短編集(夢小説)   作:苺のタルトですが

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超ご都合主義だよ、全員集合!

「出来た!完成した!わたしはやりきったぁー!」

 

締め切りに間に合ったと洩らす女にアシスタントのバイトを申し出た子が良かった!と涙ぐむ。

 

「今回のテーマ面白くてつい長編になっちゃったね」

 

「うん。他ジャンルの時もそうだけど、やっぱ推し活楽しい」

 

と、和気藹々な空気でいると、1人の少女がスマホを手にぎゃっと奇声をあげる。

 

「どーしたどーした」

 

聞いてきた子に叫んだ子が「また更新されている」と震えた声で叫ぶ。

 

「曇らせを多数投稿している作者が、新しい作品をまた書いてる!」

 

この島は推し活島。

とあるキーパーソンかつ、ツッコミ役な主人が同郷のもの達が憂なく過ごせるようにと願って作った島。

 

故郷と同じ環境で過ごせるように作り出したのでご都合主義島と住民から言われている。

勿論、愛を込めて。

OP世界が基礎の世界なので、海賊がそれはもううじゃうじゃいる。

 

ので、適当に排除されるシステムが島の防衛に組み込まれているので年中無傷だ。

 

「曇らせ組が更新したって?」

 

「うん。推しが死んでないのを良いことに、曇らせてくる作者のドヤ顔が目に浮かぶっ」

 

ここは、所謂二次創作を主に主体とする人たちが自ずと集まっているので、スマホは常に更新を告げる。

 

「愉悦組も徒党を組んで襲ってくるかもしれない。気をつけろ」

 

「うん!」

 

二次創作の話だ。

ツッコミ役として動かねばならないので、私はいつも島を見て回っている。

ツッコミ役って意外と少ないもん。

 

「この人達のクレイジーな行動は今に始まったことじゃないけど、あれは流石に酷いと思う」

 

一人で呟いて過去を思い出す。

あれは、この島に着々と人が集まって、良い具合に二次創作を作るようになったことが発端だ。

 

これは些細なことなのだが、全員同郷の者たちというだけではなく、誰かの恩人、幼馴染、縁の深い者という、二次創作まんまの彼女達。

 

もれなく、全員関係者なのだが、二次創作を自慢げにそこに生きる原作キャラ達に笑顔で速達として送り付けるという、予想外の行動に度肝を抜かれた。

 

お、お前ら、ここが完全無欠島じゃなかったら、暗殺者放たれてる奴だからな!

 

あと。

 

「二次創作を公式に送るなよ」

 

何年ヲタ活してんだこいつら。

推しキャラクターが幼馴染だったりするから、さては、感覚が麻痺したな。

 

キャラ達の阿鼻叫喚が耳に聞こえてきそうでやばい。

二次創作といってもジャンルは多種多様なんだが、よりによって、腐ジャンル送りつけるとかなんなん?

君ら、キャラのこと嫌いなん?

っていったらきょとん顔で好きですよっ?て普通に答えたんですわ。

私からしたら逆に嫌われることしてるようにしか見えなかったんだが。

 

試しにユースタス・キッドと殺戮武人キラーの幼馴染達が感想を聞きたいなんて分かりきっていることをしようとしたので、試しに私も聞き耳を立てて聞いていたら、案の定、暫く耳が可笑しくなるくらいドチャクソ怒られてた。

 

すっごい「殺す殺す」って言われてた。

あいつらに私ら殺せるかよっ、て二人爆笑してた。

おたくらに心はないんか?

最後らへんそのセリフ放たれたんだけど、彼らの返答は「疲れた」だった。

生気失っとるうう!

真っ白に燃え尽きたのだろう。

 

真っ白な推しキャラクターを精神的にぶっ潰せるのが愛なの?

わたしにはちょっとわかんないですねえ。

そんな人たちが今日もゴロゴロ暮らしている。

彼女らのインフラに関してスマホも作り上げて、前の世界と謙遜なく使える代物にした。

スマホで、パソコンで、ペンタブで、コックで。

などなど。

 

作品のジャンルはバラバラで統一性はないのに、キャラ達に送り付けるという性根は満場一致だった。

トラファルガー・ローの幼馴染が小説を書いていたのだが、当たり前にセリフなどがあって、同じ推しキャラの夢女子達が揃って良い、良いと褒めたりしていたのでチラッと覗いたら甘めのセリフがあったので私はなんとなしに「こんなこと言われたんだ?」といった。

そう、踏み入れたのだ。

 

「え?言われてませんよ?」

 

またあの、ホラー顔負けキョトン顔。

 

「言われてないのに、このセリフがなんで出てきたの?」

 

聞かなきゃ良いのに、聞いちゃうのは人の悪いところ。

 

「ローはあくまでモデルなので。私の書くローは二次創作で、解釈違いですし、なにより本物って二次創作を作るにあたって、創作活動で一番邪魔なんですよねー」

 

「今作最大の問題発言やぞオイ」

 

近くにいた子がわかるわかると頷く。

 

「キャラクターのことが知れて嬉しいんですけど、あとから設定が増えると解釈増えるし、キャラがぶれて書きにくくなるんですよ。小説とか」

 

「本当に推しキャラなの?」

 

「「推しキャラです」」

 

言うことをかいて愛しているという。

どこを信じられるって言うの?

ほんと心を転生してきた時にぶん投げたのかも。

いや、彼女らは推し活をするときに剥ぎ取ったのだと笑った。

 

他にもラジオとか放送とかできるように手配していたらかなり範囲がまた広くなった。

 

ラジオ番組「語り明かしましょう」を発足した彼女らはお酒片手に酔った口調でふらふらとする。

 

「あのー、すみません」

 

「ん?」

 

「今日は外が氷で覆われてて」

 

「あー、ヒエヒエの実の効果だろうから、自然解凍に任せよう」

 

怒りを発散させなければ流石に同情を禁じ得ない。

彼女達の1人、クザンの同僚がよりにもよって腐小説をラジオで朗読しよってからに。

惚れてる女がそんな同人誌かいて嬉々として読んでいたなんて、体にアイスピック刺されてる気分かもね。

 

「怒りで降臨されたのですね」

 

「穏やかにいられるの、うちが無敵だからですからね?無闇に怒らせて良いわけじゃないからね?」

 

「受け入れられないのは私達の定め」

 

(私でもわかんないからな)

 

好きな女にわけわからんもんを書かれて発表されたい人が居るとは思えない。

 

島の端の端に、無言で紙を見せている男がいるとのことだから、その人を観察しに行こうツアーを立てた。

 

ゾロゾロと女達が向かうとなるほどねと皆微笑ましく笑う。

 

「ロシナンテだわ」

 

「どうしたんだろう」

 

「紙になんて?」

 

私も読みに行くと「おれの死ネタが作られ過ぎているんだが」と書かれていて、その隣にエースが居て「死ネタやめろ!あんな台詞言ったことねェだろ!?」と泣いていた。

やめた方がいい、愉悦組がニタニタしている。

制作の栄養素にされているよ。

 

「おれも言ったことないし、ローとはそんな仲じゃないのに」

 

ブツブツいうロシナンテにロシナンテ推しの子がニヤついている。

相変わらずキャラの不幸を涎で浄化してやがる。

 

明日からロシナンテ×エース÷ローの方程式が流行るかもしれん。

注意喚起に予防注射が必要かもしれない。

材料与えたなって。

 

この世界は私の能力によって死人が居ない。

日常系へと改変されているのだ。

ロジャーも生きている。

ロシナンテもサッチも。

ゾロの幼馴染の子も。

そういう世界線として異世界は出来ている。

だから、キャラの殺された恨みや確執は本当の作品ほどない。

 

「ローは居ないの?ローが居たらシナリオ捗るのに」

 

「エースとロシナンテといったらイゾウよ!三大巨頭よね。死ネタ王の」

 

「死ネタ王に私は」

 

「やめなって、うちわのネタを推しに言うのは」

 

と、女子校のノリになってきたので、私はマジレスした。

 

「2人が丸まって体が震えてきたので、話すのなら中でやった方が良いよ」

 

下手したらまた、過呼吸にさせちゃうかもしれないでしょ。

 

「おーい!おーい!」

 

「「あ!」」

 

海賊旗を掲げている船が全速力できて、島にぶつかろうとしたけど、ぽよんと弾かれて着水。

声をあげていたのは。

 

「ウタちゃんだあ」

 

「曇らせ曇らせ」

 

「曇らせ組やめーや!」

 

赤髪海賊団の歌姫、小説を書くにあたって摩擦を起こす程プロットされてきた激思い設定を公式に持つ最強オリジナル。

 

「「ウタちゃーん!」」

 

「いやいや、あどちゃんっしょ?」

 

「やめんか!しっ!」

 

違うネタも投げつける彼女に周りは口を封じた。

 

「ウタちゃんきたら死ネタ四皇揃ってまうぞ?」

 

「イゾウ幼馴染ちゃんに来るよう頼んで!急募!」

 

勿論、居るので幼馴枠に電話で求めた。

そうしたら、来るものかと言われたと悲しみのお気持ちを示された。

みんなは来させるためにイゾウ×夢主小説をラジオで音読した。

 

やがてイゾウ本体が白髭の船を率いて、奇声を上げながら島に突っ込んだけど、やはり弾かれて島に入ることは叶わぬ。

ウタが女子らの前でライブしていたので、イゾウの登場はあまりしられなかった。

 

「なに聴かせやがる!」

 

「イゾウ!お前も来たのか」

 

「エース!帰ってこねえと思ってたらここに居たのか」

 

イゾウとエースのセリフに周りがメモ用紙を出してカリカリと音を出す。

 

「エースとイゾウ、ウタにロシナンテ」

 

「ほう、ほうほうほう」

 

この世界はいつでもキャラが生き生きと生きているので幻想で補給せずとも、現物支給可能。

 

「メモメモ!メモメモ」

 

「捗るの!うひょひょ」

 

まるで飢えた獣のようだ。

怖いので控えてあげて!

と思ったけど、ウタを見たいが為に我慢した。

ふふ、と笑うウタに楽しくなってきた。

 

(この島は私の集大成だから)

 

夢小説を書く子は、今も投稿している。

みんな書くの早いな!?

 

少しでも、少しでも早くプロットを書いている子達はガシャガシャとスマホで連写している。

カップリングを書く人達はウタが来たのならば、赤髪海賊団を呼べと盛り上がってしまう。

 

赤髪海賊よ、来なくて良いよ。

これ以上、この島の周りをカオスで固めずとも良いのではないのだろうか。

彼女達は好き勝手に喜び、遂にシャンクスの幼馴染枠、並びに年上おねえさん枠に呼び出すように催促する。

推しキャラじゃないからって軽々しく安請け合いしてはいけないとわたしは思いますよ。

 

「死亡ルート組は見ていて未来を感じる」

 

「不吉なタグ名つけてやがる」

 

わたしは末恐ろしさに震えた。

まあ、言いたいことは分かるんだけど。

 

夢小説組も居るが夢でない二次創作の小説を好む層もいるよ。

その際の供給にも事欠かぬ。

 

正直この世界の黒幕のことも小説書いていたりする人達が居るので、世界政府に全員捕縛を指定されているゆえに外へ出られない。

 

しかし、この島は地球の娯楽全てを詰め込んでいて固めているので出なくても平気。

 

出るつもりのあるものはこの島には居ない。

 

この世界はそもそも殺生(生きるためと食べるためを除く)が出来ないように設定している超絶ご都合主義仕様なので、死んだりするルートはない。

 

そう言う世界を目指して作った。

 

私は異世界という無作為に送られる予定だった子達をこの島に連れてきて、好きな世界に居座らせることに成功させられた。

 

他の世界では女神とか、そういう存在に近い名前を付けられても可笑しくないが、それは些細なことだ。

 

異世界に送られる命がどういう運命を辿るのか興味のない神位の存在を捻り潰すのは簡単なのだが、一度自分の生まれた世界に戻すのは非常に難しく、こうするしかなかったのだ。

 

シンクに流した水を流す前の水に二度と出来ないのと同じ。

 

そうして作り上げた世界に満足そうにしている彼女達は幸せそうで、私も安堵した。

 

何目線だとなるが、私も無作為に選ばれて異世界に飛ばされて散々な目に遭い、送り込んだ存在を内に飲み込んだ経緯を持つだけの女だ。

 

別に重要なことじゃぁない。

 

某有名な世界を無殺傷に近い世界観に変えたことは後悔していない。

 

「管理人!赤髪をウタちゃんが呼んでくれたよー」

 

「はーい」

 

どうやらまた増えたらしい。

 

「きゃー!ルフィー!きてくれたのー?」

 

「おめーら!おれはハンコックと結婚なんかしねェって言ってんだろ!良い加減に勘違いをやめてくれ」

 

ルフィも来たらしい。

 

ルフィとシャンクスの再会ですかな?と色んな層が話題にするのを小耳に挟む。

 

「は!映画版のキャラクター揃った?」

 

まだまだ足りないー!

ええい全員呼べば良い!と皆はやんややんや、と電話をかけ始めた。

 

今日はどうやら一大イベントが起こるかもしれない。

 

私は皆に出す飲み物でも準備しようかな。

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