「ローくん!」
「あァ?」
声をかけてきた女の子に乱暴な返事をするロー。
「ロー!そんな言い方したらダメでしょ!」
「別にいいだろ」
「………」
ローは多分学校で一番モテる。
ローに恋をしている人は沢山いると思う。
私が何故ローの近くにいるのかというと、ローと幼なじみだから。
まぁ、お約束として私はローの事が好きだったりする。
「ロー、今日は放課後勉強するから先に帰っといて」
「……おれも行く」
「え、わかった……」
ローが一緒に放課後に残るというのは初めてだったから驚いた。
そして放課後になると私達は図書室に向かった。
――ガラッ
「誰もいないね……」
図書室には一人も生徒がいなくて夕日に照らされた本だけがあった。
「座ろっか」
「あァ……」
私とローが座ると私はノートを開く。
しばらくは私のペンの音がしていた。
「なァ、リーシャ」
「何?」
「おれはお前が好きだ」
「……え?」
一瞬、ローの言った事がわからなかった。
「だから付き合え」
「えっ、ちょ……待って」
私は次々と話が進んで行くことに頭がついて行かず混乱していた。
「おれはガキん時からお前が好きだったんだぞ」
「……う、そ」
「嘘ついてどうすんだよ」
ローは呆れたようにため息をついた。
「っ……わ、私も……ローのことが好き、だよ……」
私がそう言うとローはニヤリと笑い、
「そんなこと前から知ってたに決まってんだろ」
と爆弾発言をした。
「えっ!?」
リーシャは今だに信じられなくてローを見た。
「もうお前しか愛せねェんだ、責任取れよ?」
私はその言葉の意味を聞こうとした時、椅子が動く音がした。
――ガタッ
顔を上げる間もなく私の唇にローのソレが当たっていた。
「ん……」
そのキスはただ触れるだけのキスだったけど私の体を熱くさせるには十分だった。
(二人の初恋は片思いで両思いの恋だった)
帽子
「……っ……ひっく…うぅ……」
私は一人、夜のマストの近くで泣いていた。
この船の戦闘員でもない、ただの船のお荷物だ。
何もできない自分に悔しくて、辛い。
泣くことしかできない人間。
――ポスッ
「……!!」
突然頭に何かが乗った。
「……また泣いてんのか」
「ロー……」
後ろを向くといつものモコモコした帽子を被っていないローがいた。
私はすぐに自分の頭に乗っている物がローの帽子なんだと気がつく。
「もうすぐ冬島に着く、風邪を引くぞ」
「私のことなんか気にしないで、ローこそ船長なんだから体調が悪くなったら大変だよ」
「バーカ、おれは医者だっつーの」
「あはは、そういえばそうだね……」
私はちゃんと笑えているだろうか。
――ギュ……。
私が笑った時、ローが私を包み込むように抱きしめた。
「……ロー?」
「お前が……お前がいなくなっちまいそうで怖いんだ……」
ローは消え入りそうな声で呟いた。
「お前は確かに戦闘員じゃねェ」
「っ……」
ローの言葉に心臓がギュッと痛くなった。
「そ、だね……」
「だが、そんなことを気にしている事自体、間違ってんだよ」
「え……」
ローの言葉に私は驚いた。
「お前はおれの女なんだ、胸張って堂々とこの船にいていいぐらいのやつなんだよ、お前は」
「ロー……ッ」
リーシャはローの言葉と優しい声色に涙が溢れ出した。
「わ、私……この船にいて、いいの……?」
「んなの、当たり前だ」
ローはそう言って私の頭に乗っている帽子越にキスをした。
(寒さなんて感じられないぐらい貴方の帽子は暖かくて心の奥まで浸透していった)
七夕
「ロー!」
「……リーシャか」
「反応薄っ!」
「……ノックぐらいしろ」
「別にいいじゃん……」
私は拗ねるように呟いた。
「はァ……んで用はなんだ?」
ローはため息をつきながら聞いた。
「あ、そうだった!ロー、天の川だよ、天の川!」
「あァ」
ローは思い出したように相槌をうった。
「あァ、じゃない!今星が沢山出てて凄いんだよ!」
リーシャは興奮しながらおれの腕を引っ張った。
「だからローも行こ!」
おれは一瞬断ろうとしたが、リーシャの期待に満ちた目を見て言うのをやめた。
おれはそのままリーシャに引かれるまま外に連れ出される。
おれは真っ暗な空を見上げた。
「わぁ~何度見てもきれ~!!」
リーシャの言ったとおり雲一つない夜空には星が川のように並んで輝いていた。
「ね?綺麗でしょ!」
ニコリと無邪気に笑うリーシャにおれは口角を上げながらそうだな、と呟いた。
昔のおれならこの星を見てもなんとも思わなかっただろう。
リーシャがいるからか、なんてガラにもなく思う自分がいる。
「ロー?どーしたの?」
相手は不思議そうにおれの顔を覗きこんできた。
「ククッ……なんでもねェよ。願い事は決まってんのか?」
おれはリーシャを見ながら会話を逸らした。
「ん~、そうだなぁ……三回言わなきゃなんだよね?」
「それは七夕じゃなくて流れ星の時だ」
少しズレた意味に苦笑いする。
「あはは!そうだったねっ!」
リーシャは照れたように笑うとまた考え込んだ。
「……決めた!」
「なんだ……?」
「ふふっ……秘密!!」
リーシャは面白そうに人差し指を口元にあてた。
「……ほォ、このおれに隠し事か」
「へ……」
ローがニヒルに笑うのを見て、私は冷や汗をかいた。
「今から部屋でじっくりと聞こうじゃねェか……?」
ローはそう言うと私を担いだ。
「え、は、離して!」
「ダメだ」
私の言葉はいとも簡単に跳ねのかされた。
「ちょっ……いゃあぁぁあ~~!!!」
私の声虚しくそのままローの部屋に連れていかれた。
(せっかくの雰囲気が台なしだ)
あめはやまない
ある日、異世界から来たという少女がハートの海賊団の船にやってきた。
最初は海賊を怖がっていたし何故かワンピースを知っていた。
もちろんロー船長は警戒したし、質問攻めもやったので危険な人間でないとわかった。
だが、ここで私が声を大にして言いたいのはその少女を気に入り始めた事に対する疑問。
どうしていきなりやってきた部外者を部屋に招き入れるのか。
どうして服を貸すのかと。
言いたいけど……言えるわけなんてない。
そんな権利なんて私にはないし、きっと船長は取り合ってくれないだろう。
船長が居ない時にこっそり少女が部屋に入っていくのを見た。
何をしているのか開いた扉の隙間から目を覗かせると顔を赤くしながらプレゼントらしき包装の箱をテーブルに置いていたのでちくりと胸が痛んだ。
私だって今日はローに何かしてあげようとしたんだから。
何で先にプレゼントを渡すんだとその子を睨んだ。
慌てて出てきた少女に素早く隠れると去っていく足音の後に彼の寝室に入った。
プレゼントが置かれている場所に目を向ける。
むかつく。その感情の赴くままにテーブルへ近付いていくとタイミング悪く扉を開ける音がした。
何をしているんだと言われたが答えることの出来ないまま足早に船長とすれ違いに走った。
パタパタと自分の足音を聞きながら目頭が熱くなる。
私だって、船長に何かあげたかった。
あげたかったんだもん。
心底船長のおめがねにかかったあの少女が恨めしくて――羨ましかった。
プレゼントを渡せることも、渡す勇気があったことも。私は違う。
船長に笑いかけることすら出来ない。頭を撫でられる事はあっても頬を撫でられることはない。悔しい悲しい。
どうして自分は他の人と違うんだろう。
何もかも、違う。
一から数えればきりがないほどに。
あの少女は笑えて話せて、船長と過ごせる。
甲板に出ると足を止めて雨がザァザァと降る中に立ちすくんだ。
少しするとベポの足音が聞こえたので振り返る。
「あ、アリス!こんな所にいたら風邪引くだろ!」
「…………ニャー」
ねぇ、ベポ。
「どうしたんだアリス?早くこっちに来いよ」
どうして私は、
「お前、もしかして戻りたくないのか?」
猫なのかな。
「船長に怒られるぞ」
別に構わないと思った。
この雨が止むまでここにいたい。
きっとたくさんの悲しみと私の涙を洗い流してくれるはずだもん。
とらおっち!
友達が最近たまごっちにハマったらしく私にススメてきた。
ランダムに生まれるようでアザラシ模様か牛模様かよくわからないたまごが当たった。
しばらく様子を見ているとたまごが動いてヒビが入り生まれた、が。
「う、うわ……え、帽子被ってるし、隈(?)あるし……なにこの種族」
得体の知れない生物なのは当たり前だが、かなり偏った出で立ちだ。
しかも『おれがお前の主人か?間抜け面だな』
と口元を上に上げて笑っている。
心底馬鹿にされているに違いない。
放り投げたい衝動にかられながら名前を見ると『とらおっち』と見た目とギャップがある文字が。
小さく吹くとまたとらおっちが吹き出しを変えた。
『笑ったな。呪うぞ』とまるで見えているような事を言っていた。
これは、ゲームの筈だ。
若干恐怖を抱きつつエサをやってみる。
「取り敢えず機嫌取りしてみよ」
骨付き肉を選んでとらおっちにあげてみると『まぁ許してやるよ』と返ってきた。
(根に持つ時間長いな)
あれか、エサをあげるまで機嫌が悪いままだったかもしれないのか。
つくづく面倒な性格のたまごっちに当たってしまったものだ。
それから二日が経過し驚いたことが幾つかある。
まず何故かトイレをしない。
そして、喋りまくる。
その上命令ばかりするのだ。
友達にメールで『とらおっちがうまれた』と送ったところ、興奮気味に『まじ!?めっちゃラッキーじゃん!』と賞賛された。
何がラッキーなのかわからない。
翌日、たまごっちを進めてきた友人が家に来てとらおっちを見せたら、
「わーっ!とらおっちって本当珍しい!」
「珍しいんだ?でも凄い命令してくるんだけど」
「えぇ?命令?かっかも命令するよ」
「かっか?」
「この子!見て見て!」
と、見せられたたまごっちに目を疑った。
チューリップを思わせる真っ赤な逆立った髪型と目付きが恐持てな生物。
その名は『かっか』と呼ばれ三大たまごっちと言われる一匹なのだそうだ。
三大たまごっちの『かっか』『とらおっち』ともう一人は『るふぃ』と言うらしく、その子もかなり人気らしい。
「なかなか生まれないから貴重なんだよねー」
「かっかも?」
「うん。かっかも何十回のたまごでやっと生まれたから大事にしてる」
改めて珍しいたまごっちを引き当てたんだと感じた。
「ねーねー、かっかととらおっち赤外線通信でお出かけさせよーよ」
「お出かけ?そんなこと出来るんだ?」
「うん。楽しい醍醐味だし、ほら……ここの赤い場所を合わせるように近づけると」
「あ、とらおっちが反応した。かっかこっちに来たよ」
早速、赤外線通信をしてみるとかっかがこちらのたまごっちにやって来た。
何故かとらおっちが不機嫌になったが。
二匹は顔を合わせるなり嫌みや喧嘩をし始める。
驚いていると友人の興奮した声が聞こえてきた。
どうやら、かっかととらおっちを逢わせると名物である特別なイベントが発生すると言う。
陰険でネチネチとした言い合いが絶えず画面に吹き出しとして表示される。
「うわ……犬猿の仲ってやつか」
「すっご~い!キャラ同士が喧嘩とか今時見れないよねぇ」
「確かに……」
だが喧嘩をしている割に仲が良さそうに感じるのは何故だろう。
苦笑しつつ通信を終わらせこちらにキャラが返ってくると早々にクレームを付けられた。
刺々しい吹き出しに「何であいつと対面させた能無し」と今までで一番毒素が含まれた言葉に冷や汗が出る。
ごめんね、と選択肢を選べばじゃあ肉を寄越せと言われ貴重な肉を渡した。
なかなか手に入らない一品をこうもたやすく奪われるとは……。
とほほと肩を落とすアリスに友人がかっかから伝言あるよ、と話し掛けてきた。
「私に?」
友人は頷くとかっかの機器を渡し見せてきた。
『お前も苦労してんだな』
「……………!」
キャラに同情されたことやその気遣いに涙した。
同居人にパシられる