短編集(夢小説)   作:苺のタルトですが

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ローのマネージャーの真似事をさせられる謎。現代パロです。


マネ

用意を終えて待機していると少し主張の激しい足音が聞こえて扉が開かれる。

 

「お疲れ様です」

 

今をときめく人気の実力派俳優が強めの眼力をこちらに突き刺すので肩をすくめる。

この男とは俳優でない幼少の頃から知り合いとう幼馴染枠なのだが、何故かサブマネとして有無を言わさず連れてこられてこの役をやらせられていた。

何故私なのだと嘆いているのは秘密。

とてもではないけど、ローに対して怯えの姿勢を見せているのだが、普通そんな人間にマネージャーなんてやらせんでしょ。

 

「水」

 

単語だけ言われ、慣れているのでペットボトルを渡す。

 

「毒味」

 

「しました」

 

「目の前でやれ」

 

毒味とはファンやアンチに対応するために口につけるものをこちらで確かめておくことだ。

ペットボトルで新品なのに見てわかんないかなぁ。

ごくりと飲み、それをぶんどって豪快に呑む。

水一つで大袈裟だろう。

いつも同じことを繰り返すので飽きないのだろうかと思ってしまう。

でも、実は給料めちゃくちゃ良いんだよ。

少し、いんや、スッゴクわがままでも許せちゃうくらい。

 

「はァ」

 

ため息を吐く姿は俳優オーラ凄いんだけどね。

楽屋とかプライベートだと途端に俺様炸裂するから、ほら。

 

「飯」

 

「ここに」

 

楽屋に配置された豪華な高ランク弁当。

凄く良い香りがずっとしていてこちらもお腹を空かせたまま。

おにぎりあるからそれ食べよう。

朝からおにぎり作ってきて節約してる私偉いぞ。

 

「おい」

 

おにぎりを食べようとしていると声をかけられる。

もしかして同室で食べるなと言われるのだろうか。

 

「今日はおにぎりの気分だ」

 

「え、でも……」

 

「寄越せ」

 

これなくなったら食べるもんないんですケド。

ローはこちらに確認をする前におにぎりを強奪して止める間も無く食べた。

 

「ブハ!?」

 

「あの、梅干し入ってます」

 

「言うのおせーんだよ!」

 

そういう風に奪うから梅干しを入れたのだ。

男対策は張り巡らせれば手を引く。

今回はおにぎりなのだけど。

 

「チッ。これ半分食え」

 

おにぎりを一つ返して豪華なお弁当をズッと押しやりこちらへ向ける。

毎回同じやりとりをしていて流れは組んでいるので食べた。

遠慮すると食べる時間もなくなるから。

うわぁ、松茸入ってる。

流石高級弁当。

半分食べている間ローはおにぎりをキツそうに食べていた。

そんなに嫌ならば食べなきゃ良いのに。

そんな顔をして食べているのが謎。

 

「おれに梅干しを食わした詫びとして別の具を入れて作ってこい」

 

「……へ」

 

おにぎりよりも断然この弁当の方が美味しいのに。

家庭の味に飢えてるの?

実家一旦帰ればローの母親は喜んで作ると思うんだけどな。

 

「わかったな。絶対にだ」

 

「わ、わかりました」

 

幼馴染なのに敬語で怯えているのは昔からだ。

上下関係を見事に現している。

ローは賢くて医大に入れたのにこうして今俳優で売れっ子。

どんな職業でも上を狙えたということだ。

小さな頃から何故か自分だけにはワガママ。

正直この人の心の内だけは分からない。

優しかったり意地悪だったり。

 

「トラファルガーさん、もうすぐでーす」

 

テレビ局の人が出番なので呼びに来た。

ローは基本俳優でやっているので俳優としての仕事しか受けない。

写真くらいが例外。

プロフィールなんて公開してなくてファンも必要としてない。

演技だけでみんなを虜にしている。

それは素直に凄いと思えるから、マネージャーに身を置いている。

あと、給料もイイ。

 

呼ばれたローは立ち上がると疲れた顔で向かう。

 

「お前はここにいろ」

 

いつも待機をさせられる。

多分恥ずかしくて撮影を見せたくないのかなと勝手に想像していた。

 

 

ローは扉から出ると顔を手で大きく覆う。

おにぎりが思いの外胃にダメージを与えていた。

欲しいものを代わりに請求出来たものの代償がデカイ。

マネージャー、サブマネという架空のポジションに収まらせたはいいが幼馴染枠から出てこない女に日々苛々している。

自分なりに押したり引いたりと日々遣り繰りしているのに変化のなさ。

相手が幼馴染という肩書きのせいで。

ただの男女ならばとっくに結婚していたレベルだ。

それくらいアプローチしている。

 

俳優として忙しくなったので仕事とプライベートを両立させる為に座らせた肩書き。

事務所独立を盾に無理矢理ねじ込んだ。

 

「囲い混んでやる」

 

男の意地悪は好きな子をいじめたいという単純な原理によって行われている。

それを本人が知ったとして納得することはないだろう。

 

 

男が撮影から帰ってきたので帰り仕度。

セキュリティの問題と家賃の問題で同居している高級マンション。

そこへ帰ってくるとドッと疲れたが襲う。

芸能の世界はどこか異次元に思えて今だ慣れない。

ドアをふらふらと潜ると待てと言われて振り向く。

 

「台本読みするって言っただろ。まだ横になるな」

 

「そ、そうでした」

 

台本の練習台になるという役目。

サブマネに課せられるもの。

疲れた体を伸ばしてパジャマに着替えてリビングへ。

待っているのは緩いスウェットを来た俳優。

芸能人オーラが消えないって凄いなー。

男はそこに立てと言い台本を手に真剣な顔で始める。

どうやら恋愛ものらしい。

 

「今からすることに逃げるな」

 

「う、うん」

 

お金欲しいし、まぁいっか。

痛いことをされないのなら付き合う。

 

――グッ

 

(な、な、なにっ)

 

急に距離を詰めてきた。

腰が後ろに自然と引けてしまう。

 

「逃げんな」

 

「なにを、しようとっ」

 

「濡れ場だ」

 

「っ、はい!?」

 

唐突な展開に嫌な予感をビンビン受け取る。

卑猥な現場に変動したのに目をぱちくりさせた。

どうしてそうなる!

叫びたくなったが男の力強い目に本気でそのシチュエーションでやろうとしていると感じて喉につっかえる。

なんなんだこいつ、と悪態もつきたくなった。

 

「私、ここまでするなんて……」

 

「金はたっぷり支払ってるだろ」

 

「それとこれとは」

 

人をなんだと思ってるんだ。

そりゃ、ローは好きだけど。

でも、だからと言って安売りしたくない。

やめて、と震える。

 

「や、やりたくないです!」

 

「やりたくない?契約違反になるぞ」

 

「触ったら、訴えるからっ。ローのお母さんに言うんだから」

 

「……はァ」

 

いきなり溜め息を吐かれる。

香水も同時に鼻孔をなぞりドキッとした。

 

「こっちがため息つきたい気分ですけど」

 

「やっと名前呼んだな」

 

「ええ?」

 

「お前はおれが高校になった途端、気安い態度が敬語になっていっただろ」

 

「そ、それ、は」

 

心当たりが有りすぎてキョドる。

敬語になったのはローが好きな女子に目をつけられないようにするための世渡り術。

そういうところわからないんだよね、この人は。

分かって欲しい。

んでもって静かに暮らしたかったことを考えてくれ。

ローは真意を探るかのようにジーッと見つめてくる。

 

「私の勝手な独りよがりというか」

 

「へェ、おれはそんなもんに苛つかせられたってのか」

 

なにが苛つかせたのだ。

苛つく前に女子の嫉妬にストレスでハゲそうになった私にとってはそんなもの苛つくことではない。

同じ目にあえばいいのに。

 

(なんなの)

 

高校生の時の恨みを言いにこんなマネをしたのかと恨めしくなる。

 

「私がそんなに嫌いならサブマネなんて遠回りに嫌がらせせずに突き放せば良かったのに」

 

ぽつ、と言えばローは目をカッと開けて低い唸りを「ああ?」と言葉にする。

流石に尾を踏んだのだろうかと戦く。

 

「嫌いって……お前」

 

今度は怒りから呆れに顔色が変わる。

 

「女として第五感覚が壊れてるな」

 

(んなっ!?)

 

こっちの台詞だ!

女子の熱視線を無視して人間関係を観察出来ないニブチンに言われたくない。

サブマネにした癖に他のモデル達の黄色い声には一切無視して颯爽と歩き出した後の寒々強い凍り付いた空気など知る由もないのだろう。

男はさて、と雰囲気を切り替えてまた覆い被さる様に壁に手をつく。

手をつかれたということは後ろが壁ということ。

 

「は!?」

 

「あ?」

 

「いやいやいや!なんで迫ってきてるんですか??」

 

「濡れ場の再現だっつってんだろ」

 

まだ続いてるのか、と悲鳴を上げた。

無理無理、と首を振るが肩を掴まれて手の強さにギクリとなる。

真剣な眼差しに時が止まったような気がして、心臓も爆音。

痛いくらい。

少しずつ距離が縮まり唇に弾力が――。

 

「……」

 

無言で私のものは奪われた。

あんなに色々言っていたのに静かに終わる。

緩く目を開けたリーシャの視界にローが居た。

夢に思えるようなことでも現実だ。

寂しさと驚きと冷静さがあって、複雑としか言えない状態にある。

 

「ずっとおれの隣に居ろ」

 

随分とかわいい台詞に目をぱちぱちさせた。

 

 

 

「私を束縛したいくらい気にくわないのなら口で言ってくれれば良いのに」

 

彼女は本気でそう告げてローはイイ雰囲気の空間にヒビが入る音を聞いた。

 

「……お前の、そういう、ところが、嫌いだ!」

 

「ええ!?」

 

情緒不安定な男に叫ぶ彼女に男はふてくされるしかなかった。

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