短編集(夢小説)   作:苺のタルトですが

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VRゲームを近未来でする話(前半)

私は一度死んだ……のだと思う。

多分ね。

よく分からなくてあやふやなのは死んだ時の記憶がこれっぽっちもないから。

トラウマにならないように消えているのかもしれないから。

覚えていても良いことなんてないのだろう。

ここはもう、私が死んでから100年以上後の世界なのだから。

詳しくは何年とか分からないけど、少なくとも私の知る世界の形はしていない。

地球儀はそのままの形なんだが、建物とか、ロボットとかが色々違う。

私の知るアンドロイドはアニメとか、その中の空想の存在だった。

 

第二の人生の母と父の隣にサラッと人そっくりなアンドロイドが居る。

わたしの子守りをしていて、普通にもう本物の人間だ。

アンドロイドと知ったのはテレビのCMでアンドロイドのことを紹介していたから。

そうじゃなければ、絶対に分からない。

あと、人間が一部をアンドロイドパーツにしているとかもあって、まさに近未来の世界。

一万回は見たことがある光景。

夢とかでもなく、自分の現実だった。

 

子守りロボットは私に笑いかけて毎日話しかけた。

母も父も家に居て、私に話しかけて来る。

あと、アンドロイドまたはロボットに対してもかなり親しげに話しかけていて、家族扱いしていた。

良かった。

ロボットが虐げられたりする光景なんて見たくないから、仲良しならそれに越したことはない。

 

そんな私には幼馴染と呼べる子が居る。

いや、家族間で仲良し一家が居る。

 

「あら、トラファルガーさん。こんにちは」

 

この地区は密接していて、構想マンションのような建物しかなく、効率化が凄い。

大きさも違う家を建てるのはロードマップ的に面倒なのかも。

今の私は外に行きたくて行きたくて、堪らなかった。

 

「こんにちわ。マディちゃん、大きくなったわねえ」

 

「ラミちゃんも前より成長しているわ」

 

母親トークを傍に、私は外へ行く時はいつもしている、観察をひたすらしている。

キョロキョロしていると幼馴染枠になっている男の子、トラファルガーさんちのローくんが地面をずっと指でカリカリしていた。

 

3歳児ってこんなもんだよね。

流石のわたしも、同じ年の子と過ごすという行動は出来ない。

精々5分も我慢ならない。

今はそれより、外の外観が見たいのだ。

母親からそろっと離れて、てくてくと公園へ進む。

公園ならば、離れることが許されるお遊戯の施設。

公園で遊ばせるために連れてきたのだから、好きなことをしても咎められることもない。

 

(公園はわりと公園って感じが残ってる)

 

「砂は、砂じゃないけど」

 

なんとびっくり、天然の砂ではなく人工の砂だという。

ドロドロになるが、服についても弾くので、服をドロドロにして洗濯が大変なんていうことがなくなるのだ。

主婦の味方にも程がある。

普通に山を作れる人工砂、凄い。

見た目はただの砂である。

何故分かったかという、公園の看板に人工砂使用と書いてあるのだ。

人工砂ってなんだろうと触ったら、水遊びも兼ねて、泥を作っていた子が盛大に泥を服にべちゃっとした時に判明した。

なるほどねと。

 

他にも滑り台もなんだかプラスチック感がない。

近未来の素材らしきものが窺える。

 

試しに滑ってみた。

アシストのようなものが浮かび、綺麗に滑れてびっくり。

失敗とか怪我とかしないように安全システムが組み込まれているらしい。

これも公園の板に書いてあった。

その板も所謂ホログラム。

 

うす透明な浮かぶ板という感じ。

もう物理ではなくなった。

近未来サイコー。

内心テンション凄いのである。

何故なら、この未来にはVRコンテンツがあるのだ。

しかも、フルダイブ。

頭に被るのかなと思ったがそれをする時代はとっくに過ぎて、今はアクセサリーのようにつけられる万能機器があって、電話やメールなどの基本的な事から買い物、本、などというもの、ゲームにフルダイブするといった機能がある。

まあ、幼児のワタシにはまだフルダイブするゲームは許されておらずどんなに頑張っても12歳からしか出来ない。

 

私からしても12歳でも許可するのはあれなんじゃないかなと思うが、そこは優秀なシステムが年齢によって悪意や見せてはいけないものを選別して安心安全にできる。

 

ふふ、とニヤニヤして砂場で遊んでいる子どもの近くに、ローが近くに座ってボーッとしていた。

3歳児だからこんなものだろう。

特に反応することなく次の用具に進む。

ブランコもブランコの形をしているが安全アシストがちゃんとついていて、振り落とされる事故が起こらないようになっていた。

子供にとっても親にとってもとんでもない程の安心公園。

親が目を離すのも分かる。

 

シーソーも同じ、ジャングルジムも落ちるとぽよぽよした地面が体を受け止める仕様。

未来過ぎる。

ワタシが思っているよりも未来だ。

車も当然のように無人の自動運転。

 

あれには叫んじゃったね。

私も大人になったら自動運転の車を買いたい。

自動運転じゃない車はないから買うのなら強制的にそれ一択しかないけど。

わくわくする。

 

ワクワクしすぎて目立っていたが、周りも楽しそうに見ていたのでよしとする。

母も父もその姿にメロメロとなってホームビデオ用に撮影していた。

 

「うちのコは表情豊かね」

 

「うちのコだもの」

 

両親がなんだかほのぼのアニメに出てきそうな顔をしている。

 

「うおおおう」

 

目をキラキラさせて、ポヨンとトランポリンで遊ぶ。

それにしても子供の反応があんまりない。

もっとこうキャッキャ、って言うよね。

なんかDNAに細工したのか疑いたくなるくらい。

反応が薄いと言うか。

慣れの問題か?

私は全てが未来で感情爆発しているのだが、その他の人達は新鮮味がない当たり前だから、騒ぐほどじゃないと感じているのでは。

 

でも、私は楽しいからやめない、やめられない。

まるで猫のおやつのような中毒性に開き直っていた。

他の人達に合わせる真似なんて絶対嫌。

私は全力でこの世界を楽しむ。

 

「キャー!キャー!」

 

トランポリンで一番高く跳ねた。

子供の演技など必要ない。

楽しいー!

 

「マディちゃん、帰りましょう」

 

と、声をかけられて2時間飛び跳ねていた事に気づく。

時間を忘れてしまっていたらしい。

トランポリンから降りて母のところへ向かう。

 

「楽しかった?」

 

「うん!」

 

「帰りに食べに帰ろうか」

 

父が話しかけてきて、その発言に乗っかる。

 

「食べるっ」

 

「マディは本当に美味しそうに食べるから、こっちも何故か美味しく思えてくる」

 

それはプラシーボ効果である。

しかし、この時代の人たちにももっと食べることを楽しんで欲しい。

 

「なにを食べよう」

 

「うどん」

 

「カナリヤ亭ね」

 

まるでファンタジーの名付け方のうどん屋に、私はこの名付け悪くないと思うよとかなりお気に入り。

カナリヤ亭でハンバーグを食べる。

うどんを食べようと思ったけど、座るために移動した時にハンバーグが見えてそれしか食べる気がなくなった。

よくある優柔不断に見える心理。

ハンバーグは私の知るハンバーグの味ではない。

冷凍ハンバーグくらいしか口にしたことがないので、こんな旨味のあるハンバーグは食べたことがない。

食べられるところで食べれば美味しいけれど、なんと言うか更にパワーアップしている。

 

「美味しいッ!美味しい!」

 

モグモグ食べていると店中の視線を浴びる。

煩かったかなと少し静かにしていると近くに居た人が「元気な子ね」「見ていて美味しそうに見えるわ」と言い。

店員が「これは当店からのサービスです」と言われてもらうもの。

デザートである。

ハンバーグのあとのデザートが美味しすぎる。

パクパク食べていると店のあちらこちらでデザートが頼まれて倍上効果を上げていた。

 

ここまで感情豊かな子供は現在ではあまり見なくなっていた。

未来はそういった情操教育に重きを置いていなかったからだ。

マディはそんな事情など梅雨知らず、子供としては感情が爆発している存在だった。

 

大人になるにつれて今の両親のような感情を育てていくのだが、既に彼女のレベルの子供は珍しかった。

しかも、全てに目をキラキラさせて全てに言葉を付けるというのは見慣れたものに囲まれていた地球人にとって、新鮮であり、微笑ましいもの。

恋愛であっても淡白路線になりつつある。

 

そんな中での、マディのハンバーグとデザートの光景は周りが思わず映像に残したくなるものなのだ。

現に客達は嬉しそうに撮っている。

それに気付いた私はピースサインをして笑顔を向ける。

自分で言うのもなんだけど、弾けている。

それを見た大人達は、トロトロと蕩けるような顔をした。

 

(凄く見られている。前々から見られてたけど、なんでこんなに見られるのか分かんない)

 

子供の反応が私よりも淡々としてることと、関係しているのかも。

 

「デザートおいしーっ」

 

「良かったね」

 

両親はのんびりした風のように笑みを浮かべる。

両親のヤナギの木のような顔つきが今は大好きだ。

 

「うん!カナリヤ好き」

 

あざといと言うなかれ、デザートをくれた礼だ。

ふう、と私はお腹いっぱいになったお腹をぽんと叩く。

 

「ごちそうさま」

 

本当はちゃんと発音出来てないけど、しっかり言った。

 

こういうのは廃れてないのが良かった。

具体的な言葉は色々ある中で、ご馳走様を選んでいるだけ。

 

次の日、両親が親バカを発動して昔でいうSNSの呟きのようなものに投稿していた。

 

今もそういうのあるんだって。

こういうことって廃れないのだから。

 

「凄く観覧数が伸びてるわ。さすが私の娘」

 

ハートを乱舞させてこちらを見る母親。

父親も私にラブと言いながら可愛がってくる。

 

この時代、働かなくてもアンドロイドや無機物が代わりに働いてくれるので人間は死ぬことはない。

 

おまけに人類は全員お手当的なものももらえる。

働けば更にもらえる。

 

わたしのことを投稿したことにより、金銭を投げ入れるシステムが働いて、うちは潤う。

 

私は別に構わないと思う。

 

他の子よりも変わり者の私を凄く大切にしてくれるし。

 

こちらの存在で我が家が幸せになるのなら、構わない。

 

なんなら、マディが働き両親と旅行に行きまくることだって予定している。

 

他の人には出来なくて私に出来ることはあるはず。

 

今の時代、全てが全自動なのだ。

 

「マディ、ローくんが遊びに来るわ」

 

「うん」

 

ローがというより、ローのお母さんが来るのだろう。

 

うちの母とローの母は幼馴染なのだ。

 

隣なのは同じ地区で、ずっと近くに居たから、これからも行き来しやすいようにと仲良く登録したから、隣のままらしい。

 

「ようこそ。今日はロールケーキよ」

 

「まあ。ロールケーキ」

 

「そうよ。私のマディちゃんの動画がとても良く観覧された記念よっ」

 

「見たわ。とても良い動画だったわね。私も何度も見てしまったわ」

 

ローのお母さんはふふ、と笑みを浮かべる。

 

「ロー、マディちゃんと遊ぶ?」

 

と、ローに聞くが。

 

3歳の子に聞いても意味ないよね。

自我はまだだし。

 

思った通り彼は無言。

 

妹のラミは置いてきたらしい。

まだ赤ん坊だし。

 

それと、赤ん坊はアンドロイドが見ているので万が一もなくて主婦の味方。

 

主婦って今の時代じゃ廃れているから、主婦も何もないよね。

 

家事は全てアンドロイドと自動化されていて、やることなどない。

 

それなのにやることはあるのかというと、基本的に娯楽の消費だ。

 

こんな生活を夢見ていたから、サイコーにハッピー。

 

「マディ、なにして遊ぶ?」

 

母と父が何をするか聞いてくる。

 

娯楽消費が目的の日常。

 

家にいるのならば、やることは娯楽しかない。

 

しかし、娯楽じゃないけど全自動させていることをしてみたいな。

 

子供の私がやっても可笑しくないものはっと。

 

色々考えるために一旦座り込み、本を読む。

 

この本もペーパーレス。

 

もう少し成長したら、紙の本が買いたい。

依頼しないと、作ってもらえないもんね。

お金は私の貯金を使う予定。

 

「んー」

 

「なにかな、なにかな」

 

「遊ぼう遊ぼう」

 

両親が一番楽しみにしている。

 

「野菜を千切る」

 

千切るのだ。

私は千切りたい。

なぜなら物理的な野菜を触りたいからです。

娯楽なようで娯楽じゃない。

もちろん、無駄にしないようにする。

料理に出来る具材にするつもり。

 

「なにをちぎるの?」

 

わくわくした顔をしている。

この人たちは、驚くことに野菜を触ったことがないらしい。

料理をしたことがないらしい。

全自動とアンドロイドに任せた生活をしていると、家事をやらなくなると解説したばかりなのでなんとなく想像しているだろうけど、全人類そんな感じだ。

料理しないどころかなにもしない。

娯楽以外なにも。

余裕の社長生活が出来ているのだ。

こんな生活を出来るなんて、生まれて良かった。

 

「キャベツ」

 

「キャベツね。持ってきてちょうだい」

 

家事アンドロイド&ロボットがキャベツを用意してくれる。

このアンドロイド達は本当になんでも出来る。

空も飛べる。

 

「キャベツを丸ごと触るなんて初めてだ」

 

父が繁々とキャベツを眺める。

 

「ロー、貴方も触ってみなさい」

 

ローママも参加してきた。

ここにいる人達は楽しそうにキャベツを触る。

恐々と触る人も居れば積極的に触る人もいる。

アンドロイド達も参加して、キャベツを手にしているので、かなり賑やか。

 

「食べたことはあっても、触ったことはないわ」

 

というがこの世界にはかのVRがある。

データのキャベツは触ったことがあるので、現実のキャベツは、ないというだけ。

いや、待てよ。

もしかして、ないかもしれない。

例えばRPGならば、自動で調理するならば素材を見るまでもなく、自動で調理されるのならば、触る機会など来ない。

キャベツがあっても触ったことなどないかもしれないな。

やはり、なかったみたいでお初な感触に彼らは目を丸くしていた。

 

キャベツを触るだけで娯楽扱いなのか。

父にこの動画を残すようにゼスチャーする。

言葉をまだスラスラ言えないので。

 

キャベツをちぎってアンドロイドに用意してもらったカゴへ入れる。

このキャベツは今日の夕ご飯のキャベツ炒めとして出てくるのだ。

アンドロイドにキャベツ炒めをリクエストしたらオッケーが出た。

アンドロイドとの会話は人間と変わらないので、忘れたら普通の人間に見えちゃう。

 

キャベツを千切れば彼らも習う。

真似て、ぶちっと千切る。

かごにスローペースで入っていく野菜。

彼らはこれが野菜と分かっているが、野菜に触るのは別問題なのだろう。

ここまで退化しても許される未来って凄い。

 

「現実で触るのは不思議ね。アンドロイド達は毎日、これを使っているのね」

 

ローも意識してないまでも、キャベツを無心にむしっている。

流石に幼児は遠慮なく行動しているようでホッとした。

私が全て終えても他の人達は終わらない。

 

「次はぶどうする」

 

「はい」

 

アンドロイドがぶどうを食べる用のものを寄越してくるので、ぶどうを千切る。

このブドウも夜に出される予定。

わたしの3倍の時間をかけてキャベツを終えた彼らはぶどうを見て、同じように動作した。

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