短編集(夢小説)   作:苺のタルトですが

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社畜として参戦したらボロ負けしたので、今度は奴隷となって生存競争を生き抜きます。ボス側ルートを進むローと強かに行き永らえたい


アプリコット

意識を失う前、上司に濡れ衣を着せられて更に上からの命令で左遷させられたあと、次の人生では絶対に権力が上には媚を売って生きようと力なく笑った。

 

その思いを最後に次の日、目を覚ますと部屋のベッドの上ではない草むらの真上に寝転がっていた。

 

汚い!虫が居るのに!

 

そう悲鳴を上げて慌てて起き上がると見慣れた服と共に、木に生い茂られた様子に周りを見渡し何分も混乱で立ち往生。

 

ハッと気付けばこれでは餓死も寸前なのではと迂闊に動いてはいけないという本来の常識になど構うものかと歩く。

 

宛もなくさ迷う中、海岸に着いた。

 

誰もいる気配は当然ない。

 

って、いた。

 

死んでるけど、居た。

 

恐る恐る近付くと子供であった。

 

うわぁ、と嫌な気持ちで一寸の望みをかけてひっくり返していく。

 

「ぐ!ガホッ」

 

びっくり。

 

生きてるとずりずり引きずっていけば海からは離れられた。

 

海なのか?

 

湖なのか?

 

そんなことは今はどうでも良く、頼りになる筈の子に目を輝かせる。

 

この子に粘着していけば生きていられるかも。

 

子供になにを期待するのだと思うが、一人よりも二人の方がよっぽどマシだ。

 

島で生活なんて一人で出来るかってんだ。

 

「良かった!生きてる!?」

 

声をかけて何度か揺する。

 

「ぐぅ!揺らすな!」

 

目を開き、まだ本調子でなさげな子供。

 

「起きて!ここはどこ!?」

 

「っ、知るか!」

 

知らないんですって。

 

「貴方は誰!?」

 

「いいから離せ!離れろ!」

 

常に怒鳴る子は、寄生するためにここであったので離れん。

 

一抹の望み。

 

「少し離れたら話してくれるかな?」

 

「早くどっか行け」

 

言われたので取り敢えず離れた。

 

「チッ、落ちたのか」

 

離れて20分という体感を得て、再び。

 

「ねぇ、お姉さんに教えて欲しいの」

 

「……なんだ」

 

さっきから思ってたけど大分柄悪くないか?

 

「君はいくつ?」

 

「教える義理はねェ」

 

「命の母なのに?あと、迎えとかくるのなら一緒に居て欲しいな?」

 

「強かよ。というかお前はなんでこんな無人島に居る?」

 

「海と星と月を合わせるよりも深い理由があ」

 

「聞いてねェよ」

 

聞いただろ!?

 

今、なんでこんなところにって!

 

「簡単にいうと私、ここに居る理由はちょっとわからないの」

 

「へェ」

 

一切の興味の無さに頑張ってかじりつく。

 

私に興味をもってくれ。

 

「リーシャって呼んで。この島で多分二人目の人類」

 

「多分ってなんだよ」

 

そうやって話をしていると男の子が急に立ち上がって木が生い茂る所へ。

 

危ないなと手を引く。

 

獣が居たら食われるぞと丁寧に教えた。

 

しかし、睨み付けられて終わりそのまま無防備に入っていく。

 

生存が危ぶまれるので付いていく。

 

死なせるわけにはいかないんで。

 

彼が向かうとそこにはなにもない。

 

ただひたすらの木、のみ。

 

さ迷っているようで足取りは迷いがない。

 

やがて、一つの木の前に立ち、彼は体と似ても似つかないジャンプ力で木へ一気に登る。

 

(えっ。なにそれ)

 

そんな人類探してもないなんだが。

 

ショックを受けていると男の子がシュタッと降りてきて、その手に果物らしきなにかが握られていた。

 

見えない距離が見えたのだ。

 

鳥肌が立つ。

 

しかし、必要な戦力なのだろう。

 

ジャリジャリ食べている彼をぼんやり見ていると、その背後から身の毛のよだつ唸り声。

 

―グルルルル

 

獲物を狙ったときの捕食者の息だ。

 

牙の剥き出した獣。

 

真後ろに居る。

 

彼が振り向くと同時にリーシャは彼の手を取ってがむしゃらに入る。

 

「ふえええええええええ!!!」

 

怖いときは声など出ないと思っていたが、やけくそになると出るらしい。

 

諦めていた。

 

あんな、人間は到底叶わない脚力を持っていそうな筋肉がついた足を持つ獣など。

 

追い付かれて食われる。

 

「なせ!はなせっ」

 

変な言語が聞こえるけど、聞き取れない。

 

走ることに命をかけていた。

 

海のところに来ても道がない。

 

 

 

木がなくなると段々失速していく。

 

砂浜で足を取られているせいだ。

 

「聞け!」

 

それと同時に手を振り払われてリーシャだけ海に放り込まれた。

 

どぽーんと。

 

海で足掻いて溺れかけて、足が着くことを知り、体を張って海を出ると男の子が獣の顔に攻撃を入れ、獣が伏したのを目撃。

 

漫画みたいなバトルみたいな。

 

ドォン、と落下音と共に獣は動かなくなる。

 

気絶しているのだと思う。

 

海から上がれば彼はこちらを見ずに獣を海へ持っていき沈める。

 

あ、今日のご飯だ。

 

突然のショッキング映像にひた、と木の中へ入る。

 

ご飯には火だな。

 

そして、きっと自分は会社の左遷という世界の裏切りと獣のクッキングにより一つ成長したのだと他人事のように評価した。

 

木の枯れ枝を拾い集めて海岸へ戻れば解体ショーが始まって、彼の前にたどり着くこともなく5分もの気絶という未知の世界に没入した。

 

急成長には無理があったらしい。

 

目が覚めるとパチパチという人工的な音。

 

横を見て、暖かさに文明の火だと知る。

 

更にその奥には男の子が鎮座して海を眺めていた。

 

火の傍には大量の肉。

 

白目を向きそうになったが相手がこちらを向いてギリギリ免れる。

 

木の枝に獣の皮とか見てないです。

 

「手間をかけさせるな」

 

「手前?」

 

手間などかけさせたか、と思っていると、火が確かに近い。

 

傍で作ってくれたのかな。

 

「あ、ありがとう!お姉さん嬉しくて泣きそう!ちゅーしてあげる!」

 

絶対にやらないけど、相手は子供だからやってやる。

 

「いらん」

 

拒否された。

 

「お姉さんのキスには100円の価値があるんだよ?」

 

「円?100ベリーだろそこは」

 

「ベリー?」

 

噛み合わない会話、でも気にしない。

 

ここは無人島だからなんでもありだ。

 

国際的な会話でも、普通に言葉が通じていても。

 

明らかに同種の存在でないとしても。

 

「それ、より!」

 

「あ?」

 

「その、お肉……少しだけ」

 

「やらん」

 

「お願い!お姉さんボクの奴隷になるから!」

 

決めたんだ、権力にすり寄ると!

 

「奴隷、だ?」

 

「奴隷、いらないかなぁ?」

 

彼は少し黙ると静かにお肉を抜いて己だけで食べ始めた。

 

うー、と恨めしく見ていると相手はため息を吐いて仕方ないな、やれやれな態度で棒付きのお肉を差し出す。

 

「わ!ありがとう!権力って最高!」

 

「なに叫んでんだ」

 

睨み付けて言われた。

 

お腹がいっぱいになると眠気も来たので彼をよっこいせと引き寄せる。

 

「おい!」

 

「あ、二人でお昼寝するの」

 

「近寄るな」

 

「なぜ?あなたも一人なんでしょ」

 

「おれは仲間が居る」

 

「でも、ここ無人島……」

 

「迎えに来る」

 

ええ、と可哀想になる。

 

そんな非現実なことを言われてる。

 

誰かに言い聞かせられたんだなと。

 

「それに、この顔、なんとも思わないのか!?」

 

確かに子供の顔は白いところがあって、不思議。

 

え?どこかのなんとかの伝統的なタトゥーでしょと勝手に思っていた。

 

「いきなりタトゥーについて言われても……お姉さんタトゥーとか知らないしなぁ」

 

必殺、よく分からないからごまかす。

 

タトゥーについて意見を求められても現代人にはさっぱりなので。

 

「タトゥー?もしかして知らねェのか?」

 

再三確認されて首をかしげる。

 

この地域はそういうのが常識なのかもしれない。

 

偏見とかに苦しんでる系かな。

 

「よしよし。お姉さんはなんにも知らないから安心してね」

 

気分良く褒めた。

 

しかし、寝ることには絶対嫌がったので、諦めた。

 

その夜に残りの肉もお腹に納め、夜も果物を分けてくれた。

 

やった、貰えた。

 

やはり媚は売るのが正解だな。

 

たわいのない会話をしていると、ここが国際的なものではなく異世界ではないかという可能性も視野に入れ始めた。

 

言葉が通じるのが違和感なのだ。

 

言葉が通じるのに一向に住んでいた国の名前も出てこないなんて変でないか?

 

同郷であってもなくても、何々の国の方ですかとか手始めに聞くと思うんだが。

 

リーシャが呑気過ぎるのかなと悩ませた。

 

お昼寝をしていると足の爪先で蹴られて起こされる。

 

こら、年上だぞ。

 

あと、命を助けたのにぞんざいだ。

 

「迎えが来た」

 

「ん?ああ……妄想だよ、それはあああ!?」

 

上を見上げながら叫んだ。

 

フラミンゴの船がある!

 

なんだこれと混乱しているとジャリジャリという金属音。

 

──ガシャッ!

 

「んわ!?」

 

首に鈍痛が走り、よろりと尻餅を着く。

 

「な、なに?」

 

彼は鎖を持っていて、それが首に嵌め込まれたのだとまだ知らない女に太陽はただ照らすだけ。

 

子供の笑みではない歪んだ嗤いを口元に浮かべた少年はこちらを見下ろすと宣言する。

 

 

 

 

 

「まだ名乗ってなかったな。おれはトラファルガー・ロー。お前の主になるから覚えておけ、奴隷」

 

 

 

***

 

 

 

取り敢えず整理しよう。

 

どうも、本日奴隷になったリーシャである。

 

いや、奴隷にっていうのは比喩であって、本物の首にリングつけた奴隷にとか本当に想像してなかった。

 

こきつかってくれて構いませんという意味だったんだが、手違いであった。

 

しかし、こういう奴隷が普通ならば、甘んじてなるよ。

 

どうやら生きていけないみたいだし。

 

仮に無人島生活しても生きられなかったのは確実だ。

 

衣食住があるのなら良いや!

 

なんかもう無人島の時点、いや、左遷の時点で人生終わってたようなもんだ。

 

歩けと言われて素直に歩く。

 

言うこと聞くのかよと言った本人、トラファルガー・ローが突っ込む。

 

「楽観的に見ると割りと現実的な現実」

 

「ドフィに見せるから黙っとけ。でないと死ぬぞ」

 

「死ぬのっ?」

 

無人島で生きたのになんて意味のない。

 

嫌だ、生きる!

 

口を閉じていると静かに船へ。

 

上へ上がると男も女も居た。

 

女というか、女の子。

 

「おいおい、ロー。連れていきたい動物ってそれか?」

 

動物って!

 

まさかの家畜!

 

鎖用意したんだから家畜扱いは妥当である。

 

「そうだ。ハンティングした。おれの奴隷」

 

「ガキが奴隷なんて生意気だぞ」

 

誰かが野次を飛ばす。

 

すると、前へやって来る一際異彩を放つ男。

 

金髪サングラス。

 

もやっと心が記憶に反応したがわからなくて無視。

 

「フフ!ロー、運の良いやつだ。それに、新しい奴隷とはな。お前にはおれが直々に選んでプレゼントしてやろうと思ってたんだがな。お前が欲しいのなら尊重してやるよ」

 

奴隷をプレゼント……。

 

随分と倫理観底辺なこと言ってんな。

 

悟った瞳で黙って鑑賞していると今日は休めとか彼に声をかけて自室へと戻る。

 

船に自室とかなんなんだ?

 

金持ちか?

 

「もう少し早く行け」

 

「無人島生活で足がふらふらしてて歩きにくいのよ」

 

「自室はそこだ」

 

連れられて入るとさっぱりしているが一部本を積み上げられていた。

 

「部屋だ」

 

「部屋だろ」

 

当然のことをと思っているのが良く分かる。

 

いや、船に部屋とか普通にない。

 

ローは鎖を離すと風呂に入れと言う。

 

確かに臭いだろうね。

 

「いいや、ロー様が入りなさい」

 

様つけし、奴隷感出してみた。

 

「普通に呼べ。入れといったら入れ」

 

グイッと鎖を引かれて無理矢理進められ、扉が閉まる。

 

ここはさっさと入って譲るかなとぽぽぽんと脱衣して風呂へ直行。

 

シャワーのみで済ませ速攻で終わらせる。

 

脱衣場へ行くと服が用意してある。

 

普通の服、でなくひらひら透け透けなものであーなるほどー、と着た。

 

我は奴隷なり。

 

扉を開けるとローは机へ座って服も上だけ脱いでいた。

 

こちらの音に向けば、相手は「ああ?」と不機嫌に唸る。

 

「なんだそのふざけた服は!?」

 

「え?脱衣場にあったから着たよ」

 

「ジョーラ!あの野郎!」

 

どうやらローの希望ではなかったようだ。

 

でもセクシーで良い。

 

あと、風呂場で見て悲鳴をあげかけたのが、年齢が若くなっている。

 

少なくとも目が覚める前よりは。

 

はっきり変わっている訳ではないが、どこか幼さが微かに残っていて驚いた。

 

微妙に若返って驚きで顎も開いた。

 

というわけで、異世界説採用!!

 

 

 

新人奴隷でございます。

 

船での生活にまだ慣れない中、鎖ありきの生活は結構暇である。

 

基本、動かず部屋でボーッとしているから。

 

やることと言えばローの服をきちんと畳んだり本を整理したりベッドを整えたり。

 

ご飯も三食。

 

寝るところも床だけど毛布あるし。

 

畳経験のある前では全く問題なしであった。

 

暇すぎてローの本を見たけど速攻で閉じた。

 

わけわかんない。

 

だから、ローのところへお願いをする。

 

「断る」

 

「本当に暇で暇で……お願い」

 

風呂でローの体を洗わせてくれと。

 

普通、奴隷ってそんな使い方でしょ。

 

断るとかそっちの方がさっぱり。

 

背中だけ、と粘っていく。

 

「背中、だけだぞ!破ったら殺す」

 

疲れた顔で了承してもらえた。

 

これからも粘り戦法でいこう。

 

破ったらダメらしいので背中だけ、だ。

 

頑張って背中から汚れを取ろう。

 

無人島て戦った男の子の背中。

 

小さいからつるぺただった。

 

そして、ここにも白いものが。

 

体にも刻んでいると言うのかと驚いた。

 

背中を洗いながらこんなところにもあるんだね、彫った時いたくなかったのと聞いた。

 

しかし、彼は無言で答えない。

 

答えたくないなら黙っているのが彼の性格らしい。

 

なんとなく把握しはじめ、関係なく喋ることにした。

 

生き残るのなら喉をカラカラにさせるぞ。

 

しかし、耐えきれなかったのか睨まれた。

 

「うるさい」

 

うるさいって言われた。

 

しかし、子供の台詞故に全く堪えない。

 

それどころか可愛いな。

 

寧ろ、なんだか前よりも良く話をしてくれるようになった気が。

 

洗い終えて出ていくのを見送り、自身もシャワーを浴びる。

 

そろそろバスボムが欲しい。

 

無臭は寂しいのだ。

 

部屋にあった雑誌、ローのではなさそう。

 

誰かの私物なのかなと手に取ると服を特集していた。

 

このヒラヒラアラビアンな服も良いけれど、メイド服や中華の服も来てみたい。

 

それに、この体、現代よりもスタイルが心なしか良いような気がするのだ。

 

勘違いなら悲しくて悲しくてヤバイけど。

 

服を眺めていると外からローが帰ってきた。

 

ドライヤーで乾かさないかと聞いたのだが、聞いてくれない。

 

奴隷の言うことは聞かないってか。

 

「乾かしなさい、ね?」

 

と言いながら力強く彼を無理矢理椅子に着席させた。

 

やめろと怒られても止めない。

 

お尻まで完全に座らせてドライヤーで乾かせていく。

 

ブオオオォ、と音を鳴らし風を送る。

 

短い髪の毛なのですぐに終わる。

 

次は自分の番だなとローを立ち上がらせてブラシを手にサッと髪の毛を透く。

 

その間ローが鏡の中でジッと見てくる。

 

睨んでいないので見ているだけ。

 

どうしたのかと思っても今は乾かしている最中なので、話さない。

 

終わってもそこにいた。

 

「どうしたの」

 

「おれのこれはタトゥーなんかじゃない」

 

「そう?」

 

例えなんでも関係ない。

 

ドフィことドフラミンゴ達もローを敬遠してないのだから、問題はなさそうだが。

 

首を傾げていると彼はギリッと奥歯を噛む。

 

「命を蝕む悪魔だ」

 

それはなんとも変わった言い回しだ。

 

悪魔だ、命を取る。

 

ドライヤーを横に置いてローを覗き込む。

 

彼は顔や白いところを見られるのを嫌がる。

 

「奴隷はやめないから関係ないわ」

 

どんな姿だろうと、可愛い彼に愛想はついてないし、つく予定もない。

 

にこやかに笑ってソッと抱き寄せた。

 

初めてされたのか、直ぐに離れたのだが至極驚いていた。

 

「ローは私の小さな悪魔さん。貴方が悪魔というのなら私は悪魔の奴隷として、丁度良い配置ね」

 

彼はそんなことを言われると思いもしなかったという顔でキュウッと眉を寄せてフイッと顔を背けた。

 

「前々から思っていたけど、お前、おれと年齢が大差ないのに年下扱いしてるぞ」

 

本当に年下なもんで。

 

どって、もうちょっと肉体的に年上だったのに、異世界クオリティで変身されている。

 

どう見繕っても年が近い扱いは難しい。

 

でも、ローが嫌なら控えめが良かろう。

 

「ほら、もうすぐ幹部会議でしょ?」

 

時間も迫っていると告げればこちらをちらちらみながら外へ出る。

 

鎖は外されていて、ローが出歩く時くらいでしか扱われない。

 

大分恵まれている。

 

出ていく姿を見送ってそれから暇暇で時間をもて余していると帰ってきた。

 

内容はもう少しで島に着くので用意をしろとのこと。

 

「私は服が欲しい」

 

「確かにその服だけだな」

 

思い出してくれてなによりで。

 

しかも、同じような系統のものを頼む。

 

「恥じらいと言うものを持て!」

 

怒られた。

 

こういうの父親の台詞にありそう。

 

しかし、怒られたとて結構好きな服なので欲しいものは欲しい。

 

お願いと手を組んで膝を着く。

 

奴隷の懇願ポーズ。

 

死角はない。

 

しかし、鋼の精神を持っている彼にはなかなか通じない。

 

ダメだと顔をしかめて言われた。

 

そんなぁー。

 

そこをなんとかと頼んだけど頷くことはなかった。

 

結構そこは厳格なんだな。

 

というか、この船がなんの船なのかまだ知らないのだよ。

 

「ローは、島に着くまでなにしてるの?」

 

「医学書を読む」

 

「ああ。頭が過熱するそれね」

 

感想を述べるとそれはお前だけだと言われる。

 

お茶目だろう、それは。

 

それに、医学書を読みたい一般人は少数だと勝手に思っている。

 

家庭のほにゃららなら読めるんだけど。

 

「ほら、これを食え」

 

施しきた。

 

おやつの一つらしい。

 

桃色の果物を差し出されてかぶり付く。

 

美味しいと笑って味わう。

 

 

 

奴隷が奴隷らしくなく、自由に部屋で寛いでいる。

 

ローは船にて宛がわれている自室で頬杖をついて眺めていた。

 

今なんてのほほんと刺繍をしている。

 

暇だと余りにも言うので、町に行ったときのついでに購入をした。

 

確かに暇そうなので、これで静かにするだろうという経緯。

 

それを見ているとどうやら猫を刺繍していると予想。

 

「あ、そういえば服ってどうなっているのかしら」

 

「一応見繕ってきた」

 

袋から出して放り投げる。

 

それをキャッチしたら静静と見つめて、おお、と声を出す。

 

一々声にだし、感情に裏表がないので分かりやすい。

 

「ありがとう!」

 

笑顔で受けて奴隷に服をやるのは義務だからなと教えておく。

 

体調を崩されて死んでも無駄であるから阻止しなくては。

 

少年は管理を徹底することを決める。

 

本来そういうことを目的として本を読んでいるのだ。

 

丁度良かったとも言えた。

 

 

 

リーシャは服を受けとると着替える場所でフォームチェンジ。

 

来たら分かる、無地だった。

 

着なくても既に見えていた。

 

やっぱり買ってはもらえなかったかー、とわかっていた結果に満足した。

 

本当に買ってきたらそれは特別なプレゼントの日くらいだ。

 

ローに見せにいけば特に鑑賞もせず全くの無反応だった。

 

それはそれで悲しいので、まとわりつく。

 

うざいと引き剥がされたが慣れた。

 

人間は慣れる生き物だ。

 

そして、その反応も可愛いと思う。

 

「似合うって言って欲しいなー」

 

「言わなくてもなにかが変わるわけねェだろ」

 

「私のこころがぴょんぴょんするわ」

 

「は?ぴょんぴょん?」

 

これは現代の言葉なので伝わらず。

 

暫く無地の服で動いて再び刺繍に戻る。

 

今、刺繍がブームなのだ。

 

なにを縫っているのかというと犬を縫っている。

 

結構上手く出来た。

 

特に顔の部分。

 

そんな感じで時間を過ごしているとローが知らぬまに居なくなっていた。

 

訓練にでも行ったのだろう。

 

なにをそんなに急いでいるのか今でも知らない。

 

そして、帰ってくるとどこか具合が悪そうで息が荒いことに気付く。

 

どうしたのだと聞いても触るなと拒絶される。

 

心配であとをついていき、部屋から閉め出されそうだったので無理矢理押し入る。

 

悪化して朝を迎えるだろうと予測して無理をしないように見張るのだ。

 

直ぐに薬を飲んだローは風邪を引いているらしい。

 

ベッドに潜り込みあっという間に寝入るのを見て、そっとおでこを触り、高熱だと知る。

 

氷水が必要かなと鎖骨付近の首も触る。

 

「ん?」

 

鎖骨のところに手が触れた時、淡く光った。

 

そして、手の甲に回復中と黒文字で現れる。

 

「ファンタジー!?」

 

驚きすぎて手を鎖骨から引く。

 

すると回復中の文字も消えていき、淡い光も消える。

 

思い浮かぶのは魔法に有りがちな手当てのシーン。

 

ああいうのは手をかざして癒している。

 

カルチャーには通じているのだ。

 

しかし、今のところ魔法と言える要素など、この船の人達の忍耐力とか戦闘面で、誰も回復などしていない。

 

小説でいう、秘密の能力なのではと小説を読んできた経験でピンと来る。

 

「秘密にするのよ」

 

直ぐ様心に誓う。

 

ばれたらどうなるか分からないのだ。

 

異世界感の第2弾があったとは。

 

若返っただけなんていう都合の良いことだけではなかったのだ。

 

異世界を甘く見てしまったなと反省。

 

特典くらい異世界ならついていても可笑しくない。

 

「風邪を治さないと」

 

取り敢えず能力を見つけたので、回復などできるのなら彼で試した方が早い。

 

そっと恐る恐る手を触れると鎖骨でやはり光る。

 

鎖骨でしか光らない。

 

動脈に近いからかなと首を傾げた。

 

続行し、回復の文字が点滅し始めて手を離す。

 

結構体がダルくなり、ローの横で倒れて疲れに息を吐く。

 

これって結構制限があるな。

 

使うと体力を取られるってことか。

 

一度しか使ってないので要検証だ。

 

なぜか、芽生えた能力に興奮さめやらぬって感じ。

 

この異世界で若返ったのなら不思議な能力があっても可笑しくないし、あった方が生きれる確率もぐんと上がる。

 

万々歳よ。

 

「ん」

 

寝返りを打つ子に布団を掛けなおす。

 

熱はまだ少しあるけど辛そうなのはなくなったみたいだ。

 

この白い顔になにかあるのだろうか。

 

彼の言動でピンときた。

 

体が弱いと察し、行き急いでいるなと不思議になる。

 

なにか本人だけに分かる真実でもあるのやも。

 

でも、聞き出す権利はないので聞かない。

 

起こさないようにベッドから離れて刺繍を再開する。

 

念のために風邪が悪化するかもしれないので近くに待機しておく。

 

回復中という言葉通りかも今は分からないのだ。

 

 

 

翌朝、普通に起きて元気そうにしていた。

 

どうやらまじないは良く効いたみたい。

 

風邪が収まって良かったと見ていれば訓練に向かう。

 

翌日にまで訓練をするなんて、休めば良いのにと眉を下げた。

 

そんなに訓練したいわけだ。

 

引きとめられるような理由も思い浮かばずに寝た。

 

看病でちゃんと寝られていないのでねむい。

 

「んー」

 

ローのベッドを借りることにした。

 

近くにあったというだけだけどさ。

 

寝入るとすやぁ、と即夢の中へ。

 

「起きろ」

 

言葉だけで起こされてゆるゆる目を開ける。

 

開けると見えたのは綺麗な可愛い目。

 

無人島にいた頃も優しい目をしていたけど。

 

「昼飯だ」

 

くりくりしていていつでも見たくなる。

 

ス、と差しだ出されるとハンバーグがあった。

 

好きなメニューだな。

 

「美味しそう」

 

「温かいうちにさっさと食え」

 

言葉はキツいけど、暖かみがあるんだよね。

 

だから、どんどんその優しさに癒される。

 

嬉しくなってにこにこする。

 

なに笑っているんだと言われるが、優しいからとこぼす。

 

ふざけるな、早く食べろと催促されて照れ隠しだともろわかりだ。

 

にまにまと今も頬をとろけさせているとローは向こうへ行ってしまう。

 

おっとっと。

 

うっかり顔が崩れてしまったままだったからローが怒ってしまったのだ。

 

ローを見たあと、元の真顔に戻って昼飯をいたただく。

 

いつも熱々のご飯を持ってきてくれるその優しさにいただきます。

 

ゆっくり味わって食べ終わる頃にタイミング良く彼は戻ってきた。

 

毎回ちょうど良くくるのはなにか秘密があるかも。

 

「あ、ごちそうさま。とても美味だったわ」

 

「コラソンがこっちを見てた」

 

矢継ぎ早に言いたいことを言う。

 

コラソンというのはこども嫌いの言葉を無くした男だ。

 

ドフラミンゴの弟だというが、なにを考えているのかリーシャにはさっぱりわからん。

 

しかし、見ていたと言うのならばまたローを苛めるかもしれない。

 

「今日は部屋に籠っていた方が良いわね」

 

「なにかされるかもしれない」

 

「まぁ、平気よ」

 

ローのコラソンの態度は嫌っているようにみえない。

 

一種の距離を持っている。

 

怖いと言うか気味が悪いとローは良く言っている。

 

その日、コラソンとの訓練でこっぴどくやられたらしく、打撲の痛みに呻いていた。

 

であるから、ローが寝たあとに回復を試みる。風邪のときよりも体力をごっそり取られてリーシャが寝込んでしまった。

 

加減を覚えねばなと息を何度も吐いた。

 

ローは起きると呻いていた痛みが引いたことを不思議に思っていたが、それよりも奴隷が寝込んでいたことに気を取られて気にしなくなっていた。

 

看病をして付いていたが、訓練はかかさないので部屋を出ていく。

 

治癒には代償がつくのだと良く分かった。

 

昼になってまだ寝込んでいたのでローは医学書を読み、どの病かを突き止めようとしたが要として知れない。

 

病でなくただの体力を根こそぎ持っていかれたのだから全く関連もない。

 

どんなに調べても分からないだろうと沈黙。

 

能力はローに言わないと決めている。

 

知らない方がやりやすい。

 

「水をここに置いておく」

 

体がダルいので助かる。

 

そして、ローを治して寝込むこともなく調整出来るまで一年をようした。

 

軽い怪我から大変な怪我まで色々経験した。

 

そして、リーシャのことを病弱と判断したローはこちらにも訓練に参加するように求め、その求めに応じる。

 

強くなった方が生存率が高い。

 

納得の上でやる。

 

「はぁっ」

 

正拳つきというやつもやった。

 

これで強くなるのかは疑問だったけど。

 

ロー的には軽い運動のつもりなのだろう。

 

自分は強くなりたいなと思っていたので軽い運動を越えて日々、続けられる程度にはやった。

 

誰かとやるので結構続けられる。

 

そうして、月日も経つ。

 

ローは淡々ともうすぐ寿命だなと言う。

 

彼は痛みや寝込むことが多くなったのでなんとなくそうではないかと思っていた。

 

回復で痛みを取り除いていたのだが、上手くいかない。

 

「ほら、もう寝たらどう?」

 

今日も回復をするつもりで彼に声をかける。

 

「寝ない。時間がない。もっと壊したいから寝ない」

 

破滅願望と破壊衝動を抱えているな。

 

死期が近付いても尚、衰えないらしい。

 

「ドフラミンゴさんはなにも言ってないの?」

 

「意味深なことは言ってた」

 

「意味深な?病気が治るとか?」

 

知らない、と明け透けに言われ断念。

 

それからまた数日、ドフラミンゴが船の全員を集めてローに食べてもらう悪魔の実というなにそれという感じのものを取りに行くという。

 

ローも寝耳に水だったのかぽかんとしている。

 

「ドフラミンゴ!おれは死ぬ。無駄なことだ」

 

「フフフ。ロー、お前が食うのはオペオペの実……!お前の病気なんてたちどころに治しちまう!」

 

「は!?」

 

ローの驚愕に満ちた顔にドフラミンゴは気を良くする。

 

 

 

ドフラミンゴの宣言通り、他の海賊達との取引で使う島に行く。

 

そして、やっぱり海賊だったのかこの船。

 

ローに話題としてそれを告げるとアホを見る目で見られた。

 

今更なにを言っているんだと。

 

そんなことを言われても。

 

オペオペの実のある島に到着するとローは体調を崩した。

 

吹雪が吹き荒れる中、ローをつれていけないと判断されて留守番。

 

そして、コラソンがその間に接触してきた。

 

「このままだとローは兄上のために死ぬことになる」

 

話せたことには驚いたけれど、ドフラミンゴのローへの執着に納得した。

 

体の良い腹心で己のを生永させるための布石。

 

コラソンは他にもドフラミンゴを止めると言われてロー達に離れることを望む。

 

しかし、ローは今動けないのに。

 

「出来るだけ早く離れろ」

 

「……死ぬの?」

 

「相討ちに出来れば良いんだがな」

 

「わかりました」

 

ここまで打ち明けた。

 

裏切りという真実を。

 

それを理解し、自身も今あるものを渡すことにした。

 

フォォン、と淡い光をコラソンの胸に。

 

回復の光だ。

 

「これは?」

 

「おまじないです」

 

全てを注いだ。

 

生き残れればローも脱却出来るかもしれない。

 

一応自分を中心に生きていたけど、生かしてくれたという思いくらいはあるのだ。

 

ローを今までボコボコにしていたのも海賊団をやめさせるためという理由。

 

この人とは全く関連もなくほぼ無関係でいたけど、もっと関われば良かったかもとほんの少しだけ思った。

 

ちょっと自分だけで生きるのにいっぱいだったもんで、余裕なぞなかったが。

 

彼はスッと音もなく出ていくと無事ていてくれと思った。

 

ドラマの中にいるようなふわふわした気持ちだったが、やがてローが起きてどうかしたのかと話しかけてきたけど誤魔化す。

 

彼はこういうところを知ると思い詰めるかもしれないので。

 

後々、しっかり言おうとは思うが、果たして信じてもらえるのか。

 

「ちょっとからだがダルいから休むわ」

 

「さっさと寝ろ。移すなよ」

 

はいはい、と丁寧に、かつ適当に返事をする。

 

こういうところ、奴隷と主の関係みたいではないなと苦笑。

 

その後、この船が海軍に追われているというので慌てて島から離れた。

 

そして、ローは悪魔の実とやらを食べた。

 

悪魔の実について無知なのでどうにもさっぱりである。

 

しかし、凄く不味そうに食べ終えた。

 

特に変化したところなんてなかった。

 

どういうことだろうと疑問符とともにコラソンが死亡したことを知らされて暫しショックを受けた。

 

ドフラミンゴはコラソンは裏切り者で悪魔の実を横取りしようとしたのでという説明だった。

 

それを真実か嘘かと思うのは今のところ明確な証拠もないので分からない。

 

しかし、ローはとてもびっくりしていて言われるままに信じてしまった。

 

ドフラミンゴのことをそんなに信用しているのだと、彼に全く関与していないのでそういう感情になることもない。

 

「本当に全て真実なの?」

 

その呟きを聞いていたとは知らずに窓を見ていた。

 

 

 

弟を殺したという事件があったのにドフラミンゴの方針は変わらなかった。

 

それはそうだ、元々計画していたのだから。

 

「モネと言う古株が先に潜入しているらしい」

 

ローは計画書を捲りこちらへ説明する。

 

自分はどうすれば良いんだと言うとついてくるんだよと言われた。

 

そんな地獄絵図に行きたいものか。

 

やだやだと駄々を捏ねた。

 

血みどろなんだろうから見たくない。

 

「御披露目なんだからお前も行くんだ」

 

「私奴隷だったよね?」

 

「おれの奴隷として披露するんだ」

 

「展示会の展示会みたいなのいる?」

 

「いる」

 

絶対強制参加。

 

着々となにかを起こす計画を進める面々。

 

訓練は続けているけど今のところ手応えはない。

 

「朗報だ。計画の日取りが決まった」

 

「ええ。来ないで欲しかった」

 

「言ってろ」

 

こちらの言葉など剣にもならんと一蹴。

 

流石海賊団唯一の奴隷持ちは違う。

 

「顔の白いのなくなったわね」

 

「それ何度目だよ」

 

「何度だって言うわ!嬉しいのだから」

 

死期がなくなったのだと聞いたので、嬉しくて本人に言う。

 

しかし、彼は嬉しさよりも目先の計画に集中していて、そちらに意識が向いている。

 

「うーん、最近このお姉さんキャラ疲れてきたな」

 

「じゃあするなよっ!」

 

年上としての威厳がないと残るもんとかないし、ね。

 

ローから突っ込まれたのはある意味親睦も深まったのだろう。

 

というか、リーシャはまだコラソンが死亡したという事実を引きずっているのに計画とかどうでも良い。

 

「計画は確実に行われる。寝坊するなよ」

 

それはしろってころでオッケー?

 

「す、る、な」

 

念押しで一言ずつ。

 

ローはコラソンがいなくなってもの足りなさそうな顔をしていたが、計画の日になるとそうも感じてはいられないらしい。

 

 

 

その日、一つの国で王が国民を襲い始めて、人々はなぜと泣き叫びやめてくれと乞う。

 

しかし、その刃は一人残らず逃がさんと言わんばかりに止まらない。

 

そのとき、話題となっていた海賊団が国の危機に駆けつけ、暴虐の王とその配下達を退けた。

 

国民はその日から海賊団を英雄と呼び、船長を王と呼ぶ。

 

(なんか王族っぽい人が隣で捕まってるー!?)

 

火の手が上がる王宮の外から王城へと入るのはドフラミンゴ率いる部下達。

 

今日からここが住まいというのを全員が認識していた。

 

初耳なんですがそれは。

 

住むってなに?

 

聞いてないっての。

 

凄い惨劇が起きていて、でも、ロー達は平気な顔で新居に喜んでいる。

 

リーシャはローに鎖をつけられたデフォルト装備で鎖を持ちすたすたと周りを観察するローの後ろに歩いていた。

 

どこからどう見ても奴隷。

 

中へ入ると調度品は傷つけられていたが改築するので問題ないとのこと。

 

ローも道すがら兵士を倒していたりした。

 

こちらにやってくることはないがこれが初めての対人戦ではない。

 

でも、普通に怖い。

 

もう自分は順応するしかあるまいと遠い目をして騒動の音を聞いていた。

 

「あ」

 

刃が飛んできた。

 

すんでで避けたけど、チリッと痛みに腕を見ると赤くなっていた。

 

これくらいなら治癒で治そうと腕を触る。

 

「おい」

 

グッと鎖を引っ張られてつんのめる。

 

「ぐずぐずするな」

 

齢が更に上となったローは少年から青年へ変貌も遂げていた。

 

リーシャも実は周りの女と同様に成長し、胸も普通に成長し、なにかの病気ではないかとローに相談してバカを見る目で見られる日々を送っていた。

 

チート的なものを授からなかったから胸にチートが行き渡ったのかもれんぞ。

 

成長速度とたわわの具合が反則なのだが。

 

彼がドフラミンゴに呼ばれてトレーボルらと敵を一掃してこいと言われて向かっていく。

 

傍には人質の白雪っぽいシルエット。

 

いやだもう、なんで今悲劇に見回れている人といっしょくたにすんの!?

 

可笑しいぞほんと。

 

「貴方も捕まったの!?」

 

この国の人間だと思っているのか話しかけられた。

 

なにも言えん、すまん。

 

「ローの奴隷に話しかけたらローに睨まれるわよ?」

 

可愛いポシェットを散歩感覚でつけているベビー5が白雪らしき人に話しかけて注意を足す。

 

話しかけんでくれ、かける言葉が本気で見当たらない上に自身も良く分かってないから。

 

不幸具合で言えばそれも良く分からない。

 

ロー達と戦う人達や理不尽に晒されるもの達を見てきた。

 

であると、やはり猛者が世界を握るのだなとぼんやり思い至る。

 

ローも幹部達に鍛えられてこれだけしか経過してないのにかなり強くなったのではないか。

 

ドフラミンゴの右腕とするべく育てられたのだから他の面々よりも期待されている。

 

どうやらドフラミンゴに収集され、ちりばめられたらしいドフラミンゴの軍により兵士は駆逐されていっているらしい。

 

民間の人みたいな歓声がここまで聞こえてくる。

 

ヤバイよほんと。

 

悪役ルート開通の瞬間を目撃したみたいに思えてきた。

 

正義の側があったのなら正義が敗北だとメニュー画面に出ていそう。

 

それから、王宮に居た兵士達や王族達は彼らによって一掃され、新たなる王族とその英雄達だと国民に広く歓迎されていく。

 

ローはそんなことはどうでも良いらしく、こちらへ戻ってくるとリーシャの鎖を持ちこっちだと連れていかれる。

 

城の全貌を把握しているモネにより宛がわれた幹部の部屋の一つだとか。

 

やっぱり二人分の部屋になるのか。

 

そこは使用人部屋とか奴隷部屋とかになるかと。

 

分けられなかったのでそれはそれでこれからローが成長して大人になると部屋割りするのが面倒なような。

 

「私の寝室は別?」

 

「同じだ」

 

「同じ?それって良いのかしら」

 

「黙ってろ」

 

文句を言うなと言われた。

 

ローって単語で返答してくるな。

 

処理がまだ終わっていないので出るから勝手に出歩くなよと言われて素直に了解をする。

 

彼が出ていくのを確認するとピカピカで磨かれている壁を触る。

 

本当に人の営みがあったと生々しく、触るのをやめる。

 

今無遠慮に観察するのも外を見るのもやめておく。

 

そこまでメンタルは協力ではないのだ。

 

騒ぎが今だ冷めやらない中、彼は戻ってきた。

 

女一人を伴って。

 

「きゃあ」

 

──バシッ

 

床に打ち捨てるように放り出すローは無表情。

 

今まで己とて床に投げられる扱いをされたことなどなかったので驚く。

 

というか、誰だこの人は。

 

疑問符が頭上に浮かぶ答えは。

 

「こそこそ場内を歩いていた。きっとこの城のメイドだろ」

 

こそこそとは変なの。

 

今は王が乱心して国ごと混乱していた。

 

それなのに慌てず中を歩いていたと言うことは火事場泥棒としか思えまい。

 

「わ、私は!逃げようとしてだけでっ」

 

「その割りには出口とは真逆だったろ」

 

「自分の部屋に荷物を取りに行っててっ」

 

「そんなことはどうでも良い。ドフィに報告するのはめんどうだが……」

 

ローは能力を使いロープを出すと自称メイドを見事な縛りで放置する。

 

 

 

今はドフラミンゴの英雄劇場が行われているので安易に報告に行けないらしい。

 

ローがガチガチに縛っておいてポイッと部屋の隅に置くとドフラミンゴに言いにいくためにまた外へ。

 

その間、迷惑なことにメイドが話しかけてきた。

 

やけに馴れ馴れしくロープを解いてくれと言ってくる。

 

「お願い!」

 

勿論無視した。

 

見て分からんのか?

 

自分も奴隷で手枷つけてんだろ。

 

勝手に逃がしたらこちらがどうなるか分かってないから言えるのかとひたすら無視。

 

「主人公のところに行かないといけないのにっ」

 

やけにメタメタな発言だなと白目を向きそうになったが我慢。

 

確かにここは異世界だけどさ。

 

なんの世界かは知らないが、彼女は知っているのかな。

 

「主人公って?」

 

反応したことに喜んだ女はペラペラと話す。

 

「勿論!有名なルフィよ!」

 

どこかで聞いたような聞いてないような。

 

もし少年漫画ならば少女漫画派だったから知らない可能性が高く、言われてもピンと来ない。

 

「誰?」

 

「し、知らないの?」

 

信じられないと言う顔で見てくるけど、普通に知る筈がない。

 

「どうせドレスローザ編でボスも破滅するんだから、捕まっても良いんだけどね……でも、今からルフィに出会って幼なじみになるの!それで──を救出しなくちゃ」

 

彼女の言葉が今一分からないけど、妄想に囚われているのではないかと怖くなる。

 

「でも、可笑しいわ……」

 

女が怪訝になるとそこでドフラミンゴのに伝えに行ったローが帰ってきて女事ロープを引っ張る。

 

痛い痛いと叫び引きずられる女の後ろを着く。

 

今はローが片手を塞いでいるので自分一人でついてこいと言われた。

 

ついに放し飼いをし始めたようだ。

 

女が助けを求める顔になるがどうすることも出来ない。

 

だって奴隷だから。

 

色んな意味でロー達に逆らったらそれこそバッドエンド。

 

ムリムリ。

 

ローは王座がありそうな重々しい扉を開けてメイド女を床にまたポイ捨てする。

 

ベチャッと腹打ちして体勢を崩す捕虜はドフラミンゴという新たなる王の前にさらけ出された。

 

「いっつつつぅ」

 

痛みに呻く女をジィッと見つめる男。

 

その中でじれったくなったのか質問する側近。

 

「若の城でこそ泥の真似をしていたとはどういうつもりだ」

 

幹部の男。

 

「私はッ。ただ部屋に物を取りに行こうと」

 

「今すぐその部屋に連れていけ」

 

そう問うとグッと言葉を詰まらせる。

 

それは自白では!?

 

危ない橋渡りすぎだろオイ。

 

内心激しく脈動する心臓。

 

映画でのハラハラするシーンみたいだ。

 

自分のことのように錯覚してきた。

 

「連れていけないのか」

 

まだドフラミンゴは声を発していない。

 

発するのも無駄だと切り捨てているのやも。

 

「それは……。でも!」

 

「誰か欲しい奴はいるか」

 

ドフラミンゴが発したと思えば、競りのように始まる。

 

いや、事実、少人数の売買行為。

 

そういうのは自分がいないところでお願いします。

 

「おれは一人いるから間に合ってる」

 

ローが一抜けした。

 

そりゃ一人居るもんね。

 

二人目とかロー的には面倒なんだろな。

 

ここで手をあげたのはふわふわな服を着ることが多い幼女。

 

「若様。彼女が初日の人形になってもらうのはどう?」

 

「ひっ!」

 

幼女はブドウを食しながらなに食わぬ様子で提案する。

 

人形といえば、彼女がなにかをしているのを見たことがある。

 

人形を動かすのが好きな子なのだろうという印象しかない。

 

「いやっ!記憶から消されたくない!」

 

その発言の直後、ドフラミンゴの顔が愉快から無に変わった。

 

正直怖すぎて目を閉じた。

 

「なぜ、能力を知ってる?」

 

「あ……!」

 

彼女は絶望に身を震わせた。

 

こういうの、見たことある。

 

ラノベとかでその世界に行って、重要なことを先にペロッてしまうのとかで。

 

やらかしたっていうやつだ。

 

今ももしやそんな感じの場面であるのか。

 

これっぽっちも興味がなかった女にドフラミンゴはわざわざ立ち上がって彼女に向かっていく。

 

まさか、殺人現場を見ることになるかなと目を閉じておく。

 

しかし、きゃあ、ともエグい音も今聞こえないので目をゆるうりと開けてみた。

 

顎クイされてた。

 

あの、乙女漫画で良く見たやつ。

 

些か羨ましいようなされたくないような。

 

相手が悪の帝王みたいな人というのが強いからだろう。

 

さりとて、ローにされても子供なのできゅんとはしないな。

 

「言え。さもないと死ぬぜ?」

 

ゾッとする声音でメイドを脅す。

 

「い、言ったら、原作崩壊をしてしまうっ」

 

原作崩壊の意味は自分だけだろうけど良くわかる。

 

確かに彼女の言う主人公がメインヒーローならば、未来を知らせてしまうのだから原作を崩壊させてしまうのだろう。

 

それは恐ろしいことになるのだろう。

 

トリップでやらかしてはいけない暗黙の了解というものがあるのだ。

 

でも、ここは現実なのでどうとでもなる。

 

最悪な状況でしかない。

 

怖い。

 

単純にストーリーをなぞらなくなるのだ。

 

「答えろ。命令だ」

 

「い、言えない」

 

淀んだ空気に女は益々不安に揺れる。

 

しかし、ドフラミンゴは無だったものに笑みを浮かべて、もう退路などないのだと無慈悲に告げた。

 

女に、ならばあとは好きにさせてもらうと帝王たる顔をし、女をふんじばったままドフラミンゴは糸の能力を使って向こうの部屋へ放り投げる。

 

放り投げ方がローと同じ。

 

真似したんだろうな。

 

ドフラミンゴは切り替えてこれからのことを話し出す。

 

これは自分、聞かなくても良くないかと遠い目をした。

 

しかし、出来るだけ気配を軽薄にして居座る。

 

王座に座るやつに悟られちゃいけねぇと本能が警告しているので、大人しく存在感を示してはいけない。

 

冷や汗すら流してしまう中、刻々と計画を話していき、なにやら人々の欲の捌け口である闘技場を作ると言うのが聞こえた。

 

闘技場をとか、正に覇王がするようなお遊びである。

 

幾多の漫画やアニメを見てきたり、知識にある歴史にもあるから知っているぞ。

 

うぞうぞと背中が痒くなる感覚にひたすら待っていると話は終わったようで解散となる。

 

ローは疲れたと呟いていたのでこれから自室に籠るのだろうな。

 

精悍な顔つきになりつつある子にいそいそとリードなしの状態でついていく。

 

リーシャもローと同じように戦う術を無理矢理身に付けさせられたが、強さに関してはそれほどでもない。

 

部屋へ着くとさっそく寛ぐので、ジュースでも入れようかとキッチンへ。

 

「あの女、どう思う」

 

コップに注いでいる最中にいうので、適当に答える。

 

「さっぱり」

 

「おれもだ」

 

ローが分からないのなら、誰も分からないのないのでは。

 

それと、わかっている部分は多分彼女は異世界からの人かもしれないという部分だ。

 

わざわざこの世界で主人公の存在を示しているということは、そういうことなのだろう。

 

人形を持っている少女のことを言い当てたっぽい言動も当てはまる。

 

そうなると、ドフラミンゴが尋問するとなればこの先のストーリーとやらが知らせてしまう。

 

「おい、さっき掠めた怪我を見せろ」

 

ローが言ってくるが、たいした怪我でもないし、治せば良いやと思い平気と言うが、鋭い刃の瞳で睨まれる。

 

「一度で示せ」

 

ぐいっと引かれて腕を晒される。

 

「ふぉ」

 

「変な声出すな」

 

「え、だってローが優しくて」

 

「捻るぞ」

 

捻ると言いながらもアルコール消毒してくれ、ガーゼもしてくれた。

 

そういうところも昔から気にしてくれる。

 

こういう悪役ルートを突っ走っているのに優しさが見え隠れするところは目を白黒させてくれた。

 

戸惑いながらも一緒に居る時間が長いので関係も違うのは当然なのかもと納得もしている。

 

「いたた!」

 

「痛いんなら次から避けろ」

 

「避けられないから怪我したのだけど」

 

困ったなと見るもローは無視して向きを変える。

 

ギィ、と椅子が動く。

 

この部屋だけは静かで、外だけは違う世界。

 

「疲れた。お腹も空いちゃってる」

 

「食いもんならそこにある」

 

指を刺されてそちらを見るとのろのろと向かう。

 

冷蔵庫はちゃんとあるので、流石城。

 

でもって食べにくい。

 

「はぁああ。食べれるわけないし……食べるけど」

 

生きるためには食べねばならん。

 

冷蔵庫には果物があったので、それをいただく。

 

あの人達のところにいたら、口も悪くなるので気を付けている。

 

ローのところに戻って咀嚼すると彼が仮眠すると振り割れられた部屋のベッドのあるところへ向かう。

 

「良く眠れるな」

 

外は喝采で溢れていて煩くて眠れたものではないのだが。

 

そういう図太いところがドフラミンゴのお気に入りなところなのかも。

 

あと、瞳が淀んでるところ。

 

ローが寝室に入るのを見送ると輝く日とばかりに盛り上がる外を見て、眺め続けた。

 

一生真実を知ることなどないのではとおもう。

 

ドフラミンゴは絶対にことを明らかにさせないだろう。

 

真実を隠し続けるのは案外難しいのだけれど、どうするのだろうか。

 

こっちも推理するのが無理なのでもう布団へこもろうと、寝られないだろうけど寝室へ向かう。

 

ローと同じ部屋なのでは。

 

どうしようと悩むと悩む時間もあれで面倒。 もう良いやとベッドに入る。

 

彼はなにも言わないので良いのかね。

 

許可をもらえたということで。

 

また明日寝るときの相談をしよう。

 

今は良いけど、ローも成長すると一緒に寝るのが嫌になるかもしれない。

 

それを見越した。

 

そして、次の日、相談したら部屋がまだあるのでそこにベッドを移せと言われた。

 

一人で移せないのでと言うとメイドにでも頼めと言われた。

 

そんなのいきなり頼めるのか。

 

メイドに頼んだことがないので知らんがな。

 

「ローが能力でどーんとしてくれないの?」

 

「この能力は体力を使うんだぞ。やるか」

 

ちぇ、と拗ねる。

 

重いから女の身ではどうにもならない。

 

やっぱり他の人に頼むしか道はないだろう。

 

ローにはもう頼まないもん。

 

「まだ居たのか。早く言いに行け」

 

恨めがましく見つめていたのに気付いてなかったんかい。

 

とことんこっちのやることに不干渉だな。

 

この国は今後どうなってしまうのだろう。

 

なんて、気にしていられないのは自分もだけど。

 

そんな日から、あとから思えば運命の一日はあっという間だった。

 

麦わらと名乗る海賊達にドフラミンゴらは計画を無茶苦茶にさせられた。

 

リーシャはルフィ達に被害者として船に乗り他の島へ送ってやろうかと言われたが断った。

 

こっそり混乱に乗じてローを船に乗せて小さな小さな島へ降り立つ。

 

ルフィ達は決してローが捕まらないのをよしとしないから。

 

悪か善かとなればローがしてきたことは悪い。

 

だから、その気持ちを図った上で生存よりもこの男を島に移すことを選んだ。

 

何年も前の自分はいきることに強欲だったのに、弱ったのかなと微かに笑う。

 

首輪は既にドフラミンゴ達が討たれた時からローに外されていた。

 

どこへでも行けたのだ。

 

外で朝日を眺めて座っていると家から扉が開く音が聞こえ、今まで眠っていた男が起きたのだと知る。

 

新聞で仲間達の逮捕を知ることになるだろう。

 

慰めるのは可笑しいので、言葉はかけられない。

 

ローは包帯を巻かれた体をここまで連れてきて、横に立つ。

 

朝日が男の横顔を照らす。

 

おはようと声をかけるべきか。

 

「どうして助けた。何故逃げなかった」

 

「何故か、どうしてだろうね」

 

「同情か?それは病気だ。思い込みだ」

 

「知ってるよ。でも違うし」

 

「それこそ間違いだ」

 

「素直にありがとうって言えないの?二十歳を越えた大人がさぁ」

 

「答えろ」

 

起きて早々質問攻め。

 

「負けたらそこで逮捕コースだけじゃないでしょ、人生ってのは」

 

「お前とやり直そうってか?」

 

「別に君だけ島に残れば?」

 

「傷の舐めあいはごめんだ」

 

「そうやってかっこいい言葉を使えば全てを知った気になってるの、ドフラミンゴにそっくり」

 

皆何故か難しい言葉で済ませようとする。

 

悪い癖。

 

「今まではあなたの人生のレールに乗ってきたけど、今度は私と生存強欲コースにでも乗ってもらおうかな」

 

ローは眉を寄せた。

 

近くにまだいるのが理解できないとでもいいたげに。

 

わからないのだろうな、この男は。

 

「貴方がやってきた今まではあくまで誰に指示されて生きてきた。一度くらい自分の意思で生きてみろ」

 

「偉そうに……」

 

「実際私はもう奴隷じゃないもん!忘れてないよね」

 

首をさして笑う。

 

男の意思で外した。

 

ロー思い出したのか苦い顔をする。

 

「感謝してるから。生きたいって思っても生き残れるのかは五分五分だった」

 

朝日を背に言うとかっこいい気がする。

 

「人生にはリスクがある。どんな生き方をしていても。明日には死んじゃうかも。死なないかも。だから生きよう、若人」

 

「ドフィを助けに行く」

 

「だめでーす。許しませーん」

 

「てめえ!」

 

お茶らけたことに叱られたがこちらも怒る。

 

「死ぬだけだから!あと、ドフラミンゴは助けられない。以上」

 

モンキーなんちゃらがあそこに侵入して以降更に警備は厳しくなってる。

 

無理である。

 

「さ!ご飯の用意してよね!」

 

ローの肩を掴んで家に押し込んだ。

 

誰を助けようとも阻止してみせると彼の背中を蹴飛ばす。

 

まだ癒えない傷が痛んだのか呻いた。

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