短編集(夢小説)   作:苺のタルトですが

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海賊的政略結婚

うちは両親が海賊という特殊なところ。

 

長女たる姉が一人居て、ドンキホーテファミリーの誰かと政略結婚を結ぶ予定。

 

だったが、姉がファミリーの面子を見て嫌だとだだをこねた。

 

若い男が良かったらしい。

 

手紙一つで消えた。

 

両親は海賊というクズなので、妹で子供の私を生け贄に再度捧げた。

 

しかし、予想外だったのは生け贄先が若い男だったことだ。

 

その人は個人でも海賊団を率いている人で、まだ無名らしい。

 

ドンキホーテファミリーとしては裏方の仕事をしていて知られていないのだと説明を受けた。

 

そんな人に捧げられるのだと震えていると、親が姉が勝手に出ていったので妹を嫁がせるという事情を説明していた。

 

この人たちの頭の中はスポンジで何も考えてないのが恥ずかしく、頭が挙げられない。

 

なんせ、あのドンキホーテ・ドフラミンゴ。

 

あの世に今送られたって可笑しくないことをヘラヘラ笑いつつ言うもんな。

 

つまり、契約を破りましたと馬鹿正直に言ってるわけで。

 

ドフラミンゴの顔が変わらなくて怖い。

 

しかし、そんなことも気付かない親は説明を終わらせる。

 

「フフフ、フーフフフフ」

 

高笑いしてないのにわらい続けている男が怖い。

 

親はまだ気付かない。

 

どこまでも周りを見ないからそうなるのだ。

 

もう足腰が震えて動かない。

 

どう考えても死ぬらしい。

 

両親はヘラヘラ笑いのまま地面に沈められてしまう。

 

次はー私だ。

 

ブルブルと震えが止まらぬまま死因を待っていると「待て」と聞こえた。

 

正直彼がなにを言っていたのか覚えてないが婚姻届にサインしたっぽい。

 

流石に覚えてないが、いつの間にか人妻になってしまっていたらしい。

 

死ぬよりマシなのならばどうだって良いさ。

 

願わくば旦那が悪趣味でない事を祈るばかり。

 

両親は結局奴隷落ちした。

 

「おい、さっきから聞いているのか」

 

「!!!――すみませんっ!」

 

「まァ良い。色々変わってまだ切り替えられないだけだ。少し待ってやる。一週間後にまた来る」

 

(あ、あれ!?)

 

意外と待ってくれている。

 

しかも、一週間もある。

 

結構配慮されていて、驚く。

 

もっとこう、命令されたり理不尽に晒されたりと酷い事を想像していた。

 

一週間という期限も偽りで、一週間に殺される命の期限カモしれないが。

 

海賊の約束を破ったのは姉と親だが、身内なのは同じ。

 

顔を潰した代償を己はまだ払ってない。

 

一週間の間、美味しいものを食べたり、姉の居るだろう方角に向かって恨みを唱えて過ごす。

 

宝石の本を渡されてどれか選べと言われたので黙って横に置いて放置。

 

いらないとか言うのも死ぬかもしれんので言えず。

 

そうして過ごしていてもロー本人はなんの感情も読めない。

 

なにを考えているのか不安だ。

 

いつ処分しようとか?

 

それとも本命がいて隠れ蓑扱いとか。

 

そっちのほうがよっぽど分かる。

 

そういうわけで、納得させた。

 

更に後日、姉が捕まったらしい。

 

金子が尽きてしまい両親のところへ行こうとしたところで発見されたとか。

 

何故Uターンしたんだ。

 

捕まるに決まってるだろうに。

 

2日後、姉が私に会いたいと言ってきたとローは彼女を連れてきた。

 

別に仲が良かったわけでもなく、互いに不干渉だったので会いたいと言われる覚えなし。

 

「リーシャ!」

 

顔を見て直ぐに抱きつくように走ってきた。

 

突然のことにされるがまま。

 

「私に何か用ですか?」

 

馴れ馴れしく触れられたかない。

 

ベタベタと気持ち悪い。

 

「わ、私と貴方の仲なのになんなのその言い草はっ」

 

両親が奴隷に落とされたっぽいのに、よく言えたもんだ。

 

先に捨てた人に情について言われるのが不愉快だ。

 

「あなたが逃げて私達は終わったの」

 

「何言ってるの!貴方は生きてるじゃない!あ、そうだわ。私も一緒に住みたいな」

 

「……不可能だよ?」

 

「私は家族だから!」

 

「もう離散したよ。貴方の行動で。二度と元には戻らないの」

 

「なによ!ブスの癖に!助けなさいよおおお!」

 

私は叫ぶ姉を他人の目で見て、ふいっと横に背けた。

 

それを見終わったローは、組織の人間に姉を拘束させる。

 

離せ!とか、幹部の婚約者なのよ!と全て過去のものをひけらかして脅そうとするが、ここにいる人員は全てなにがあったか把握しているので離す真似はしない。

 

痛みを与えるように引きずられていく姉をもう見る妹は居ない。

 

既に道は分かたれた。

 

もう自分はこの男の私物になり、己が好きになにかを選べることはない。

 

それくらい、理解していた。

 

「さようなら」

 

微かな声で告げて椅子に座った。

 

正直腰が抜けた。

 

姉が怖かったのだ。

 

それに怖い選択肢を選んだのだから、体も震える。

 

グッと息を詰めて吐く。

 

汗を拭おうとしているとまた扉が開く。

 

今度はローであったので俯く。

 

あまり感情を見せたくない。

 

弱者がなにを、と言うかもしれないけど、見られたくないのだ。

 

「良かったのか」

 

「はい。もう決めてました」

 

「そうか」

 

「わざわざここへ連れてきてくれて、ありがとうございました」

 

「勝手にで戻ってきたやつの末路なだけだ」

 

「そう、ですね。まさか戻ってくるとは思ってませんでした」

 

意外と聞いてくる人だ。

 

「フフ、見事だったぞ」

 

「そんな、褒められるようなものでもないです」

 

「いや?」

 

ローはクスッと笑う。

 

なにを面白がっているのかツボが分からん。

 

「女なのに頑張ったな。褒めてやろう」

 

家族を捨てたのに塩を塗りたくる。

 

なんて最低なんだとわかりきった思考になる。

 

この人が最低なのは海賊の時点で知っていたが。

 

心底軽蔑した。

 

傷心なのは見ていて丸わかりであろうに。

 

「もう、放っておいて下さい」

 

ふい、と横を向くとこちらへ近付く足音に身を竦めた。

 

随分と天の邪鬼だ。

 

「妻を放っていけるわけないだろ」

 

(妻……ね。お飾りの、でしょ)

 

「お飾りと思ってそうな顔だな。フフ」

 

「……?」

 

良く解読できたと首を傾げたし、ドフラミンゴと似た笑い方が余計に肩身を狭くする。

 

 

 

一年後。

 

相変わらずの生活に、離婚もしてなかった。

 

寧ろ、どこか構われたままという不思議なものである。

 

飽きられることも忘れられることもない。

 

リーシャとしては、早めに飽きるなりして隠れ蓑を卒業し自由になりたいのだが。

 

それに、両親は三流の海賊で、その娘と結婚する旨味なぞないのだ。

 

いつまで結婚しているのだろうと椅子の上で憂いを帯びた息を吐く。

 

「どうした」

 

息を吸う。

 

「一人で過ごしているだけです」

 

「おれのところへたまには来い」

 

「貴方の部屋を知りません」

 

嘘をついた。

 

何度か手を引かれて連れて行かれているので記憶にしっかり残っているし、行かなくていいのならと行ってない。

 

一体どんな理由で行けば良いのかわからないし。

 

「本当に知らねェか」

 

見透かした不敵な笑みで余計に顔を向けられるわけがない。

 

「それより、なにか用が?」

 

「用なんて、会いに来たってだけだ」

 

ス、とローは彼女を後ろから触れる。

 

髪を触れてクルクルし始めて気まずい。

 

「あの、やめて、くださ」

 

「やめるのか」

 

やめてはくれたが、次は手を取って緩やかに撫でてくる。

 

羞恥心で恥ずかしくなるが、我慢する。

 

「そろそろ、街へ行く」

 

「い、いってらーー」

 

「お前も同行させる」

 

一ヶ月に必ず一度あるお出かけだ。

 

後ろから付いていくだけではない。

 

隣に並んで妻として顔を見せるのだ。

 

しかも、やたら触れてくるのだから好きではないのに、嫌悪がなくて、戸惑っている。

 

「私は……本当に好きな方を誘えば宜しいのに」

 

「はァ……まだそんな思い込みを」

 

ローはため息を吐いて体を撫でるのを止める。

 

耳元で孕ませられてェのか?と体の底が発火くるようなことを囁く。

 

 

 

 

街へついた。

 

腰に手をやり、ホールドさせている。

 

ずっと密着させていて、心が休まらない。

 

この一年でローがかなり優しいのを知った。

 

でも、ならばこの結婚は尚更不釣り合いだ。

 

「なにか食うか?」

 

こうやって気を使ってくれる。

 

大切にされていると頭では理解していた。

 

「楽しめ、たまの外出だ」

 

「いえ、私は、楽しんでます……から」

 

なんせ、誰から見てもデート。

 

「楽しんでいたんだな」

 

「は、はい」

 

嬉しそうに笑みを浮かべるから、頬が赤くなる。

 

笑みが尊い。

 

街への視察が終わって、寄り道するとローは小さな丘へ連れてこらる。

 

「ここは」

 

「景色が良いだろ。この街にもこういうところがあるんだと思ったぞ、おれも」

 

ローは心を読んだように話す。

 

「一年前よりずっと顔つきが良くなったな」

 

「お陰様で」

 

男は頭にキスをして、心臓が痛む。

 

「あの、私は妻にはなれません」

 

「それは聞けねェ」

 

今までの甘い顔を無くし、表情の抜けた鋭い目で射抜かれる。

 

「おれがお前を娶ると決めた。他でもないおれだ」

 

しっかりした声で答える。

 

「おれが気に入らないのなら、おれの部屋を知らないままで構わない」

 

ザァ、と風が舞い、ローの言葉が胸を焦がす。

 

 

***

 

 

2日、ただただ思考の海を泳いでいた。

 

食欲も何故か湧かない。

 

ちら、と見てため息を何度目かに吐く。

 

「ううう!」

 

ついでに奇声も上げる。

 

奇声をあげつつ、衰えぬように編み物を再開する。

 

やはりなにも考えずに没頭するには、やはり趣味に限る。

 

「なにを作ってるんだ」

 

夫が気配もせずに立っているのに驚くことも少なくなった。

 

「マフラーです」

 

「マフラーか」

 

「ドレスローザでは不要ですけど」

 

ここは暑い国だ。

 

「いや、おれが欲しい」

 

「えっっ?」

 

まさか、要求されるとは思わず手が止まる。

 

「ですが、自分用で小さくて」

 

「おれように編めば良いだろ」

 

「はい。その、やります」

 

初めて頼まれたもの。

 

気合も入る。

 

ギュッと握った手を大きな角ばった手が覆い、ドキリとする。

 

見るまでもなく、男であることは分かる。

 

「出来たら部屋に届けてくれ」

 

ローは己が前に部屋に来なくていいと言ったのに、きっかけがあれば来るのでないと、考えついたのだ。

 

それにこくりと頷いた妻に笑みを向けていく。

 

どうやら今思いついた作戦が上手く行ったらしい。

 

「必ず持っていきます」

 

「楽しみにしている」

 

手を包まれて頬が真っ赤になっていく。

 

「も、持っていくので、手を……」

 

何度も行くと言っているのに手をなかなか離してもらえない。

 

そのまま、手を離さない状態で椅子に座った男に顔を背けた。

 

「あ」

 

「なんだ」

 

聞かれても応える答えを持ってないので、なにも言えず。

 

「あの、えっと……トラファルガー様」

 

「ローだと何度言えば良い。おれは確かにトラファルガーだが、妻にまで呼ばれちゃァな」

 

ニヤッと顔を深める態度にもごもごとさせる。

 

「ロー様……?」

 

「フ……恥ずかしがっているんだな」

 

初めからそんな風に感じていたのだろうに、名前を呼ばせようとしていたのだ。

 

可愛いな、と内心思うがままに脳内が占める。

 

「結婚して正解だな」

 

聞こえない程度の小さな声音で言う。

 

最初はドフラミンゴに勝手に決められたのなら性格が尖ってない女で良いと妥協したが、過ごしている間にめげないところがあると知り、少しずつ話すようになった。

 

どうせ有力な海賊の娘だのと宛行われるのなら、彼女が一番候補としてローの中で当たりなのだ。

 

「必ず、来るんだ。約束出来るな?」

 

必ずと確約させてからこれ以上体温を上げさせないように、部屋を出てやった。

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