短編集(夢小説)   作:苺のタルトですが

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成り変わり


早く生まれ変わりたい

ぱち、とまぶたを開いた時、己の汚さに叫びたかった。

そして、自分の名前がキッドであることに気付いた。

いや、違う、私にはちゃんと真名があるではないか。

キッドはまたの機会に誰かが名付けられれば良いんだ。

海賊にならないように海には極力近寄らないようにした。

けれど、この見た目で近所の悪がきどもが絡んできて、喧嘩の技を本能と勘だけで繰り返しているといつしか一番強い女になっていた。

皆が皆持ち上げるからやめてくれと嘆願された。

意図せず海賊になってしまい、結果的に七武海にまで成り上がってしまった。

泣いても良いだろうか。

ナイフを手に襲ってくる奴等が怖くて腕を振り回しているだけでお頭凄い!と持ち上げてくる仲間。

血を見たくないのに残酷な女と煽る世の中。

具体的に言えば、自分は疲れきっていた。

 

「よお、赤毛屋」

 

トラファルガー・ローが慣れた態度で声をかけてくる。

彼は幾度となく海で出会い、勝負やらを仕掛けてくる男だ。

やめろと何度頼んでも楽しそうに絡んでくるので質が悪くて嫌い。

むすっとして無視してすれ違う。

 

「つれねェ」

 

腕を掴むので振り払う。

 

「七武海同士だからで馴れ合いたくないの」

 

海賊は怖い、と心のなかで叫ぶ。

何故よりにもよって海賊と知り合わなければならないんだ。

一般人は寄ってこないし、さんざんだよ。

 

「おれはお前のこと好きだぜ?」

 

そう、それ!

そういうところも嫌い。

 

「私は嫌い!近寄るな」

 

一般人が良い、結婚するなら普通が良い。

 

「ビッグマムに目を付けられる前におれの女になっとけよ」

 

え!?

いつ目をつけられそうになってんの?

こっわ!海賊とか!

誰と結婚させられるの。

びくりと肩を揺らす。

 

「震えてどうした?大物の身内になれる絶好のチャンスだぞ」

 

それってどっちのことをのべてるんですかねぇ。

 

「ビッグマムの身内なんてヤダ……」

 

「お前は普通の女だからな。フフ」

 

流石に右頬を腫らしたくなった。

知ってるんならくんなっての!

 

「幸運の値が異常なだけなのにな。笑える」

 

笑うな、と睨み付けた。

むしゃくしゃしつつ、海軍本部を抜けると猫が通って内心猫だ!と後を追いかける。

猫って可愛くて癒される。

猫の先に居たハンコックが猫を蹴ったのを見て彼女を襲撃した。

初めて自分から攻撃の意思を感じたかもしれない。

 

「なんじゃ貴様は」

 

「猫を蹴るなんて許せない」

 

ハンコックと頭では理解していたが猫愛を思えば引くわけにはいかん。

海軍どもが大慌てで建物に入る。

偉いやつか強いやつを呼ぶのだろう。

猫を蹴ったから戦闘になったのだと後に知られて海軍の建物を壊すなと注意されたが、猫を蹴る女をじゃあ入れるなよと反論した。

これを論破したならあなた達も結局海賊と同じですねと封殺した。

ふん、無駄に色んな不確定要素を混ぜるから管理が出来なくなるのだ。

イライラして自分の船に帰ってくると怖い部下達が出迎えてくる。

 

うん、やはり怖いし慣れない。

キラーが好んで集めてくるし、勝手に船に乗せてくれと無理矢理ついてくるし、なんというか。

 

「キラー、籠る」

 

「待てキッド」

 

「何度言えば良いの。私はナターリアだってば」

 

強制力のせいなのか?

キラーは真面目で一度決めたらこうと曲げないタイプだからキッドと呼ぶのかなぁ。

いや、本名読んでくれよ。

普通に呼ぶなと言ったら呼ばない方が真面目だし好感も感じると思うんだが。

慕ってれている筈なのに改めてくれないとは、逆にバカにされているのかと疑いたくもなる。

 

「すまない、呼ぼうとしているのだが」

 

成る程、つまりは違和感と何かしらの強制力とやらが働いているのか。

つくづく運の悪い自分、そしてキラー達。

ラッキーで成り上がったのに、一番避けたいところに運が吸い取られている。

本当は運なんてないんじゃないかと常々思うけど。

キラーは謝りつつも、これからなにかしたいことはあるかと聞いてくる。

七武海になったので一応登り詰めたことになるわけだが。

なにかやりたいことか、っていっても伸び伸びしたい。

なんの争いもなく平和な縁側でお茶飲みたい。

そう相棒にストレートに伝えた。

彼は困った顔でぽりぽりと頬をかく。

血の気の多いやつらがそれについてくるわけもないと思っているのは理解しているが、ならばこそ、自分だけいけばいい。

 

キラーの言葉を聞きおわることもなく、踵を返してのしのし歩く。

一人で行ってやる。

疾風の如くさくっと行く。

船を適当に動かして適当な無人島に飛び乗り一人で弾丸みたいに飛び出して行く。

制止が聞こえたが、無視してずんずん進む。

白くて艶々した木が見えた。

流石異世界、幻想的だ。

キョロキョロと歩いて適当に座ってうたた寝する。

 

くうくうと寝息を立てていると足音が聞こえてキラーか他の船員かと薄めに目を開く。

ブーツが見え、アザラシ柄のズボンが見えはて、こんなズボンを持つ人なんて居ただろうかと首を内心捻る。

むむう、と上をぐんぐんと見上げると顎の髭が見え、少しずつ輪郭が明白となる。

その時、理解した瞬間カッと目を大きく開いたのは言うまでもない。

というか、何故ここに居るんだ。

 

「トラファルガー・ロー!?何故、ここに!?」

 

なんで適当に移動した島に居るんだよと気味悪く感じる。

くくく、と楽しげに笑う男は「目立つ船が見えたもんでな」と得意気に言われた。

確かにあの船は悪目立ちする。

命知らずなんてうちの船を目にした途端名声が欲しくて目の色を変えて襲ってくるのだ。

あれは面倒だと辟易する。

夢であれと相手をぶん殴りつつ祈っているのに一向に願いが叶わないので海のバカヤローとたまに海に向かって叫ぶこともある。

ストレス発散の為だ。

 

「なにしてるの!ずっと寝てるのみてたの?」

 

いつから居たのかは知らんが、見られていたのは確実だ。

起こす事もなくこちらが気配に気づいたから発見したわけで。

でなければずっと見られておしまいか、変な事をしようとしたに違いない。

 

「ああ。寝顔は大人しいな」

 

見てたことを認めた上で、まるで恋人のように寝顔を楽しむ様を覚めた瞳でじとりと見る。

ところでここには二人しか居ないのだろうか。

寝顔は大人しいなって、普段も大人しいわ。

っていうか余計なお世話だ。

こういう奴と同類みたいに政府にも世間にも思われているのが悲しい。

すべて偏見だというのに。

全てを等しく呪いたい衝動にかられる中、立ち去る様子のないローになど構う理由もない。

こっちから去るだけだと立ち上がって距離を取る。

キラー達はどこにいるのだろうかと気配を探る。

 

「帰るのか」

 

「違う島に行く」

 

「へェ」

 

なんてことないと答えると意味深に笑う男に鳥肌もの。

じりじりと寄ってきているようなので足を早くして最後には走っていた。

そこで相手の敵がroomと呟くので咄嗟に能力を発動して早さをブーストして範囲内から逃れる。

なんのつもりだと睨み付ける。

今の回避能力は良く頑張ったと言えるので、戦うのが面倒。

この男さえ居なくなればまたのんびり出来るというのに。

地面を蹴ってこちらから仕掛ける。

それを分かっていただろう相手は簡単に避ける。

しかし、こちらも避けることを知っていたからナイフを投げて奇襲。

くつくつと笑う外科医はさもこちらから誘ったかのように宣う。

 

「情熱的だな。おれの胸を狙うとは。さてはおれのことが好きだな?」

 

確実にナターリアへ精神攻撃をしている。

狙っているとしか。

ムカッ腹立がむくむくと立ち上がる中、己の冷静な部分が静まれと言う。

跳躍して彼へ飛び蹴り。

互いの足がぶつかる。

だれも来ないところを見るとローの仲間も居ないらしい。

あまりこういうことに時間を使いたくはないんだがと能力を発動した。

 

「やっと本気を出したか」

 

「その減らず口、いつまで持つか」

 

もううんざりだ、と腕を振り下ろした。

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