短編集(夢小説)   作:苺のタルトですが

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女帝ではなく、皇帝と二つ名をつけられたロー。
悪魔の実はオペオペではない。


手のひらの

一隻の海軍船と黄色い潜水艦。

二方が対峙していて一発触発の空気を醸し出している。

海軍の指揮を取る男達が賞金首を捕らえる為に勇敢な面持ちで今か今かと大将の出番を待つ。

 

「相手は二億の男!決して油断してはいけない!」

 

おお!と唸り声の怒声を響かせる。

そうして黄色い潜水艦の扉が音を立てながら開く。

ごくりと誰かが喉を鳴らす。

カツンカツンと音が鳴る。

そうして姿が見えてきて輪郭すら把握出来るようになると男達は胸の高鳴りを感じた。

二億の男は同性なのに。

 

「何なのだ、この気持ち……!」

 

男──トラファルガー・ローの姿が確認出来ていた時には全員の心は一つになっていた。

 

「美しい!」

 

「男なのに!抱かれたい!」

 

対する黄色い潜水艦のロー側は冷静に物を見ていて男達の反応に何の感情もない。

いつものことだ。

自船の船長が好まれるのは当然、悪魔の実による効果なのだから。

 

「船長飛ばしてんなー」

 

シャチがケラケラと笑うとペンギンも頷く。

 

「ロー船長、どうするのかな」

 

他の船員達が見守る中、ローは船の船首に飛んで良く見えるように移動する。

 

「捕まるのは嫌だ。だからといって逃げるのも無理だ……積み荷が欲しいからな」

 

近くに来た事で男達の視線を独り占めしている。

言葉も聞こえているし、海兵達が我先にと荷物を運び出して渡そうとした。

 

「おれが欲しいか?フフ。おれの身体は破産したって払える額じゃねェんだ」

 

熱烈な視線を受けて尚な反応に海兵は更に目をハートにする。

 

「こっちに目線くれー!」

 

「はァはァ。動悸がヤバい!」

 

海兵達が次々と倒れていく。

あまりの愛おしさに耐えきれなく、恋煩いによる症状。

 

「苦しいのか。なら、おれは医者だ。お前等にぴったりの処方箋をやろう」

 

ニヤッと笑みを浮かべて男が手を人差し指だけにして、海軍船だけに絞り言の葉を吹く。

 

「″パルピテーション″」

 

その瞬間、ハートの膜が船全体を覆う。

消えた途端に海兵達の目が虚ろになっていた。

トランス状態というやつだ。

又は盲目的な恋の状態とローは考えている。

そうなると船員達も何の警戒も無く海軍船を歩けた。

シャチ達も降りて海軍船を漁っていると客室といった所にある部屋で寝ている人物が居た。

 

「あっ!」

 

「どーったシャチ」

 

仲間が扉越しに問うと彼は気まずそうに報告する。

 

「リリエラが居た」

 

「え!?マジ!」

 

仲間もその部屋に駆け付けてみるとスカスカと寝ている女が一人。

無防備である上に呑気にムニャムニャとしている。

 

「脱走期間長かったな」

 

「今回は一ヶ月か」

 

「船長とは電話だけの一ヶ月って話だ」

 

「うっへェ。今船長に見つかったらリリエラ軟禁確定じゃんか」

 

二人でどうしようかと唸っているとベポもやってきた。

彼女の姿を認めるとワタワタと慌てて「海軍に捕まっていたのか」と推測するが、手錠も掛けられていないのでその感じは無さそうだ。

ローに見つかると自分達ではどうにもならない。

取り敢えずベポに運ぶように言って起こさないように移す。

ローの能力の範囲内に居たという事は今は昏睡状態に近いのだろう。

船へゆるりと運んでローに見つからないように船に乗せて能力の範囲から外す。

 

「おい、起きろ起きろ」

 

揺すって揺すって揺り起こすと目を何度かしばたかせて眠りから覚める。

こちらを見て何故此処に居るのかという疑問が浮かび、部屋を見回して目をカッと開く。

 

「なっ、なっ、なっんで」

 

パクパクと口を魚の様にさせて問う女にシャチ達は頭をガリガリとする。

説明するのが大変だが、先に何故海軍の船に居たのかというのを聞いておく。

返ってきたのは船が難破していた時に海軍船が通って助けてもらったのだという。

 

「そーそ。でも、海軍船に居たのになんで私此処に?ロー、ローはこのこと知ってる?お願い知らないのなら黙ってて」

 

真剣な面持ちで頼むと二人は困った顔で唸る。

リリエラが特殊な立場なのを理解しているからこそローにバレたくないのだ。

彼と彼女の出会いはとある島。

どこからかやってきたローと暮らしローと幼なじみの関係になりながらも共に数年を過ごしていたらローが海賊になっていつの間にか島がハートの海賊団の縄張りになっていた。

どうして縄張りにしたのだとか、海賊ってどういう事だとか、そういう疑問を持ったものの、聞くのも面倒臭くて知りたくないので知らないフリをした。

リリエラは長い物に巻かれたいが面倒なのでやっぱりイイやと思う面倒臭がりなのだ。

 

「私、一応電話してたしっ。それに、それに」

 

幼なじみとしての最低限の礼儀として話しはしていた。

いい加減に船へ戻ってこいと言われても自由でいたいのだから今まで脱走していたのだ。

そう言うと船員達は名案を示してくれたので己の部屋として用意されている場所へ向かう。

 

(灯台下暗し)

 

ローの部屋から近いにせよ、まさか脱走している自分が此処に居るとは思いまい。

 

 

 

 

身柄を船に移し、ひっそりとバレぬ様に動く。

勿論ハートの船には女性も居るが、彼から言わせたら仲間の括りらしい。

んなもん知るか。

そもそも海賊船などに乗りたくはなかった。

自分の立場は特殊で、どうやら仲間というカテゴリーではないっぽい。

ローに仲間なのよね?って感じの確認を取ったところ、返答は「違う」だった。

だったらなんなの?捕虜なのか?

 

「はぁ、もう。なんであの海軍船、襲うかなぁ」

 

すやすやと寝ていたという事はあの海軍船は教われたらしい。

折角順調だったのに。

幼い頃から知っているものの、ローの思考はいつでも分からないまま。

海賊になる前はとある男の仲間になり腕を上げていくという、謎の展開を見せた。

もう島に戻ってくることはないだろうと思っていれば、びっくり、戻ってきたのだ。

可笑しいなと少し前から疑いをもっていたのに、リリエラには関係ないことだと無視した。

本当に関係ないからね。

一言や二言くらいさよならを言ってくれれば良かったのに。

なにが悪魔の実、何がパルピテーション。

ワケわかんない!

叫んだ、海で。

ローは島で苛められていたが、身体能力が下の子に負けた事はなく、あっという間に負かした。

それからボスのようになり、リリエラはそれを見ていた。

助ける必要もないんだからそれは仕方ない。

島の人間もローも恐らく自分をただのあまり離さない女と思っているが、違う。

ただ話すような機会があまりなかっただけだ。

ひっそりしていても損もなく、そうする理由もなかったからだ。

もっとも、船に無理矢理誘拐された時は抗ってローに驚かれていた。

こんな時まで黙ってるとかあり得ないっしょ。

そんな事より、今は自身のことについて自己紹介してみよう。

歳はまあ、そこは秘密。

こういうのは言っちゃったらダメだろ。

で、ちょっと特殊な体質持ち。

何年か前に寝ていたら本で読んだことがある女版のサキュバスという種族に体を乗っ取られかけて、なぜか勝手に弱り出ていった経緯で、その後遺症か副作用かでちょっぴり相手に好ましく写るオーラ?みたいなのと、これはローで分かったことだが、ローの魅了の能力の効果が半減させられる事が分かっている。

ローにこの身を好きにされないのは朗報だ。

サキュバス~のところで突っ込みたい人がいるかもしれないが、グランドラインであるので言えることはない。

だって、本当に分からない。

ま、世の中、仕組みを知らずとも使っているものだってあるし。

そういうのと同じ感覚だろう、という手軽さで考えている。

賢くないし、考えてもこの体質がなくならないのなら考えても無駄だと思うんだ、うん。

ローにもろ能力を使われた時とか、本当に耐性があって良かったと思ったものだ。

遠慮なんて言葉は存在しなかったのだから。

出会ったとき。

 

『あれ?ロー?』

 

『エターナル』

 

とか言っていきなりなんの説明もなしに能力を向けてきたのだ。

 

──ビキ

 

『は?』

 

身体が静電気に当たったようで、ビクッとなると目がぼやけた。

けど、それだけだ。

 

『当て損ねたか?』

 

本当に不思議そうに言うからその時、攻撃されたのかよ!?とこっちが度肝を抜いた。

こいつ、手加減しねえわって。

 

『エターナ、ぐっ』

 

近くにあったビンを加減無しでぶん投げた。

当たったのは奇跡に近い。

当たったけど大して効いていないから他の技だった名を呟かれたら意識を失って船の部屋に寝かされていたから暴れた。

そして、その他に様々な事を経て今に至る。

暴れだしたくもなるでしょ?

いや、次会っても酒ビン投げ付ける。

と、回想していると後ろから鳥肌ものの声音が聞こえてきた。

 

「エーラ」

 

「!、っう!」

 

まともに食らってしまう。

一般だから反発力もほぼないに等しい。

こいつまた能力を。

殴り付けたいが、今まで食らわせられた試しがない。

 

「今までどこに居た」

 

淡々と聞いてくる所が怖い。

でも、元を辿ればこの男の行動が全ての原因だ。

 

「エーラって尋問用の技なんだ。ふぅん?」

 

「ちっ、やっぱりまともに効かねェか」

 

舌打ちとかこっちがやりたい。

 

「身体に問いかけてもおれは構わねェんだぞ」

 

脅してもなんら怖くない。

 

「別にどうぞ?」

 

「……へェ」

 

ローはペロリと唇を舐め、所謂舌舐めずりとやらをした。

嘘でしょ、それはあまりにも悪役のやること。

腹筋が吹き出すのを押さえてくれる。

ローの昔と今のギャップが強力過ぎて彼がエロティックなことをすると笑えてくるのだ。

だからやめてもらいたい、切実に。

もし彼の前でゲラゲラと笑った場合、ただでは済まないと本能的に理解しているから、余計にやめてほしいわけだ。

己の心の平穏の為。

 

「というのは冗談──で」

 

──パリン!

 

振りかぶったビンが避けられてしまう。

 

 

 

 

 

 

ちっ、油断したところで当たってもらおうとしたのに。

 

「怖い女」

 

ニヤリと笑う。

それにムカッとくる。

 

「怖い女を乗せている皇帝に言われたくない」

 

ハンコックが女帝なのでローは皇帝らしい。

ちょっと考えるの放棄したような、ついでみたいな名付けかたな気もする。

 

「皇帝には妃が必要だろ?」

 

さも楽しいことが待ってますと言う顔をされて、頷く訳もない。

カチ割りてえ。

 

「どこに帝国があるの?頭の中?」

 

今の言葉が気に触ったらしく、目を細める。

そんなに怒るのなら構わなかったら良いのに。

バカなのだろうか。

 

「煩い」

 

煩くない。

ぜんっぜん煩くない。

耳に痛いんじゃないの。

 

「民はどこにいるのかな」

 

まさかクルー達とかいう手抜き展開じゃないよね。

そんなの国じゃなくて村だ。

ふん、と最後に息を吐く。

 

「行ってからのお楽しみだ」

 

ぞわっとした。

こういうところは海賊だな。

そして、妃の地位など欠片も興味もなければ欲しくもない。

と、なればやることは勝手に決まる。

 

「平民が妃なんて他国に乗っ取られるっての」

 

隠し持っていた投げ爪楊枝(つまようじ)を投げる。

研磨してるから尖ってない。

けど、刺さったら痛いってやつだ。

 

──ビュッ

 

──パン

 

手で落とされるがそれを見ることなく扉へ向かう。

ローの手は読めている。

今さら何度もしている逃走に抜かりはない。

 

「敢えて逃がしてるのは覚えておけ」

 

色気ナンバーワンの声がぽつんと聞こえた。

嫌だ嫌だ。

わざととか、そんなの分かってるし。

でも、自由を満喫しなきゃね。

 

「うんうん。ロー様スキスキー」

 

おべっか発動、

 

「いつでも待ってる」

 

うわ、サイテー。

だぁれが行くか。

しかも己は望んでいないってところが尚酷い。

 

「ローサイテーサイテー」

 

捨て台詞を述べて去る。

飛びかかられるかと思いきや、冷静。

いや、言われ慣れているから何も言わないだけか。

彼から逃げ出したが、また見つかるのだろうと運命の様な成り行きが思い出される。

どれくらい逃げたらもう見つからないのだろう。

軽い現実逃避に苦笑した。

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