短編集(夢小説)   作:苺のタルトですが

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旦那様は七武海(番外編)10ー11

シケのせいで己が遭難するなんて思いもしなかった。

 

しかも、そのお陰でこんな幸運にありつけるなんて。

 

主にシケで流されたのはローをパンクハザードへ送ってから半年以上経ち、とある島の帰りに見舞われた嵐のせいだ。

 

パンクハザードにはいづれルフィが来るから行きたかったからけど、あそこで起こる出来事について行けないと判断したから諦めた。

 

「じゃあ、この部屋を使ってね」

 

「はい、ありがとうございます。ナミさん」

 

「やーね。年下なんだからナミって呼びなさいよ」

 

オレンジ色の髪色が特徴で笑うとトルネード美人なナミ。

 

聞いたことあるって?

 

当然だ、何せ彼女は麦わらのルフィの船員が一人、航海士のナミなのだから。

 

事の発端は釣りをしていたウソップに釣り上げられた事から遡る。

 

まさかの出会いに当初は借りてきた猫の如くモジモジとしてしまったものだ。

 

というか、これはチャンスなのではなかろうか。

 

主にクルーとして立候補したい。

 

だが、いざ言おうと思っても頭の中が白くなって言いたいことが霞む。

 

そのまま夜になったので寝ることになる。

 

まだ警戒されているのか一人部屋を案内されて仕方ない事なんだなあ、と半目。

 

でも、めげない!

 

めげない!

 

大切なことなので二回言った。

 

麦わらの一味に気に入られるように頑張る。

 

目標はまずチョッパーから取り入る。

 

え?図太い?

 

当然、だって七武海の妻だったのたもの。

 

過去形?

 

過去形でも良いと思います。

 

ローのこと?

 

ローのことも構わないと思います。

 

え?怒られないかって?

 

怒られるかもだけど、それが何か?

 

って感じだ。

 

今のところ妻という肩書きがあるものの、ローに束縛される理由も義理も無い。

 

ローのことなんてこの際どうでも良い。

 

今は麦わらの一味の事だけを考えておけば万事オッケーだ。

 

後にローに会うとかそういう事がすっぽり忘れて抜けていたのは浮かれていたせいだと言い訳させて下さい。

 

「一人で寝させちゃってごめんね。一人で平気?」

 

「はいっ。平気です。お気遣いどうも」

 

ぺこりとお辞儀をすると戸惑ったように対応される。

 

そんな困惑顔にもうお姉さんメロメロですわ。

 

此処に骨を埋めたい。

 

「また明日ね、リーシャ」

 

「は、はい」

 

(名前呼ばれた~!幸せー!)

 

ファンにとっては至上最高の瞬間、ファンならば夢に見る場面というものではないか。

 

やはりお約束とは良いものだ。

 

ナミちゃんににお別れとお休みを済ませると直ぐに隅に配置されているベッドに身体を沈ませる。

 

おお、ふかふか。

 

ふふふ。

 

あっとあまりに良い匂いでついつい肺いっぱいに吸い込んでしまった…………。

 

この船で変態になってしまいそうだ南無南無。

 

というか、絶対になっちゃダメだぞ自分!

 

ごみを見る目で粗大ごみの日に出されてしまう本当に。

 

ブルリと震えてしまい余計な邪を出さぬように辛抱しなければ。

 

流石に四億の船長もいるのでまかり間違っても変な顔は阻止しなければいけない。

 

でもロビンとか見てしまったら、チョッパーをみてしまったら。

 

特にチョッパーはモフリスト(モフモフが大好き)ならば抱きつかずにいられない魅惑なボディーをしているから。

 

恐ろしい子だっ。

 

思考の波にたゆたっているといつの間にか目を閉じていてしまっていた。

 

 

 

起きてダイニングに行くと料理をしている金髪の男性──否、青年が居た。

 

年齢と見た目と戦闘力がいまだに符号しないサンジ。

 

彼の腕に見とれていると彼が最初から分かっていたかのように声をかけてくる。

 

凄い、自分にも女性のように話しかけてくれるようだ。

 

初対面の時はパニクっていたから良く見ていなかった。

 

因みにハートの海賊団では男友達のような、部活仲間みたいな感じでそれはそれで楽だったけれど、女だからと気を使うのなんて特に何もなかった。

 

精々が戦闘の時に隠れるように指示されているくらい。

 

一応、非戦闘員の肩書きだしコックも同じ立ち位置なので女だから云々はほぼ関係ないかも。

 

妻だからとちょっかいを掛けてくるローがなけなしの女扱いになるかもしれない。

 

あー、ローを今すぐ殴りたい。

 

それにしても昨日の夢は変な夢だった。

 

まるで転生してくる前に読めなかった漫画の続編を見たような夢だったのだ。

 

ドレスローザとかなんとか。

 

ドフラミンゴを云々。

 

良く分からないけれど。

 

まだ続きがありそうな夢。

 

予知夢だったのなら可能性は無きにあらず。

 

軽い気持ちで覚えておこう。

 

そもそも夢をこんなにはっきりと覚えている時点でお察しだろうけれど。

 

これは思し召しなのだろうなあ、とは若干フラグが設立されたらしい。

 

ああ、しかもローもドレスローザに居た。

 

出会ってしまうのかも。

 

それだけは嫌だ。

 

多分出会ったら彼の事だ、麦わら一味と引き離そうとするかもしれない。

 

それだけはぜっっっっったいにさせては──させるわけにはいかないと胸に拳を置いて握る。

 

ローの感情でどうこうなるものなんてこの世にはほんの一握りしかないことを教えてさしあげなければ。

 

こういうときはどちらかの決着が付かなければいけないようなシチュエーションを作らねばならない。

 

でないとあの男はどうにもならない。

 

倒さないといけない。

 

物理的に不可能たど分かっていたので今までローがやってきた罪悪感を抱くだろうものを上げ連ねていく。

 

例えば散々放っておいたり、パンクハザードに言ったっきり全く音沙汰無しだった事だとか。

 

まあ色々ある。

 

あいつを抉るには良い刃を多数所持しているのでいつでも戦えよう。

 

戦果は勿論自由である。

 

ふふふふ、と自分が令嬢だと忘れてしまいそうになる笑みを浮かべて手をわきわきさせた。

 

勿論外面は完璧なスマイルなのでサンジにはバレてもいないし平気。

 

彼が朝食を作るというので一人遅れておきてきた事を謝る。

 

やはり慣れない事に身体が疲れていたせいもあるとの自己診断。

 

彼は謝ったら気にしていないとの言葉をくれてほわわんと心が潤う。

 

やっぱり女扱いされると色々楽だ。

 

ハートには女が己しかいないのに、もっと言えばこの船のように全く女らしい施設もない。

 

もう人形などは置く歳でもないが、それでも花の一つや二つ、ガーデニングくらいしたい。

 

言ってないから仕方ないのだが、何だか言ってからそれが叶うと良いように丸め込まれたり対価に似合わない要求をしてくる船長が居るから頼みにくい。

 

皆みたいに何の対価もなく快く良いよと言ってくれれば──言っておけば良いのにあの狸が余計な知恵を働かせるからムカつく。

 

嗚呼、勝手に滞在でも別荘にでも住んで余生を過ごせば良いさ。

 

こっちだって好きに生かせてもらいますから。

 

「じゃあ椅子に座って待っててね」

 

嗚呼、レディ扱い万歳!

 

唯一向こうでもコックがなけなしのデザート追加という項目があったものの、それだけなので涙がチョチョ切れそうだよ。

 

ぐ、シャワールームが付いていたとはいえ、あのローのノック無しで入ってくるデリカシーの無さ。

 

見習わせたいよ畜生ー。

 

もう会うことはないという事もないから残念だ。

 

それに、これから起こることを考えれば自分はどちらのチームに行けば良いのか。

 

ルフィ達と行けば漏れなくローと出会う。

 

ナミ達と行けば漏れなくローと出会う。

 

あれ、どっちみちフラグが出来ていた。

 

結局は足枷にならない程度のチームならば、やはりナミ達と一緒に船へ残る方が内部に勝手に運ばれていく。

 

やはり手早く動くには眠ってしまうしかないのかも。

 

悔しいがこうなればやけくそに近い。

 

どこまでも流されてやろうではないか。

 

膝が震えるが見ない振りをする。

 

ウソップなら同じ境遇に同調してくれるだろうが、流石に原作を言うのはタブーだと理解しているので安易に口を滑らせる真似は出来ない。

 

物分かりが良い己の質が嫌になるが、これはこれで進ませるしかないのだと言い聞かせる。

 

どうせ勝利するんだし。

 

主人公だし。

 

主人公の傍に居ておけば少なくとも命を落とす事はしない筈。

 

リーシャは例えローと逢っても何でも無い風に話しかけたりする事が出来ないかもしれない。

 

極力話さないようにしよう。

 

怒りで頭を叩いてしまうかもしれないから。

 

皆が寂しがっていたとか、連絡全く寄越さないとか、責める言葉は無くならない程ある。

 

でも、それを言う権利があるのかと自問すると自答で弾き出されたのは否。

 

彼等とローの方が長年の付き合いは断然あるのに、こっちだけがあーだこーだと言うのは如何なものなのだろうと思ってしまう。

 

いつもの自分らしさが出せる自信はなかった。

 

いつもの余裕は簡単に言えば生々しさがこれまでになかった他に無い。

 

人が重い十字架を背負う。

 

それだけで何も言えなくなる現代っ子なのだ。

 

今の所は話しが長くなりそうだからこの件は横に置いておこう。

 

今考えるべきはパンクハザードへの道筋を決める事だ。

 

仮にとは言え、ローに会う確率が高いのでローに遭った後のことをシミュレーションしてみる事にした。

 

「捕まる、そして尋問は必須…………ルフィ君達の所へ行かせてもらえないなあこれは」

 

ということは彼に捕まる前にナミ達と走って逃げれば良い。

 

体力的に怪しい部分があるけど。

 

ちょっと汗をたらりと垂らして、ではなく全力疾走で走る事になる。

 

「もう能力で飛ばされたい。でも、精神が入れ替わったら誰となるんだろう」

 

楽しみである。

 

普通は嫌だとごねたくなるかもしれないが、己の場合は未体験でファンタジーな経験になるかもしれないのでそれをしたいと思っている。

 

一応ローはその能力を開花させた上で船を去ったが自分にかけてくれる事はしなかった。

 

頼んでもしてくれなかった。

 

それをハートの船員達に言うと皆口を揃えて「愛されてるんだ」「好きな女に精神を入れ替えさせるなんて俺でも出来ねェ」と言う。

 

取り敢えず逃走が出来るように準備体操をしておこう。

 

 

 

準備体操を済ませると眠るなんて勿体ない事はせずにその時を待った。

 

そして、その時はやってきた。

 

麦藁海賊団が緊急時のSOSの信号を受信しパンクハザードへと行く。

 

それに伴い海兵等も来てしまうことをすっかり失念していたのは単に記憶が曖昧であっただけだ。

 

パンクハザードに着くと当然捜索班と留守番に振るい掛けられ、リーシャは見た目が一般人で尚且つまだチョッパーからドクターストップが解けていないので自動的に留守番である。

 

医者でなくても遭難者である女が一時間ちょっとで体力が回復するとは思えないので妥当。

 

初めから留守番組で行動を供にする予定だったので安堵する。

 

違ったら過激ハードな濃い一日を過ごすことになるのだ。

 

「皆さんいってらっしゃい」

 

チョッパーは話の筋と理由が違い、リーシャがまだ万全でないので残ると言った。

 

嬉しかったが予定が変わってはいないが、話と違うことになったとは申し訳なく思う。

 

これで眠らされる組になるのは決まった。

 

その間意識が無くなるのが些か不安だが、どうする事も出来ぬので眠るしかない。

 

「体調に違和感を覚えたら言うんだぞ」

 

チョッパーに何度も言われ苦笑に変わる。

 

此処まで世話をされたのははじめてかもしれない。

 

なにせ、ハートの人達は医者気質なので病気になったりするのも滅多にない。

 

怪我をしても己達で補う上に自分は戦闘に出ない非戦闘員、怪我をしない身の上。

 

「ほら、サンジがデザート作ってくれたぞ」

 

差し出されたのはゼリー。

 

プルンとしていて食べやすい。

 

ソレを有り難くモグモグとして租借。

 

美味しい、流石だ。

 

「苺味ね」

 

「ナミはオレンジ味だった」

 

船医が話し相手になってくれているので暇にならない。

 

大変助かる。

 

原作に沿える喜びがあるが、付いていけるか不安なのだ。

 

付いていてもらえると少しユトリを持てる。

 

その間に少しでも覚悟を決めておく。

 

「サンジさんにお礼を言いたいのだけれど…………」

 

キッチンに居るのであろう青年に向けて礼を言おうとベッドから降りようとするとチョッパーがサポートして支えてくれる。

 

医者らしい行動に微笑ましく思う。

 

皆忘れているだろうけど精神年齢だけは年長者だからね。

 

ローよりも年上でロビンよりも年上なわけなのです。

 

サンジの所へ行くと丁度キッチンを出た廊下でタバコを吹かしていた。

 

こちらに気付くと気遣わしげにやってきて「出歩いて平気なのか」と聞いてくる。

 

「優秀な船医さんのお陰です」

 

褒めるとチョッパーが照れて例の変な格好でお尻をフリフリさせている。

 

有名な仕草にときめく。

 

(可愛い!)

 

チョッパーはマスコット的な存在で前世では商品化されれば人気が出るキャラ。

 

可愛くない訳がない。

 

ベポはキャラとして結構な人気があったがチョッパーの方が人気で、私はチョッパー派であった。

 

「素敵」

 

心の中でチョッパー好きに頬を緩める己を恥じるなんて事はなく、寧ろ広々として寛げる気持ちで接せられる。

 

これも麦藁海賊団の人徳、雰囲気の成せる技であろう。

 

「サンジさん、ゼリーありがとうございました」

 

サンジにお礼を言う為に此処まで来たのだ。

 

それを言うために、でなく船の中を見たくてそれを言い訳にして出歩いている。

 

皆優しいから見て回っても怒らない。

 

ルフィ達はさっきパンクハザードに降りたったので、居ないから静か。

 

「わざわざそれを言いに来てくれたんだね」

 

サンジは優しく微笑み王子ようだ。

 

彼の壮絶な過去を知っている身としてはルフィ達と笑いあっていたり戦っていたりすると、嬉しくなる。

 

彼に椅子を進められて話をする空気になって内心「やった」と嬉しくなった。

 

やはりメインキャラと交流するのはテンションが上がる。

 

「──ーで、──あはは」

 

それに、憧れの人達。

 

謁見をした様な高揚感と緊張感だ。

 

(あーっ、もうたまんない)

 

あまりに焦がれていたからちょっとキャラが壊れているが平常に戻るといつものようになる筈。

 

彼等にドン引きされぬ様にこの内は知られてはならないのだ。

 

ルフィは気にしないだろうが常識を持っている面々には好かれなくなるだろう。

 

細心の注意をせねば。

 

此処から戦闘になるし、食らいついていかなければ置いて行かれる。

 

どこまでも付いていくつもりなのだ。

 

「ん?あう」

 

眠くなってきて、コレは催涙ガスの仕業、と直感する。

 

シーザーの部下が漸くお出ましということ。

 

眠たくなるのに逆らえず瞼を重く閉じた。

 

結構強めなガスだ。

 

 

 

揺り起こされて意識がふんわりと浮く。

 

心地良い眠りを妨げられて僅かにイラッとしたが、視界にボヤケたオレンジ色を写して微かに覚醒する脳。

 

ナミだと認識するまで一分程掛かったが、起き上がるとガヤガヤしている場に漠然とそう言えばそうだったと思い至る。

 

今は捕らえられているのだろう。

 

彼等も身に起こった事は分からないが兎に角脱出するつもりで試行錯誤をしているようだ。

 

その間、その場に声が辺りを巡りそこに顔を向けると変な顔が、生首が話し出すではないか。

 

嗚呼、確かにこの人もキャラとして出ていた、と記憶を探る。

 

斬られて話している所を見るとこれをやったのは外科医様々(適当)であるよう。

 

まー、此処までしておいて生かしているのは情けなのか、たまたまなのか。

 

さてはて、どうでも良いが。

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