短編集(夢小説)   作:苺のタルトですが

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赤ん坊を拾った

無茶苦茶可愛い赤ん坊を拾った。

散歩をしに外へ出て歩いていたら鳴き声が聞こえてきて驚き、慌てて探すとわんわんと泣いている赤ん坊が居てたまげた。

たまげたなんていう言葉を使ってしまうくらい、たまげた。

どうにか泣き止んでもらおうとあやすが、泣き止まない。

お腹が空いているのかなと家に早速帰りミルクを与えてみる。

男女間でお付き合いしている人も、近場に知り合いも居ないので、ここで育てるしかない。

大変だと思いながらミルクを飲まない事に困り、色々試してみるものの、やはり飲まない。

このままでは死んでしまうと一日を費やしてみたが、疲れ果て眠ってしまう。

ハッと起き赤ん坊を見ると空のミルク瓶と眠る赤ん坊が居たので飲んでくれたのだと安堵した。

赤ん坊なら自分の持つ独特な固定魔法を受けても影響などない。

この世界には生まれながらも、誰しもが個々に固定される独自の魔法が付与される。

幼いときから魅了という何のメリットも感じた事がない魔法のせいで人と関わるのが苦手になった。

好意を抱いてもらえるのならと喜ぶ間もなく、全員が私生活にまで干渉してくるのは流石に不味いと感じ、慌てて固定魔法を緩める事が出来る魔法の腕輪の情報を集め、買おうとしたら手が出せない値段で売られていたのである。

その頃には色々諦めるしかないと感じ、町の人々にあわや囲まれ監禁されるところまで迫っていた。

しかし、丁度魔法を使うことに長けた人が来て腕輪を安い値段で譲ってくれた。

安いと言っても高かったけれど、生活が安定されるのならそんな出費は痛くなかった。

それでも、人々に優しくされる日々は変わらない。

監禁されないのならば贅沢は言うまいと思った。

だが、視察に来た領主の息子とやらが己を見初めて屋敷に連れ去ろうとしたので町を静かに出て自活している、今現在。

皆固定魔法は最高の天からの贈り物、なーんて言うが、ミュンウェイからすれば悪魔のイタズラ。

人生の設計もろくに立てられぬものなど、ゴミに捨てたい。

業者さんゴミ箱はどちらにありますか。

遠い目をして赤ん坊だけに集中する事に決め、頑張って飲ませるものの、寝入ってしまいその間に中身が無くなるというのを繰り返していた。

数日経過してくると、何となくこの赤ん坊が普通でないことに気づく。

多分この子はわざとこちらが寝ている間に飲み、こちらがあげようとする分には飲むつもりは無いのだと。

それなら、ミルクを傍に起き放置するという実験をしてみた。

このまま一人で格闘していても無駄な時間だ。

 

「うぎゃんうぎゃあ」

 

鳴き声を上げたのでゆるりと赤ん坊の所へ行くと空の瓶があり、やはりかと確信に変わる。

知能があるのか、はたまた警戒して隠れて飲んでいるのかは解らないが、それでも飲んでくれるのなら理由など些細な事であった。

良く飲めましたね~、とあやしている更にギャーと泣き出すのであやすのを止める。

止めた途端に泣かなくなるので確信犯な赤ん坊だなと苦笑を溢す。

まぁ、勝手にしておけば良いと半ば放置で様子を見る事にした。

下手に関わると癇癪も酷くなるのだから。

 

「泣き止まないよりはマシっていう」

 

一人で己を納得させてごちる。

 

「離乳食は何歳からだったかな~」

 

本など出費が痛いので買えない。

他の人に借りるのも無理だ。

ぼちぼち観察してその都度考えれば済むと思い、今は考える事ではないと改め直した。

育て初めて一ヶ月、赤ん坊は一歳くらいになって絶句した。

幾らなんでも進化、いや、成長が早すぎる。

でも、もしかしたらそういう種族なのかもしれないし、早く喋れるようになってくれたりしたら、話し相手になってもらえる。

その期待を込めて、より一層愛情を込めた。

ついにはよたよたと歩き出した。

うちの子はメッチャ出来る子らしい。

自慢したくなるが異質なのは理解していたので厄介な輩に狙われる可能性を感じて我慢する。

五歳くらいになったら外出させてあげよう。

お母さんって呼ばせようと決意する。

可愛いな可愛いな。

 

「お、お、い」

 

うん。

何やら言い始めた。

 

「てっ、喋ったあ!」

 

わー、と興奮をしながら幼子を見る。

 

「お、れ、ロー」

 

「おれろ?」

 

「ロー」

 

「?」

 

何が言いたいのかまだ分からない。

 

「な、ま、え、は」

 

舌ったらずでなかなか読み取りにくくて、やはり解読はまだ出来そうにない。

 

「分かんないや。もうちょっと練習して教えてね?」

 

賢い赤ん坊だから何かを伝えようとしているのだろうと感じる。

悪いと思うものの、分からないのだから。

 

「なんて呼んでもらおっかな。ママよりは母上?いやいや、お母さんが無難ね」

 

ウキウキと成長するのを見守っていると、また一月が経過してよちよちとスムーズに歩くようになった。

その頃には短い言葉であるが、喋ってくれるようになり、言葉も聞き取れるようになった。

 

「ロー」

 

彼の名前らしい。

聞き取れたのがそれだった。

まだ名前を与えていなくて良かった。

 

「ご飯食べよう」

 

何処に居るのか分からないので声を高く、呼び掛ける。

すると、ペッタペッタと可愛らしい音を立てて部屋へ現れた。

どこへ居てたのか、という質問はしないことにしている。

大人と同じくらい思考があることは分かっているのであまり干渉はしない。

構われ過ぎるのも嫌っているらしいから。

でも、一緒に寝てくれる。

頼み込んでやっとOKをしてくれた。

 

「今日のご飯はなーんと、野菜たっぷりのスープだよ~」

 

相変わらず町へ行ったら周りからちやほやされるので、仮面を付けているものの、フェロモン的な目に見えない能力のせいであまり成果はない。

それでも、生きるためには必要なものを買わねばならないので我慢している。

ローが大きくなったら買い物へ言ってもらえるように頼もう。

ローは椅子に座って直ぐにご飯を取り始めた。

見ているだけで寂しさがなくなる。

 

「美味しい?美味しい?」

 

「んぅ」

 

頷きと共に肯定された評価にニヤニヤが止まらない。

舌が回りにくいのにわざわざ言ってくれるところがもう堪らない。

今すぐスリスリハァハァしたいけれど、嫌がる。

ご飯を食べ終えるとコンコンとノックの音が聞こえて誰だろうと眉をひそめる。

誰もこの場所について教えていない。

知っている人ならば嫌だなと膨れっ面を隠してドアを開けに行く。

と言っても確認はする。

誰ですか、と問う。

 

「僕だよ。ジェンス」

 

ジェンスは町にいる八百屋の息子だ。

八百屋が何のようだろう。

 

「君、忘れ物したんだよ?」

 

何か忘れただろうかと首を傾げてドアを開ける。

 

「何か忘れましたか?──!?」

 

開けながら聞くが視線を占めたのは五本の手。

迫ってくると脳は理解しているのに、逃げられなかった。

ガッと腕を掴まれる頃にはジェンスの顔が優越感で染まっていた。

 

「ぎゃああああん!」

 

部屋の中からギャン泣きが聞こえてきて不届きものの手がピタッと止まる。

ミュンウェイはその手が止まっている内にぴしゃりと扉を閉めて施錠。

 

「ロー!どうしたの?」

 

「別、に」

 

鳴き声が聞こえてきたから来てみたが、泣いているわけでもなくケロッとしていた。

首を傾げるもののジェンスのあの気持ち悪い感じを思い出して窓の施錠を確認する。

ああいう粘着質のようなタイプは悪化したりしたら大変だ。

また一つ、人間不信になる要素が増えた。

 

 

***

 

 

(追い払えたか?)

 

ローは見た目は幼子だが、本当は立派な大人である。

魔法使いにイタズラに魔法をかけられ幼児へとされた。

運良く飛ばされた場所で拾われたは良いが、この親になろうとしている女も結構なトラブル体質だと知り、他人事でない関係であるが故に舌打ちしたくなる。

今だって男が訪ねてきたし、勘が働いて泣いたフリをしたが、次に助けられる可能性は低い。

女が辛気くさい顔で己の体質に悩んでいるのは知っていたから、この身がどうにかなれば助けられるのに。

ローはこの国の城で外務大臣をしている。

だから、異国の能力を押さえる品の伝を持っていた。

成長が早いものの、なかなか大人になれない歯痒さにふくふくとした手を睨み付けた。

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