短編集(夢小説)   作:苺のタルトですが

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夢うつつでもなし

うちの船長が島で独断行動をした結果、厄介な病をいただいてきた。

 

感染はしないものの、解毒ほど方法が異性の唾液のみという割と積んでいるやつ。

 

「一体なにがどうしたら」

 

意識が朦朧としている男に無言で差し出され、た読み進めていく。

 

一度すると3日は平気だが、暫く必要とのこと。

 

「血を抜けって言われた方がマシだよぉ」

 

意識が朦朧としている男に向かって無理ですとも言えん。

 

「本を見せられたってことは……私に襲えと?」

 

特に好意を感じる態度をされた事がないので、戸惑う。

 

もしかしたら意識が朦朧としているからこそ、もう一人と間違えてるって可能性はあるけど。

 

「人命救助だと思えば……良いかな」

 

ローに近寄り、ソッと口を寄せた。

 

「船長、行きますよー」

 

助走のために声をかける。

 

反応はない。

 

はぁはぁと息が荒い。

 

何度か深呼吸をして唇を押し付けた。

 

どうやってこれで唾液なんて出すんだ。

 

世の中のキスがうまい人、やり方教えてくれ。

 

「ぷ。あー、わからない、無理」

 

離れて一旦考えるがちょっと己には難易度高い。

 

もう一度してみる。

 

「ぐほ!」

 

いきなり獣じみた襲われ方したぞ!?

 

無事唾液を運び、ローは翌朝ケロっとしていた。

 

ま、キスしただけなんだけど。

 

だから、知らないフリをしていた。

 

だって周りに知られたくないから本をこっそり見せたんだろうし。

 

船長としてのメンツってやつかね。

 

3日毎にしていけば症状は緩和していくらしーから、それを乗り切れば終わり。

 

「ちょっと良いか」

 

2日経過して何故か声をかけられた。

 

「はい」

 

ふらふらーっと船長室まで案内される。

 

「どうしましたー?」

 

「本には3日ずつと書いてあったが、毎日処方して欲しい」

 

「毎日、ですか」

 

「いきなり見舞われるよりもリスクを減らしておきたい」

 

「気持ちは分かりますけど」

 

毎日、船長と部下がってキツイ。

 

「報酬は払う」

 

と、見せられた金額に驚く。

 

いや、払いすぎてないか。

 

「多すぎます!」

 

「適正だ」

 

ローは引く気配を見せず、熱意に押し負けた。

 

「分かりました」

 

「今からしたい」

 

「え!?今ですか?ちょっと心の準備したいんですけど」

 

かなり性急だ。

 

ローはグッと近寄ってくる。

 

「金は払う。嫌じゃなきゃ今処方をしてくれ」

 

「お金は分かりましたって」

 

別にお金とか払われなくても部下として助けるんだけど。

 

「じゃあ、せめて目隠しして下さい」

 

目があるのやりにくいので布で目を覆ってもらう。

 

朦朧としている時は意識がほぼなかったから出来た。

 

今はしっかり保たれているので流石に無理。

 

妥協点としてしっかり結んで座ってもらう。

 

いけないことをしているような妙な気分になる。

 

「じゃあ、いきます」

 

結局前は自分で唾液とか出せなかったなぁ。

 

口を向けて押し付けると力なく下がっていた彼の手がいつの間にか後ろにあった。

 

頭をグッと押さえつけるとまたいつの間にか終わっていた。

 

これは医療行為なのか?

 

という艶かしさ。

 

「船長、もっと静かに処置したいです」

 

「これでも抑えている方だ」

 

(なにを?)

 

あんなバッとしたやり方、必要なのかな。

 

ローは無言で目隠しを取ってそのままスタスタと部屋を出ていく。

 

「これが、毎日」

 

地味に大変だ。

 

それからローは二人きりの時以外変わらずに接してくる。

 

あの時間が白昼夢なのではないかと思えて来る程。

 

「ちょっと良いか」

 

処方箋の合図はこれだった。

 

船長室まで行くのかと思いきや、違った。

 

「なにか忙しいか」

 

いつもと違う言葉に首を振った。

 

「なら、おれと町へ行くぞ」

 

「偵察ですか?」

 

「偵察じゃない」

 

「誰可へのプレゼント選びでしょうか」

 

「違う。出掛けるだけでついでも何もない」

 

自分を伴う理由が益々分からない。

 

「苦労をかけているから、少しなにかさせろ」

 

「ですが、お金も貰ってるのに」

 

「お前はおれの事情に付き合ってる。もっとなにかするべきと判断している」

 

理想的な上司。

 

付いていこう。

 

ローの言葉に感銘を受けて共に船を降りた。

 

色々奢ろうとする男の態度に何度も断ったりしたが、楽しかった。

 

「あの、症状は改善してますか」

 

既に一度発症し、どれぐらいで治っていくのかわからなかったので尋ねたが、個々により期間は違うと言われる。

 

「まだ3日毎に起こるんですか」

 

「いや、毎日しているから、まだ発症が続いていると端々で感じる。今のところ緩和している様子は無いな」

 

いつまで続くのか分からない。

 

逆にローは辛くないのか。

 

「今は大丈夫ですか?」

 

「念の為にするか」

 

「え」

 

そういうつもりで述べたんじゃないけど、ローは路地裏に入って私を貪っていく。

 

キスだけど。

 

「船長、いつもいきなりです」

 

慣れてないのに。

 

「発作だからな」

 

 

 

***

 

 

 

船員達といつものように雑談しているとローが最近上機嫌だという情報が入る。

 

私には表情の機微が分からいから知らなかった。

 

「だよなー、おれも気づいたわ」

 

誰もが満場一致。

 

「なぜなんですかね」

 

「さァ……この前陸に降りた時もだったし」

 

「別嬪にでも合ったかな」

 

え?

 

あの日は一日一緒だったし、女の気配はなかった筈だが。

 

昼、ローに電話で呼ばれて部屋へ赴く。

 

「どうしました?」

 

「聞きたい事があった」

 

ローはメガネにラフな私服でベッドの上にて、なにかの本を読んでいた。

 

「この生物についてだ」

 

思い出せないと言われて微かな知識を絞る。

 

何度か違う方向の質問を受け、答え終えると彼が隣に居るのに気付いて距離を取った。

 

「船長、私、もう行きます」

 

「折角来たんだからゆっくりしていけ」

 

「ですけど」

 

ローは腕を引いて、隣に座らせた。

 

「真面目なのも考えものだな」

 

くく、と笑う男に横を向く。

 

「こんな、部下として距離感が」

 

「距離感なんてもうなくなってる」

 

腰に強く腕がくる。

 

距離が更に縮む。

 

「!」

 

耳元で話されてムズムズする。

 

「せ、船長」

 

「なんだ」

 

距離を離す為に手を差込む。

 

「か、帰りますッ」

 

勢いよく部屋を飛び出す。

 

それを見送るローは笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

また声をかけられた。

 

船員としてスルーをきめこむ訳にはいかない。

 

キスが気まずくてやりませんは無理だ。

 

ローの病が発症してはハートの海賊団として危機を向かえる。

 

それだけは阻止したい。

 

何度も頼まれるたびに真面目な顔のローはなにを思っているのか。

 

治療をする一環で無なのかな。

 

それとも、悪びれているのか。

 

審議不明。

 

そんな無敵に見える男が気だるそうに来てくれと言うので部屋に入る。

 

ベッドに力なく沈む姿に慌てて近寄って、病が出たのですか!?と問い掛けた。

 

「風邪……だろうな」

 

「あ、そうですか」

 

なら、薬と水を飲めば翌日には治ってる。

 

一瞬で興味を無くす態度にローはムッとした。

 

「ここに来い」

 

「え、来いって、病人の寝てる所にですか?」

 

ベッドの上を示唆する相手に出来ないと拒否する。

 

「救護してくれるんだろ」

 

風邪ならいらないと思う。

 

彼は医者だし、自動的に治せるし。

 

「自分でやれるでしょう、船長」

 

「これだけ頼んでるのに見捨てるのか」

 

(見捨てるって)

 

まるで小動物の扱いだ。

 

そんな風に言われたら付き合うしかない。

 

ここで部屋を出たら、他の団員達に居てやれよとでも後に言われるかも。

 

仕方なく隣に侍る。

 

「よしよししますね」

 

「よしよし?」

 

ローが否定に入る前に頭を撫でた。

 

ぴたりと男は押し黙って、驚いているようでこちらを凝視している。

 

「船長、背中もぽんぽんしてあげます」

 

「…………」

 

信じられないことが起きている。

 

20代の大人がされることではない。

 

「眠くなってきました?」

 

母性味溢れる声音でたずねられて、答えられるわけもない。

 

「薬はもう飲んでいるから眠くなるのは当然だ」

 

「え?船長は寂しくて私を呼んだのかなと」

 

寂しいのではなく、口実が出来たので呼んだだけだ。

 

「寝る」

 

やはり、ぽんぽんで眠たくなったのだ。

 

プライドがあって言えないだけだな。

 

「おやすみなさい」

 

静かに部屋を出た。

 

「鈍感め」

 

恨めしい声をローは枕で消した。

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