

小説では婚約者から奪う場合、どんな理由があろうと婚約者の居る相手から奪うというのは何事にも変えがたい不貞なのではないか。

 

たとえそこに背徳的関係がなくとも、チョロチョロ動き回り男の気を引くような真似をするヒロインがやはり原因を作るから、色々アウト。

 

嫉妬しても、されても仕方のない事をやっているのだ。

 

そりゃそうだろう。

 

女が取られる相手を好きならば尚更男の心の浮つきに敏感になって、先に好きになったのに、婚約者でもないのに、取られたくないと思うのは当然。

 

婚約破棄という展開についてもかなり問題がありありで、婚約破棄をする理由がどれも男に過失があるとしか思えない。

 

嫉妬してしまうくらい女の事を放っといて、仲睦まじく他の女と居た訳で、ちゃんと婚約者を気にかけてケアを怠らなければ疑われたりする事もなかった筈。

 

そういう理由を考えて、自分はやはり悪役が全て悪いわけではないと結論付けた。

 

そもそも社会的に抹殺するのもやり過ぎなものもある。

 

婚約者が取られそうになっていて、しかも、女の婚約者には見せない素顔なんてものをヒロインに見せていたと知ったら更に傷ついて誰だって自暴自棄になると思う。

 

まあ悪役の存在についてはここまでにしといて、ロー達が立ち上がるのを見送る。

 

只座っているだけだが。

 

その様子にローが首を傾げて行かないのかと言う。

 

今から尋問するらしい。

 

確かにいつものリーシャならばなんらかのリアクションを起こすところだが、今出ていくとややこしくなる気配がする。

 

「ええ。今回は見送ります。それと、私の存在はバレるまで内密に頼みますわ」

 

「なにか面白い事でもやろうとしてるんなら声をかけろ。おれもあやかる」

 

「まるで私が気品のない問題児みたいに言うのは止めて下さいませ」

 

それを言うならば自分達に返ってくる。

 

何か面白い事をするのではなく、自ずと何かが勝手に起きるだけなのだ。

 

ヒロイン(多分)が厄介を持ってきたりするのは良くある展開のものだ。

 

どんなに良い子でも違う海賊に絡まれたりと運に見放さているのか好かれているのか分からないシナリオ。

 

そんな中でヒロインは相手と恋に落ちるのがセオリー。

 

だとしたらローと上手く破局に持っていけるかもしれない。

 

ローとは婚姻しているのでこちらに非があってもなくても相手にされなくなればこちらの勝ちである、シメシメ。

 

問題は物理的に消されないかという事を気にして、そのフラグをへし折らねばなるまい。

 

難しいが、やってみる価値はある。

 

やはりヒロインが良い子かどうかで判断が決まり、方針も決まる訳だ。

 

部屋で待って、裏でこっそりヒロインの反応や出方を探ろう。

 

お昼を過ぎている時間だったのでお披露目は夜だろうと考えて、自室に篭もる事にした。

 

 

 

 

 

夜ご飯はカレーだと噂に聞いて心臓が歓喜に踊る。

 

カレー好きな国民性と名高い故にリーシャも洩れず好きであった。

 

勿論転生前は好きでも嫌いでもなく庶民の食べ物なので口にする機会事態がなかった。

 

なので、記憶が戻った後も含め初カレーなのだ。

 

嬉しくない訳がない。

 

海軍カレーなるものがあるのは知っていたが、当然父がそんなものをメニューにする訳もない。

 

改めてつまらない親だったな。

 

今更そう感じつつ食堂の扉を開けると一つの席に人が殺到している。

 

まるで有名人が居るとでもいうような興奮であった。

 

多分例の女だろう。

 

リーシャの時だってここまで集まられなかったのに、少し面白くない。

 

恐らくローの妻という肩書を持っているから近寄り難かったのだろうというのは分かっているものの、やはり、線を引かれるのは寂しかった。

 

今は普通に接してくれているし、気さくに話しているから構わないのだが。

 

それにしても、女は此処にもう一人居るのに、その緩み切った顔は何なのだろう。

 

リーシャの時には緊張に孕んだ顔しかしなかった癖にと地団駄を踏見たくなる。

 

そんなキャラではないのでやらない。

 

見ているのも飽きたので定位置に座る。

 

どこでも良いのだが、今日は何となく定位置に、つまりはベポの横に座る。

 

ローが隣に座れと先程から視線で足しているのは感じていたが、今日はそんな気分じゃない。

 

だから睨みつけるように見ながらカレーにスプーンをトントンと叩きつけるのは止めてくれ。

 

子供に見えてきて仕方ない。

 

噂のヒロイン(最早決め付け)はどんなお顔なのだろう。

 

船員達がワラワラと群がる隙間から見ようとするが、些か密集し過ぎじゃないか?

 

これじゃあ見るに見れないと眉をハの字にしていると僅かながらに露出する女の顔の一部。

 

ほんの少しだけしか見ても分かる筈もなく、項垂れる。

 

というか、ロー達はもう警戒態勢を解いているのだろうか。

 

海賊は謂わば日向ではなく日影の存在。

 

そう安安と部外者を中に引き入れる訳もない。

 

ローは傍に居なくても構わないと思っているようで、彼女に話しかける様子もないようだ。

 

もしかして既に色々話しているのだろう。

 

いつものように船員達に崇められているように見える位置でカレーを食している。

 

彼の食事の仕方が意外と豪快なのはその道(オタクとかエトセトラ)では有名だったが、本物を目の前にして更に驚いた。

 

暴食と言っても差し支えなさそうだ。

 

モグモグと咀嚼しているのを尻目に相手の女性をちょっと見た所に船員から尋ねられる。

 

「お前どう思う?同姓から見た意見聞きてーわ」

 

「あ、おれもー」

 

お気楽な声で賛同する周りにやれやれとなる。

 

まだ一言も会話していないのにプロファイリング(詳しい事は専門家では無いので知らないが、当てはまる系統の行動をする人間を心理学的に分析する技能……だと思う。記憶がちぐはぐで多分適当)出来る訳が無い。

 

船員達にそんな事を言われてもと困り顔をする。

 

半分本心で半分偽った気持ちだ。

 

知らない女にこちらの情報を気軽にホイホイ渡す無神経さは残念ながら持ってきていない。

 

「彼女、尋問の時は何と仰っていたの?」

 

「んー、それがなあ……少し信じらんねーかもだけど……おれらの載ってる本とやらが存在するチキュウとかいう星からこの世界にやってきたらしい。事実かどうか」

 

「えっと、そういうのは世間では電波系と言うのですが……」

 

落ちてきた人は随分ペラペラ喋るという暴挙に出ていた事に少しショックを受ける。

 

少しは冷静に考えてから話せば良いのに。

 

脅されたならば致し方ないと思っていたが、話によれば進んで色々意味の分からない事までバンバン言ったという事だ。

 

口が軽いのはあまり褒められたことでは無いが、彼等にとっては警戒するような人間でないと判断される材料と決め手になったようである。

 

それは良かったと他人事。

 

どこまでいっても他人事で傍観者に徹しておく。

 

今回は離婚云々と考えていたが、あまり賢明そうでない事が良く良く分かって諦めようと決めるのは難しくない。

 

話しかけるのも億劫なので仲良くは期待されたくないし、ローに後でそれを含めて頼んでおこう。

 

ローがこの船の船長で良かったとこの時だけは珍しく思えた。

 

それを聞いたら本人は泣くだろうかと少しワクワクしたが、そんな奇跡は起こらないだろう。

 

カレーを食べだして数分後、ローが女を前にこさせて紹介を始めた。

 

彼女の名前は『アラキ ココロ』と言う。

 

ぶっちゃけヒロインに有りそうなネームだなと頬杖を付いて思っていた。

 

ココロという名前に良く合っている雰囲気を纏って美人よりも小動物系、可愛い系だなー、と他人事(以下略)。

 

船が波に揺れてキャッという小さな悲鳴と共にローの方へ倒れたのをスローモーションで見ていたのだが、それを普通は夢小説等では躊躇なくキャッチするでしょ?

 

でもね、倒れたらローはなんとなんと!

 

避けたんだよ!

 

もうびっくりしたね、色んな意味で。

 

普通は避けないじゃんとか、普通は支えてあげるんじゃ……とか。

 

兎に角ヒロイン云々の問題があるって事は十分分かった。

 

倒れたら勿論床に激突した訳で。

 

船員達もローの予想外の受け身しない行動に驚いていた。

 

彼等にとってもローの行動は不可解であったという証明。

 

前にローにパンを復讐心から食させようとした際に床に躓いた時のビジョンが脳内に展開されて慌てて違うだろうと消す。

 

あれは只単にローの気紛れだ。

 

そうに、そうに決まっている!

 

断じて特別扱いされているなんて事はない。

 

そう!

 

(ふうふうふう。落ち着けえー)

 

浅い呼吸をしてから己に言い聞かせて何とか身を宥める。

 

多分、今しがたトリップ主に転けさせたのはきっと相手が一般人か違うかを試す為だ。

 

マヌケなフリをしているという可能性も含めて吟味しているのだろう。

 

リーシャ的には空から降ってきた時点で一般人だと断定しているが、そのお約束な事柄を知るわけもない彼等は疑心暗鬼中だと予想。

 

全員が全員彼女に好意的な訳がないと推測して改めて激突して痛そうに体育座りをして肩や膝を擦る女。

 

痛そうにしているのはほんきっぽい。

 

船員達が平気かと近寄るのをローが鋭い鋭利さの光る目で止めた。

 

来るな、と目が物語っているのを見て立ち上がっていた男達が椅子に座り直す。

 

ローには流石に逆らう人間は居ない。

 

此処はロースキーの溜り場だし、女は未だ不審者の域の中。

 

狙われたりするのはローというのは皆一様に分かっているのだろう。

 

嫌われたくないとも思っているに違いない。

 

この船に乗った船員達は例に洩れずローの船に乗ったという意味で、つまりは命を掛けている。

 

それ程までに厭わないと思っている相手に見捨てられたり見放されたりするのは誰でも嫌だろう。

 

船長と正体不明の女を比べた場合、最早比べるまでもない。

 

「あれ?女性?」

 

(ちっ、やっぱり気付かれたか)

 

一応後ろ方面で船員達の背に隠れるような位置に座っていたのに、見つかってしまう。

 

宜しくするのも悩みものだ。

 

何せ、この世界では一応貴族の令嬢なのだ自分は。

 

地位的にも高い身分というのを縦にして回避しよう。

 

あ、別に貴族だから貴族って勝ち組!という事を思っているのではなく、関わり合いたくないから貴族の仮面を被ろうとしているだけだ。

 

ええええ、勿論、関わり合いたくない女と認定しましたとも。

 

ローもこちらの居場所を把握していたのかちらりと見ると女に説明する。

 

「おれの部屋で寝てもらう」

 

「えっ、せ、船長さんの部屋で、ですか……?迷惑ではないのですか?」

 

満更でも無さそうに言う癖に遠慮の言葉。

 

矛盾した声音にあーあ、とがっかり。

 

この人はローの事を嫌いでは無いようだ。

 

少なくとも嬉しそうに言っているのだから、ローとリーシャが夫婦だと知った時、どのような事になるのか。

 

そこはかとなく面倒くさい展開になりそうだと内心幻滅。

 

「嗚呼。おれの部屋にシャワーとトイレが備え付けてある。部屋には鍵をしておくから出たかったら見張りを付けておくからそいつを呼べ」

 

「……………は?」

 

女、ココロは唖然と笑みを貼り付けたまま固まる。

 

今の言葉が信じられないといった反応だ。

 

当然だろう、ローは自室に軟禁すると言ったのだから。

 

船員達も納得していなくても納得しなくてはいけない。

 

リーシャも特に意義ないので何も言わない。

 

ココロは次に顔を変えたのはどんな心境かは知らないが、こちらを一目散に見てからダッと駆け出した。

 

「ねえ!貴女はここの仲間?それとも違う?」

 

と、話しかけてきたのだ。

 

ええい、馴れ馴れしい。

 

トリップしてきたが軟禁されそうな空気にリーシャを使ってなんとか回避させようとする魂胆が見え見えだ。

 

そんな軟禁なんて適当に過ごして時間を掛けて無実を証明してけばいいのに。

 

ココロは軟禁も甘んじれないトリップ主らしい。

 

ヒロインならば泣き落としでもすりゃあいいのにと割りと酷いかもしれないが、そう思う。

 

折角可愛い小動物系を演じているのに無駄な設定作りでアラが見え見え。

 

「私は客人みたいなものですわ。それと、少しの辛抱ではなくて?島には後四日で着くと言うし、四日経てばその島へ降ろしてもらえるわ」

 

「え!お、降ろす!?そんなっ、私、折角っ、此処に落ちてきたのにっ」

 

(ちょいちょい、口が滑ってる)

 

トリップをしたという自覚はあるようだ。

 

加えてやはり色々考えないで話すタイプ。

 

残念である。

 

ローは女に飽きれた声音で離れろと言う。

 

「無闇に歩き回るな」

 

「で、でも、私、軟禁なんてっ」

 

余程嫌らしい。

 

しかし、ローがそれを許す事はなく、泣きつつあった彼女に動揺するなんて事もなく連れて行く。

 

最後まで縋るように見ていたので面倒過ぎる、と疲れた。

 

そんなに嫌なら信頼を勝ち取ればいいのに。

 

お約束な展開ならばやり方は様々で、先ずは懐に入りやすいベポから懐柔していくなんて方法すらある。

 

なんて、他人事(以下略)。

 

だというのに、翌日から思わぬ展開が待ち受けていた。

 

 

 

 

 

 

 

「おれと離婚してくれ」

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