周りから常に雑魚雑魚と呼ばれ、自信を喪失していた。
こんな惑星もう嫌だと飛び出した。
その先は広大な宇宙。
今や一人が船のポッドを所持していても不思議ではない時代。
悠々と船を動かして空の旅を謳歌しているととても危険なカテゴリーにあるジャンルの船がぶつかってきて破損した。
そんなことに驚いている余裕なんてない。
なんせ、その船は海賊船。
あっという間に捕まり、他の女達が押し込められている一室に放り込まれた。
殺される前にやってやろうじゃないかと意気込めば、売られることが判明。
なーんだ、殺されないのかと手を緩める。
なら、お尻から攻撃をしなくてすむ。
女達は美人ばかりで、テイシュ族ばっかり。
テイシュ族は男にも女にも従う種族で奴隷になりやすい性質を備えている。
めちゃくちゃ甲斐甲斐しい子らとか書いてあったが、乱獲されやすいので超有名。
そのせいで、さっきから同じ立場なのに膝枕されてマッサージされている。
この子ら、この状況に順応しすぎにもほどがある。
少しは抵抗出来る人数。
見た目は爆乳エルフって感じ。
みんなぺらぺらな服装だ。
着せられたのかな。
それにしても、凄い健気に尽くしてくる。
いや、なんにも、一言も喋ってないのに勝手に膝枕とかしはじめて、この子達、やべえって思ってるところ。
売られるんなら、あと一ヶ月はすごさなきゃねらない。
退屈ではないが、逃げねば。
二週間たつと敵の動きもわかってきた。
そろそろ行動を落とすべきだな。
やれるかわからんが、テイシュ族の子達に敵は気絶させろといっておく。
攻撃力がそれほどあるのか知らないので当てにしてない。
よし、出ようと決行した日に奇襲を受けたらしい海賊達があわてふためいていた。
なんていうタイミングなんだ。
テイシュ族を伴いつつ、混乱する男達をのしていく。
悪に救いはない。
テイシュ族の依存度は人知れず上がってゆく。
「くそ、ハートの海賊団か!全員表出ろ!」
聞いたことないけど、有名らしい。
最近新聞読んでないもんで。
その横をそ知らぬ顔で駆け抜ける。
男達がわめこうと死のうとどーでもいーや。
ポッドの場所は把握できてないので、慌ててしらみ潰していく。
くるくると回っていると海賊達とは違うお揃いの服装の男達が船内に現れた。
敵か。
目を細め、速やかにポッドを探す。
男達は向かってくる海賊を相手にしているのでこちらには気づいてない。
「あ、よし!」
愛しの我がポッドを見つけたので喜びに向かう。
起動しようと船内に乗ろうとすれば向こうから繋ぎ服の男達がこちらに気づいて数名来る。
ここで戦闘かとテイシュ族を前にする。
彼女達が自分の盾になろうと前に出たがるのでやらなくていーよと後ろにやる。
「なんだ、お前ら」
「奴隷にされてた手前の捕虜です」
「は?」
純粋な真実だ。
戦闘体勢を構えたままいつ相手が来ても良いようにする。
男達は戸惑った顔で船長に知らせようと話し合っている。
こちらは目で乗るように合図し、ポッドを脳内で操作して動くようにした。
今のポッドは便利だ。
「あ、おい」
逃げようとしているがばれて追いかけてくるが、既に離陸しているので飛び乗る。
捕まるものか。
「そっちはまだ」
なにか言っているが風で聞こえない。
──スバ
視界がズレテ暗転。
どうやらなにか攻撃を受けたみたい。
船もどうやら落ちた。
悲鳴が聞こえる。
ここで死ぬのかと薄く笑う。
結局星を出たのにこんなことになるなんてね。
皆から無駄な能力とか全否定されて、ここに居たら確実に無理矢理腐ってしまうと思ったから出たのに。
──ヒタヒタ
──ヒタヒタ
耳にふと音が聞こえてきて、目を開けると明るい天井が見えた。
場面がカットされたような意識に気持ち悪さを感じて辺りをゆっくり見る。
ここは部屋、で、白い。
(どこ?)
寝かされているので変なことにはなってない。
(攻撃されたのに)
なにかの攻撃を受けて体が崩れ落ちた。
船も落下する感覚があった筈。
「起きたか」
大きな男が目前に現れて目を開ける。
「?」
「ここは医務室だ」
医務室。
警備の人でも通りかかったのかな。
「貴方は」
「おれはシャンバール」
「ここはどこなのですか?」
「心して聞け。ここはハートの海賊団という」
言い終わる前に飛び起きて扉へ向かう。
後ろの男が待てとか安静にとか言うが、台詞は届かない。
扉が開いて廊下を見回して窓を覗く。
海賊から海賊に囚われただけでなにも解決してないじゃん。
喜ぶことも出来ず、出口を探す為に走って外へ続く部屋を開ける。
しらみ潰しに探せばいつか見つかる。
船なんだならね。
「走るな」
あの男が捕まえようと追ってくる。
それを見て慌てて適当な扉を開けて中へ行く。
扉を静かに閉めて男が通りすぎるのを待つ。
「……はぁ、行った?」
確認して窓を覗く。
「おい」
「っっ!?」
声をかけられて反射的に振り向く。
しまったと失態を覚える。
「だ、れ」
「それはこっちがききたい」
確かにこちらが招かれざるもんだからね。
でも、強制的に招かれたしさ、そこは仕方ない。
緊張していると男は緊張している様子のない目でこちらを見つめている。
「私はえっと、リーシャです」
自己紹介をして扉から出ようと行動する。
奴隷にされる前に逃げなくては。
ドアノブを回すが顔の横に手を押さえられて扉が開かない。
後ろに気配がする。
「リーシャ。お前はおれの所有物だ、忘れるな」
やべー男だ、こいつは。
ナチュラルに人を所持する発言。
環境は変わらないわけか。
「じゃ、じゃあ、お金返済します」
奴隷ならばお金を返せば身分を返上させてはくれないか。
「くく、面白ェ提案だ。良いぜ」
「ほ、本当に?」
「その間は所有物だがな。なにしてくれる」
「な、なにって……手品、とか」
「は?」
本気なのにふざけてるのかと言われて慌てて手品が得意なんですと告げる。
目の前でコインを出せば目の色を変えた男にコインを奪われる。
「…………これをどこで手に入れた」
「そこら辺に売ってたので」
「まだあるのか」
どうやらコインに目がないらしい。
雑魚扱いされた能力を嬉しがられて内心驚く。
「ありますけど、買ってくれるんですか?」
「ああ。寄越せ。それ相応で買ってやる」
図らずともお金が貰えた。
だけど、変わらないのが所有物扱いだ。
2週間乗って知ったのはテイシュ族達が馴染んでいて、お手伝いさん家してる。
そのテイシュ族をまとめているのがリーシャになる。
一番になつかれているからだと。
一気に増えたのにご飯はまとも、部屋も与えられてぬくぬく過ごしている。
ハートの海賊団について船員達から教えられた。
有名なルーキーで新聞を賑わせているらしい。
ふうん、知らなかった。
というか宇宙は広いからね、知らないのも当然。
新聞も常にローよりもルフィを追っているからローは取っている新聞会社によって変わるということだ。
ローは目を心なしかキラキラさせているような。
そんなにコインが欲しいのか。
図らずとも己の能力で喜んでもらえるとは。
意外な展開に棚から牡丹餅というやつかと喜ぶ。
無下にされずに済むかも。
リーシャは人知れず泪を零しそうになったが、我慢した。
相変わらずテイシュ族の爆乳エルフ達は世話を焼いてきて、結局私のやることなんてない。
テイシュ族の一人がこっちこっちと手招きするので付いて行くとお風呂だった。
付いてくるんじゃなかったー。
もみくちゃにされ、こねくり回された。
お風呂で背中を流したくて仕方なかったらしい。
良く寄生型種族と蔑まれる彼女達だが、そもそも見目の良いという理由だけで乱獲する方が悪い。
「随分騒がしかったな」
「え、見てたんなら助けてくださいよ」
「面白そうなのに助ける意味ねェよ」
「ヒド!」
くすくす笑い、肩を叩いて通り過ぎる男。
テイシュ族に見つかる前にキッチンに避難。
彼女達は一人が世話をしているのを見ると尚更焼きたくなるらしい。
「お、王女様のお成りだぞ」
団員達がケラケラと笑う。
素揚げしてやろうか。
「王女でもないし、保護者でもないです」
テイシュ族に懐かれ、わらわらと後ろをついていく姿を見て王女なんてからかわれている。
代わってやろうか、カルガモ役。
「なんか肌が輝いてるな」
「隅々まで磨かれましたし」
「くー!至れり尽くせりだな」
無理やりだったぞ。
この変な立ち位置、解かれる事がないことに気付くことはなかった。