短編集(夢小説)   作:苺のタルトですが

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電柱にぶつかったら彼氏が浮気しているのを知ってしまった

とても幸せで、幸福で、この時間は決してなくならないのだと、ずっと信じていた。

帰り道、彼氏のシリスと帰っていると不注意で電柱にぶつかってしまった。

痛い、と思うと同時に前世の自分の事とアニメを思い出して彼氏の本性を知ってしまう。

どうやら、彼は他に彼女が二人居るらしい。

自分と合わせて三人なので三股である。

それに、ギッと心が軋んで百年の恋も覚めた。

それはもうご開帳である。

 

「リーシャ、大丈夫か?」

 

「名前気安く呼ばないで」

 

「え?」

 

シリスが困惑するのもどうでもいい。

困惑してもっと困ればいい。

シリスという男子はアニメの中に出てくるオリジナルキャラで浮気性な奴として出てきていた。

高校が舞台の話しで今は中学三年生。

つまり、過去のお話だ。

浮気性が発覚したのは高校の時らしいが、浮気自体は中学からやっていたと自身が語っていた。

そんなシリスが初めて真面目に恋をするのが高校の時だ。

高校の生徒会で、メンバーの中では所謂チャラ男枠のヒロインに片思いする設定であった筈。

中学三年の今もその設定が生きているならば、浮気している事になる。

バージンもあげてないのでまだ間に合う。

頭の中が腐っているこの男とはもう何の関係もないと言い切れる程縁を切りたい。

 

「どうしたんだ?」

 

「は?どうしたんだ?それ本気で言ってる?」

 

「え、ど、どうしたんだ……本当にっ」

 

前世の記憶を戻す前の自分の口調を思い出してみたら「ふふふ……シリスくって面白いね……」という控えめな女の子だった。

ということは彼が驚いているのも納得。

しかし、この程度の茶番で驚いていたら心臓は持たないだろう。

彼が浮気している事を二人の女子は知らない。

なぜなら学校が違うからだ。

 

「あー……もういいや。てかさ別れて」

 

別れを求めるとシリスは意味が分からないと言って理由を欲しがった。

 

「はあ、何?理由何て欲しいの?じゃあさ、理由がそんなに欲しいなら……あんたが浮気する理由も言えるよね?」

 

「!!?」

 

シリスの驚愕に彩られた顔が最高に面白い。

写メ撮っていいかな。

聞いてみたら怒るかな、と思案しているとどうしてそれを、と震える声で聞いてくる。

否定しないなんてまだまだだな、こいつ。

 

「知ってる?恋人でも慰謝料取れるんだって?」

 

「慰謝料!?俺らまだ学生っ」

 

「だ、か、ら?」

 

ゆっくりゆっくりと聞くと彼は顔を蒼白にして面白いくらい震え出す。

こんな男は女を放って逃げるタイプだ。

飽き飽きしながら男の顔色が変わっていくのを見ているとついニヤリと笑みが浮かぶ。

 

「じゃあ交換条件しよ?もしスムーズに別れてくれて、私の事が好きじゃ無くなったって言い訳言って、変な悪い噂を流さないでくれたら慰謝料の話しは無しにしてあげる。私って凄い優しくない?」

 

「お、お前……俺の事好きなんじゃなかったのかよ」

 

「ははは。好きだったよ。二分前まで。でもさ、百年の恋も覚めた」

 

「っ……分かった、条件飲む」

 

彼氏、いや、元彼が頷くのを見てニコッと笑う。

 

「じゃ、契約完了。ちょっとでも破ったら……あんたの彼女に浮気の事もぜーんぶバラして外歩けないようにするかも、ねっ」

 

音符マークが付きそうなくらい明るく言うと男は逃げるように去っていく。

さらば、既にカスと化した元彼よ。

見えなくなるまで見ていると後ろから笑い声が聞こえた。

何だろと思いつつ後ろを向けば少し派手な格好の学ランを来ている高校生っぽい人がいた。

年上のようだと観察していると笑っている人は、一人で何故か笑っていたので危ない類の人だろうかと見ていないように目を逸らす。

しかし、一頻(ひとしき)り笑い終えた人はこちらへやってきてリーシャの目の前に立つ。

背が高いので迫力があって威圧される。

 

「人生で一番面白ェもん見せてもらった」

 

「あの修羅場を?」

 

どうみても浮気をしていた彼氏を問い詰める彼女の図だったのに、よく見ていられたものだ。

自分だったら絶対にスルーする。

 

「嗚呼。お前マジ最高だった」

 

「それは、どうも?」

 

褒められても気分は複雑だ。

曖昧に返すと相手は名を名乗ってきた。

ローというらしいその人は高校生と言ってリーシャへ飽きずに話しかけてくる。

 

「あの。興味本位で近付かれても困ります……」

 

あまり関わりたくなくて告げるとローは立ち止まる。

リーシャも一緒に立ち止まると静かになった。

 

「それは困る。俺は痺れた、お前に」

 

「え、ええ?」

 

痺れたというのは先程の別れた修羅場の事だろうか。

それならばなんて可笑しな感覚を持つ人なのだろうと思う。

あれを見たら確実に怖いとか近寄りたくないと思ってしまうのが自然なのに。

 

「なァ、彼氏と別れたんならフリーだろ?」

 

「ま、まあ」

 

フリーなんて嫌な響きだ。

 

「じゃあ、お前の彼氏に立候補したい」

 

「へ?あの、私……ついさっき別れたばかりなんですけど……」

 

「分かってて口説いてる」

 

口説く何て凡そ高校生が言う台詞じゃない気もする。

ローの考えている事が不可解過ぎて疑いたくなるのも仕方ない。

 

「男はもう懲り懲りか」

 

「えっと……まだ一回しか付き合ってないのでそこまでは」

 

「じゃあ、良いだろ?……それとも出会ったばかりじゃ無理、か?」

 

結構グイグイくる年上の生徒に苦笑。

お友達から、とでも言う事しか出来ない。

 

「友達歴が長けりゃ今度は彼氏候補にすらなれなくなるのは勘弁なんだが……」

 

そんなに長い期間を考えているとは。

強ち嘘でも冗談でもなさそうだ。

 

「じゃあ、クリスマスまでが友達。それ以降は彼氏候補って事にしろ。でないと彼氏にすらなれない」

 

「私、貴方に何かしましたか?」

 

此処まで言われてまで執着される理由が最早考えられない。

 

「言っただろ。痺れたって」

 

ローは得意げに笑うとリーシャはその笑みに内心ドキッとした。

気が早いぞ自分!

 

「痺れたって言われても……」

 

年上に好かれる理由がそれなんて信憑性に欠ける。

 

「痺れたって言うのは、お前に惚れたって意味だ……此処まで言わしておいて返事を保留になんてするなよ?」

 

クツクツと笑って宣言するローに今度こそ赤面するしかなかった。

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