短編集(夢小説)   作:苺のタルトですが

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怖いものが這い寄ってくる


どうせなら騙し切ってよ

悩みに悩んで私はバルトロメオにある事を相談した。

それは、

 

「だから!お願い!誰か腕の良い人紹介してっ」

 

ある意味死ぬか生きるかの問題なのだ。

友人のバルトロメオを前にして手を合わせる。

パン、と良い音を奏でる手をむむむ、と唸りながら見詰める男。

ピン、と閃いた顔をしたので嬉しさに希望が差し込む。

 

「誰か居るの??教えて!」

 

「ん、分かった!今からそこへ案内すっぺ。俺に付いて来い!」

 

うん、と元気良く返事をして彼の後に続く。

辿り着いたのは小さなお寺。

バルトロメオが名を呼ぶと返事を返して出てきたのは女性だった。

 

「あ、バルトロメオさん。お久しぶりです。スモーカーさんなら今、生憎遠出に出ておりまして……」

 

「え……」

 

「ん~、参ったなァ」

 

呆気に取られたまま固まっていると女性がこちらに気が付き軽く頭を下げた。

こちらも礼儀正しく挨拶を返す。

挨拶なんてしている暇は、本当は無いのだけれど。

 

「あの、私今。すごーく。すごーく困ってるんです」

 

「と言われましても……今から呼び戻したら最低三日は掛かりますよ?」

 

「み!三日!?」

 

間に合わない!

到底間に合わない!

焦る気持ちと裏腹に女性--たしぎは眼鏡を軽く押し上げて詳しく聞かせてもらえないかと頼んできた。

渋る理由もないのでここはちゃちゃっと説明してしまおう。

聞けば彼女もスモーカーという男性の元で修行しているらしい。

それなら話しは早い。

 

「実は……前々からとある男に付きまとわれておりまして」

 

その男は自らをローと名乗った。

ほんの出来心で道端に倒れていた男におにぎりをあげたのだ。

普通の男かと思いきや鍵を閉めても入ってくる、所謂妖怪だった。

妖怪なのは別にこの際どうでも良い。

問題なのは来ないでと頼んでも聞く耳を持たない事だ。

挙げ句、訪問する度に過度な悪戯めいたセクハラをしてくる。

それがエスカレートしているからこれは困ったと悩む。

そして、今日は。

 

『そろそろお前の身体を食べてもいいか』

 

なんて真面目な顔をして言い出すものだから、ついつい張り手をしてしまった。

ついでに扉が壊れる程吹き飛んだ。

え?生死?

そんなもの知ったものか。

全てを話し終えた頃には成る程、と納得した表情を浮かべたたしぎがいた。

隣でバルトロメオがどうにか出来るのか、と聞いたので同じように答えを待つ。

彼女はこくん、と頷く。

それに顔を見合わしたのは勿論私とバルトロメオ。

 

「その妖怪は入ってこれるし、出ていかないような性格なのですね」

 

「はい」

 

「なら、居ないと思わせられれば諦めるかもしれませんね」

 

「思わせられるのですか!」

 

「ええ。スモーカーさんから前に教えてもらったことがあります」

 

「っ、な、んて心強い!貴女に会えて良かったっ」

 

感無量で喜び、手を取る。

たしぎは照れた様子で笑うと「準備をします」と少し席を外す。

その間にお手柄なバルトロメオにもお礼をした。

 

「良かった良かった。これでおめーの悩みも無くなるな」

 

何度も頷いて胸を弾ませる。

 

「リーシャさん、こちらへ。バルトロメオさんは男性ですからそこで待機していて下さい」

 

「え?俺は駄目なのか?」

 

「脱いでもらうので」

 

「「え」」

 

バルトロメオとリーシャの声がシンクロした。

 

--数分後。

 

部屋から出てきたリーシャを見たバルトロメオは文字通り目を丸くした。

鏡を見ていないが、見える範囲で身体にびっしりと描かれた文字の羅列。

余す事なく埋め尽くされたている黒い文字に羞恥心が絶えずやってくる。

けれど、これは仕方のない事なのだ。

たしぎが言うには、ローにとって今の己は目に見えなくなっているらしい。

人のバルトロメオとたしぎにはしっかりと見えている。

そういう原理で施された行為にたしぎへ頭を下げた。

 

「これで安心して家に帰れます」

 

「無事に乗り切れるように応援していますね!」

 

「俺もだべ!」

 

二人に感謝を伝えて家に帰った。

 

 

 

 

 

何も知らない妖怪はその日も家に入り込んできた。

本当に見えなくっているのか不安に思いながら待機の姿勢で相手と対峙する。

 

「チッ、留守かよ」

 

心底煩わしそうな舌打ちをして部屋を見渡す男に内心成功したのだと歓喜。

そのまま帰って行くかに思えたローは部屋を徘徊し出す。

気配が身体の後ろに回るのを目で追い掛けているとゆっくりと相手が床に座るのが見えた。

早く帰れと念じても全く動く様子がないので、もうこちらから外へ出ようかと足をゆるりと動かす。

 

「腹が減ったな」

 

独り言にしては大きな声だ。

呑気にそうボヤく男に冷蔵庫を漁る気かと睨み付けた瞬間。

 

--パク

 

そんな音がしても可笑しくない程豪快に耳の端を食べられた。

 

「ひゃああ!?」

 

食べられると揶揄しても過言ではないその感触に身震い。

どうして。

その言葉が脳裏を横切る。

れろ、と舌が執拗に這い回っていく。

 

「お前は間抜けな奴に呪いを施されたんだな」

 

間抜けな奴とはたしぎの事だろうか。

どういう意味かと問いかけても呪いによってこちらの声は届く事もない。

歯痒い状態のままひたすらに耳で遊ばれる。

 

「耳だけが丸見えだぞ……」

 

「ええ!嘘!?」

 

とんだ間抜けな状態に羞恥心が募っていく。

だからローに耳だけをネチネチと苛められているのかと納得。

止めさせようとしても手は男をすり抜けてしまう。

離れようとしても耳を指先で掴まれて動くと引っ張られるので痛い。

 

「このまま寝室に連れていきてェところだが、耳だけじゃあ意味がねェしな……」

 

くくく、と愉快そうに笑う男に恨めしい視線を渡す。

舌が入ってくる事でぞわりとなる背中にただただ泣き居る事しか出来なかった。

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