短編集(夢小説)   作:苺のタルトですが

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旦那様は七武海(番外編)9(完)

貴様こそが今この場の有害な音を発しているのだと今直ぐ現実を晒して恥をかかせても自業自得な発言をされて、私の何を知ってるんだこいつ、というか此処に至るまでの経緯を知らないその言葉で勝手に決め付け避難してくるその態度は人でなしと同レベルなのではないか。

 

頭をかち割って気を狂わせて精神病院にぶち込みたくなるから我慢しろと己に言い聞かせる。

 

てか、良く生きてたね。

 

生きているの恥ずかしくないのか?

 

人を何かで狂わかせておいてよく此処に顔を見せられたとすら感心。

 

まだ何か喚き出す女に男の子は何だあのヒステリックはと聞いてくるのであんな大人は見習ってはいけないのだよと学ばせておく。

 

此処まで邪魔する存在ならば少しくらい役に立たせてからやり返した方がスッキリする。

 

とことん叩きのめして二度と何も言えないくらい滅茶苦茶にしてやると薄ら笑う。

 

側らに居る少年は危機として此処を見ていながらその笑みに戦慄を感じているのであった。

 

ローや船員達はこの女が自由の身なのを知っているのだろうか。

 

好い加減煩いのを黙らせねば。

 

ズキズキする頭を振り被り男の子を後ろにやり、まだ言う女と対峙。

 

うるっさいての!

 

「貴方、この私に言っているの?」

 

この世界では彼女は何の身分も無い只の浮浪者である。

 

或いは頭の可笑しい電波女。

 

現に後ろに居て様子を見ている子供は怖がっている。

 

怖がっているのが見えないのか男の子を解放しろだとか、こっちへおいでとか見当違いなのが分からないのか、判断出来ないのか。

 

「ほら、怖くないからこっちにおいで?悪者から私が守ってあげる!」

 

彼女は馬鹿なんだろう。

 

守ってあげると言っているが、彼がそれを望んでいないことを察せていない上、彼は孤児みたいで、自分の力で生きているのに、守ってあげるなんて無責任過ぎやしないか。

 

今彼を保護して育てるつもりなのか、いや、ないな。

 

自分勝手で己の価値観を相手に決め付け、押し付け、見ても無い周辺の状況を解析出来ない女は子供を保護するだけして、満足したら放り出すと簡単に想像できる。

 

男の子は食べ終えた手をペロリと舐めて怪訝そうに「なに勝手に言ってんの?」と投げ掛けていた。

 

「だって?え?その悪役令嬢に今カツアゲされてたんでしょ?でも、もう大丈夫よ!私が海軍まで連れてってあげるから」

 

うわ、傍迷惑だ。

 

「は!?海軍なんて頼りになる訳ねーだろうが!あんな奴らの溜り場なんて言ったら死にに行くようなもんだ」

 

きっと何かされたのかもしれない、体験したような口ぶりで言う内容に、彼女は怪訝そうに顔をしかめて首を傾げる。

 

「確かに腐った人達も居るかもしれないけれど、良い人だって居るんだからね」

 

いやいや、居てもこの島にはいないでしょうよ。

 

ほんと救いようのない頭の理解力である。

 

居ないから海軍の駐屯所に行きたくないって言ってるのはリーシャにだって分かるのに、女は諭すように良い含め、まだ馬鹿な事をひけらかしていた。

 

本当に頭がキリキリしてくる。

 

ぎゃいのぎゃいのと騒ぎ出す前に秘奥義を繰り出そう。

 

「先程から私に抗議をしているよですけれど、私には非がございません事よ?」

 

「さっき幼気な子供を問い詰めていたじゃないの!本当信じらんない。人としてどうなの?」

 

それってローを狂わせて船を混乱させた人間にもブーメラン!なんじゃないの?

 

胡乱な眼で眺めてから反撃。

 

「問い詰めていたのではなく、話していただけですわ。それに、良い歳をした大人が外で声を上げるなどはしたないですわよ。もう用は無いでしょう?もう私達は貴女に付き合う義理はなくてよ」

 

うーん、改めて悪役令嬢っぽいけど、正論である。

 

逆ハー女は去ろうとする後ろ姿に呼び止めてくるが、構わず足を進める。

 

後ろから子供も付いてくる気配に、この女と同じ空間に居たくないという心情が伺えた。

 

役所は目の前、出しに行く。

 

若干寄り道したが、漸くーー。

 

「言っている事は至極馬鹿だが、時間稼ぎとしては、まあ上出来だな」

 

聞き覚えのある声音にビギっと固まる。

 

何でこの声の主が此処に居るんだ。

 

というか、呪いは解けてしまったのか、それともまだ洗脳は解けていないのか。

 

判断を急いではいけないと分かってはいるものの、やはり色々推測して探偵みたいに邪推してしまう。

 

ローを船員に攻撃させる程の呪いを受けた身で、こちらを敵とみなされたら勝ち目はほぼ無い。

 

どうしよう、ローに網投げ攻撃をして先手を打つべきか。

 

「馬鹿女の手先に用はないわ!」

 

シュバっと手網を投げつければ影は捕まらず、空振りの感触にチィ!と舌打ち。

 

「ねーちゃんあんたほんとに貴族か!?」

 

後ろで坊やが何か言っているが、それに応える余裕も時間も生憎無い。

 

心の中で見た目は貴族だけど中身は平凡な凡人だよと言っておく。

 

尚、それを言ったら言ったで大勢から「それは平凡とは言わない」と突っ込みを貰う事間違いなしだ。

 

そんな事になるとは露知らずにローへ攻撃を追随していく。

 

戦場と言っても過言ではない戦いに人々はサアァ、と逃げていくと残るのは男の子と電波女と夫婦(離婚寸前)のみだけ。

 

ここで破壊的行為が起きても全部ローがやったことにしてやろうと企む。

 

自分までローの妻だからという理由で海軍から眼を付けられたくない。

 

至極正当な理由を付けて駆け出す。

 

ヒールなんて随分前におさらばしているし、ドレスも今回はローの妻だと一目で分かるように拵えてきた服。

 

おかげで戦いにくい事この上ない。

 

ローが何やら話し出した。

 

「争う為に来たんじゃねェ。落ち着け」

 

「その台詞、正気の時に言ってよね。この女の下僕があ」

 

相手の罪悪感に響かせるよう言う。

 

今のローに通じるのか定かではないが、相手は苦いものを噛んだかのように顔をしかめる。

 

「もう正気に戻ってる。あの女にはお前を探すように命令したんだっ」

 

「へえー。そんなの、もうどうでも良いんです。問題はなぜ私の前に立ちはだかるのかという問いでも答えろですわ」

 

「おれは弁解させてくれと言いたい」

 

鉄の網を追加してローに投げるとビュッと相手が姿を消して能力を使用したのかと歯噛みする。

 

いつの間にサークルを広げていたのだろう、気付かなかった。

 

悔しくなりながらも背後を気にしてジリジリと周りを見て、耳を澄ませる。

 

こっちは生身の女で、平凡な戦闘能力なのに、能力使うだなんて……七武海の癖して遠慮ってものが足りていない。

 

きっとそれを声に出していたら外野であり唯一の突っ込み役である男の子が「お前も遠慮してねーかんな!あと、何度も言うけど戦闘能力も平凡じゃねーから!?」と言われる事請け合いだ。

 

そんな事を言われるなんて塵にも思考に無い。視線を鋭くして五感を研ぎ澄ませ、息も最大限に抑える。

 

心臓の音が煩い事が懸念された。

 

こういうドキドキはあまり好きではないのだけれどな。

 

少しだけ煩悩を浮かべてから砂利を踏む足の音が斜め横から聞こえ、反射的に足を振り上げる。

 

握力と腕力を考えたら、きっとローには網なんて簡単に避けられると思い、不可抗力の足を繰り出した。

 

きっと思っていた攻撃じゃないから不意打ちで当てられるかもそれないちょっとの希望を乗せて遠心力をかけて爪先に力を入れる。

 

ブゥン!と風を切る音と共に足がどこかに掠る感触。

 

当たりそうだったのにと思う前に第二次足攻撃の続きで、足を横に振り下ろす。

 

攻撃を止めると思わせておいての騙し。

 

「っ!……………これは流石に予想外」

 

ローは痛がってはいないが、蹴りが入った箇所を見て笑う。

 

当然だ、何の訓練もしていないリーシャが漫画のように人を蹴り潰せる事など初めから無理だ。

 

只、報いたかったのだ、一回だけ。

 

騙された間抜けさと、酷い言葉を言った事と。

 

少しでも意趣返ししたかっただけ。

 

結婚したのもリーシャを好きだと嫌がるのに口説いていたのもローだ。

 

そんな物好きな男はどこを見てもローだけだった。

 

なのに、慎重派であるローがコロッと女の策略にハマり、所謂ヒロイン補正に掛かってしまい、コロッと鞍替えしたのがとても嫌で、ムカついた。

 

あれだけ口説いていたのにと許せなかった。

 

その時、ローに惹かれていると自覚していた気持ちが恋になっていたと気付いて、気付いても関係ないと頑固になって。

 

ローは相変わらず女と一緒に居て、あまつさえ、その女にリーシャを愛していないと言わされていたとしても………そんなのは言い訳に過ぎず、言い訳にもならない。

 

消しようの無い言葉を吐いておいて騙されていたから無効だなんて陳腐な思考、その簡単に許されると思っている思考が、もっとムカつく。

 

許すわけない、絶対に許さない。

 

「貴方は離婚に同意しサインも喜んで記入し、後はこれを届けて終わるの。これにペンを入れた時点で貴方との関係は白紙になりました」

 

淡々と平坦とした声音で伝えてローの言葉なんて聞く気は無いと暗に示す。

 

それとついでに、トラファルガーさん、と苗字で締めくくれば男の顔は焦ったように見受けられた。

 

そんな事はスルーして、リーシャは手を振り上げそのまま勢いを殺さずローの頬を叩き上げた、のだが、予想に反し彼は避けることもなく受けたので逆にこっちが驚いて、そして困惑してしまう。

 

彼程の力量ならば受け流す事は簡単だったし、こちらの腕を掴むことなんてもっと容易だった筈。

 

パシン、と乾いた音がしても暫く空間は制止して、誰かが何かを言うことはなく、静かに時間が過ぎていく。

 

「なんで、避け……なかった?」

 

思わず聞いてしまった。

 

後に問うたことに対して後悔が渦巻き、いや、ローがそもそも悪いのだと向き直る。

 

彼はやや赤くなった頬を擦るでもなく、放置してこちらを見るとその瞳には怒りが一切無く、寧ろ喜びの情が汲み取れて更に混乱が増した。

 

どうしてそんなに嬉しそうなんだろう、マゾなのか、と疑問を抱いているとローが先行して話し出す。

 

「嫉妬の暴力に怒る訳がねェだろ?それがこっちに非があったなら尚更だ」

 

「………!…………そんなの、貴方の勝手な価値観ですわ……それで許されるとお思いで?私は許しませんから」

 

罪悪感でも持たせる気かと身構えるとローは溜息を吐いて眼を伏せる。

 

「んなことは承知だ。せめて……謝る猶予をくれたって……良いだろ?」

 

「断ります」

 

ビシッとそれを言うと周りが「えー!?」と騒ぐがそんなものに振り回される己ではない。

 

「そんなに許しを得たいのなら。そうですわね……足を解放すれば、考えないことも無いですわ」

 

「役所に出す気だろ」

 

「それに応える義務はない」

 

冷たく言うとローが足を解放して刀を構えスキャンと口にする。

 

前にもその技で服を盗られたのを思い出してまさか、と顔が強張った。

 

「返してこのーー、ーー!」

 

放送禁止用語を連発すると近くに居た海賊志望の子供が顔を引くつきだしたが、気にならない、というか気付かない。

 

ローは聞き慣れているからか別に気にしていないからか、特に顔の筋肉を動かす事無く紙を引き裂きカウンターショックで燃やした。

 

その動作を見て足をフラフラとさせる。

 

目眩がした、主に愉快過ぎて。

 

「なんて……事を」

 

(ぷぷ!ばっかじゃないの!それが本物なわけないじゃない!ふふっ、笑えるぅ)

 

実は偽物を巧妙に幾つも作っておいてダミーをローに燃やさせたのだ。

 

本物は細かく折りたたんでいる。

 

ローはそうとは知らずに座り込んたリーシャに近寄り抱きすくめてきたのでまた頬を叩く。

 

「最低最低最低最低最低」

 

バシバシ!と叩く。

 

それを甘んじているローが世間では恐れられる七武海だと信じられるだろうか。

 

殺されても可笑しくないリーシャの暴力に何もせず抱き締めているのは第三者から見れば恐怖以外の何者でもない。

 

だが、それ程までにローの謝罪の気持ちは本物だと理解できる。

 

「次はないからね、浮気者」

 

「ああ。勿論だ。埋め合わせはする」

 

そう言ってキスをしてきたローの尻を抓った後、仲間にして欲しいと男の子を推薦する切り替えの速さにローは内心、もう少し甘い雰囲気で部屋に連れ込まさせてはくれないのかと残念に思ったものの、今回の謝罪と共に子供の仲間入りを私情無しで海賊の船長として判断して承諾。

 

逆ハー女は勿論陸へ置いていった。

 

勿論、お金など持たせる訳もなく。

 

こうして、再びハートの海賊団に平和が訪れたのであった。

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