短編集(夢小説)   作:苺のタルトですが

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キスの代償

我輩は漫画家だ、ペンネームもある。

しかし、この世界では呼吸と同じ位置にあるキスと言う行為が当たり前にある現実だけにはほとほと呆れを越えた怒りさえあるのだ。

どうして、未成年と大人がキスしているのに御巡りさんが来てくれないのだろう。

それはね、法律違反じゃないからだヨ。

ってか!

うんざりする程最悪な記憶となってしまった目前の光景を嫌な顔をして通りすぎる。

せめて公共の場ではやめてくれないかな。

どんよりしてしまう心のままに家の鍵を扉で開く。

 

「あ、靴ある」

 

スペアキーを諸事情で渡してある相手が在宅だと知り、とたとたと己の家を買い物袋片手に歩く。

己の嫌なことが目に写らない我が家は天国。

ドアを開けてリビングに赴くと黒い髪が揺れてソファーでうたた寝している男の位置を確認して冷蔵庫へ買ったものを入れる。

がさがさしていると音で起きてしまったのかソファがぎし、と鳴った。

 

「今日も夜遅くまで仕事だったんだね」

 

労り後ろを向いたまま声をかけてみたけれど、返事がない。

寝ぼけてるのかもね。

今となっては大体相手のことを理解しているので不思議にも思わん。

冷蔵庫に入れ終わりドアを閉める。

ぱたん、と音がすると同時に肩へ圧迫。

のち、くるりと真逆に体を動かされる。

空のふくろがふわり、かさっと落ちた。

寝ぼけ眼にまだたゆたっているのだろうと思っていたが、目がギラギラしてる。

 

──グッ

 

掴まれている肩の圧力凄い。

男は背が高いので見上げねばならん。

 

「どうし」

 

この世界では呼吸とキスは同列。

それは説明したね。

そうです、塞がれてます。

機嫌が悪いのかいつもより荒い。

 

「ん!」

 

お願いだから息継ぎをさせてくれ。

こっちは慣れないのだ。

 

「は、は、ふぅ!!いや、死ぬから、酸欠!」

 

離されて呼吸すると言葉を発することなく唇をぶつけてくるというコミュニケーションにはついていけない。

 

「……!……!?」

 

いつもの違う様子だ。

 

「ぶは!」

 

流石に三度目はやばい。

顔を背けてやめてくれと示したらやっと猛攻は収まる。

彼はいつも淡々としているけど、熱意のある男なのだが、どうしたのかと目でとう。

 

「赤髪屋にキスされただろ」

 

「あ、赤髪?」

 

「あいつだよ、お前のとこの社長」

 

鋭く憎々しげに睨み付けてくる男。

尋問されてるみたい。

この世界観はキスが軽いけど、自分はそんな価値観など持ってないのでおいそれと誰かしらからキスされにいくタイプではない。

手を握るのならセーフだ。

 

「あ、ああ、ああ……その、うちの社長か。そりゃね、社長からのキスなんて避けられないでしょうよ」

 

「避けられただろ。お前はキス嫌いで有名なんだ。そいつが知らなかったわけがない」

 

「そ、そんなの、うちの会社に会社員何万人いると思ってるの?覚えてるわけないって」

 

「それはない。あいつ、あいつ!おれを見てにやついて、お前にキスしたんだ。あれはわざとだ……!」

 

少年みたいに熱くなっている。

どうどう、落ち着け。

体も心なしか燃えているぞ。

 

「はァ。兎に角あいつはおれに喧嘩を売った」

 

「ええ?ローに売って特するのかな?」

 

「するだろ。おれとお前に葉っぱかけてんだよ。許さねェあの野郎」

 

憤りを隠せぬ男に困ったなと頬をこする。

シャンクス社長とローが争っても彼には間下から見下ろされて叩き潰されるだけだ。

とにもかくにも負け戦だから放っておいてと適当にアドバイス。

男はおれがバカにされたままで良いのかと凄むが、喧嘩などというものが嫌いな自分からすれば、きにすることはない。

男同士にしか分からぬ争いなどなくていい。

誰もやってくれとは頼んでないというのに。

ローはそんなに喧嘩っぱやい人じゃないだろ。

 

「この世界でキスはたいしたことじゃないのに、気にしすぎ」

 

「お前の生きていた時代じゃ違ったんだろ。なら、お前にとっちゃ無視出来ねェもんだ」

 

彼は前世について理解をしてくれている貴重な男。

だからこそ、キスという行為を望む人体を持つ己にとってかけがけのないパートナー。

仕事をする限り、エネルギーは必要なんだよ。

ローはこちらを睨み付けて首筋を厭らしく撫でた。

 

「お前はおれのだ、バカ」

 

罵られるのは理不尽だが、焼きもちを焼いていると事前に知っていたのではいはいと受けとる。

キスされて照れ臭かったのだからというものあるけど。

でも、ローとのキスは嫌ではないのに。

他の人となんて考えただけで飛びたくなるが、彼ならばと唯一のキスでの補給をのぞんだ。

望みたくなった。

それに、その存在がどれ程フィルを助けているのか彼は分からないと思う。

それを込めてお礼としてぎゅうっと抱き締めた。

 

「バカ野郎」

 

嫉妬の末の罵倒にクスクスとあまりの可愛さに笑う。

萌えまくった。

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